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「芥川繭子という理由」  作者: 時枝 可奈
47/77

連載第47回。「スイッチを押せ」

2017年、1月3日。

練習スタジオ、楽器前応接セットにて、芥川繭子と。

(同席者として、伊藤織江)。




-- 年が明けて、今回が一発目の収録になります。

「私だけでいいの?」

-- はい。よろしくお願いします。

「じゃあ、よろしくお願いします」

(カメラに映らない位置で静かに座っている伊藤にも頭を下げると、『今日は私はいない感じでお願いします』と言われた。理由を問うと、『たまにはマネージャーらしくちゃんと付いていようと思って』との笑顔。いつもちゃんとしていらっしゃいます!)

-- やっぱりこの楽器前の、応接セットに座ると体温が2、3度上がる気がします。

「大変だ。高熱だ」

-- (笑)、会議室だったり外のお店だったり、場所がどこであれ皆さんは変わらず偽らないご自身を語ってくださるのですが、この場所はなんだか特別な気がします。

「なんでだろうね」

-- 繭子にとっては、ただの休憩場所?

「休憩しながら考え事してたり、他の皆が弾いてるのをここから眺めて参考にしたりっていうのもあるから、ただ休憩する場所ではないかなぁ。ここで仮眠する事もあるし、時間が惜しい時はここでご飯食べる時もあるしね」

-- そうだね(笑)。

「トッキーも一杯ここでお話したね。それこそ夕ご飯一緒に食べたり。思い入れが強い分、身が引き締まる思いがあるのかな?」

-- うん。流石にこの至近距離で演奏を聴く事はないけど、この場所はここにしかない最高の空間だと思うな。

「そうだね。…そっか」

-- さて、そんな最高の空間から今年を始めて行きたいと思うわけですが、この間資料を整理していて、自分が勘違いしてた事にひとつ気が付いたんだけど。

「うん」

-- アキラさんて『ワンバス』だったんだね(バスドラムを一セットで叩くスタイル)。

「へ?」

-- え?

「違うよ?」

-- でもうちのインタビュー記事整理してたら、ワンバスの話を熱っぽく語られていた回が出て来たんだけどな。

「そうなの?」

-- 繭子がツーバスだからてっきりアキラさんもって勘違いしたんだなーって、それ見て思ったんだけど、アキラさんもツーバスだった?

「そうだよ。だって私が叩いてるセットは元々アキラさんモデルがスタートだからね。その後ちょこちょこ変えて自分なりのセット組んだけど、めっちゃ苦労したの今でも覚えてるもん」

-- そっか。あれ、私何を読み間違えたんだろう。

「なんだろうね。ドラマーだし普通にワンバスについて話す事はあったかもしれないけど、アキラさんのセットは違うよ」

(んん)と伊藤の咳払い。

彼女を見やると、カメラの外で口パクをしている。

(『ペダル、ツインペダル』)

-- ありがとうございます(笑)。

「ああ、ツインペダル? 織江さん声出しましょうよ(笑)」

-- ツインペダルの話だったんですね。なるほど、だからワンバスなのか。

「あー、うん。言われてみればドラム始めた最初の頃はワンバス・ツインペダルだったって聞いた事あるよ。でもそれって単純にお金がなかったのと、ファーストアルバム聞けば分かると思うけど、恐ろしくパワフルだったもんね」

-- ツーバスで叩く必要性を感じていなかった?

「傍から見れば全然ワンバスでも通用する音だったと思うよ。『FIRST』の時はもうツーバスだから、今となっては本音は分からないけどね。別に速く叩けない人でもなかったし」

-- そうみたいだね。前に『タイラー』Dバンドの青山くんと話をした時にさ、善明アキラというドラマーについて何か知ってる事はある?って聞いた事があって。

「ほお」

-- そしたら実際に叩いてる姿を見た事はないけど、恐ろしい速さの連打をツインペダル無しのワンバスで踏んで、しかもツーバス並みの音出してたって話を聞いた事があって、『同世代だったら僕Dバンド入れてないと思うんで、鳥肌立ちました。日本人でそんな叩き方出来た人いたんですね』って言っててさ。

「あはは! 別にそういうスタイルを好んでたわけじゃないと思うけどさ、そもそもそれを生で見た人って誰なのよってなるよ!?」

-- 嘘なのかな?

