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150話:妖精の守護者

 折角だからプール湯に入ることになった。

 今回は男だけでお風呂を使わせてもらう。

 と言ってもスヴァルトは化粧の関係で入らず、一緒に入ろうとしたロミーはティーナが止めた。

 クローテリアは何故かドラゴン姿のままなら許されて入ってる。


「わざわざ湯にするなど気が知れん」


 やって来たアーディもお湯に入ったけど、すぐ茹だって今は石の上で文句を言ってる。


「メディサたちはこっちに住まないの?」

「向こうのが愛着あるんだろ。今までどおり住処の二階がいいってさ」

「はいはーい! 湖と繋げてくれたら私もこっちに住むよ?」

「地下は火の精が住むんだから水の精は来ないでくれよ、ロミー」


 ボリスが湯気の中を飛びながら腕で大きなばつを作る。


「それではお手伝いしますので、僕たちは住んでいいでしょうか?」

「腰を据えたい職人いないから、数こなすための拠点が欲しいな」


 いつの間にかいたガウナとラスバブは、アーディにタオルと水を渡しながら聞いて来た。


「いいと思うよ。部屋は余ってるんだし。空いてる部屋使っていいよね?」


 アルフが頷くとコボルトは歓喜して飛び跳ねる。


「わーい! 僕この館の隠し階段の下で寝る!」


 …………隠し階段?


「ラスバブ、上りですか、下りですか?」

「上り!」


 …………しかも複数あるの?


「では私は隠し扉の梁の上で寝ます」

「ガウナは床の、壁の?」

「壁のほうで」


 …………隠し扉まで?


 設計者のルイユを見ると、素知らぬ顔で眼鏡を拭いている。


「あ、迷惑な人狼ここに住まわせて迷惑かけないようにしたほうがいい?」

「やめておけ。あれは獣人の町での暮らしにさえ耐えられなかったのだ」


 水を飲んで一息ついたアーディの忠告に、ルイユが頷いた。


「他の族の決まりがある中で暮らすのには向きません」

「そうなんだ。でもそうなると部屋がだいぶ余るね」


 二つ作るにしてもなんでこんなに大きくしたんだろう?


