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カントリーロード 8

 昼休み、絹代は当番だったので昼食のやかんを取りにいって戻ってきた。催促する平田に渡して自席に戻ろうとしたとき、ぽつんと座っていた鉄子が目に入った。絹代はためらいながらも、自分の鞄からお弁当を取り出すと鉄子に近づいた。

「テッちゃん、一緒に食べよ」

鉄子はぱっと表情を明らめ、頷いた。絹代は背後の気配が気になりながらも、鉄子に笑顔で応えた。

 イスに座ってお弁当を置くと、鉄子は鞄から大きな包みを取り出した。驚く絹代に委細構わず鉄子は包みを解いた。と、大きなおにぎりが登場した。でっけぇ、という声が横にいた高松から漏れ、それとともにみんなの注目が鉄子に集中した。絹代は慌てて鉄子に、「どうしたの、それ」と訊ねると、

「おらが、作っただ」と答えが返ってきた。

「早起きしたし、時間もあったから自分で作っただ」

「でも、それ、大きい…」

「ん、まぁ、ちょっとでかかっただ。それより、キヌちゃん、それで足りんのか?」

絹代は自分の弁当箱の倍ほどもあるおにぎりに目を奪われたままぼんやりと頷いた。

「上杉、あっ、鉄子のほう、そんなのホントに食えるのか?」

「んだ。ぜんぜん大丈夫だ」

「たいしたもんだな、女にしとくにゃもったいねえな。な、何かスポーツでもしてたのか?」

「おらの村じゃあ、スポーツなんてほとんどねぇ。相撲かドッジボールくらいだ」

「相撲なんてするんか?」

「ん。おら、子供の部じゃあ、負けねえ」

「男子とも取るの?」

前にいた河合薫が興味津々で訊ねた。

「んだ」

「やぁだ、恥ずかしくないの」

「なして、別におらは裸になんなくてもいいから」

「でも…、ねぇ絹ちゃん」

「…うん」

絹代は頷くのも怖いくらいだった。どんどん深みに入っていく気分だった。鉄子が何か話せば話すほど自分が追い詰められていく、そんな気分だった。

「何して遊んでんだ」

「山行って虫取ったり、川で魚取ったり、泳いだり、チャンバラごっこしたり」

「はぁ、すっごい田舎なのね」

「テレビ見たことある?」

いつの間にか朝丘が近づいてきてそう言った。

「ん、たまに」

「もしかして、家にないの?」

「ん、うちの父ちゃんが、テレビが嫌いだったから、おらんちにはなかっただ」

「じゃあ、夜とかどうしてるの」

「そんただもん、夜は寝るもんだ。夜中起きてるのはキツネかタヌキだ」

 呆れ返る周りの人間の目も気にせず、楽しそうに鉄子はおにぎりを頬ばり始めた。


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