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250話:魔王石探索

 森の中の防御を固める間に冬になった。

 そして僕はアルフを助けるため魔王石探しの旅へと出る。


「僕とクローテリアはジッテルライヒに行く」


 玉座の間でみんな適当に座る中、僕はそう口火を切った。


 結局館を造ったのにこうして床に座ることになるとは思わなかったな。

 アルフがここから動けなくなったから仕方ないんだけど。


「フォーレンもう一人くらい連れて行かないか? ジッテルライヒは魔物を倒そうとするヘイリンペリアムに近いんだぜ?」


 アルフの声は相変わらず木彫りから聞こえてる。

 その後ろにある見上げるほどの鉛色の卵の中にアルフ本人は封じられたままだ。


「少人数で目立たずだよ。それにクローテリアが隠した場所はクローテリアくらいしか入れない狭い場所だって言うじゃないか」


 森の外で自由に動ける上に、小さくなれるのは妖精以外だと僕だけだ。


「妖精王さまがご心配されるなら私たちが同行しますよ」

「そうだね! 僕たちなら小さくならなくても入れるよ!」


 コボルトのガウナとラスバブが申し出てくれるけど、アルフのためにも妖精は森にいてほしい。


「二人には館を守ってほしいな。せっかく造ったんだし。僕より仕掛けに詳しいみたいだからもしまた攻められても何か手を打てるんじゃない?」


 今館はほぼ手付かずのままになっている。

 アルフの状態を考えて城の守りを優先したせいで、修復まで手が回ってない。

 手伝い好きの妖精の二人も、放っておけば荒れるだけの館が気になるようだ。


「あっしはお給金次第でご同行しますよ」

「ウーリ、さすがに空気読んで~」


 猫の妖精ウーリを大きな緑の犬になったモッペルが敷き込む。

 するとメディサが首を傾げた。


「あの、猫の同行は悪い手ではないのではないと思うけど?」

「メディサ、ウーリは猫からの情報を集めて、モッペルは犬から情報を集めてもらうことのなってるでしょう」

「どちらも人間に近い生き物だから魔王石の噂を拾いやすいし、情報の集積はここがいいわ」


 スティナとエウリアに指摘されて、メディサは僕を心配そうに見る。


 ゴーゴン三人は城を守るために森に残る。

 悪魔はともかく物質体には有効な目があるから、防衛には欠かせない。


「アルフ、僕よりあっちの心配したほうがいいと思うよ」

「あー、もうあっちはどうにかなる気がするし。自力で西から渡って来たし」


 僕が指すのはグライフ、そしてその隣のユウェルだ。


「ふん、またエルフの国に行くだけだ。なんの心配があるものか」

「サファイアのことを打診した後は、ドワーフの国へすぐ向かいますから」

「先生、けれどそのグリフォンと一緒に戻る必要はないのでは?」


 心配するブラウウェルはもちろんオイセンへの対応のため森に残り、館の管理をする。


 グライフ相手に不安なのはわかるけど、それってユウェルに一人でエルフの国に帰れって言ってないかな?


