連載第57回。「フロム・サーティーン」2
(続き)
M「久し振りに聞いた気がする」
SM「何を?」
M「誠さんのそういう本音。昔はずっと言ってたけどいつもはどこか冗談ぽかったし、いつの間にか言わなくなったんだよね。でも今改めて聞いて全然変わってない、この、何て言うの」
SM「何その手の動き(笑)」
-- あはは。
M「そのー、熱というか思いの強さに、トッキーじゃないけどさ。…痺れたぁ」
-- うん、圧倒されました。
SM「あははは、そんなの変わるわけないよ。絶対に変らない」
O「何なんだろうね。良い事だけどさ、どこかでやっぱり理解しきれない部分を誠は持ってるんだよね」
-- 凄いですよね。
O「そこが魅力でもあるのかな」
SM「(苦笑)」
O「常に前のめりだよね。もうその必要はないと思うんだけどな」
SM「必要っていうかさあ。ううん、ずーっと追っかけてるんだもん、だって」
O「(じっと誠を見つめる)」
SM「うん」
O「…ああ、そういう事なのか」
M「(誠にしだれかかる)何なに?」
SM「(笑)、確かに15年以上一緒にいるんだけどさ、私、もう大丈夫だとかもう安心だって全然思えなかったんだよね」
M「翔太郎さんに対して?」
SM「対してじゃない。向こうが、ずっと変わらないでいるかは分からないでしょっていう話」
M「…え!?」
SM「うん、なんかそういうリアクションだろうなとは思ったけど(笑)。あの人が実は冷たいんだとか距離を置くとかじゃなくて、私の性格の問題なんだろうけどね。だから例えば夫婦として生きて来た人達の15年と、私の中での15年は全然違うわけ。ね。恋人ではあるけど何も保証なんてないし、それが普通なんだし、それを求める事は失礼だと思ってた。信頼や愛情を得る為に何か約束事が必要なんて変だし、おかしいって思ってた」
O「(頷く)」
M「(真剣な目で誠を見つめる)」
-- 分かる部分もあります。ですが『失礼だ』とまで思われるんですか?
SM「思うよ。私が織江さん達と出会った段階で、その時皆はもう大人だったから、本当は相手をしてもらえるだけで有難かったんだよ。翔太郎に対して、そりゃあ個人的には私だけを100%見て欲しいって子供みたいな事思ってるよ。でも同時に、それを口にしたらダメなんだろうなって、それも思ってた」
O「(当時を思い返すような目)」
M「(とても真剣な目)」
-- …それは。
SM「好きだとか、大好きだとか、そういう言葉は何度も言った事がある。でもその度に翔太郎は笑うんだけど、どうしていいか分からないような、そういう表情にも見えた。精神的にグラついて迷惑ばっかりかけてた子供がやがて大人になって、外に出て働き始めて、その時ようやく翔太郎や織江さん達の世界を知るわけ。特に、社会人として見た時の織江さんの存在は大きかったし、夢をさ、夢だと思わない翔太郎達の突進力も当時の私には考えられないぐらいに凄かった。皆、本当に頑張って生きてるんだなって思うとさ、辛抱強く私の相手をしてくれてたあの頃の大変さとかまで、自然と理解出来るようになった。若い時に勢い任せでも言えなかった言葉を、そうなるともう私は冗談でも言う事が出来なくなってた」
-- (何も言う事が出来ない)
O「(涙を拭う)」
M「(俯いている)」
SM「…結婚してる人達を見て素敵だとか羨ましいだとか普通に思う。でも、ずっと私を引っ張ってくれていた翔太郎を前にして、その手をぐっと自分の方へ引き寄せて、私だけを好きでいる約束をして、保証してなんて、それはあり得ない事のように思えた。考えちゃいけないなって。だからこの先もそれは、私の口からはきっと言えないと思う。…私が求めてたのは自分が愛情を受ける事じゃなくて、ずっと愛してて良いんだって思える実感だった気がするんだ。そういう相手が私の側にいてくれる事がただ、ただ幸せだった。それが私の世界の全てだったと思う。だからずっと追いかけて来た。明日もそこにいる保証なんていらないから、どこにいたって私が追いかけて行けばいいって。翔太郎だけが、私の世界の入り口だった。あの人がいなければ、きっと私は誰とも仲良くなんてしてないし、モデルもやってない。そうなれば正直さ、誰が目の前に現れようともう『邪魔だ』としか思えないよね」
O「…これを笑って、この子は言うんだもんね。…本当に凄い(涙を拭う)」
M「(何度も頷く)」
SM「それも何か、たまに言われるけどさ(笑)。これ別に言いたくて言ってる話じゃないから今日だけ敢えて言うけど、凄いのは私じゃなくて翔太郎だからね。皆そこを本当に誤解してるから」
O「あははっ」
M「すーげー(笑)」
-- もう声出して泣きそうです!限界です!
SM「なはは、何だよ!」
-- はー。…はああー!!
