162話 縦ロールの無詠唱
「では次は私が質問してもよろしいですか?」
「えぇ大丈夫ですよ」
俺はそう返事をしてブラックバスさんが話し出すのを待つ。
「ミツキ様は何故…」
「ちょっと待ってくださいまし」
ブラックバスさんが話を始め出した瞬間、いきなり縦ロールが出てきて待ったをかけた。
(おい、いきなりだな、というかどっから出てきたんだ?)
「お嬢様、寝ないとお肌に悪いですよ」
「まだそんな遅い時間じゃないですわ、少しお話しに混ぜてくださいまし!」
「……わかりました。ミツキ様、お嬢様も一緒によろしいですか?」
「別にいいですよ、それで縦ロールはなんか話したいことがあるのか?」
「えぇ!今日のお昼のこと少しお話がありますわ!」
あぁ、そう言えば説明してなかったな。
「それで何が聞きたいんだ?」
1から全て説明するのはめんどくさいので縦ロールが聞きたいことだけを答える事にした。
「全部ですわ、私はあの時のこと全て忘れていて思い出そうとしても思い出せないんですの、だから教えてくださいまし」
なるほど、結局1から説明しないといけないみたいだ…
それから俺はあの時のことを話した。
「思い出しましたわ!確かにそんな感じでしたわね」
「でどうだった?参考になったか?」
「あんなの参考もクソもありませんわ!デタラメすぎて意味がわからなかったですわ!」
「はぁ、まぁ格闘戦の方はともかく魔法の方はあれぐらいできるようになれ、強くなりたいんだろ?」
「そうですわね、でも無詠唱で魔法をあんなに連発できる気がしないですわ」
まぁこの世界の人間には難しいだろうな、魔法は詠唱して発動するってイメージがついてるし、それに同時に魔法を発動する文化はほとんどないしな。
「そうだな…一つ言わせてもらうと人間に限界はないぞ。あと無詠唱に関しては完成した魔法のイメージをしっかり持て、それだけで出来るようになる」
まぁ、時間は掛かるとは思うけど…
「なるほど…イメージですわね…」
縦ロールはそう言って目を瞑った。
「【ウォーターボール】」
縦ロールは目を見開きそう唱えると縦ロールの手の上で魔法陣が形成され、ウォーターボールを形作ろうとするが途中で歪み出した。
(ダメっぽいな、【超結界】)
俺はそう思いウォーターボールを囲むように超結界を発動した。
パァァァァン!!
ウォーターボールは超結界の中で破裂し水だけとなった。
「ありがとうですわ…それにしても難しいですわね」
「最初はそんなもんだ。そうだな…もう一つアドバイスをしてあげよう」
俺はそう言って右手の人差し指を立て、【ウォーターボール】を発動させる。
「ちょっと近くに来て見てくれ」
俺は左手でジェスチャーをし、縦ロールにそう言った。そして右手のウォーターボールを左手で指をさし
「このウォーターボールを近くで見て何か気づかないか?」
そう言った。
「うーんそうですわね、中の水の回転が同じ方向ですですの?」
「そうだ」
縦ロールが言った通りウォーターボールの中の水は左回転をしている。
「実はもう一つあるんだ、ウォーターボールの周りの水に注目してくれ」
「周りの水は逆回転していますわね」
「そうだ」
周りの水は中の水とは逆に右回転をしている。
「水の回転は内側と外側で違うんだ、それに加えて周りの水と中の水の性質は少し違う」
「どういう事ですの?」
「実は周りの水は中の水を外に出さないために多く魔力が含まれているんだ」
「なるほどですわ」
「今説明した4つは具体的なイメージとなる。無詠唱を成功させるには具体的なイメージが必要不可欠だからな、それを組み込んで練習してみろ」
「はいですわ」
それから1時間縦ロールは必死にウォーターボールの無詠唱を練習した。
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