「嘘つくような人?」

-- 全然、真面目な人だよ。

「じゃあ疑っちゃ悪いよ。でも凄いレアな場面だよね」

-- そうなんだ。

「だって私ですらステージ上では見た事ないよ。誰が言ってたのかな?」

-- ごめん、今度聞いておくね。

(『んんっ』伊藤の咳払い。『竜二』)

「あっはは、そうなんだ!まあでも、そりゃそうかぁ」

-- ありがとうございます(笑)。でもそれ聞いた時、私アキラさんに速さのイメージがなかったからさ、ちょっと意外だったの。私がこのスタジオ出入りしてるのは知ってるだろうし、お世辞でも言ってるのかなって思ったりもしたけど、繭子の言うように速さでも勝負出来る人だったんだね。

「もちろんもちろん。それはアキラさんだけじゃなくて皆に言える事だけど、どこを重要視するかは好き嫌いだと思うんだよ。でも出来ない事を出来ないまま放っておく人達じゃないし。皆、アキラさんは練習嫌いって言うけど、私の中であの人はずっとドラムセットに座ってる人だからね。それに色々な考え方あるけど、…ちょっと専門的な話をしちゃうとさ。速さってどういう叩き方をしようが要は連打じゃんか。それがツインペダルだろうが、ツーバス連打だろうが、音圧の違いや音の鳴り方の違いはあっても、結局はペダルの踏み込み回数と手数でしょ、ブラストの基本って。160で何分叩けるとか200で何分叩けるとか」

-- BPMの数字?

「うん」

-- 200って(笑)。

「普通だよ今。180以上は当たり前だし」

-- いやいや、そうだけどさ。改めて聞くと凄い話なんだけどねえ。

「バスドラとスネアの組み合わせが基本だって考えた時にさ、別に高速ブラスト叩くだけがドラムじゃないよっていう話をよく言ってた気がするの、アキラさんて」

-- うんうん。

「私はアキラさんの影響が強いから特にそうだけど、手数・音数で速さだけじゃない色んな音出したいんだよね。全曲200で叩けたとしても、それこそワンハンドロールが出来たって、それだけで一曲押し通すなんて面白くないしすぐ飽きちゃうよね。疲れるだけだし。ダブスト(ダブルストローク)もフィンガーショットもそれ自体に重要な意味はなくて、強弱のない音はそもそも嫌いだしね。弱いだけの音なんて尚更嫌だし」

-- なるほど、音圧ジャンキーだもんね。

「ふふ、うん。変な顔やめて(笑)。でも気持ち良いのは私がどれだけ速いかじゃなくて、他の皆の音と絡み合いながら走っていく時だからさ。もちろんそれは色々叩ける選択肢があっての話にはなるけどね。…ってまぁ、私の事は置いといて。だからアキラさんが速く叩けるのは私も皆も普通に知ってたし、使い所を選んでるのも知ってたよ。若い時はお金もないし拘りが速さにあったわけじゃないから、ワンバスで始めて、ツインペダル使ってみて、『音圧足りねーよー!』って言って頑張ってツーバスにして(笑)」

-- そうなんだー。おもしろい。

「普通だよこれ(笑)。皆通るよ。ってかさ、トッキーそんな事本当は知ってるよね?」

-- ん、なんで?

「色んな現場を取材してるんだから、知らないわけないよね。どうした?」

-- 知ってるから聞かないってなると、私取材出来ないじゃん。

「…ああ、そうか」

-- そうだよ。楽器の事を聞きたいんじゃなくて、それを扱う人のエピソードを聞きたいわけだしね。

「なるほどね。ただ、今でもやっぱり敵わないって自覚してるのは筋肉量だよね。ペダル踏み込む速さに直結するもん」

-- どこの筋肉?

「どこだろ」

(その場で高速地団太を踏む繭子)

(思わず目を見開いて微笑む伊藤)

-- あはは。速い速い。

「脛かな。脛周り」

-- そうなんだ、そこまで細かい話は知らないな。

「極論だけど速さだけならワンバスでもツーバスでも同じだよ。速く叩きたいからツーバスにしましたって言う人は、楽したいからツーにしましたって言うのと同じ。ワンバスでもめちゃくちゃ速い人は速いし」

-- 理論上はそうだけど。でもより正確に連打し続けるためにはツーの方がいいよね?

「正確さは人によるんじゃない? ブラストそのものは組み合わせと速さだから関係ないし。ワンバスツインペダルは音を消し合う事があるから音圧で比較すると弱いっていうのはあるけど、正確に叩けるかどうかは練習量だよ」

-- そうなのか。繭子はワンバスは嫌なの?

「体がもうツーバス仕様だよね(笑)」

-- 最初からだもんね。

「うん。だから、普通にアキラさんのセットのまま座って叩いた時にさ、ツーバスの上にタムがあるから、叩きにくかったよ。今より身長低かったし、背中も伸びてなかったしね。でも今はもう戻せないかな。うちのバンドには音圧必要だしね。ただでさえ女の私が叩く事で、音負けしてんじゃないの?って思われがちだし」

-- そっかそっか。ツーバス・ツインペダルは?

「使えるよ。でも、うーん、今の所正式な導入は考えてないかな。ドラムアレンジも大事だけど全体を見てから私の音は決まるからね。より複雑な叩き方採用して『お?』って思わせるよりも、…そういう派手な部分は私じゃなくて翔太郎さんの方が似合うかな。絶対勝てないし、あは、イカレた変態ギタリストだし」

-- それ今月号のモーガンのインタビューの事言ってる?