「自分はもちろん住む。我が友よ」

「あ、うん。それはいいけど他の人のことも考えて暮らしてね、コーニッシュ」

「小麦粉もよう入らん森で四転がり四分なんて大きなパン釜なんぞ欲しがる気が知れ…………ふがふが」


 浮いてるアングロスが文句を言うと、フレーゲルが水面を押して移動させる。

 けれどコーニッシュは腰に手を当てると立ち上がった。

 うん、ここ水深あって良かった。見えてない。


「パン釜でパンだけを焼くと思うな!」

「この悪魔は対話ができぬな。仔馬、黙らせろ」


 ゆっくり入っていたグライフが僕に対応を投げる。

 そんな騒がしいお風呂の途中、帰還を聞いてやってきたマーリエが裸の僕たちに驚いて箒からお湯に落ちるハプニングがあったくらいでゆったりできた。


 そして話をするために僕たちは仔馬の館に移動する。

 箱は作ったけど家具がまだないからだ。

 仔馬の館には半円形に石の階段が並ぶ談話室があるから、そこで話をすることになった。


「…………以上エルフ王の呼び出しに応じた報告になります」

「うん、普段どれだけスヴァルトが簡潔にまとめて報告してるかが良くわかった」


 スヴァルトの報告を聞いたアルフの第一声はそんなものだった。

 スヴァルトは無駄だと判断して、面倒なやり取りやダークエルフとして見張りがついてることは言ってないけど、今回アルフは僕を通して全部知ってる。


「で、お前は何か言うことないのかよ?」


 アルフはガウナとラスバブに羽根を拭かせているグライフを睨んだ。


「ふん、俺は貴様の意思に沿って向かったわけではないからな」

「エルフの所のグリフォン襲って騒ぎ起こしておいて、少しは悪いとは思わねぇのかよ」

「すでに敵が入り込んでいる可能性が高いというのに温い反応だったからな。注意喚起してやったのだ」


 有難迷惑なことをグライフは偉そうに言う。


「こいつ俺よりたち悪いって。…………で、お前らは流浪の民の使った術に心当たりないか?」


 アルフは次に、いつの間にか現れたアシュトルとペオルに振った。


「魂を操る術なら幾つかわかるけれどねぇ」

「ただ他種族間となると実行したことがないな」


 コーニッシュがエルフの国で教えた以上の知識ないようだ。


「流浪の民が独自に編み出した術ってことか」

「ブラオンがダイヤで魔王復活させようとしたのと同じだね」

「無駄が多すぎるせいでいっそ難解なんだよな。その上作用に確証がないから危なくて俺は使えない」


 アルフ的に、流浪の民の術は理解できないそうだ。

 十という数字を出すためにアルフなら五という数字一つで済むのに、流浪の民は一から九まで全てを使うみたいな感じだ。

 これが全部一を足すだけならまだわかりやすいんだろうな。


「あの、それでエルフの魔王石はもう狙われないんでしょうか?」


 メディサの着替えを借りたマーリエが控えめに片手を上げて質問を投げる。


「狙うだろうが、優先順位は下がると俺は思う。準備してたのをひっくり返されたから次の手はもっと慎重にやるだろうさ」

「ふん、問題はあ奴らが諦めぬことであろう?」


 流浪の民と対峙したことのあるアルフとグライフは面倒そうに笑う。


「それはここも同じことではないのか、妖精王?」


 アーディはアルフの王冠を見据えていた。


「だから上をこんなに無防備にするのは…………」

「この開放感と採光の必要が…………」

「二人ともいい大人なら場を考えろ」


 言い合いを始めるルイユとティーナをスヴァルトが止める。


「でも確かに心配だね。上からの侵入って止める方法あるの?」


 グライフを見て疑問に思ったことを聞くと、ルイユは眼鏡をくいっと上げる。


「高さを作ることです。遮蔽物のない中で飛べば目立ちます。そして塔です。翼のない者でも迎撃が可能になります」

「つまり山城を作れってこと?」


 僕の答えにルイユの目が光るけど、押しのけるようにしてティーナが前に出る。


「そんな消極的な姿勢より、迅速に打って出ることを考慮した整然と並ぶ広い道の整備を」

「自分から怪我をするようなことはせずに、妖精王さまもいらっしゃるんですから魔法でここを全て覆ってしまうのはどうでしょう? 里の霧のように」


 マーリエが提案をすると、アーディも案を出してくれる。


「己の領分に引き込み殲滅する手もある」

「それでは引き込めぬ場合は待ちぼうけになるではないか」


 なんかやいやい言い合うことになってしまった。


「館作るのもこんな感じでさ。フォーレン何か指針あるか?」

「そこ丸投げなの? だったら時間区切って自分の意見を主張する会議すればいいでしょ。他の人を説得するんだよ。質問時間も作って反対意見にもちゃんと対応できるかを見る」


 って言ったら採用されて、お城づくりのプレゼン決定しちゃった。

 …………僕前世でプレゼンとかしたことあったのかな?

 それよりもこんな簡単に雑談の延長でお城づくりって決定するものなの?


「やっぱりフォーレンいるといいな」

「仔馬よ、ここに安住してはこの羽虫に顎で使われるぞ」

「え、うーん、それはちょっと…………」


 僕の消極的な返答に、アルフは慌てた様子で声を上げた。


「あ、よし! だったらフォーレンの貢献に敬意を表して称号をやる!」

「称号って? 何くれるの?」

「安請け合いをするな仔馬!」


 なんかグライフに怒られたけど、アルフはにやりと笑って僕を指差した。


「フォーレンには『妖精の守護者』の称号を与える!」


 名前をつけられた時のような納得感が胸に落ちる。

 これってもしかして…………?


「名づけみたいなもの?」

「そう。本来俺はこうやって方向性を決定づけることをやるんだ。フォーレンがシュティフィーたちにやったのはこれの真似じゃないか?」

「へー」

「へーじゃない! 危機感を持てと言っただろう!」


 今度はアーディに怒られた。


「妖精のと限定する辺り牽制がすごいわぁ」

「狭量と言わざるを得ぬが、加護の見返りとしては妥当か」


 悪魔たちはなんでか楽しげだ。これはまずい感じなのかな?

 するとマーリエが僕の側に寄って来た。


「あ、あの、妖精ではないですけど、私たち魔女も助けてくれますか?」

「うん、いいよ」

「そこら辺はフォーレンの意思だ。これからもよろしくな」

「うん、うーん…………? 結局どういうこと?」

「こいつわかっておらんぞ。羽虫、貴様これでもまだ騙し討ちではないと言うのか?」

「嫌な言い方するなよ。今までとあんまり変わらないって」

「…………仔馬、貴様自ら面倒ごとを引き受けたことだけは教えておいてやろう」


 グライフに呆れられながら、どうやら僕は『妖精の守護者』になったようだった。



毎日更新

次回:守護者の日々

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