O「あはは!」
M「これが関誠だよー、本当凄い。超愛してる」
SM「何でよ(笑)。だってさぁ、例えば翔太郎と向かい合って…今は私辞めてるけど前とか一緒にお酒飲んだりしててさ、普通に『お前がフランス語で歌った歌レコーディングした時になー』とか、『前に仕事帰りにお前が買って来たあの惣菜がさー』とか」
M「(嬉しそうに頷く)」
SM「『昔ライブハウスで脱いだ革ジャン預けた時に、手の甲がお前のブヨブヨの腹に当たって、腹筋!って声出た』とか」
O「あはは!失礼な!」
M「それきっと誠さん相手にしか言わないと思う(笑)」
SM「そうかな。でも確かに、そういう私達しか分かんない日常のヒトコマが不意に出てくるわけ、突然と。でもそれって先週とか先月の話じゃないんだよ。何年も前の小さな笑い話を昨日の事みたいに話してくれるの。別に、ちゃんと覚えてるぞとか、そういうアピールじゃないんだよ。当たり前の顔してさ、大好きだったあの頃の私達を今でも全部共有してくれる。こんなに嬉しい事は私にとっては他にないんだよね。…別に悪気はないし、これも敢えて言うけど、日常を共有できる人って今、翔太郎だけだから」
M「悪くなんて思わないよっ」
SM「繭子や織江さんがそうじゃないとは思ってない」
O「そんな事わざわざ言わなくたって勘違いなんかしない!」
SM「うん(笑)。…翔太郎が昔と変わらず私の側にいてくれる事。それだけじゃない、私が一方的に大切だと思ってる思い出をさ、何年経ってもパッと目の前に広げてくれるわけ、向こうはそれが凄い事だとも思ってないんだけど。これは私だけが味わえる特権なんだって思ってるけど、そしたらやっぱりずーっと好きなままでいられるよ。だから不思議でも何でもない、もう、ずーっと好きなの。だから追いかけていられるんだと思う」
O「それはもう、翔太郎にしか出来ない事だよね」
SM「そうだよ。だけどそれでもさ、もうこれで安心だって、大丈夫だって言える所まで思いが至らなかった。私が心配症で、不安が消え去る事がない人間だから」
O「…うん」
SM「でももう実を言うとね、大丈夫な気もしてるんだ、最近」
M「(涙に濡れた表情に、ぐっと力が入る)」
SM「時枝さんのおかげで、たくさん本人の口から色んな話を聞けて、ひょっとして、これはもう、死ぬまで一緒にやって行けるんじゃないかなぁって。やっとそう思えるようになったんだ」
O「そっかぁ。良かったね」
SM「うん。さあ、これで理解したかな? 知りたがりの、愚か者どもめ」
O「よく、分かりました」
M「分かりました」
-- 分かりました。
本当は、そんなに簡単な会話では終わらなかった。
関誠に対する、伊藤織江の思いを私は知っている。
そして共に支え合いながら生きて来た、年の近い繭子の思いも。
関誠という女性を形どる努力と思いやりの中にいる、一人の人間を全力で愛し続けて今に至るあの頃の彼女を知る二人にとって、今日という日は忘れらない時間として思い出に刻まれる事は間違いない。
あえて書きはしないし映像を残す事もしないが、伊藤も繭子も本当に誠の言葉を泣いて喜んだ。声をあげて泣いて喜んだ。
撮影は一時中断せざるを得なくなったが、そんな事はどうでも良かった。
O「さっき事務所の話した時に思い出したけどさ。結局PV出演の話は断ったの?」
SM「断った」
O「気にしなくて良いのに」
SM「そんなわけにいかないよ、私も春からバイラルだし。それでなくてもファーマーズの件飛ばしちゃったのに」
-- なんの事ですか?
O「前の事務所退社したすぐ後に連絡あって、あるバンドからミュージックビデオに出て貰えませんかっていう依頼が入ったんだって。ほんと辞めてすぐの事だし、あちらさんに恩義もあるからちょっと迷ったらしいよ」
-- へー。なんというバンドですか?
SM「内緒ね。『MEADOWS』」
-- え!すごい!
SM「あはは、うーん」
-- 今勢いのあるロックバンドですよね。大物じゃないですか、MEADOWSなんて。
O「誠のファンがいるんだって、メンバーに。どうやって断ったの?」
SM「正直に言ったよ。翔太郎とやり直せたので、他のバンドには関われません」
O「そっか」
-- 格好いい(笑)。それは事務所に断りを言れたって事ですか?
SM「うん。先方とは私面識ないしね。ウチの社長は私が翔太郎と付き合ってるの前から知ってたし、治療の為に離れた事も後で正直に話したし、頭も下げた。でもこういう結果になった事を喜んでくれてたから『なら、仕方ないね』って。その後になって、もう辞めたのにまた迷惑かけちゃうなと思って、自分で連絡取りますよって言ったんだけどね。社長が、『誠はドーンハンマーの身内だけどそれでも起用したいですか』って向こうに言ったら、『じゃあいいです』ってあっさり手を引いたって(笑)」
M「何それ!ひどい!」
-- 相当ビビられてますね(笑)。
SМ「爆笑した。あー、そういう評判なのかって。なんか皆らしくて笑った」
O「プラチナムの社長さんも面白いよね。私誠が戻って来た後に連絡してるのよ。今後の相談もしたかったし。そしたらあちらさん笑って『あなたと仲良くしておくと怖いモノなしだって誠が言ってましたよ』だって。『今後ともよろしくー!』だって」
(一同、爆笑)
O「そういうとこ本当抜け目ないよね」
SM「織江さんを見て育ちましたから」
O「人をババア呼ばわりすんなよ(笑)」
SM「あはは!」
M「誠さんはそれで良かったの?」
SM「何が?」
M「記念にそういう仕事受けておくのも良かったんじゃない?」
SM「記念で受けるような仕事じゃないでしょ。たとえ小さな役だとしても、一瞬とは言えそのバンドの曲の世界観を担うわけだし。そう考えたらとてもじゃないけどドーンハンマー以外でそこを共有したいとは思えないかな」
M「そっか、偉いね」
SM「織江さんを見て育ちま」
O「もーいー(笑)」
-- ちらちらこっち見ないで下さいって(笑)。
M「PVとはちょっと話違うけどさ。『I WILL I DIE』の話知ってる?」
-- 制作秘話的な事? いえ、聞いてないですね。
O「昔の映像見た話?」
M「え?」
O「あ、違った」
M「なんですか?」
O「翔太郎の話だと思って」
M「どちらかと言えば竜二さんですね。なんでした?」
O「いや、珍しく翔太郎がウチに来たのね。もう結構前だよ。何かと思えば昔のスタジオで撮ってたビデオ見せてって言うわけ。今時枝さんが撮ってくれてるような練習風景の映像ね。なんでって聞いてもちょっとって言って教えてくれなかったんだけど、新曲書いた後にあそこからインスピレーション貰ったって教えてくれて」
-- へー!そうだったんですか!ちなみにその映像は織江さんも一緒に見たんですか?
