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カントリーロード 2

 キッチンから母の呼ぶ声が聞こえた。よく聞き取れないまま、はぁい、と返事して急いで着替えて部屋を出ると、もうテーブルには食事の支度が整っていた。思わず絹代は目を見張った。そこには、見慣れない豪華な料理が並べられていた。

「どうしたの、これ?」

驚いた絹代が問い掛けると、美津江は驚くように答えた。

「なにを言ってるのよ、あんたは、今日いとこのテッちゃんが来るんじゃないの」

 あ、そうだ、と思い出した。一週間ほど前に父から言われた、いとこの鉄子が下宿すると。その瞬間、何とも反応できず、きょとんとした顔で父親を見つめたまま絹代はご飯を口にしていた。そんな絹代を見て、淡々と説明を続けた父直之の様子を、絹代はぼんやりとブラウン管の向こうの話のように聞いていた。と、ある瞬間それが現実感を伴って絹代に認識されたとき、絹代は慌てて父親に問い掛けた、もう一回言って、と。

 父は驚き、母美津江もあっけにとられたように絹代を見つめた。何を聞いてたのこの子は、と言う母に関心も注意も向けず絹代はじっと父を見つめた。直之は授業と同じように、絹代に向かって噛んで含むように言った。

「伯父さんが亡くなったので、いとこの鉄子ちゃんが、うちに下宿することになった」

直之は絹代の様子を伺いながら、ゆっくりと続けた。

「絹代と同い年だから、色々おまえも助けてやってくれ。急な話だが、身寄りもなくて、困ってるんだ。まぁ、納得してくれ」

 絹代はぼんやりとしたまま父親を見つめて、こくり、と頷いた。頷いてから、はっとした、いじめられたらどうしよう。

 美津江は鉄子について父に色々と訊いている。

  『どんな子なの?』-『さぁ。』

  『同い年だったかしら』-『そうだ』

  『背格好、同じくらいなら、服とか着回しがきくんだけど』-『そうだな』

  『お葬式は、あなた行けなかったのね-『遠いからな。急には、ちょっと』

  『いつ来るの?』-『来週末くらい。正確な日は、また連絡するって』

  『部屋はどうしようかしら?』-『とりあえず、絹代と同じ部屋でいいだろう』

  『学校は大丈夫なの?』-『あぁ、なんとかなる』

  『試験なし?』-『いや。ただ色々事情もあるし、内申書で大体OKなんだ』

  『絹代も一人っ子だから、ちょうどいいわ』-『姉妹みたいなもんだな』


―――姉妹?


 絹代はぼんやりと二人の会話を聞きながら自問した。そして、どうしても仲のいい姉妹の姿が思い浮かばなかった。同じ歳で自分より弱々しい子を想像することができない以上、振り回されるか威圧されている己の姿しか見えなかった。が、絹代は黙々と食事を済ませ、席を立った。母が呼び止めていた、ちょっとは片付けを手伝いなさい、鉄子ちゃんが来たら恥をかくわよ。だが、絹代は聞こえないふりをして、さっさと自室に引きこもった。



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