表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/474

287話:魔王のドラゴン退治

 僕はワイアームとほぼ体当たりで戦うことになった。

 魔法とか隙を狙う小手先より効くし、足の強さっていう優位が使えるから。


「君、魔王に負けたことあるの?」


 気になって聞いてみたら、牙を剥かれた。

 さすがにそれは危ないからこれは避ける。

 けどドワーフの街を踏まないように方向変えるのって難しいな。


 ワイアームは街なんて気にせず僕に向かって尻尾を振る。

 もちろん一薙ぎで家々は倒壊した。


「酷いことするなぁ。そんなに怒らないでよ」

「我を侮るか!?」

「いや、どうやってこんなに大きな相手を負かしたんだろうってただの興味だよ」

「負かした!? あのような不意打ちで勝利を得たとは片腹痛い!」


 倒されたってさっき自分で言ってたのに、余計に怒ってしまった。


 けど不意打ちでも倒されたと認めるほどの手傷を負わされたんだと思うとやっぱり気になる。


「あのね、流浪の民は魔王石を集めて魔王の復活を狙ってるらしいんだ」

「そんなことできるものか」

「できるかできないかじゃなくて、やろうとしてることが問題でしょ」

「あのような矮小な者どもなんの問題になりはせん」

「流浪の民と組んでるわけじゃないんだね。けど倒されたって言う割に自信過剰なんだから」

「なんだと!?」


 あ、つい本当のこと言って怒らせちゃった。


「我が巣穴に穴を掘って埋まり泥まみれで顎を狙う卑怯者の何を恐れるものか!」

「そうやって倒されたんだ? 本当に顎の下が弱点なんだね」

「ぬ!? 確信を持った途端、顎下を狙うとはいい度胸だな!」


 僕の中で魔王って強大なイメージしかない。

 広い範囲を長く治めたらしいし、森の住人たちもみんな知っている存在で。

 けど案外地道な方法で怪物退治をしてたようだ。


 そしてワイアームの認識としてはどうやら、弱点を突かれて死んで倒されたことは認めている。

 けれど負けたと言うほどの戦闘はしていないので、あまり魔王復活に危機感はないらしい。


「魔王など我の不老の血を受け増長したうつけでしかない!」

「へー、そう言えばクローテリアもそんなこと言ってた」


 血を浴びる不老になれる怪物だと。

 魔王って確か千年も治めたはずだ。

 生まれつき長生きなのかと思っていたけど違うようだ。


 あれ?

 老いないことと死なないことは違うのかな?


「ねぇ、不老って死なないこととどう違うの?」

「そんなこともわからぬか。殺しても死なぬことが不死よ!  不老であっても殺せば死ぬ。故に魔王は殺された」

「へー、つまり長生きなだけってことか。あと、わざと街壊してるのは、ドワーフと本当にただ仲が悪いからなんだね」

「何もわかっておらぬわ! 我が身を素材と称して付け狙うドワーフの強欲さを知らぬのだ! この程度壊したところで奴らの欲はさして削げぬ!」

「クローテリアみたいにドワーフ相手に身の危険感じてるってこと? だったらもうずっと引き篭もっていてよ。そしたら魔王石集めも楽なのに」

「我に指図をするな。だがそなたこそ、そんなもの集めて何をする気だ。欲は深くなさそうだが」


 アルフのこと言うわけにはいかないし、やっぱり説明としては流浪の民のことかな。


「我に嘘偽りが通じると思うな」

「あ、何も言わない内にばれた」


 もしかして元妖精だから心読めるのかな?


「我を面倒臭い相手だと思ったな! いい度胸だ!」

「わー! なんでわかるの!? って、いたたた!? 爪立てないでよ!」


 驚いてる間に取っ組み合いに持っていたかれた。

 爪で抑えつけて噛みにくる。

 鋭い爪も牙もない僕にはできない攻撃だ。

 できないことはしょうがない。だったらできることをするだけだ。


 僕は噛み付いて来ようとするワイアームを止めず、その場で跳び跳ねた。

 重心の低いワイアームは対処できず、僕の動きに振り回されて吹っ飛んだ。


「ち! バタバタと小賢しい」


 羽根を広げて落下を防いだワイアームは、すぐに羽根を畳む。

 元が大きいからドワーフの国でも飛ぶには狭いんだ。


 もしかしてワイアームは人化しかできないのかな?