O「うん、大成と3人で見た。アキラがいる頃もそうだし、まだ10代の繭子や誠も映ってた、ちょっとだけね」
M「へー!そうなんだ!」
SM「見たいねえ」
M「見たい!」
O「じゃあ今度ウチ来た時にね(笑)。でも不思議だったのがさ、翔太郎に限って言えば曲を書けない事がないじゃない。もう既に数えきれない程のフレーズを残してるわけだし、今更なんでインスピレーションが必要なんだろうって思ったけど、出来上がった曲を聞いちゃうと納得するよね」
M「あー、うん、はい」
-- 演者が轟音バンドなのでガッチリとした音作りで仕上がってますが、ジャンルとしてはドストレートなヘヴィロックとかハードロックに近いですものね。90年代から00年代初頭に増えたミクスチャー系やクロスオーバー系とも似て音に派手さや現代味があって、…まあ、デスメタルではないですよね(笑)。
M「なんかね、ジャンルの話をしちゃうとそうなんだけど、曲の事で言えば今翔太郎さんの中からデスラッシュじゃないメロディが出て来た事に意味があるって、私は感じたんだよね。それが音に関してはロックでもなんでもいいんだけど、普段通りのあの人の脳内ルートとは違う道を通って出て来た音楽だって事に、変に感動しちゃったんだ。何か、今まで作って来た遅い曲とは違うな、あれ、これ凄くない?って」
-- うんうん。
M「バックボーンは知らないよ、今初めて聞いたし。でもなんとなくだけど、それに近い事は私も感じてたの。懐かしいような、改めて気持ちがガーッと奮い立つような」
-- 普段の曲よりもエネルギーの出し方がストレートだと思った。
M「うんうん、そうかもしれないね。でもそれが何でかって考えた時に思ったのはさ、去年一年てさ、後半は平行して『ネムレ』を作ってたけど割かしその他では人間味溢れるというか、内面的な感情を押し出す楽曲が目立ったでしょ?」
-- 『END』『Still singing this!』『ひとつの世界』だよね。
M「そうそう。竜二さんにしても大成さんにしても、もちろん翔太郎さんもそうだし。新しい事に挑戦してるんだけど、前向きな明るさよりもどうしようもなく泣けて仕方ないような、格好良さからくる震えとはまた違う感動があったでしょ。時系列とか、作曲の順番があやふやだから一概には言えないかもしれないけどね、そういう部分も関係あるのかなってちょっと思った。翔太郎さんが『I WILL ~』の曲を竜二さんに聞かせた時にさ、その後ちょっと竜二さんと話をしたんだ。その時はまだどこに入る曲なのか決定してない頃で…。多分誠さんが帰って来た直後だったと思う」
O「うん、確かそうだね」
SM「へえ。11月?」
-- そんなに前からある曲なんですか。
M「そんなに前かな?」
-- ドーンハンマーの制作スピードを知ってしまうと、大分前に感じてしまう(笑)。
M「ああ(笑)。まだ作り始めの段階だから、もちろん完成はしてなかったけどね。まず翔太郎さんが曲を書いて、竜二さんに聞かせてっていう流れでしょ。その翌日かな。たまたま夜遅いスタジオで一人でぼーっとしてたの、竜二さんが。セットの中でマイクに手を置いたまま、ぼーっと立ってるのを見かけて声掛けたんだ。ふふ、そしたらさ、『繭子。今更俺がサーティーンっていう曲書いたらどう思う?』って言うの」
-- サーティーン? 13?
M「うん。割かしありふれた名前ですけど、でも良いと思いますよ、私好きですって答えたんだけどね」
-- え、それって『I WILL I DIE』の話?
M「うん。だからもともとあの曲は『フロム・サーティーン』っていうタイトルになるはずだったんだけど」
-- へえ!13より?…13歳から?
M「そう。タイトルに思いを込める事すら稀な人だから新鮮な驚きがあってさ。何か書きたいと思える歌があるんですか?って聞いたら、照れたように笑ったの。私キュンとしちゃって」
-- 13歳と言えば、皆さんと織江さんが出会った年ですね。
O「それは初耳だなあ。翔太郎、竜二に言ってたのかな、昔のビデオ見返して作った曲なんだって。…言うわけないか」
M「言わないと思いますよー? そのビデオだって13歳の映像じゃないですもんね(笑)。誠さんは翔太郎さんと何か話した?」
SM「11月でしょ? さすがにその頃バンドの話する余裕はなかったかな(笑)。そもそも仕事の話ってしないしね」
M「ああ、ごめん」
SM「良い良い良い(笑)。結局そのタイトルはなんでボツになったの?」
M「なんかね、やっぱり13ていうよくある数字や使い古されたフレーズをタイトルに持ってくる事に抵抗があるんだって。その時もずっとそれ言ってて。普遍的な言葉なら使えるけど、それを聞くと別の何かを想像しちゃうような手垢の付いた言葉は使いたくないって言うの」
-- 13日の金曜日とか? 向こうだとホラーテイストな雰囲気だもんね。
M「うん、私はよく分からないけどね(笑)。『パッとその数字が出て来はするんだけど、別にそのタイトルじゃないと駄目だって事でもねえからさー』って言ってて。その時は私、特別13歳がなんだったのか思い出せなくてあいまいな返事しか出来なかったんだけど。でも竜二さんてやっぱり適当に歌ってるわけじゃないんだなって思うとちょっと嬉しくてさ。人に語って聞かせるメッセージじゃないとしても、きっと竜二さんにとっては何かしらの意味はあるんだろうなって、前々からそこは朧気ながら感じてたんだ。大事なのは言葉面じゃないんだよね。単純にファックって言いながらもそこに竜二さんの真意があると限んないし。せっかく話をしてもらってるんだからちゃんと答えなきゃって色々考えるんだけど、上手く答えらんなくて、逆に質問責めになっちゃって」
SM「それこそ、何か特別な意味が13にあるんですか?って聞かなかったの?」
M「聞いたよ。そしたら『唯一、今日まで途切れる事なく続いてる時間の流れを考えると、やっぱりなあ』って。とっても優しい目でさ。やっぱり大事なんだなと思って。じゃあ、フロムサーティーンにしましょうよ!って提案したんだよ。いいねえ、って喜んでくれてたんだけど、『ネムレ』作ってるどこかの段階で候補からは外れちゃって、完成には至らなかったんだよね」
-- 良い曲なのに、勿体ないですね。
М「知らないだけでそんなの一杯あるよ(笑)」
-- それは、そうですよね。
М「しかも今回出来上がって蓋を開けてみれば『I WILL I DIE』になってるっていう(笑)」
SM「なんでだろうね。なんか言われた?」
M「ごめんなあ、やっぱ、恥ずかしくてって。可愛いでしょ」
-- 織江さんもこれには撃沈ですね。
O「なんで? 13だからって私とは限らないじゃない」
-- 何を言ってるんですか!