「もー、アレすんごい笑ったんだけど!」

-- なんで!? めっちゃ感動したんだけど!



『初めてステージでの演奏を生で見た時はぶっ飛んだよ。人間あんな風にギターを操れるもんなんだなって魔訶不思議なものを見た気がしたね。俺が使ってる楽器ってなんだっけ?って。ああ、イスミはイカレた変態ギタリストだと認めるよ。…世界一のね』

(『Billion』2017年1月号に掲載された、ドイツのエクストリーム・メタルバンド『Throne Of Dimension』のギタリスト・Morgan Pikeが語った、伊澄翔太郎への賛辞である)



「もっと言い方あるでしょうよ!って皆して大笑いだよ。まあでも、モーガンも良いよね。ライバル心が滲み出てて格好いい」

-- 同世代としての思いもあるだろうしね。手放しで褒めるのは嫌だけど、でも世界一っていう言葉を口にしてくれたもんね。凄い事だよ。

「ねえ。アメリカ人なのにドイツのスラッシュメタルバンドに移籍して一躍スターに登り詰めたもんね。彼も大概変態だよね」

-- 誉め言葉?

「もちろん!」

-- いきなり濃いドラムの話から始まりましたが、本当はアキラさんのお話を聞いてみたくって。

「私に?」

-- アキラさんの人間的な深い部分というのは他のメンバーの方が詳しい筈だけど、私が今日聞きたいのは、繭子とアキラさんの関係というか、繭子から見たアキラさんの事。

「なるほどー」

-- 難しい?

「うーん。大切な人だし、私の中でとても重要な部分なんだけど、言葉にして語れる事はそんなに多くない気がするなぁ」

-- アキラさんと出会ってから亡くなられるまでの期間て、どのくらいなの?

「知り合った時私が16歳で、亡くなったのが高校卒業する少し前だから、2年ぐらいかな」

-- 前のスタジオで出会ってるから、ドラムはもう始めてたね?

「うん」

-- あまり多くを語れないのは、どうして?

「例えばエピソードトークみたいのは、あるよ。でもそういう思い出話をする事で、それを聞いた人や読んだ人に『アキラさんってこういう人だったんだ』って思われる事に、まだ抵抗があるんだよね。大事過ぎて。もうあの人は自分の言葉で話をする事が出来ないから、一方的な決めつけになったとしても、反論できないじゃんね」

-- なるほど、難しいね。

「だから、話をするのは簡単なの。話をするのは好きだから(笑)。でも今いない人の話をするのは私にはリスクが大きいね。他の3人が話すのとは、ちょっと立場が違うもん」

-- 確かに。

「トッキーの事だからそこらへんは上手く編集してくれるんだろうけどさ、自分からはなかなか、ね。ごめんね、相変わらずで」

-- なんのなんの、腕の見せ所だと思ってるよ。

「あはは」

-- 皆の前で初めて叩いた時の頃覚えてる?

「それは覚えてるよ(笑)。初めて会った年の年末でさ、皆お酒飲んでて。そういう事強制したりする人達じゃないけど、ノリでね」

-- 繭子も飲んだの?

「うん(笑)。これアウトですか?」

(伊藤を見やる繭子。伊藤、苦笑したまま首を横に振る。これくらいの話私がなんとでもする、という頼もしい表情)

-- このくらいでアウトにはさせないよ。前のスタジオってさ、皆結構入り浸ってる感じだったの?

「うん、今とさほど変わらないイメージ」

-- 変な事聞くようだけどさ、前のスタジオって自分達のものじゃないよね? 使用料とかどうなってたの?

「お金の話(笑)!」

-- ごめん、気になっちゃった。

「私はバイトしてたし、なるべく自分で払うようにしてたよ。ただちょっと甘えてたのは、父親がスタジオ会員になってくれてさ、事情も理解してたからある程度援助してもらってた。それでも頻度が頻度だったから結構頑張ったかな、バイト。他のメンバーはー…」

(繭子の視線を受けて、伊藤は唇に人差し指を当てた)

-- なるほど。それで?

「何がそれでだよ全く(笑)。でー、まだその時は全然下手くそだったから却って抵抗なく叩けたんだよね。酔ってたのもあるし、楽しかったな。アキラさんのセットに座れる事とか、あの4人が仲良さそうにゲラゲラ笑ってる姿とか。当時の自分の日常と比較しちゃうと、どうしたってそこが天国に思えたよね。何叩いたかなー。多分コージーだと思うけど」

-- コージー・パウエル?

「渋いでしょ。何が良いかなーって、皆が好きそうなの狙って叩いた」

-- あはは!何叩いたの? どんな反応だった?

「『スターゲイザー』。皆ポカーンとしてた」

-- あっはは!そりゃそうだわ、そんな女子高生いないよ。やったね!

「イェイ!」

-- アキラさんて、繭子にどんな風にドラムを教えてくれたの?

