143話 本当の姿
「それじゃあ行くか」
「うん」
それから俺たちは街の外へと出て、少し歩き、茂みに入った。
「それじゃあニーナ手を」
俺はそういってニーナに手を差し出す。
「うん」
そう返事をしてニーナは俺の手を取る。
「【絶対障壁】発動」
俺はニーナの手を握り、【絶対障壁】を発動させる。
透明な結界が俺とニーナの周りに展開される。
「"飛行"」
その後で"飛行"を発動させ、俺とニーナは空中に浮く。
そのまま上空1000mまで上がる。
「それじゃあ最初は慣れるためにちょっとゆっくり行こうか」
「うん、お願い」
そうして俺とニーナは帝都を目指して進み出した。
「そういえばニーナ、前言ってた大事な話って結局なんなんだ?」
飛んでから約1時間、俺はずっと気になっていることを聞いた。
「そうだね、今ちゃんと話すよ」
俺はニーナがそういったので一旦止まり、結界魔法で足場を作る。
俺とニーナは足場の上に降り立ち、対面する形で話を進める。
「どこから話そう…まず、逸脱者とエルフの関係性について話すね」
「エルフ?」
なぜエルフの話になるのか疑問に思ったので聞いてみた。
「取り敢えず聞いてくれる?」
「わかった」
「色々省くけど、今から1000年前、ちょうど異能者狩りが始まった頃だね。異能者は逃げに逃げ、ついたのは中央大陸の一番東の領土、つまり今の森人族が住んでるところだね。エルフはそこに逃げてきた異能者達を匿ったらしい。そこで異能者の事情を聞いて異能者に協力することにしたらしいんだ。」
「なるほど…」
「でね、エルフの石碑にはこう書かれているんだ。『異能者を天界に返し、そして神を倒す為、我々森人族は異能者を永遠の仲間とし、協力することを誓う』まぁ言い伝えみたいなものだね」
「でもなんでニーナが…」
俺がそこまで言うとニーナが口を挟んだ。
「私がなんでエルフの石碑を知ってるかでしょ」
そう、俺が言いたかったのはそれだ。
「答えは簡単、私がエルフの王女だからだよ」
今、なんていったんだ?ニーナがエルフの王女?
「ふふっ、ちょっとは驚いてくれた?」
「あぁ、そりゃもちろん。でもエルフって確か耳が…」
エルフの特徴として耳が長いというのがあったはずだ。だがニーナは耳が長くない。
「あぁ、そういえばそうだったね、長い間変装してたから忘れてたよ」
「変装?」
「そう、理由は後で説明するけど、この姿は変装した仮の姿なんだ」
「そうだったのか」
「それで大事な話っていうのは私がエルフで、ミツキに本当の姿を知ってもらいたかったって事なんだ。だから私の本当の姿見てもらえる?」
「もちろん」
俺はそう言って了承するとニーナはふぅ〜と深呼吸をしてから魔法を使った。
「【変装解除】」
ニーナがそう唱えると、ニーナの体全体が光りだす。
光り出してから数秒後、赤い髪が金色に変わっていき、それと同時にエルフの特徴ともいえる耳がぴょこっと生える。
光りが収まりニーナは眼を開け、俺の方を見る。
その瞳は金色に輝いていてとても美しかった。
「ど、どうかな?///」
「可愛い」
俺はニーナを見ながらそう言った。
可愛すぎてニーナを凝視していた為、その一言しか出なかった。赤い髪のニーナも良かったが、こっちの金髪ニーナも凄くいい。
「ありがとう///でもミツキ、そんなに見つめられると恥ずかしい///」
「ご、ごめん、つい可愛すぎて」
「///」
ニーナは恥ずかしさからか耳を真っ赤にしながら、左手の人差し指と右手の人差し指をチョンチョン合わせていた。
(やばい、可愛すぎる)
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