O「なんでよ(笑)。13歳とは限らいんだよね?13個かもしれないし、13番目かもしれないじゃない」
M「13歳ですよー、きっと」
O「そーお? でも竜二も分かってると思うけど、もしそういう意味で使うならFROMじゃなくてSINCEだと思うよ」
М「あ、じゃあ私が間違えてたんですかね?」
SМ「ああ、それでじゃない?」
М「あははは」
-- 私も同罪です、お恥ずかしい(笑)。
O「フロムでも間違いじゃないけど、それだとちょっと意味合いが違ってくる気がするけどね。私としてはさ、以前出した『ALL HUMANS WILL DIE』に引っ掛けてるんだと思ってたもん。でも結局もっと使い古された言葉並べてるのはちょっと面白いよね」
М「なるほどー。学がないとこういう所で(笑)」
SМ「(笑)、いや、うん、でも意味合いの問題であって、フロム・サーティーンっていう言葉自体は別に変じゃないよ」
O「そうそう。微妙な違いだし、そこは竜二にしか分からないかもしれないね。それよりもさ、ふふ、あの曲もコーラスで私達参加したでしょ。そっちの方が私は意味があると思うな」
M「あー(笑)」
SM「あれ参加って呼べるのかな。ブースに入って適当に叫べっていう指示だったけど、普通あんな録り方しないよね?」
M「しないしない。マイクから離れたりしないもん」
-- あれ遊んでるんだと思いました(笑)。
SM「私もそう思ったよ。マイクの側に立ったらさ、別に動いても何してもいいから楽しんで、笑って声出してっていう変な注文されてさ。もうそれだけでちょっと面白いじゃん。私素人だからさ、部屋の中にさえいれば声拾ってくれるものなのか、マイクに近づいて歌わないと入らないのかすら知らないじゃん。だからもうこれは遊びなんだと割り切って、腕上げて飛び跳ねてたもん」
O「ああいう時の誠は本当助けになるよね。ムードメーカーだし、見てるとこっちも楽しくなる。でまた嫌になるくらい絵になるんだよね」
M「オフショットでカメラ回してる時なんか、気付くと自分から寄ってくじゃない? 見てて偉いなー凄いなーって感心する」
-- それは確かに、本当にありがたいです。私の手持ちの映像だけでセキマコイメージDVDが発売出来ちゃいます。
SM「あはは、じゃあお金に困ったらお願いするね」
-- いつでも仰ってください。
SM「売れるわけないでしょ(笑)」
-- 何言ってるんですか。物凄く素敵な映像たっくさんありますから!
SM「いやでも昔撮影現場でさ、オフショットをオフじゃなくす天才だって言われた事あるよ。気づいてないから撮る意味あるんだろ、お前敏感すぎんだよ、触覚でも生えてんのかって。ひどくない?」
(一同、笑)
O「でもオフショットって撮影の合間とかに撮る物でしょ。誠が気付いてる気づいてないは関係なくない?」
SM「本番と同じ顔を作ってるんだって」
O「自然な状態を晒すのが嫌だったんだ?」
SM「それを言われた当時はね。そうだった」
-- なるほど。その点繭子は気付かないよねえ。
M「それはどうなのよ。流れ的に鈍感だって言いたいの?」
-- ううん、自然体な絵が撮れるからある意味美味しい。
M「あはは、美味しいんだって」
SM「ほお」
-- 目を細めないで下さい(笑)。でも『I WILL I DIE』の時も途中からカメラ回してますけど、機材側のブースで椅子に座ってる彼女を撮ってて。言ってみれば同じ部屋にいますから、気付いてそうなものなんですけど、全然こっち見ないんですよ。
O「気づいてないの?」
M「え、覚えてないです」
SM「あはは!繭子らしいなぁ」
M「それは私、何してるの?」
-- レコーディングしてる誠さん達を見てるの。それがさあ、これ言うとどうせまた私が冷かされるの分かってたから言ってないけどね、めっちゃ可愛いんですよ。
M「また言う!」
SM「ほえー」
O「ほえー」
M「(爆笑)」
-- ちょっと(笑)。誠さんと織江さんがノリノリで歌ってるのを見ながら、こっち側で繭子も座ったまま歌ってて。声は出してないんですけど微笑み浮かべながら頭横に振ってる姿が本当に自然体で可愛くて。気づいてないんだ?
M「知らないよそんなの(笑)、絶対話盛ってるよね?」
SM「でもそれは昔からだよ。最初自分で天真爛漫だっていかにも作為的な事言ってたけど本当にこの子そうなんだもん。ペンネーム、天真爛漫娘さんからのお便りです」
M「嫌だ!」
(一同、笑)
SM「嫌じゃない嫌じゃない。ね、織江さん」
O「間違いないよ。頭も良いし純粋だし、思いやりもある素敵な子だけど、正直隙は多いよね」
SM「あはは!ホームラン!」
M「ちょっとー!褒めてよー!」
O「褒めたでしょ今。頭良いって」
M「その後!」
-- 隙が多いほど男寄って来るんだから、その方が魅力的って事ですよね。
M「嬉しくない嬉しくない」
-- はー、腹筋が切れそう。あのー、少し話を戻しますね。他の現場ではほとんど見ないのですが、バイラル4ではよくスタッフや社長がコーラスに駆り出されてますよね(笑)。
O「私? そうだね。でもそれが例えば作品として本気で必要な事かって言われると、違うと思うけどね。でもそれなりに意味はあるんだと思ってるよ」
-- つまり?