「あーっと…、だから手ほどきのような事はなくってさ。前にもちらっと話した気がするけど、私の方からは色々聞けなくて。話はたくさん聞いたけど、実際に模範演奏があって、じゃあ次繭子叩いてみなーみたいなのはほとんど無いんだよね。勿体無いことしたな」

-- そっかー。でも優しい人だったんでしょ?

「子供みたいな人だったよ」

-- そうなんだ。前に誠さんから聞いたのがさ、末っ子体質だったって。

「アキラさんが? どーなんだろ。私からしたら皆10歳以上年上だからそんな風には見えてないけど、確かに可愛らしい人だよ、うん。顔だけ見たら本当にキリっとした男前なんだけど、いっつも目を細くして笑っててさ、なんか…ニヤニヤしてるの」

-- あはは!言い方!

「ニヤニヤは失礼か。でもそう、うん、ニコニコ笑ってるイメージ。笑顔」

-- へえ、そうなんだ。ジャケット写真だとそうでもないしさ、少ないインタビュー記事の写真とか見ても、割と真面目なイメージだったからね。やっぱり聞いてみないと分からないよね。

「うーん。…私がまだ十代で視野が狭かったのもあるだろうし、年の近い誠さんがいてくれた事や、それこそ織江さんみたいなしっかりした人が側にいたからっていうのもあるから、言葉とか行動を受けて彼らを自分で判断する前に、頭っから漠然と信頼しきってる部分は確かにあったよね。その時点で何を知ってるんだってくらい付き合い浅いくせに、何も不安や怖さがなくて。でもそれって私じゃなくて向こうの人柄だと思ってるんだけど、そこにはアキラさんの可愛さっていうのも、理由としてはあったかもしれない」

-- 可愛さって?

「目線が…、同じって言うと申し訳ないけど、全然上からではなかったからね。同じ年の友達と話をするように、聞いてくれたし、返事してくれてたから、カオリさんが驚いてたもん。あいつ丸くなったなーって(笑)」

-- そうなんだ(笑)。

「私は尖ってた時代をまだ知らない頃だからそこまでピンと来てなかったけどね。…だってさ、今思い出したけど、あの人、えー、ビックリマン?」

-- ん、何?

「あの、シールの付いたお菓子あるでしょ。今でもあるのかな。ビックリマンシール」

-- ああ!懐かしい!あった!

「アキラさんあれを集めてたの」

-- あははは!嘘!可愛い!

「可愛いでしょ? そいでさ、スタジオ遊びに行った時に『繭子、これあげるよー』ってくれるわけ。見たらそのビックリマンのキラキラしたシールなの」

-- ふふ。

「意味分かんないじゃん。何ですか?って聞いたら怒って『何ですかじゃないよ!お気に入りの奴上げるっつってんの!』って。本気で怒ってるわけじゃないよ? これ、どうするものなんですかって聞いたら、『財布に入れといてー、休み時間とかに見て、ニヤニヤするの』って」

-- 素敵な話だねえ。今でも持ってる?

「もちろん。落とすの怖いから財布には入れてないけどね。だから、そういう話は一杯あるよ」

-- あはは、良いなあ。アキラさんて繭子に対してだけそういう感じだったの?それとも皆に対しても同じような態度だったの?

「そういう感じって?」

-- 可愛い男の子みたいな。

「そうだよ。ああ、末っ子体質ってそういう感じなのかな。あの人達はもちろん全員同じ年だしタメ口でふざけ合ってるから、誰が上とか下とか全く感じないけど、アキラさんがやっぱり突っ込まれてる場面を多く見かけたね。竜二さんとアキラさんは、とにかく翔太郎さんに突っ込まれてた」

-- 目に浮かぶよ。

「あはは、だろうね。ただいざ演奏を始めるとそうじゃないんだよね。私がずっと溜息ついて憧れた、あの4人の一体感とか奇跡のバランスは、彼らでしかありえない物だと今でも思ってる」

-- そうなんだね。

「うん。同じドラムスだから言うわけじゃないけど、当時で言えば一番いい音出してたのはアキラさんだと思うよ」

-- ええ!?

「あの人がバンドの音を前へ前へ押し出してた。前にさ、翔太郎さんがインタビューで言ってたじゃん。あいつが一番音楽的な才能があったって」

-- うん。

「あれってきっとそういう事だと思う。上手いとか下手っていう事じゃないんだけど、当時から既に自分の出してる音に迷いがないというか。練習とかリハって普通はもっといい音、もっと格好いい演奏を手探りしたり確認したりする時間でしょ。でもアキラさんだけはいつも自信満々だった。迷いなくドッパンドッパン叩いてたよ。なんなら、翔太郎さん達がそれに合わせてた」

-- へええ!

