連載第38回。「ニューアルバム」
一番最初に準備を完了させるのはいつも繭子だ。
まだ誰も楽器を持っていなくても、決められた時間近くになると時計を確認し、ストレッチを終えて立ち上がる。長年同じことを繰り返しているのだ。今更誰かに声を掛ける事はない。"アギオン”ライダースを脱いで無造作にソファーの背もたれに置くと、両腕を真上に伸ばしながらドラムセットに向い、座る。使い古したスティックを握るとキックペダルに足を置いて、深呼吸。目を閉じる。
PAブースから神波が姿を現す。既に上着を脱いでいる彼は、12月の今の時期だととても寒いであろうTシャツ一枚の姿だ。線が細い為余計にそう見えるのだが、実はメンバー内イチの暑がりだそうだ。先に準備を終えている繭子を一瞥すると、立てかけてある自分のベースを持ち上げて肩にかける。サングラスの真ん中をクイと指で押すと、両足を大きく開いて、深呼吸。
そこへスタジオの扉を開けて伊澄が入ってくる。羽織っていただけの"MADUSE”ライダースをソファーに投げると、神波と繭子を見る事もなくギターを持ち上げる。ギャ、ギャ。無意識に右手が動いて弦を撫でる。アンプの上に置いた灰皿で銜えていた煙草をもみ消す。モニター類、エフェクト機器などにざっと目を通すと、左手でネックをグイっと引き寄せ、ガーン!と一撃音を鳴らしながら左手を外へ開く。そこで初めて2人の顔を見て、何かを確かめるように頷く。
頷き返す神波と繭子。
何度も見ても何が、どこが合図なのか分からない切っ掛けを経ていきなりの爆音スタート。
まだ池脇は来ていない。3人での、練習開始。
一発目は最近の練習では必ず頭に持ってくる定番、「NO OATH」だ。
恐らく次のアルバムでは、「BATLLES」と並ぶキラーチューンとなるだろう。
速さ、重さ、手数、3拍子揃ったその熱量と勢いは、聴く者の感情に波風を立てるほど煽情的だ。
満面に怖い程の笑みを浮かべた池脇がスタジオ入りする。一心不乱にギターとベースを弾きまくる伊澄と神波の真ん中に立ってマイクを取り上げると、なんの脈絡もないタイミングで叫び声を上げる。
ザアアアアアーーーース!(と、聞こえる)
池脇の絶叫が終わる瞬間を見計らい、伊澄と神波が演奏を止め、繭子と共に2発目の曲が始まる。『GRAND SPIN PARTS』だ。池脇はその場で回転し、繭子を見ながら歌い始める。神波は両肩を上下させながらヘッドバンキング。繭子は池脇に微笑み返しながら目にも止まらぬスピードで左手のワンハンドロール。伊澄が左足を大きく前へ踏み込んだ。
ああ。フロアよ! 裂けろ!
2016年、12月5日。
-- お疲れさまでした。どうやらニューアルバムの曲順は決まりそうですね。
R「お疲れさん!ううーんと、え!なんだっけ!?」
-- あはは、練習終わりの一発目はいつもテンション高いですね。あ、タオル使って下さい。
R「お!ありがとう。優しい!あああ(一声唸るとペットボトルの水を一気飲み)」
M「一曲目のインストが出来上がれば、一応の流れは固まるんじゃないかな。ですよね?」
S「うん。今日やった流れをそのままパックするかな」
-- 間違ってなければ、11曲です。あ、インスト入れて12ですね。
S「そ。日本で出す奴にはマユーズのおまけつけて、アメリカで出す奴にはボーナストラック。あと1曲」
-- 日本版には『still singing this!』のMVボーナスDVDですよね。驚きました。CDには入れずに、音源化ではなくDVDでのみ見れる形なんですね。アメリカ版に入る曲って、新曲ですか。それともデモか、以前の曲とか、ライブverとか。
S「新曲そのまま入れるとただの13曲目になっちゃうから、一応例の、なんちゃら試写会で演奏してみせた時の、『COUNTER ATTACK :SPELL』を入れる予定」
-- ファーマーズverというわけですね!それは喜ばれますよ、ファンにも、そしてファーマーズにも(笑)。
S「だといいけどな」
-- え、もしかしてスピーチも入れます?
R「あははは!勘弁してくれよ!」
S「スピーチ自体は入れないけど、俺達がドーンハンマーだー!てのは入れようかなと」
-- うおおああ、これはちょっと本気で2枚買うべきアルバムになりますね。
S「どっかのアイドルみたいに商売根性出していこうと思って」
-- 駄目です駄目です。ドーンハンマーの口からアイドルという言葉が出ると『タイラー』を連想する人結構多いですから、誤解を与えちゃいますよ。
S「割と近い事やってんだろ。知ってるぞ、アルバム以外にも何枚か細かいCD出してるの」
-- もう!