O「雰囲気作りとか、そういう事だと思っていて。特に私や誠が参加する時はそうかな。マーとナベは元々プロだし、そりゃ使えるものは使うじゃない? 人件費削減につながるし、自家発電が大好きな会社なので」
-- 出た、自家発電(笑)。確かになんでも自分達でやろうとしますものね。音作りや環境作りまで個人事務所内で賄えるって相当レアですよ。
O「でしょ。つまりはそれが好きでやりたいわけね。それだけの能力があるからっていう理由じゃなくてさ、あまり外部の人の手を借りたくないとか、入れたくないっていう、言ってしまえば閉塞感が昔からあるんだよ。でもそれは仲間意識っていう友達ごっこの延長とも実は違ってね。信頼関係がない人と仕事したって遠慮やイメージのズレはどうしたって埋まらないし、そこにお金を使いたくないっていう事なの。それなら自分達でカバー出来るように、欲しい能力を身に着ける方向でお金を使おうねっていう逆転の発想が、バイラルの方針かな。アイウィルにしたってその他の曲だってさ、実際私達が歌った部分が音源に使われるかっていったらそんな事もないし、使われたって知らなきゃ分からない程度だしね」
SM「プロを雇った方がいい場合でもそうしないんだよね?」
O「その方が良いならきっとそうすると思う。ナベが受け持ってる音響なんてそもそも一人ではどうにもならない事も増えて来たし。でも物理的な環境づくり以外で今の所、この子達4人がやってる事以上に誰かの手助けが必要な場面なんてなかったし、きっとURGAさんだけだよね、事務所外の人の手を借りたのは」
-- なるほど、納得ですね。
O「アイウィルの時ってさ、誠が盛り上げて、私も参加して、繭子が加わってだんだんテンションが上がっていくのがスタジオ内の空気を肌で感じて分かるのね。それを少し離れた場所から竜二達が嬉しそうに見てて、何やら悪巧みしてそうな顔で相談してるわけ。それを見てたらなんだかこっちも更にワクワクしてくるの。ここ2人のノリの良さもあってそれこそ遊んでるの?っていう空気になった所で、男達のレコーディングが始まって。その時の何ていうの、私達の噛ませ犬感?」
M「あははは!」
SM「分かるー」
-- 噛ませ犬は酷いなあ。
O「でも全然嫌な気はしないのよ。はいはい、格好いい格好いいって思ってるんだけど、実際ね。…ちょっとこれ言いたくないけど」
M「うん」
O「もうホント、うっとりするぐらい格好いいの」
M「そう!」
(一同、笑)
-- あー、なるほどー!
O「よく言う舞台の前説みたいな事に近いのかなって思うんだよね。場の空気を盛り上げる為に。仮にそうだとしてもさ、それこそ外部の人間には出来ない事だし、私達だからこそ意味があるんだって思うとそれはそれで嬉しいじゃない」
SM「単純に喜んでくれてるのを見るとほっとするし、楽しいもんね」
O「ね。それにさ、後になって彼らと話した時にね。『良い感じにテンション上がってたよ』ってワザと生意気な事言うとさ、竜二なんかすっごい嬉しそうに笑って『ありがとうな』って言うわけ。翔太郎は翔太郎で、あの時お前ん家で見たビデオからインスピレーション貰ったんだーなんて言うしさ。違和感ありすぎだよね(笑)。帰って大成に、あれって特別な歌なの?って聞いたらさ。『わかんない』って」
-- ええ!?
SM「はぐらかしたって事?」
O「う~ん、どうなんだろう。スタジオでなんか楽しそうに男3人話してたでしょって聞いたら『でも全然違う話してた』って言うのよ」
『竜二がさ、こないだ庄内に会った時聞いたんだって。編集部の方にBillionの記事に対してファンメールにみたいな内容が届いたらしくて。今年結構俺達載せてもらっただろ? タイラーとの対談もそうだし、あとファーマーズでの件とか。そこへ来て向こうでの披露試写会での演奏とかそういうの見たファンの子がさ、もう泣きながら書いてるんじゃないかって程熱っぽい文章をメールで送ってくれたのを読んで、俺も震えるぐらい泣きましたって庄内が言ってたって。なんか、ありがてえよなあって、竜二も。それこそ丁度お前らがブースの中で遊んでる時かな。「こんな気持ちになれた事を感謝します、ドーンハンマーのファンで良かった」って書いて寄越したそのファンの言葉を聞いて思ったのが、俺はこいつらにありがとうを言いたいよって、お前ら見ながら言ってたよ。俺もそう思うんだ。だから別にあの曲が特別って事じゃないよきっと。今日まで一緒にやって来た時間が、…ああ、まあ、何かそんな感じじゃない?』
O「やられた!って、それ聞いた時に思ったけどさ。と同時にそういう思いを音源に封じ込める方法として私達が必要だったなら、もっとちゃんとそう言って!って(笑)」
SM「言ってくれたらもっと頑張ったのにってね、うん。ちょっと悪ノリが過ぎるかなってぐらいフザケてたもんね」
O「ねえ、本当に」
SM「私最終的には声出さないで踊ってたもん(笑)」
(一同、笑)
M「でも私達見ながらそんな話されてたんですね。全然知らなかった。そこを踏まえてあの3人の歌入れを思い返すと更にやばいですね」
SM「そりゃあ、うっとりもするよー」
M「するねー」
O「繭子は音作りの段階で何かそれに似た話をした?」
M「音作りの話はしたけど、どんな心境でとか思い入れとかは特に話さないですね。そういう個人的な話って皆言わないし聞きたくないとすら思ってる所があって。今回曲調が今までと違ってロックテイストが強いから、音数とか仕上げとか、そういうアレンジの注意点の話はなんだかんだ結構しましたけどね」
-- だけど男性3人は同じような思いで皆さんを見ていらしたんだし、そちら側へ繭子も入れて欲しい気持ちもありますね。
M「ん?」
SM「いや、それは…」
M「多分だけど、竜二さんも大成さんも翔太郎さんも、お互いが個人的に思ってるアイウィルへの思いなんかは口に出してないよ」
SM「うん、それはそうだと思う」
-- そうなのかな?