「ように見えた(笑)。思い出補正かもしれないけどね」

-- いやー、それは凄い話だよね。だってそういう思い出があると、繭子としてはアキラさんの壁はやっぱり高いよね。

「もうだから、そこを超えようとする事を諦めたよ。私は私なりのやり方であの人達とやって行こうって。私が彼らを前へ押し出すのは無理だから、せめて横並びで、一緒に食らいついていこうって。絶対に振り切られないぞって(笑)」

-- そっかー。音源を聞いてるだけだと、よりクリアで粒の揃った、硬質な音を出してるのは繭子の方だって思ってしまうけど、実際にステージ演奏となるとテクニックだけではないプラスαが大きいんだね。

「逆にそうじゃないと、本当に機械でいいじゃんってなるよね。機械を超える演奏をするには人間なりの良さを出していかないとさ。それはやっぱり呼吸だったり、間合いとタイミングを自在に操れたり…うん、そういう部分じゃないかな。人間関係が一番大きいよね。スタジオミュージシャンの集まりでは出来ない演奏をやってる自信はあるよ」

-- そうだね、そう思う。

「たまに、マユーズやっててね」

-- うん。

「演奏中とか歌ってる時って単純に楽しいけど、やっぱりどこかで他のパートを聞いちゃうじゃない」

-- 比較しちゃうって事?

「比較っていうよりー…」

-- 私ならこう叩くな、とか?

「ああ、近いね。どうやってその音出してるかとか、どうやって叩いてるかとか、見ちゃうよね。前にここでメタリカの『St.Anger』を演奏したでしょ。あの時もさ、何がスゴかったって、本気で『あなたラーズなの?』って思って(笑)。そういう凄さって翔太郎さんには誰も敵わないけど、でも単純にドラム叩く技術だけで言えば私が負ける理由はないんだよ。でもびっくりして振り返っちゃうレベルで、何だ!? 超上手い!?って嫉妬するわけ」

-- あはは、凄かったもんね。

「ねえ。でもさ、本当に凄いなって思う瞬間って実はそこじゃなくて。大成さんだって溜息出るぐらいギター上手いし、竜二さんだって普段あれだけ歌いながらギター弾いてる人が、サラっとベース担いで演奏出来ちゃうわけじゃない。余裕綽々でジェイムズコーラス当ててくるしさ」

-- 繭子も十分凄かったけどね。圧巻のパフォーマンスだったもん。

「ありがとう。でも私の歌は気持ちであって技術じゃないでしょ。それだけにさ、いざドーンハンマーとしての布陣で音を出した時の、あの人達の収まり具合って言っていいのか、『コレだ!』っていうハマリ具合と来たらさ、もう感極まって涙吹き出るくらい格好良いんだよ」

-- そうだね、めっちゃ分かる(笑)。

「このカタルシスを味わうためにマユーズはあるんだ!って思っちゃうくらいね、次元が違うんだ。何が言いたいかっていうと、そこにもともと嵌ってた黄金のピースがアキラさんなんだよ」

-- ああ、うん。

「その凄さたるや、って感じしない?」

-- うん、よく分かるよ。言いたいことはね。

「別に自虐的な話がしたいわけじゃないよ?」

-- 分かってるよ。私が質問してそれに答えてもらってるんだって、ちゃんと分かってるよ。だけどドラマーとしての彼の力量とか存在感って、実際同じ時間を過ごした人にしか本当の意味では分からないと思う。だから少し具体的なエピソードを聞いていきたいなと思うんだけど、楽曲制作において、アキラさんてどの程度参加していたのかな?

「ああー、ごめん、それは分からない。バンドの内情なんかは、実際に私が加入するまでは全然知らないもん」

-- そっか、そりゃそうだよね。

「うん」

-- 夏にさ、翔太郎さんと二人で会議室で話をしてくれたの覚えてる?

「どの日だろ、結構あるよね、それ」

-- 夏だよ。七月とかだと思う。確か渡米直前で。あのね、その時繭子が、ドラムパートだけじゃない部分でもっと貢献していきたいって話をしてたの。

「ああ、うんうん、そうだね」

-- その気持ちって今も変わってないと思んだけど、そこにはアキラさんに対する思いなんかも作用してるのかなと思って。

「うん?アキラさんが楽曲制作に深く関わっていたから、私もそうありたいって思ってるんじゃないかって?」

-- そうそう。

「でも今言ったみたいに、私そこは聞いた事ないんだよね」

-- そっか。

「別に聞いたら教えてくれたと思うんだけどね。初めのウチはそんな話にならないし、私自身がそこまで気が回らなかったよね、必死だったし。2ndを出せた事が何よりも嬉しかったし、そこから枚数を増やしていくにつれてもちろんやれる事も増えたし、要求される事もすぐに理解出来たり、反応出来たり、喜んでもらえたり、そこが嬉しくて。言ってもまだ10年だからさ。長いようで、あっと言う間だったから、ほんと去年辺りからなの、欲張り始めたのって(笑)」

-- 欲張りだとは思わないよ。メンバーとしては普通の事だし、きっと翔太郎さんも嬉しかったんじゃないかな。

「どうかなぁ」

-- 今回の、『NAMELESS RED』ではどうなの?

