109話 競争2
進んでから20秒やっとみんなの後ろ姿が見えてきた。
「やっと追いついたぞ」
「ミツキ様!?」
「!?」
「!?」
ミーナちゃんが驚くとそれが聞こえたのかサーシャとローザも驚く。
「ちょっと速すぎませんか!?」
「だって待ってくれなかったじゃん。ハンデは続行するけど本気で行くよ」
俺はそう言って三人の横を最速で通る。
風が吹き三人がよろめくなか俺と舞はどんどん加速して行く。
「ま、待ってください〜!」
「お主!手加減をしろ!」
「ミツキ、速すぎます!」
そんな声が後ろから聞こえるが何も言わずに突き進む。
「ちょっと手加減してあげたら?」
「俺は勝負事では手加減はしないんだ」
「ハンデはついてるけどね」
「…ハンデの中で手加減はしないと言う意味だ」
「絶対今考えたでしょ」
「いや、全然?」
戦ってる時も手加減をしているがあれはしょうがない、本気出したら世界が壊れそうだし。仕方ない処置だ。
「はぁ〜まぁいいけどね。本当はゆっくり行きたいけど…(小声)」
「何か言った?」
「ううん、何も」
「そうか、それじゃあもうちょっと飛ばすよ」
「え?これ以上、上がるの!?」
それから5分ぐらいしてやっと街が見えてきた。
「そろそろだな」
「速すぎるよ!まだ10分も経ってないのに隣街に着くっておかしいよ!?」
「今更だ」
「はぁ〜」
「ゴール」
「ゴ、ゴール」
街の上空に着き、結界魔法を解除して、飛行スキルで浮かぶ。
「それじゃあ降ろすよ」
「う、うん」
俺は舞の手を繋ぎながらお姫様抱っこから降ろし空中に浮かばせる。
「ちょっと早く来すぎたか?」
3分ぐらい待ってみたが一向にみんなの姿が見えないのでそう呟く。
「だから言ったのに…」
舞はそう言いながら右手をおでこに当てている。
「取り敢えず気長に待つか」
「そうだね」
それからしばらくしてみんなの姿が見えてくる。
大体状況は拮抗していて誰が先にゴールしてもおかしくない。
俺はここまでと手を振り目印を送る。
「ゴール!」
僅差でミーナちゃんが一番最初にゴールし
「ゴールだ」
「ゴールです」
二番目にローザ、三番目にサーシャがゴールした。
「皆んなお疲れ様」
「ミツキ様速すぎますよ!」
「はぁはぁお主、手加減をしてくれ」
「先にスタートしたのが悪い」
「はぁ、確かにそうですけど、はぁ、あのスピードは反則ですよ」
「うん、自分でもあのスピードは良くないと思ったけど…ね?」
「ね?ってなんですか、ね?って」
「いや、つい楽しくなっちゃって」
「子供か!」
「まぁ次やるときはもうちょっとハンデをつけるよ」
「これ、次があるんですか…」
「次やるときは舞さんも一緒にね!」
急に話を振られた舞は困惑しながら答える。
「わ、私はいいかな?」
「えーなんでですか!?楽しいですよ!」
「私は魔法苦手だし、それにミツキくんに抱っこされるの凄くいいし…(小声)このポジションは譲れない…(小声)」
なんて言ったんだ?
「はは〜んなるほど〜そう言うことですか〜」
ミーナちゃんは聞こえていたのかそう言いながら笑っている。
「ミ、ミーナちゃん聞こえてたの!?」
「それはもうバッチリ!」
「ぅう」
舞はそう言って俯いた。
「私も飛行魔法覚えなければよかったかもしれません…(小声)」
「なるほど…その手があったのか…(小声)」
サーシャとローザも何か言っているが聞き取れない。
「サーシャさんとローザさんまで!?」
舞は顔を上げ二人の方を見ながら驚いている。
皆んななんの会話をしているのかわからないので俺は話を最初に戻す。
「舞、飛行魔法ならすぐ教えられるから教えようか?」
「「「「………」」」」
「え?なんで黙ってるの?それになんで皆んな、ジト目で見てくるの?」
「ミツキ様…」
「ミツキ…」
「お主…」
「ミツキくん」
え?何これ、俺何かした?
さらにジト目で見られてるんだけど
「まぁミツキ様ですからね…」
「そうですね」
「でもやっぱり」
「鈍感すぎるよね…」
なんだこの感じ、どうすればいいんだ…
ちょっと間が空き、ミーナちゃんが話し出す。
「私は舞さんに教えた方がいいと思いますけどね」
「それには強く同意です」
「私も舞には飛行魔法を使えるようになってほしいなー」
「ちょっと皆んな!?」
「やっぱりそうだよな、よし、舞、明日から教えて上げる」
「わ、わかったよ…一人だけずるしてるみたいで嫌だし…(小声)」
よし!今度は聞こえたぞ!
「ずるではないと思うよ」
「え?聞こえてた!?///」
「あぁ、皆んなも俺が飛行魔法を教えてるからな、ずるではない」
「………」
「「「…」」」
「あ、あれ?皆んなどうしたの?」
「皆さん!ミツキ様ってことで納得しましょう!深く考えないようにしましょう!」
「「「そうですね(だな)(ね)」」」
「なんか酷い言われようじゃない!?」
こうして競争は幕を閉じた。
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