「自分がドワーフの国に行ってもいい。そろそろ干し茸が流通を始めるし、魚も脂がのる頃だ」


 結局料理関係にしか興味のないコーニッシュの頭をペオルが掴む。


「お前はケイスマルクだ。冬至の祭りとは言え競い合った末の褒美なら、情報収集は不可欠だからのう」

「ペオルはジェルガエって国に行くんだよね?」


 オパールがそっちにあると言ったのはペオルで、まだあるかを確かめるため一度、アイベルクスという森に侵攻した国を通ってジェルガエに行くそうだ。


「おい、そろそろ水を流すぞ。一度結界を緩めろ、妖精王」

「頑張れば今日一日で溜まるわ! フォーレンは出かける前に見る?」


 やってきたのは人魚のアーディと妖精のロミー。どちらも森からは離れない。

 そしてロミーの手にはノームのアングロスとフリューゲルが持たれていた。


「ふが、やれ、もう少し時間があれば水路を凝れふごふぉご」

「湖から流れ込む水と濠は別にしましたので、水門二つはさすがに時間を取られました」


 結局争いになっていた濠は、湖とは別の水源を使って満たすことになった。

 その上、城の内部に別の水路を作り、そちらには湖の水を入れることで人魚の出入りを容易にする。


「おう、よろしく。そっち本当に大丈夫か、アーディ?」

「ふん、お前が敵を引きつけたお蔭で湖に影響はなかったからな」


 だからアーディはアルフが封印を解除するまでなら手伝う気になったらしい。


「アーディ、外にアシュトルいた? 聞きたいことがあるんだけど」


 アーディが首を横に振ると、ベランダからアシュトルが身を乗り出した。


「はーい、呼んだ? なぁに? フォーレンは私について来てほしいの?」

「確かに悪魔なら姿変えられるし見つからないんだろうけど。アシュトルにはアルフをお願いしたいな」


 改めて言うと、アシュトルはちょっと困った顔をする。

 けれどすぐ満面の笑みを浮かべて、あざとく胸を押し上げるようにしてみせた。


「言われなくても。…………ふふふ、この私が二度もしくじるなど許されぬ」


 瞳孔開いてるよぉ…………。


「えーと、あの悪魔たちは? 使えそう?」


 アシュトルは今度こそ本気で全軍を招集していた。

 将軍やその下の別の悪魔たちも揃って、今やアシュトル個人が動かせる数より軍団は多くなっている。


 それでもライレフに数で負けるので、ちょっと水増し要員をアシュトルに託していた。


「バーバーアスが動物を使って索敵するくらいね。でも、それをするくらいなら妖精王が作った結界内を調べられる魔法のほうが早いし広いわ」


 後ろにバーバーアス控えてるけど?

 居た堪れないみたいで震え始めたけど?


 バーバーアスの軍団を再起不能にしたの僕だしなぁ。

 軍団と呼べる数残ってないし、配下は回復を待つしかないけど、アシュトルに呼ばれたら働かなきゃいけないバーバーアスがちょっと哀れだ。


「それではどうぞわたくしめにご命令を、我が主よ」

「ウェベンは呼んでない」

「あぁ! なんて真っ直ぐなお言葉!」


 燃える羽根を持つ従僕は、押しかけ悪魔のウェベンだ。


「アシュトル、本当にウェベン使うの?」

「あれでも軍団持ちの侯爵なのよ。それに武器を開発する頭もあるの。使えるかどうかで言うならバーバーアスよりましよ」


 ただウェベンはその軍団を使わず身一つで主人を探して勝手に奉公する。

 そして奉公された人間は靴下さえ自分で履けない自堕落になって、ウェベンが他の主人を見つけた途端破滅するそうだ。


 僕はアシュトルの手ほどきでそんなウェベンに命令をした。

 僕がいいと言うまで仕えるという契約によって、城を守らせることになったんだ。


「あ、そう言えば壁の様子どうだよ?」


 アルフが聞くのは作ってなかった城の防壁。

 本当は城の石壁の上に建物を造ってしまってから建造予定だった。


「窓から見えるくらい高い壁ができてるよ、アルフ。上を歩ける廊下もできてる。けど、あれで本当に悪魔防げるの?」


 僕なら飛び越えられると思うと、いまいち不安だ。


「人間が作った壁と違ってこの城の結界と連動してるからな。妖精でも入り口以外からじゃ入れなくなってる」

「「「「「「「ふべーん」」」」」」」


 この場にいる妖精たちからブーイングが上がった。

 どうやら本当に入れないらしい。


 精神体は許されなければ入れないという性質があり、さらに明確な線引きでより強い許可制にしたとかなんとか。

 ここへ来れる者は今のところアルフの生存発覚時に城か館にいた者だけに限定されている。


「緊急時には味方を引き入れるにしても、窓からも入れないようにすべきだな」


 アーディの一言には、羽根を持つ者や受肉してる悪魔たちからブーイングが上がった。


「俺から一番遠い窓一つだけは開けとくから騒ぐなって」


 アルフもさすがに妖精王として集まった者たちを抑える。


「アルフ、僕たちがいない間、魔女と獣人は守り固めるよう言っておいて」

「フォーレン、もう行くのか? それくらい伝える時間あるだろ」

「冬の備えに忙しいらしいし。僕も長くここを離れてる気はないから」


 僕は魔王石のカーネリアン回収のためジッテルライヒへ向かう。

 その後はドワーフの国で、グライフとユウェルと合流し、そこでルビーについて交渉する予定だ。


 ドワーフの国での成否に関わらず、冬の内に森へカーネリアンを持ち帰る。

 わざわざ作業の邪魔をしてまで挨拶に行くより、上手く行ったと報告に行ったほうがいいんじゃないかな?


「オブシディアンをできればグライフに持ってきてほしいけど」

「ふん 望むならば自らの手で得よ!」


 ここは協力してくれないんだね、グライフ。

 グライフのお父さんが持ってるはずなのに。

 単に大グリフォンの後継者とか勝手に言われてるから、帰るのが嫌なのかもしれない。


「いいよ。今は確実に行こう」


 今は一番最近所在が確認されてるカーネリアンだ。


「アルフ、行ってくるね」

「おう、頼んだ!」


 相変わらず軽いアルフの声に見送られて、僕はまた森を旅立つことになった。


隔日更新

次回:ガルーダ遭遇

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