「いやー、無理無理、まだそんな具体的な事が出来るような案はないよ(笑)。意識としてね、ドラムパートだけで満足しないぞって思ってはいるけど、作曲って本気で難しいんだからね」

-- あはは、そっかそっか。

「そうだよー」

-- でもさ、私知ってるよ。

「何を?」

-- インタビュー撮ってない時間でもスタジオでよくカメラ回してたり、固定から外してメンバーと積極的に話したりしてるでしょ?

「オフショットの事でしょ?」

-- うん。

「あれ、あいつの趣味なんかなーって竜二さん言ってたよ」

-- 違うよ!

「そうなの? そうなんでしょうねえって言っちゃった」

-- ちょっと(笑)。編集で使うのよ、色々と。話逸れちゃうけど、収録出来る時間や尺は決まってるから、普通にインタビュー映像そのまま使うとそれだけで終わっちゃうでしょ。だから違う映像に各個人の声だけ乗せたり、繭子が考え事してる映像の上に別撮りの声当てたりしながら作っていくんだよ。だから全部資料です。

「なるほどね(笑)。で、何を知ってるって?」

-- よくここ座ってさ、それこそさっき繭子が言ったみたいに、他のメンバーがそこで音合わせしたり色々試してるのを見ながら歌ってるもんね。

「ええ!?」

-- 気付いてないの? 口パクパクさせてるよ。『タラッタッタター、パパラパー、パパラパー、ダッダーン』みたいな。

「ちょっとー! ふわー、そーかー」

-- うん。それ見てて、ああ、作ってるなーって思ってたんだけど。

「超絶恥ずかしいなあ。…織江さん笑い過ぎですよー。でもさぁ、普通そういう場面見たらドラムの譜面考えてるとか思うもんなんじゃない?」

-- でも繭子はドラムパート考える時はやっぱり実際に自分のセットに座って考えてるんじゃないかと思って。考えるというより他のメンバーと話をしながら即興で叩いて、直して叩いて。フレーズ作る時も叩きながらな気がする。

「よっく見てるなー、その通り過ぎて気持ちが悪いよ」

-- おい(笑)。ってだからね、機嫌よく頭の後ろに手を回しながら口ずさんでる歌を聞いて、それが私の知らない歌だった時はいつもドキドキしてたよ。『新しい波が来ようとしているのだ』って勝手にナレーション付けてた。

繭子と伊藤の明るい笑い声がスタジオ内に響く。

「しているのだ」

-- のだ。うん、でも違ったみたいだね。

「いや、違わないけどね。確かにさ、私が前に言ってた貢献の仕方はどちらかと言えば作曲というよりは翔太郎さんで言うリフに近い発想だからね。自分の中に自然と沸いて出て来たメロディをいつか形に出来たらいいなと思うけど、まだそこまでは」

-- マユーズで形にしたり。

「まだその方が現実味あるね。でも本当にやりたいのはそこじゃないよ」

-- そうだよね。

「それよりも最近嬉しいのがさ」

-- うん。

「ちゃんとドラムスとして、バンドの一員として必要とされてるんだなって思える瞬間が増えて来た事なの」

-- あああ、いいねえ。求めてた事だもんね。

「あはは、うん。だから夏?に言った制作に関しては今も思ってるけど、それ以上に今ドラムが楽しいんだよ」

-- 例えばどういう時?

「なんか、言葉にすると色々変ってしまいそうで、どうだろうか」

-- そうなの?オフレコにする?

「外に対してというか…。一番私が嬉しいのがね」

-- うん。

繭子の目が伊藤を見つめる。

黙って私達の会話を眺めていた彼女が姿勢を正した。

「大成さんにも言わないで欲しいんですけど」

伊藤はうんうんと真面目な顔で頷く。

「私がいない状態で練習を始める事がなくなったなって思うんです」

繭子の言葉に、またも伊藤は真面目な表情でうんうんと頷く。

「なんなら、練習を始めるきっかけは私で、私がスタンバってると、それを見て大成さん達が集まってくれるんです。時間は決まってるので偶然かもしれません。だけど、時計で確認するよりは私の動きを見てくれているように感じます。それにこれまでは、翔太郎さんと大成さんが二人で練習している事もよくありました。『遅れてすみません』って私が頭を下げて参加すると、別に二人は怒りもせずに『勝手にやってただけだから』と仰ってました。だけど去年はずっと、私がいない時に練習されてる姿を見なくなって。勝手にですけど、お前がいないと練習になんないだろって思ってもらってるのかなーって。そういう事考えるとなんか嬉しくて」

伊藤は小さく『うん』と答えた。

あえて言葉少なに返事をしたようには見えなかった。

彼女なりに思う部分が、胸を一杯にしているようだった。

「アキラさんがそうだったんだよ」

と繭子は私を見て言った。

-- そうなんだ。

「アキラさんて練習は嫌いなのかもしれないけど、きっと4人で音を出す事は大好きだったと思うの。だから練習だとは思ってたかったのかもね、スタジオの時」

-- そっかあ。スタジオで4人でおしゃべりしてる間もずっとドラムセットに座ってて、アキラさんきっかけで練習が始まるっていう感じだったのかな。

「そうそう、本当にそんな感じ。私が顔出す時間にはまだ音は鳴ってなくて、ひとしきり笑い話で盛り上がって。『じゃあ』ってアキラさんがスティック握って、翔太郎さんが煙草に火をつけて、大成さんは逆に煙草を揉み消して。竜二さんの叫ぶ『スリーフォー!』がホント、格好良くて」

-- ううう、目に浮かぶ!

