139話 魔力水晶
「ミツキさんっていつ出るんですか?」
夕食を食べながら雑談をしていた時、フィーナちゃんが俺にそう聞いて来た。
「明日の朝には出るよ」
「え…」
俺がそう言うとフィーナちゃんは固まって、右手に掴んでいたフォークを皿の上に落とした。
「ニーナさんも?」
「う、うん」
ニーナもそう答えるとフィーナちゃんは俯いてしまった。
「フィーナちゃん、またすぐ会いに来るから、ね?」
「…わ、わかりました…」
フィーナちゃんはそう言ったものの気分は凹んでいるようで俯いたままだ。
(どうしようか…)
「フィーナ、無属性魔法は使える?」
俺がどうしようか悩んでいるとニーナがフィーナちゃんにそう聞いた。
「ううん、魔法は…使えない…」
「じゃあ通信魔法は知ってる?」
「うん、一応…」
「そうかそれじゃあ話は早い、フィーナ通信魔法を覚えれば、ミツキといつでも会話できるぞ」
「そうだな、フィーナちゃんが通信魔法を覚えれば遠くにいても会話できるよ」
「ミツキさんしてくれるの?」
「もちろん」
「わかった…頑張って覚える」
もう落ち込んではいないみたいだな、良かった。
でも魔力の登録はどうするんだ?聞いてみるか。
「ニーナ、魔力の登録はどうするんだ?」
「あぁ、それなら簡単だよ」
そう言ってニーナは魔法を発動させた。
「【スペース】」
ニーナがそう言うとニーナの左側に歪んだ空間が出現する。
空間魔法か?ニーナ使えたんだな…
「これを使うんだ」
ニーナは歪んだ空間の中に手を入れ、一つの結晶体を取り出した。
「それは?」
色は透明で、形は六角柱の単結晶が3本集合してクラスター水晶になっている。左右に分かれている単結晶がの長さは大体20cm、真ん中の単結晶は大体30cmでよくある水晶体の形をしている。
俺はその水晶体がなんなのかわからないので聞いてみた。
「これは魔力水晶と言って魔力を吸収して溜める性質があるんだよ」
「それをどうするんですか?」
「通信魔法は最初にお互いの魔力を登録しないと使えないからここにミツキの魔力を溜めて、フィーナが通信魔法を使えるようになったら、溜めた魔力から登録すればいいよ」
「溜めた魔力からでも登録できるのか」
「まぁ了承した相手しか登録できないから安心だよ」
なるほど、通信魔法はそんな細かいところまでしっかりしてるのか。なんか魔法を感覚で使ってるからそういう細かいことはわからないな。ちゃんと覚えないと…
「それじゃあご飯を食べたらやろうか」
「そうだね」
「はい!」
そうして俺たちは夕食を再開した。
「ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでした」」
俺たちは夕食を食べ終わり挨拶をする。
「ミツキさん!早くやりましょ!」
ごちそうさまをした後、フィーナちゃんはすぐさま立ち上がり俺にそう言って来る。
「そうだね、やろうか。ニーナどうすればいい?」
俺も立ち上がりそう言う。
「これに、魔力を込めるだけでいいよ」
ニーナも立ち上がり、俺の隣に来て水晶を出しそう言った。
「簡単だな」
「あ、でもちょっとでいいからね、ほんのちょっとで」
「わかってるよ」
基本的にこういう魔力を使う物は魔力を込めすぎると割れるからな。
「じゃあやっていいよ」
ニーナは魔力水晶をテーブルの上に置きそう言った。
「それじゃあ行くよ」
俺はテーブルの上にある魔力水晶に右手をかざし、魔力を出す。
魔力水晶は俺の魔力を吸収した瞬間光り出した。
「「ッ!?」」
まぶしっ!
二人とも反射的に目を瞑ってしまっている。
まぁ、この光じゃ仕方ないよな、直で太陽見てるより眩しいからな。
光り出してから10秒ぐらい経ち、その光は眩しさが半減して、その代わり光に色が帯びていく。
「綺麗だな…」
光は虹色に変色し、部屋の包み込むように光っている。なんていうんだろう、すごい幻想的だ…
「「綺麗…」」
二人とも光が弱まったのがわかったのか目を開けてこの光景を見ていた。
しばらくして虹色の光が魔力水晶に吸収されていく。
「こっちもすごい綺麗ですね!」
俺の魔力を吸収し終わった魔力水晶をフィーナちゃんが見ながらそう言う。
(確かに綺麗だな)
虹色が水晶に閉じ込められていて、虹色が海の波のようにゆったりと円を描くように単結晶から単結晶へ揺れながら移動している。
ふと、二人の方を見ると、二人はまだ水晶をまだ眺めていた。俺は魔力水晶を見ている二人を見ながらベッドに座った。
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