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カントリーロード 17

 直之は帰宅するとすぐ絹代と美津江を残して鉄子を探しに出た。絹代は美津江に言われるままにスマホで催促されるままに思いつくところへ電話を掛けた。とはいっても、鉄子は人気者ではあったが、大体が絹代と行動をともにしているので個人的に親しい相手は、せいぜい古木と西野くらいだった。その二人に鉄子が行っていないか訊ねて、期待する答えが帰ってこなかった時、もうどこにも当てはなかった。絹代は公園だと思った。鉄子がここへ来てから目を輝かせていたのは、やはり公園だった。公園しかなかった。いま探しに行っている父の朗報を待つしかなかった。暗くなってしまった広い公園の中で、見つけることはできるだろうか。不安が時間を止めてしまっていた。時を刻む時計の音は規則正しく響いていたが、数字は一向に変わらなかった。やっと一分、やっと十分。少しずつ数字が増えていく中で、ガチャリと玄関のドアが開く音が聞こえた。絹代は、居間を飛び出して行った美津江を追いかけるように玄関に出た。そこには、直之の姿しか見えなかった。直之は二人の様子を見て、

「帰ってないのか?」と問うと、美津江はこくりと頷いた。絹代は泣きだしたい気持ちを抑えながら、

「あたしも探しに行く」と言った。

「いや、とりあえず、警察だ。警察に捜索願いを出そう」

「そうね、それが先ね」

直之と美津江が居間へ向かおうとした時、電話が鳴った。驚いて三人は居間へ駆け込み、美津江が受話器を取った。

「もしもし?」

そう応える美津江の表情から状況を読み取ろうと、絹代と直之は不安気な美津江の顔を覗き込みながら詰め寄った。

「あ、先生ですか?」

美津江の言葉に絹代と直之は驚きを隠せなかった。

「はい、はい、あぁそうですか。テッちゃんがそちらへ。はい、じゃあすぐに迎えに行きますので。…は?いえ…でも……、はい、はい、…でも、いえ、あ、ちょっと、お待ち下さい、主人が替わると、はい、申し訳ありません」

直之が美津江から受話器を受け取って、話し始めると美津江はそっと絹代に耳打ちした。

「テッちゃん、担任の緑川先生のところにいるんだって」

絹代はそれを聞いてほっとした。

「はい、そうですか。いまからでも、迎えに行きますが。いえ、申し訳ありません。いえ、すぐにでも…、は?…はい、はい、そうですか?じゃあ、申し訳ありませんが、今晩はそちらで…はい、お世話になります」

直之は受話器を置くと、穏やかな顔で二人に向かって告げた。

「テッちゃんは、今晩緑川先生の家に泊まることになったから心配ないって」

「よかったわ、何事もなくて」

「どうして、こんなことになったんだ」

その言葉に絹代は身を竦め、ぼろぼろと涙を流しながら、

「あたしが…悪いの……」

と言った。言葉にならない言葉で説明しながら、時々美津江の補足も入って、ようやく直之は納得した。そして、絹代の頭を撫でながら言った。

「まぁ、絹代が悪いわけじゃないさ。いきなりそんなことされたら、お父さんだって怒鳴ってたかもしれない。まぁ、テッちゃんには、よくわかってもらわないと。もう、少しずつなんて言ってられないな。今度の休みの日でもゆっくり話し合おう。な、それでいいか、絹代?」

 絹代は泣きじゃくりながら頷いた。自分が責められなかったことにホッとしながら、それと、鉄子に何事もなかったことにホッとしながら、泣き続けた。



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