M「もう!」
S「なんだよ(笑)」
-- そういう他所さんの話はさておき、現時点で出来上がっている11曲をおさらいしてもよろしいでしょうか。こちらでいただいている資料に間違いや変更が無ければ、このような曲名と順番になりますよね。
1.(イントロ・未定)
2. NO OATH
3.GRAND SPIN PARTS
4.UNBREAKABLE FRONTLINE
5.BATTLES
6.MAD USE
7.ONE KILL BY ME ATTACK
8.BEHOLD
9.GONE BY
10. REMIND ALL!
11.DEAD BY HIGH HOPES BELLS
-- なんだか、コンセプトアルバムのようなタイトルの並びですね。一見戦争映画のようでもあり、強いメッセージを投げつけてくる楽曲陣です。
М「4.5.7が特にそうだよね。この並びに入れることで『BATLLES』が更に光る気がする」
-- やはり今回はどこかでそういった、言葉で響くメッセージなども取り入れてみようと?
R「うーん。…それが全く」
-- え!? ご冗談ですよね。
M「なはは」
R「そんなもんよお、戦後生まれの日本人が向こうで戦争をテーマに歌なんか歌えるわけねえだろ。たまたまだよ。たまたま」
S「繭子が余計な事言うからだ」
M「ごめん、適当にそれっぽい事言ったけど、私たちは相変わらずだよ」
-- うおーー、まじかあ。これはある意味ものすごい事ですよ。ここまで意味深なタイトル並べておいて、やっぱり歌詞の中身は8割どうでもいいことなんですか。
R「(笑)、まあ、そうだな。一応、今回何曲かはちゃんと意味の通った歌詞を書いたのもあるけど、基本的には曲と音重視。そこは変わらねえな。やっぱり最後にぎりぎりのところで、変えちゃなんねえなっていう思いが強く針を振り切ったっつーかね」
-- うー。やっぱり凄いなあ。感動すら覚えますよ。
R「前に時枝さんが直感した『GONE BY』以降ラスト3曲は、割とシリアスにちゃんと書いてみた。けどそれより前の曲は全部勢いだね。それこそ、4.5.7は歌詞の中にタイトルは一切出てこない」
-- 出た。
T「うふふふ」
-- (笑)。まあ、もう慣れてはいるんですけどね。でもここへ来て、やはりアメリカ進出何するものぞという姿勢を貫く意志の強さは、ファンとして胸が熱いです。
R「だろ?」
-- はい。いくつかお伺いします。まず、アルバムタイトルは?
R「本当は『GONE BY』にするかっていう案もあったけど、もう『GONE』っていうアルバム出しちゃってるしな」
S「『GONE』なんて曲ないのにな」
M「はいはい、私のせいです、ごめんなさい。もう何回も言われましたよ(笑)」
-- それは繭子のせいじゃないよねえ。5枚目のアルバムだから『GO』は流石にねえ。『FIVE』ならまだしもねえ。そもそも『GO』っていう曲だってないですし。
M「そうだよー。しかもあの時私何回も、良いですか?良いですね?って確認しましたよ」
-- あはは、そうなんだ。
M「当たり前だよ、勝手に決められるわけないじゃん。私あのアルバム大好きだからちゃんとしたかったんだけどなあ。出来上がった瞬間もう興味なくした感じになってたの、3人とも」
-- そうなんですか?それはどういう…。
S「どういうって?そういうもんなんじゃないの」
T「なあ。さ、次次、って」
R「5枚目6枚目なんか特にそうだよな。取り合えずライブやりてえ。早く曲書いて早くレコーディングしてめちゃくちゃ暴れてえっていう時期」
M「『ASTRAL OGRE』『GONE』『NOCTURNAL DROP』あたりまでは結構色んなトコで揉め事多かったですよね」
S「竜二がイケイケだった頃な」
M「人の事言えませんからね!」
T「この際言っとくけどウチで一番イケイケなのお前だからな」
-- あははは!あ、ごめんなさい。
S「笑いすぎだ」
M「ほら、ほら、ね?」
(一同、笑)
R「でも今にして思えば、『ASTRAL OGRE』も『NOCTURNAL DROP』も軽く恥ずかしいくらい自分からは出てこないフレーズで笑うわ」
M「私は結構好きですよ。曲名で言えば、『GONE』の『NO!YES!FUCK!』とかすごい好き」
-- 初耳(笑)。でもちょっとパンク寄りじゃない?
