110話 お祭り
「一旦休憩しようか」
競争から約三時間、話したり景色を見たりしながら飛び続け今は街の上空で止まっている。
「はい!」
「わかりました」
「わかった」
「うん!」
四人がそれぞれ返事をし、街の外の街道の側に飛行スキル解除しながら降りる。
皆んなが地面に降りてから歩き出し、街の中へ入る。
「ここは活気があるな」
街の中を見回すと祭りみたいに屋台が並んでおり、何処の通路も人々で溢れかえっている。
「そうですね」
「ここら辺の街は帝都から遠く、砦の街と帝都に挟まれているからどうしても内戦に関係ない人達が集まってくるんだろう」
なるほどな、つまり砦の街は、王国が隣にあるからギスギスしていて人がいなく、帝都側は内戦が続いていると思われているから活気があまりない。そこで人が集まるのがここら辺の街というわけだな。
「ここからの街はまだ人が多そうですね」
「そうだな」
まぁ他の街は寄るかわからないけど、その前にこの街は楽しみたい。
「せっかく屋台が多いし、食べ歩きしようか」
「お祭りみたいで楽しそうだね!」
舞も俺と同じことを思ったらしく、そう口にしていた。
「お祭りですか?」
そういえば皆んなには祭りのことを話してなかったっけ。
「お祭りっていうのは元の世界の文化の一つで、こうやって屋台を出してワイワイする感じのイベントなんだよ」
自分で言ってて説明が適当すぎるなって思った。
祭りってなに?具体的に説明しろと言われるとわからないな。
「ミツキくん…適当すぎない?」
「大丈夫…自分でも思ってたから…」
なんか本当の意味合いを出しても訳がわからないと思うし、まだこれで良かったと思う。
「なるほど!それは楽しそうですね!」
「異世界のお祭り!!行ってみたいです!!ミツキ!!異世界のお祭り連れて行ってください!!!」
「サーシャは一旦落ち着け」
ミーナちゃんは本当に楽しそうに言い、サーシャは異世界に行きたすぎてはしゃいでいて、それをローザが咎めている。
良かったミーナちゃんはわかってくれたか…
それにしてもサーシャは異世界行きたすぎだろ!キャラ、ブレまくってるぞ!隣で舞が唖然としてるぞ!
「ミツキくん、サーシャさんあんなキャラだった?」
ほらやっぱり聞かれたよ。
「いや、こっちの世界の事となるとああなってしまうらしい…」
「そ、そうなんだ…」
若干引き気味なのは気のせいか?まぁギャップは凄いが…
「し、失礼しました…」
「別に大丈夫だよ。それより元の世界に行った時、祭りに連れて行ってやるからな」
「本当ですか!?是非!お願いします!」
「それじゃあ屋台見て回ろうか」
「そうですね」
こうして俺たちの屋台巡りがスタートした。
「あのお肉食べてみたいです!」
ミーナちゃんはそう言って、お店を指差した。
「ヨラバードの串焼き?」
舞がそう言って首を傾げている。
まぁバードってついているから鳥だろうな。
「ヨラバードって確かBランクの魔物で、焼いて食べるとすごく美味しいらしいですよ」
「へぇーそうなんだ。取り敢えず買ってみるか」
俺はそう言いながら屋台に向かう。
「おっちゃん、串焼き10本くれ」
「あいよ!ちょっと待ってな!」
おっちゃんはそう言って串に刺さっている焼き鳥をタレにつけ紙袋に入れる。
うん、見事な手捌きだ。
「へい!お待ち!」
そう言って5本ずつ入った袋を2つ、俺の目の前に出してくる。
俺はそれを受け取りお金を払う。
「1000リアちょうど!毎度あり!」
「ありがとなおっちゃん」
俺はそう言ってその場を後にした。
「買ってきたよ」
俺はそう言って皆んなに2本ずつ渡す。
「いただきます!」
ミーナちゃんはそう言いながら串焼きを食べ始めた。
「ん〜美味しいです!」
「そういえばミーナちゃんは食べた事ないのか?」
「はい!初めて食べました!」
そう言いながら食べるミーナちゃんの表情はすごく笑顔で本当に嬉しいそうなのが伝わってくる。
「これは美味しいですね…」
「ほんとだ、美味しいな」
サーシャとローザも串焼きを食べ、感想を言っている。
俺と舞は目を合わせ二人同時に食べる。
「美味しいな…」
「そうだね」
味は焼き鳥だが、鳥にはない食感だ。
「この食感、餅みたいだな」
「すごいもちもちしてて、お肉を食べてる感じじゃないのに味はちゃんと鶏肉で…なんか新感覚!」
お肉の仕上がりはふわっとしつつ肉厚がすごい。
噛めば噛むほどお肉の味が下に伝わってくる。
これは普通に美味しい。
「それじゃあ、食べながら次のお店行ってみようか」
俺がそう言い、皆んなで串焼きを食べながら歩き出す。
読んでいただきありがとうございます。