「あはは。だからね、そういう一員になれた気がして、そこは密かに喜んでるんだ」

-- それは嬉しいねえ。聞いてて私も嬉しいもん。

「なんで(笑)」

-- 分かんない。胸アツ。

「…誰?」

-- あはは。

(ムネアツ、という人の名前だと思った模様)




「ちょっと、ドラムとは関係のない話してもいい?」

-- もちろんだよ。

「私がまだ高校生の時。16歳の時に皆と出会ったって言ったでしょ」

-- 13年前になるね。

「そうだね。生まれた子供が中一になるね」

-- あはは、繭子が産んだみたいに聞こえるから。

「…」

-- …やめてよ!

「ごめんごめん!そういうジョークはよくないね。もうしないよ」

-- 心臓に悪いよ。ホラー、織江さん真っ青じゃないのー。

「ウソですウソです、ごめんなさい」

(『イイイー』と言いながら繭子のほっぺをつねる伊藤)

「あはは。ごめーん」

-- 13年前って言うと、皆さんが28歳とかですね。今の繭子と同じくらいだ。

「そうそう。もともと私がドラムを叩き始めて、いじめに合って学校休みがちになるでしょ。その時スタジオでドラム叩く事が唯一の救いみたいになってたんだけど、実を言うとアキラさんは、そういう私を外へ連れ出そうとしてくれる人だったの」

-- そうなの? 意外。

「そう?」

-- うん。アキラさんがっていうか、皆さんがそういう繭子をスタジオという自分達の基地に招き入れて守ってくれていたイメージだったから。

「あー」

繭子が天井を見上げて少しの間言葉を切った。思い出しているような目だった。

「そういう気持ちも、皆は思ってくれてたかもしれない。ただその、守るっていう方法がさ、いじめてる奴らや黙認してる学校の目から守るとか、触れさせないように匿うとかそういうんじゃなかった気がするんだよね」

-- うんうん、なるほど。

「よく言われたのがさ、『お前は普通にしてりゃあいいんだ』って。それはアキラさんにもさんざん言われた。ずーっと言われてた言葉。『お前は何も気にする必要なんてない』って。多分、そう出来ない私を見兼ねてなんだろうね。だからスタジオでドラム叩いてるとさ、ちょっと付き合えよって言って連れ出して、コンビニでお菓子買ってくれたり、アイス買ってくれたり。テイクアウトのお弁当買いに行って一緒に並んだり。そいで持ち帰らずにお弁当屋さん横の駐車場で二人で立ったまま食べて、そのまま買いに戻って店員さんに『え?』って言われたリ(笑)。だけどそういう時間の間でも特別な話は何もしないの。学校の事聞かれたり、友人関係や男関係の話もされた事ないし。なんだったらさ、『ごめんねえ、翔太郎も大成も、お前が来る時は煙草控えなって俺言ってんだけどさあ』って謝られてさ。もう、びっくりして。『やめてください!』って言ったらアキラさん大笑いしてた」

-- 素敵な人だねえ。うわー、何だろう、素敵な人。

「うん。私をちゃんと一人の人間として扱ってくれてた」

-- そうだね。凄くそう感じる。

「前に会議室でさ、子供の頃アキラさんて体が一番小さかったって言われてたでしょ?」

-- うん。

「ジャケット写真とかインタビュー記事を見てるからトッキーは知ってると思うけど、大人になってからはそこまで皆に差はないんだよね」

-- そうだね。竜二さんが骨太で、大成さんは一番背が高いけど、皆さんそんなに凸凹なイメージはないよね。

「うん。でもアキラさんが19、20くらいのヤンチャが抜けきって無い時代の写真とか見せてもらうとさ、ガタイ云々抜きでとにかく凶悪な人相で半端なく怖いんだよ」

-- あははは!その頃ってあれじゃないの。竜二さん達がお互い反目し合ってた頃の。

「そうそうそう。その頃のアキラさんて、マンガみたいな髪形なのよ。完璧なモヒカンで、トサカの部分以外を綺麗に剃り上げたスキンヘッドで」

-- いえええ!?

「うふふふ、いいリアクションするなぁ」

-- バンドのアー写かインタビュー記事でしか見た事ないもん、そんなイメージ全然ない。

「あはは、まあないだろうねえ。それがさ、普通になんでもない時間にね、いきなり『これー』って言ってそういう写真見せてくれるの」

-- 本当に面白い人だねえ。ちょっとトボケた感じの人なのかな?

