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カントリーロード 13

 朝の教室の中、鉄子の周りに輪ができていた。取り巻く生徒は鉄子の言葉に大きく反応して笑い声を上げていた。

「んだ。分校まで山道で片道一時間かかったから、おら駆けっこはけっこう得意だ」

「一番早いの?」

「んにゃ。啓太が早かった。一年下だども、おら、いっぺんくらいしか勝ったことねえ」

「啓太くんは、片道二時間くらいかかってたんじゃないの?」

朝丘の言葉にどっと笑いが沸いた。

「んにゃ、啓太は家が近いども、寝坊助で毎朝遅刻寸前だったから、全力疾走してただ」

「鉄ちゃんは?」

「おらも寝坊してただ。そんで二山駆けてくこともあったども、おかげで、長距離だったら誰にも負けねえ」

「じゃあ、陸上部に入ったらいいのに」

「んでも、やっぱりスポーツなんてのは性に合わねえ」

「どうして?」

「昨日キヌちゃんにそこの城仙公園を案内してもらっただ。やっぱりおらあんな土のにおいのするとこで遊んでるのがいい」

「何して遊ぶの?」

絹代がまずいと思ったときにはもう鉄子はあっけらかんと答えていた。

「野草やきのこ採ったり、トカゲやヘビ追っ掛けたりするだ」

笑い声と叫び声がどっと沸き起こった。いやだ!、気持ち悪い!、マジ?、という言葉と一緒に、感心の声も混じっていた。

「そんなの取ってどうするの?食べるの?」

「んだ。野草やきのこは、料理するんだ」

「ヘビも?」

「ん…んにゃ、ヘビは追っ掛けて遊ぶだ」

鉄子の目線が一瞬絹代を探した後、そう鉄子は答えた。

「そんなの面白いの?変なのぉ」

朝丘の台詞に同調するように取り巻きの女子も変だ変だと囃し立てたが、鉄子はにこにこと笑っているだけだった。そんな鉄子に男子から、質問が飛び出す、ヘビはどうやって捕まえるんだ、と。鉄子はヘビの種類を挙げながら、それぞれのヘビについて対策と方法を講釈した。真剣なその顔にいつの間にか女子も真剣に聞き入っている。訛りのある説明は、蛇採り名人のような雰囲気を醸し出していた。

 絹代は黙ってじっとその光景を見ていた。賑やかな鉄子の周りの雰囲気から取り残された気分のままじっと見ていた。ブラウン管の中の出来事を見ているかのように。

 予鈴が鳴って、みんなが席に着いた。絹代はほっとして授業の用意をした。そうしながら、今日は朝丘らに取り囲まれることがなかったことに気づいた。安堵の気分と、それとは違う気持ちが絹代の中に沸いてきた。絹代は振り返って鉄子を見た。その時由起子先生が入ってきて、起立の号令が掛かった。絹代は慌てて前に向き直り、いつものように礼をした。


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