85話 石井舞の答え
「まずはそうだな石井さんがどうしたいかですね。」
「どうしたいか?」
「えぇ、聖国から逃げて王国に戻るのか、それとも身を隠して何にも縛られずに生きるかとか、まぁそんなとこですかね。」
「私は……」
石井さんはそう言ってから俯いて固まってしまった。
んーちょっと急かしすぎたかな。
「まぁ今答えなくてもいいですよ。ゆっくり考えて自分の意志で決めてください。俺は石井さんの答えを尊重しますから」
「わ、わかりました」
取り敢えずここから出るか…
「取り敢えずここから出てから決めましょうか。答えが出るまで俺が一緒にいますから」
そう言って俺は石井さんの手を引いて階段を上がる。
「ミツキくんはなんで私を助けに来てくれたの?」
階段を登りながら石井さんがそう言ってくる。
「同郷の人が殺されるのは嫌だったからですかね」
「殺される?」
石井さんは足を止めそう聞き返してくる。
あ、しまったこの話はしないほうがよかったか。
言ってしまった以上仕方ないけど出てからの方がいいな。
「……この話はここを出てからしませんか?」
「そう、だね」
それから二人で階段を歩き扉を出る。
「あなたは逸脱者の方で間違いありませんね?」
扉を出た先には一人の鎧を纏った男が立っていた。
「あぁ、そうだが」
やっぱり罠だったか…結構めんどくさいことになりそうだな…
「それでは死んでもらいましょうか。聖女と一緒に!」
鎧の男はそう言って俺に斬りかかってくる。
「石井さんちょっと離れててください。すぐ終わらせますので。」
「う、うん」
そう言って石井さんは数歩さがる。
俺は斬りかかって来た鎧の男の剣を片手で掴む。
てか、剣速遅すぎだろこの人。どうなってるんだ?完全に騎士団の下っ端みたいな弱さだぞ。何故そんな奴を送り込んで来たんだ?
俺は俺の手から必死に剣を動かそうとしている鎧の男の(下っ端)に声をかける。
「おい、下っ端、なんで俺がここにいるとわかった?」
鎧の男(下っ端)は剣を動かそうとするのをやめこちらを睨んでくる。
「誰が下っ端だと!?私はこの国の副騎士団長だぞ!!お前は絶対に殺してやる!」
「おいおい、嘘は良くないだろ。出世したいのか知らんがそんな肩書きを勝手に使ったら上司に怒られるんじゃないのか?」
流石にこんな奴が副団長とかありえない。こんな奴が副団長だったらこの国はとっくに戦争で滅んでるぞ。
いや、もしかしたら実力はないけど頭が良くて副団長に…いやそれもなさそうだな…
「嘘ではない!私は立派な副団長だ!!私を愚弄して…貴様だけは絶対に許さんぞ!」
「あーはいはい」
俺はそう返し剣を離す。
俺が急に剣を離したことで自称副団長は尻餅をついた。
マジでこんな奴を送り込んで来たんだのは謎だな。もしかしてこいつが戦っているうちに奇襲してくる作戦か?一応〈心眼〉で辺りを調べてみるか…
そう思い〈心眼〉を発動させる。
………ちょっとこれはめんどくさいな
王城の中はそんなに人はいないが外にはすごい人が王城を取り囲んでいるのがわかる。
人数は大体4000人
さてこれからどうしようか、取り敢えず外に出るか。
「石井さん、これから外に出るのでついて来てください」
「はい」
俺は石井さんと一緒に下っ端の横を通り過ぎる。
「待て!!貴様ぁぁぁ!!!」
下っ端はそう言って俺の方へ走りながら斬りかかってくる。
俺は斬りかかって来た下っ端の剣をかわし、下っ端の腹を軽く蹴る。
「グハッ!」
下っ端はすごい勢いで飛んでいき壁にめり込んだ。
「なんか騒がしい奴だったな…」
「そ、そうだね…」
俺と石井さんはそんなことを言いながら出口を目指し歩いて行く。
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