 大きさも変えられないみたいだし、だから今まで埋められた巣穴から出られなかったんだ。

 案外不器用…………おっと。


「…………あれ? 怒らないの?」

「つまり胸の内で我を侮辱したか。なるほど妖精が好む阿呆さ加減」

「あ、なるほど。触ってないとわからないのか」

「ち、可愛げもなく賢しき子など好まれぬものを」


 舌打ちされたけど、ワイアームを相手にするのがここで良かった。

 ガルーダみたいに野外で襲われていたらもっと大変だっただろう。

 知恵の働く相手だから、きっと巨体を生かす方向で攻めて来ていたはずだ。


「ましてや我を殺す気もない半端な攻撃。それが妖精王との関わりによるのであるなら、今生の妖精王のなんと手ぬるいことか。どうせ人間相手と舐めてかかってそなたを頼らねばならぬ状況に陥ったのだろう。妖精の守護者などと笑わせる」


 元妖精だからか、ずいぶん僕の称号が気になるようだ。

 まぁ、称号貰った後にアルフ困ったことになったから順番は違うけど。


「気を付けるのよ! ドワーフが何か持ってきたのよ!」


 クローテリアが僕に向かって注意を呼びかけた。

 今の僕には元から小さいクローテリアの声は小さすぎるはず。

 だけどはっきりと聞こえた時、何か繋がりを感じた。

 これは、名づけに関係してるのかな?


 そしてワイアームにも聞こえてたみたいで、僕たちは同時に距離を取った。


「わ、何あれ? 砲台型に似てるけど」

「我を倒すなどという愚かな目標を立て、魔王の技術を借りてなお完成せぬ見果てぬ夢であったはずだが」

「つまりあれ、君を倒すための兵器?」

「ふん。たまに生まれる賢者がいなければ技術の継承しかできぬ石頭が作った玩具やもしれんがな」

「うん、まぁ。何を参考にしたかよくわかる形ではあるよね」


 見るからに砲台型を改良した感じだ。

 ただ全体的に頑丈そうで、チェスのルークみたいだった見た目が手足のような太いコードを生やし、ロケットのような物を背負っている。


 うん、ロボット感が出てるよ。

 それを背の低いドワーフたちが移動させてるんだけど、全員兵士みたいで鎧を着てた。

 そのせいで全員丸めだ。


「撃てー!」

「え、嘘!? 僕!?」


 砲台型を据えた途端、ドワーフの指揮官が叫ぶ。

 砲身の先にはワイアームがいるんだけど、さらにその前には僕がいるのに。


 けど気にせず砲撃命令は遂行され、僕のお尻に当たる。

 骨が硬い部分だけど痛い!


「何今の!? 魔王の砲台型より痛い!」


 僕の反応にドワーフが喜び、ワイアームも笑った。


「我が動けぬ間、ドワーフどもも変わらずにいたようだな! 奴らは敵味方の区別のつかぬうつけよ! 他種族と協調のできぬ愚鈍よ!」

「だからって今のは酷すぎるよ。助けたら恩返しって言ってくれるドワーフもいたのに」


 あ、そう言えばローク大丈夫かな?

 魔学生たちも逃げた?


 僕は広い視野で辺り捜す。

 良かったいない…………と思ったら砲台型の近くで魔法の光が見えた。


「フォーに何しやがんだ、この野郎!」

「酷いよ! フォーはみんなを守ろうとしてたのに!」

「あんまりだわ! 信じられない!」

「自分もこれは厳重に抗議させてもらうよ!」


 ちょ、えー!? 魔学生がドワーフの兵に攻撃魔法を放ってる!?

 止めて、誰か!

 近くにいた大人たちはどうしたの!?


「わしが恩を受けた相手だというのに恥をかかせおって!」

「フォーレンさんになんてことするんですか! 見過ごせません!」


 わー!? ロークとユウェルも攻撃仕掛けた!

 エルフ先生は!? 止めてー!


 …………あ、怪我じゃなくて胃の辺り押さえて動けないみたいだ。


「仔馬、さっさと片をつけねば面倒ごとにしかならぬぞ?」

「止めてよグライフ! なんでちょっと面白がってるの!?」


 何も面白くないよ!?

 このままじゃ魔学生も危ないし、エルフ先生放置も可哀想だ。

 さすがに軍相手はユウェルもきついだろうし、ロークに至っては同士討ちになってる。


 そんな時にワイアームが動いた。


「どうやらドワーフどもは模造品が動いて喜んでいるな。的はどちらでもいいらしい」

「嫌な言い方しないでよ。…………って、なんで寄ってくるの?」


 嫌な予感しかしないんだけど?


 ワイアームがドラゴンの顔で意地悪そうに笑う。


「ユニコーン共々我が国を荒らす不届き者を退治せよ!」


 うわー!

 やっぱり僕も的だ!


 もう! そっちがその気なら僕もやるからね!


隔日更新

次回:魔王石兵器

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