「うんんー、どうだろ。私は、敢えて取っ付き易くしてもらってると感じてた」

-- ああ、やっぱり大人なんだ。

「そりゃそうだよ。言っても30前だもの(笑)。それでもね、そういうマンガみたいなThis is 不良みたいな写真見ても、当時の私ってうまくリアクション取れなかったの」

-- なんなら嫌いだっただろうしね。

「うん。『この頃俺、超喧嘩強かったのー』って笑顔で言うのね。『あ、はあ』って。え、私いじめられてるの知ってますよねって思いながら、でもそんなの関係ないくらい笑いが込み上げて来て。アキラさんの持ってる、人をこう、柔らかくする、柔和にする?そういう力って本当に凄いんだなーって」

-- へえー。なんだろうねえ、その魅力の源は。

「私馬鹿だから言葉には出来ないんだよね。きっと私だけじゃなくて誰に対しても、相手のバリアを簡単に溶かしちゃうくらい人懐っこい人でさ。物凄く近い距離感なんだけど全然嫌な気持ちになったことないし、不思議だったなあ、あの人の持ってる独特の空気。それでさ、『俺今はドラム叩いてるけどさ、今でもそこそこやれると思ってんだよねえ』みたいに言うわけ。ん?ってなるじゃん。何がですか?って」

-- うん。うふふ、またなんか突拍子もない事言いそうな気配(笑)。

「『お前になんかあったら俺が一番に突っ込んでくからな』って」

-- …ああ、…もう!

視界の隅で、ずっと耐えていたであろう伊藤の頭ががくんと前に倒れたのが見えた。

私は奥歯をぎゅっと噛んで涙を堪えた。

アルバムのジャケット写真。

かつて見た初代ドーンハンマーとしての宣材写真。

弊誌で収録した若き日のインタビュー写真。

それらで私が目にしてきた善明アキラの顔は、そのどれもが凛々しかった。

ファーストアルバム『FIRST』におけるリーフレットの最終ページ。

そこに映る彼は微笑みすら挑戦的で、横並びで立ちカメラから視線を外して隣の伊澄を見ている横顔などは、ブロマイドにして財布に忍ばせておきたい程の魅力に溢れている。

しかし今日の今日まで、善明アキラという男が人懐っこく良く笑う人だとは思ってもみなかった。可愛らしい少年のように、繭子のボロボロだった心に優しく触れていたのだと、考えもしなかった。




『-- 前略、善明アキラ様。


私は名もなき編集者です。

あなたとこの先もうお会い出来ないことが、

あなたと直接お話出来ないことが、

こんなに辛く悲しい事だと思い知ったのは今日が初めてです。

私は今、芥川繭子と毎日のように言葉を交わしています。

彼女の笑顔と、彼女の叩くドラムの音、

彼女の優しさと、彼女の持つ愛情の向こう側に、

今日初めて血の通ったアキラさんの存在を感じる事が出来ました。

あなたがいなければ、私は今ここにいなかったのかもしれません。

繭子は今も、あなたと並んで食べたというお弁当の具材を、

全部覚えていると言っていました。

あなたがくれたビックリマンシールのキャラクター名は知らないけれど、

10年以上使い続けるスネアのシェル(胴体)で、今も彼女を見守っているそうです。



アキラさん。

これからも私は、たくさん繭子の姿をカメラに収めたいと思います。

あなたが彼女の事を見守っていた優しい眼差しを思い浮かべながら、

私はカメラを回して行きます。

そして出会った日から今日の今まで彼女の前に立ち、

とてつもない実行力で彼女を引っ張り続けているあなたの親友達の素晴らしさを、

世界中のメタルキッズに届けるのが私の夢です。

いつかそれらを纏めて、両腕一杯に抱えてあなたの元へ届けに行きますね。

その時は私にも、素敵なニコニコスマイルを見せて下さいね。



アキラさん。

本当に、お会いしたかったです。

あなたが繭子に放った言葉が、時を超えて私にまで届きましたよ。

繭子は毎日あなたと共にいます。

あなたと共に、ドラムを叩いています。

これからもよろしくお願いします。

私もあなたの演奏を繰り返し聞きながら、ともに生きて行きたいと思います。

いつか芥川繭子という努力の天才が、あなたを追い抜く日が来る事を信じて。



それでは、また』




「喉の奥をガルル!っ鳴らしながら言うの。『繭子。だからお前は安心してただ普通に生きてりゃいいよ。それでももし暴れたくなったら、いつでも俺のスイッチ押せ。いつだって俺がお前の代わりに突っ込んでってやるよ。だからドラムを捌け口にしちゃいけない。もっとしなやかにさ、歌うように叩くのがいいよ。…って、カオリが言うんだよ』って。そんなわけないよねえ」

-- んんー。んーー、ふふ。…あー、ちょっと待ってね。

「待たない。それでね…、アキラさんが言うには…」





















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