M「そこは、多分そうだと思う。本当にそういうお互いの気持ちって、言わない人達だから(笑)。3人とも仲が良すぎるっていうのもあるだろうし、恥ずかしいのもあるし、きっと同じ事考えてるしね。敢えて言う必要はないから、伝えたいと思ってない」
O「(頷く)」
-- なるほど!
M「…あ、でも、あるかも、一つ」
-- 何?
M「歌詞が、前半とかコーラスパートが特に短い単語で構成されてるから、なんか翔太郎さんが歌ってるうちに意味を理解しちゃったらしくて。腹立つわーって笑ってたのを見てました。なんかきっと、…良い歌なんだろうなーって(笑)」
SM「ざっくりしてるなあ」
O「え、それは何、その場ではスルーしたの?」
M「何をですか?」
O「私も知りたい!とか教えてくださいよ!とかはならなかったんだ?」
M「んー、さすがにちょっと思いましたけど。でも、聞いてはないです」
SM「なんで!? 断られるの?」
M「ううん、そういうんじゃないよ。ただ…んー。格好付けた言い方だけど、歌ってる時の皆の顔とかさ、演奏してる時の顔とかさ。そういう姿以上に説得力のあるものはないって私ずっと思ってるから。歌詞を読まないのはわざとなんだよね、昔から」
SM「へえ」
M「うん。ずっとそうやって来て、今さら歌詞を読んで竜二さんなり誰かなりの思いを理解した気になって、なんていうか、寄り添うような感情を持つ事は、私自身にとって言えばそれは傲慢な事なの。そうなる事に今も躊躇いを感じるかな。それに知らないままの方がドキドキするし、無邪気が許されるでしょ。理解を共有する必要がある時はきっと話しかけてくれると思うし、自分もこれまでそうして来たからさ。この距離感は大事なんだよ、私にとっては」
SM「ちゃんと考えてるんだね」
M「私なりにね」
O「どうして寄り添う事が傲慢だと思うの? 繭子はきっとそうする事を苦だとは思わないでしょ」
M「…誰かを支えたいとか側にいたいという意味の寄り添うじゃなくて、私はあなたを理解していますよ、共感していますよっていう顔をしたくないっていう意味です」
O「ああ、なるほど。それはそうかもしれないね」
SM「歌詞を読んじゃうとどうしても演奏しながらそれを思い出しちゃう?」
M「うん。それが良いのか悪いのかはまだ分からないけど、こう見えてデスラッシュメタルのドラマーですから(笑)、そんな感傷的になってる場合じゃないってのもあるし。とにかくやる事多いもんね」
SM「よくあんなに手足がバラバラに動くよね」
M「そこ、基本(笑)」
(一同、笑)
SM「でも変な事言うようだけど、ドラム叩いてる時の繭子が一番綺麗だし、一番格好良いし、一番エロいよね」
M「変な事言った!」
SM「変な事言うよって」
M「言わないでよ!」
O「あはは、面白い子達でしょー?」
-- 最高ですよね、ほんと、溜息の連発です。
O「ね。あー、でもそういう繭子の思いをはっきりと聞いてしまうと言いづらくなっちゃった」
M「なんですか?」
O「聞きたい?」
SM「目がマジだ」
M「えええ」
O「後悔しないな?」
M「…しない」
O「アイウィルに関してはだけどさ、今までにないぐらい歌詞が本当にストレートじゃない? ストレートなんだよ。大成も繭子も少しくらいは歌ってて理解出来る言葉があっただろうし。曲調だってさ、これまでも彼らは遅い曲を作ってはいたでしょ。ライブでやる気にならないから音源化しないだけで。あるいは遅い曲でも使いたければ彼らの流儀に乗っ取って速度を上げたり、激しさをプラスするなり変えて来たと思うんだけど、今回はそのどちらも竜二は提案しなかったんだなって思うと、私そこにぐっと来たんだ。歌う事に拘ったのかなって思った時にさ、きっと何かしらの意味があるんだろうなって」
M「あー(笑)」
O「うん。それだけで私ちょっと興奮したもんね。その、13の意味とか竜二個人の世界観とか抜きにしても、彼の中でこのバンドのボーカルを続けて来た事の意味が、少しずつ変わって来てるんじゃないかなって感じて、ほんと、ぐっと来たんだ」
M「(頷く、真剣な眼差し)」
O「直訳すると、『私は死ぬだろう』でしょ。もうなんだろ、メタルバンドとしては恥ずかしいぐらい普通だし、敢えて言わなくたって皆そうでしょ。一周回ってそれが格好良いんだという評価があるにしたって、でも竜二が言いたいのはそういう事じゃないと思うんだよね。きっと、彼らの事をずっと応援してくれているファンや、自分達を支えてくれた家族や、自分が好きな人達への感謝もあるんだろうなって。『今までありがとう、実は俺達だってこういう曲やれるんだぜ、まあ、もうやらないけどな』って、ニヤリと笑って言いそうじゃない?(笑)。これまでの彼らだったら、きっとやってない曲だと思うんだ。繭子もそこは感じてると思うんだけど」
M「(微笑んで、頷く)」
O「外野の意見に耳を貸さず、自分の好きな事だけを追いかけて来た人達だし、そこに究極の格好良さがあると、信じて付いてきてくれたファンにだけ分かるように、残していく曲だと私には感じられた」
-- ファンにだけ、分かるように。
O「音もさ、歌詞もそうだけどさ、曲の構成もさ、どっちかって言うと、クロウバーに近いじゃない」
-- それは、私は言えなかったです(笑)。
O「あはは。そういう意味でも、色んな思いがあるんだろうなって」
-- なるほど。これはぐっと来ますね。
O「竜二に限った事じゃないけどね。…だけど複雑なさ、思いもきっとあるんだよね、バンドに対する思い入れっていう部分ではさ。別にややこしい意味じゃないよ、竜二なりに考えてる事や信念みたいな事って、きっと一本の太い幹に見えて実は細い枝の寄せ集めが大木に見えてる部分だってきっとあるから」
M「(頷く)」
SM「(真剣な目で聞き入る)」
O「きっとそこには音楽だけじゃない部分での、彼の信念だったり、積み重ねて来た経験だったり、記憶だったりとか。好きなバンドで好きな歌を歌う。…でも竜二って絶対、ただそれだけの男じゃないからね」
-- (言葉が出ない)
O「そこを考えさせられたのが今回、個人的には一番印象的だったかなぁ。それにさ、ベスト盤で初めてバンドを聞いた人って、アイウィルを良い曲だなって思う事はあっても、今まで聞いて来たファンの人ほど感動はしないと思うんだよね。繭子を含めた4人の、5人の、もっと言えば7人のこれまでを知ってる人だけが、あの歌を聞いて震えるぐらい泣けるんだと思う。メッセージソングを歌わないこの子達なりの、ありがとうのメッセージだと思うな。演奏はいつにもましてタイトでクールでヘヴィでソーマッチだけど(笑)。竜二のボーカルと掛け合いで、翔太郎と、大成と、繭子がマイクに噛みつくようにして、『ノーウォン!(no want)』とかさ、『バライダイ!(but i die)』とかさ、叫んでる姿はなんというか、俺達はいつか死ぬけど、お前らと一緒にここまで来たよ、どうせいつか死ぬけど、きっと無意味なんかじゃないよなっていう、あ、歌詞言っちゃった、あはは。だからなんと言うか、…ああ、ホント、ここまで来たなあって…あー、うまく言えてないけど」
M「ううん、分かります。分かりますよ、私」
O「うん。…だからさ、これを言うと竜二は怒るかもしれないけど、URGAさんとの出会いだってきっと大きく影響してるだろうし、誠の一件だってそうだし。あえてベスト盤にあの曲を入れようかって考えた彼らの今の姿を考えた時にさ、何度も言って馬鹿みたいだけどさ、ぐっと来たんだ」
SM「だけどそれしか言いようないもんね(笑)」
O「うん。急に名前出してごめんね」
SМ「え、全然だよ。私自身もコーラス参加しながら思う事たくさんあったしね。そもそも繭子の歌(『Still singing this!』)以外であの人達の仕事に参加した事ってほっとんどないんだよね。別に今回だって本気のコーラス参加ってわけじゃないし、私自身半分遊んでるような気でいたけどさ、その遊びの部分が必要とされてる事なんだとしたら、…これ今だなって。今、全力で盛り上げよう、ここだ、今だ、みたいなさ(笑)」
O「二人とも翔太郎みたいな話し方になってる」
SM「思ったぁ!」
M「あはは」
O「年取るとさ、考えて言う事纏めるよりも先に、今言わないと駄目だ!みたいに気持ちだけ先走るよね」
SM「なるよね」
O「あ、10歳も若いのにごめんね。あとね」
SM「あははは!」
O「あとね(笑)、今言ったぐっと来る彼らの姿には、そこにはもちろん繭子も含まれてるんだよ。含まれてるんだけど、それでも歌詞を読まないこの子の凛々しさって、じゃあ一体どこから来てるのよって、それも思う(笑)」
M「あはは」
-- 私も今同じ事考えてました!
O「でしょう? 不思議な子だなーって」
М「ボンソワール!」
SМ「それ『こんばんわ』」
(一同、笑)
M「自分ではよく分からないなあ。今織江さんが言ったようなぐっと来る気持ちって実は私も思ってたりするけど、その中に私自身は入ってないんだ」
O「入ってるよ」
M「いや、私の目を通してあの人達を見ると私は入らないじゃないですか(笑)」
SM「んー。きっと肌で感じてるんだろうね。一番近くでこの10年バンドを見て来たんだし、今でもどこかで『彼らの為に』って思ってる部分もあるだろうから」
M「それは、あるね」
SM「目線が織江さんに近いんだろうね。私とか。だけど私も織江さんも、時枝さんだって、繭子はあちら側だと思ってるからさ。凛々しい筈なんだよ。ちゃんとこの10年間4人で頑張って来たんだから成長してて当たり前だし。客観的に見たら絶対そのはずなのに、繭子自身がそこを意識してないんだね」
M「なんか、…難しい話してるね」
SM「ラジオネーム、天真爛漫娘さんからのおハガキで」
M「いやーだ!」
O「あはは」
-- さっき織江さんが言ったようにさ、例えば竜二さんが『I WILL I DIE』をいつもみたいにぶっ飛ばした曲にしようぜって言ってたり、翔太郎さんが原曲通り遅いままのアレンジでやるつもりはないって言ってたら、繭子はそれに従った?
M「え、当たり前でしょーが(笑)」
-- でもさ、実際に今回このアレンジになった事に対してぐっと来る気持ちもあるんでしょ? それはどうしてだと思う?
M「え? そういう風に言ったつもりはないけどな。私は、どういうアレンジかなんて関係ないよ。歌詞も関係ない。なんなら誰が作曲したかも関係ないって。ずっと言ってるじゃん。あの3人だから格好良いんだよ。あの3人としかやりたくないのはクオリティが理由じゃないよ。私にとってはその部分に一番大事な意味があるの。私が今回のアイウィルでぐっと来るのは、10年を費やしたこのバンドの集大成とも言えるベストアルバムでさ、デスラッシュじゃない曲を持ってきた彼らの人間としての誠実さだよ。そういう意味で根っこの部分で言うと織江さんと似てる気がする。だってホントはもっと簡単なんだよ、完成してるけど音源化してなかった曲収録すれば一瞬で終わった話なんだから。でもあの人達はそうじゃなかった。この10年皆で何をやって来たか、どれほどの思いを抱えて進んで来たか。その結果、ファンやレコード会社に対して、真正面から新しい事にチャレンジして全力で答えるって凄い事じゃない? バカみたいな言い方するけど、すっごい良い人達じゃない? それなのに3人ともすっごい楽しそうだったんだよ。『ネムレ』に合わないって一度は没にした曲をもう一度掘り返してきてさ、最高に格好良い一曲に仕上げたんだ。だから、私ぐっと来るんだよ。別にさ、本当言えばアイウィルが今回みたいなヘヴィロックじゃなくても私はいいの。彼らが笑って、面白い事やってる姿こそが意味のある事だって思うから。今回それが、昔から聞いてくれてるファンに『歌声は今の竜二さんだけど、ちょっとクロウバーっぽくない? え、凄くない?』って伝わるんなら最高だと思うし。だけどもっと楽しい事が出来たなら、それがデスラッシュでやれてたなら、それでも全然いいわけだし。そこは織江さんだってそう言うと思うよ」
O「もちろん(笑)」
M「うん。でも、ただ新しい曲を作りましたっていうだけに留まらない彼らの音楽家としての拘りとか、それこそそこに込めた意味だったりとか、皮肉ったようなユーモアとか、笑顔とか、もうね、最高なんだよ。…え、何?」
O「だから何でこっち側に来るのよ」
SM「繭子はあっち側!」
M「なんでよ、いいでしょどこにいたって(笑)」
-- 繭子は本当に繭子だねえ。
M「どういう意味よー。皆難しい話しすぎだって」
SM「ペンネーム…」
M「もー!(笑)」
-- この三人で話が出来て良かったよ。
M「なんで?」
-- 今朝、今日のこのお話を誠さんから連絡いただいて、色々想像してたの。この3人が並んでそこに座っていて、お話を聞く事が出来るんだって考えただけで感無量だと思って。欲を言えばURGAさんもここにいて欲しいですが。
O「あはは、怖いモノ知らず」
SM「ふふ」
M「なはは。私達と話をするのがなんで感動的なの?」
-- 好きだからです。3人の関係性や人柄、思いやりと誰にも負けない内側からくる人としての美しさが大好きなんです。
SM「あはは、『ROYAL』の取材みたいな言い回しだね」
-- 人を観察しながらお話を聞くのが仕事なので、色んな情報をキャッチしながら頭の中で整理していく作業が得意になりました。皆さんはお互いをとてもよく見ておられる。それは今に始まった事ではないですが、改めて3人揃った時の気遣いの凄さには恐れ入りました。
O「気遣い?何かな」
-- 織江さんの持つ信頼と統率力の高さ。どれだけ面白可笑しく弾んだ会話が繰り広げられても織江さんの一言で場面がきゅっと締まります。最後に物事の答えを求められるのも織江さんです。お二人にとってあなたがどれほど大切な存在かは、二人が話しながらあなたを見つめている視線に全て表れていました。
O「怖がられてる?」
-- 違います。あなたに話を聞いて欲しいんです。あなたがここにいるだけで、皆が安心出来ます。
O「そんな事ないよ、買い被りすぎです」
SM「いやいや、あっぱれ恐れ入った。大正解だよね。ねえ繭子」
M「オーソレミオー!」」
SM「それイタリア語だから」
(一同、笑)
M「どう意味だっけ」
SM「『私の太陽』」
M「…じゃあ、あってるね!」
SM「最終的に奇跡起こした(笑)」
-- あはは、そして誠さんの、…これはもう優しさなんでしょうかね。私誠さんは普段これほど前に出る方ではないと思っていました。おそらくそこには翔太郎さんから託された任務を果たそうとする頑張りと、織江さんの重荷を少しでも肩代わりしようという意思、場を和ませようとする天才的なユーモアのセンスを持って果たさんとする心配りというものを、鳥肌が立つ程、胸が苦しくなる程感じました。
SM「ネタばれしないでくれる。営業妨害だよ」
M「そこは否定しなんだ」
SM「してやるものか」
O「誠はねえ、昔からほんっとに」
SM「織江さんさー」
O「まだ何も言ってないでしょ(笑)」
-- なんですか?
O「ううん。何でもない」
SM「そこは言って!」
O「じゃあ、…これからも愛してるよ」
SM「ううーわ」
M「ハイ泣いたー!」
-- 最後に繭子(笑)。一番気遣いが凄いのは繭子だと思った。初めに誠さんが今回の経緯を話してくださった後、一番に話をしてくれたのが繭子だったね。適格で、愛情に満ちた素敵な言葉だった。織江さんにも、誠さんにも、ここにいない翔太郎さんにも、私に対しても、優しさを感じる話だった。凄いなあと思う。3人の人柄はもともと心から尊敬しています。なので驚きという意味での衝撃はないけど、やっぱり想像を超えるも思いやりの力で動く人達だなぁと感じながらお話をお伺いしていました。こうしてゆっくりと時間を取って皆さんとお話出来るのは最後かもしれないので、言わせて下さい。皆さんとお会いできて本当に嬉しいです。一年間お付き合いいただけた事、心から感謝しています。春以降の事は今はまだ明言すべきではないと思いますので、先の話はしません。このスタジオへ通うようになってからの一年で、私は当初の目的をはるかに超えた結果を残せると自信を持つようになりました。芥川繭子さんの目を通し、バンドを通じて世界を見るという目標はいとも容易く方向転換を強いられましたが(笑)、その向こう側にある人間力への探求を、皆さんはその懐の深さで可能にしてくださいました。…一年間、生意気にもずっと呼び捨てだった事を、今でもずっと、心から申し訳ないと思っています。それと同時に本当に有難い優しさだったと今も噛み締めています。私はこれから寝る間を惜しんで、全身全霊を持って、世界中へあなた方のすばらしさを伝える物を書き上げます。最後に芥川さんともう一度じっくりとお話をさせていただいて、正真正銘それが最後です。ですがこの終わりは、きっと始まりへ繋がっていると確信しています。大切な人の死が決して終わりなんかではないように、私が両腕一杯に抱えた大切なものを全部世界中へ届けていく事で、この先の未来へ繋げて行きたいと思っています。それが今の、私の夢です。後日改めて皆さまの前でご挨拶させていただいますが、今日は今日で、どうしても言いたくて。…長い間、本当に、ありがとうございました。