M「そうかもね。だけど自分トコのバンドでさ、こういう分かりやすいド定番な語感の曲を持ってるのって、よく分かんないけど嬉しいんだよね。「HELLYEAH」に通じるダサ格好いい感じというか。自分だとつけたいけどつけられない名前って、あると思うんだよ。そういうのって他人が平気な顔でつけてると羨ましくなっちゃうんだ。だけどうちにもそういうのあるんだぜ!って言いたい」
-- 分かる気がする。ちょっとジャンル違うけど、「ダイナソーjr」が出た時はなんじゃそりゃって思ったし。
R「あははは!」
T「面白いね。いいの、そんな事言って」
-- 分かりませんけど、別にディスってるつもりはないですよ(笑)。…あれ、なんの話でしたっけ。あ!アルバムタイトルですよ。教えてくださいよ。
R「DEAD BY DAWN」
-- え?
S「またまた(笑)」
R「っていうのが繭子の案で」
-- まあ、私は好きですけどね。
M「良かったあ」
-- ただでも、もう既にありそうですけどね。
M「そうだね。DEAD BY HAMMERと迷ったんだけどね。織江さんに、殺人事件の見出しみたいだよって言われて」
-- 確かに(笑)。
R「でもそういう方向性は気に入ったんだよ、俺らも」
-- ええっと、自分たちの存在をタイトルに持ってくるような。
R「そうそう。今までやった事ないしね、いいタイミングかもって。今まで繭子や織江にはタイトルで苦労かけてるしな。ちゃんとしたの、ここらで考えてみようかって」
-- 本当は全曲その意気で曲名つけてほしいですけどね。
M「あはは。でも私何度も言うようだけど、この3人の中から出てくる言葉とか、言葉選びとか好きなんだよ。歌詞とリンクしない事が多いっていうのがちょっと問題なんだろうけど、センスは本当好き」
-- 相性なんだろうね、それも。こういう仕事続けてると、とにかく色んなバンド名や色んな曲名を目にするから、麻痺しちゃうの。何が格好いいんだっけ?って。だから、こういうの好き!って思える気持ちは大事だと思う。
M「良い事言うねえ、ありがとう」
-- あはは、偉そうに言いました。
R「確かに、意味なんかなくたって力業で認知させるバンドが一番格好良いもんな。KORNとかhed:P.Eなんかその最たるもんだと思う。意味分かんねえもんな、最初」
-- そうですよね。ドーンハンマーもそうだと思います。
R「世間の目にどう映るかを考えた事ないもんな」
S「いやいや、一応は考えるさ。左右されないだけで」
T「それ考えてるって言えんのか?」
S「言えるだろ。これ世間的には適当な名前だって思われんだろうな、くらいはさ」
M「でもその後にはお決まりのセリフがくっつくんですよね?」
R、S、T『まあ、どうでもいいんだけど』
手を叩いて大笑いする繭子。私も釣られて笑ってしまってから、はたと気が付く。
-- いやー、もうー、全然タイトル教えてもらえないですね(笑)。
M「確かに(笑)。えーっと、アルバム名だよね。『NAMELESS RED』、です」
-- 名もなき赤?…うわ。超好きかも。
R「DEAD BY HAMMERから始まって、DEAD BY DAWN、NAMELESS BLOOD、NAMELESS BLOODY HAMMER、NAMELESS RED HAMMER、でもって最終的に」
-- 『NAMELESS RED』。ああ、良い響きですね。口に出して言いたくなる言葉です。
M「ありがと」
-- いえいえ。BLOODY HAMMERというボツ案を聞く限り、REDの赤はやはり血液の赤なんですね。皆さんの事ですよね。竜二さんがスピーチで仰ったNOBODYとも通ずるものがありますね。いいですね、格好良い。ああ、じわじわ来る。
R「あははは、相変わらず面白いなあアンタ」
T「面白いと言えばさ、さっきも出たけど織江にね、色々聞いてたわけ。んで、NAMELESS BLOODY HAMMERって聞いて何想像する?って聞いたら、『凶器?』だって」
(一斉に手を叩いて爆笑)
S「それは流石に違うよな」
R「そういうつもりは一切ねえよっつって」
-- (笑)。皆さん的には、このタイトルにどのような思いを込められたんですか?
R「本当はさ、言葉ではっきりと断言できるような意味合いを答えるのがこういうインタビューの意義なんだろうけど、外に向かって言えるような事は本当になんもないんだよな、残念ながら」
-- 語感やインスピレーションで選んだと?
R「どうしたってさ、本当の思いなんて伝わるわけねえし。言っちゃあ悪いけど、Billionをどれだけ世界中のキッズが読むかって話だよ。例えば、したり顔でよくある秘めた思いを語りだす馬鹿のインタビューを読んでるとさ、こいつ本当にこんなこと思ってんのか?って俺なんかは考えちまうわけ」
-- それを言われてしまうと、どうにも(笑)。
R「違う違う、あんたらの存在意義の話じゃなくて、受け手側の話な。俺達の問題。クソ真面目にインタビューに答えてるミュージシャンがいたとして、それを読んだ俺達みたいなひねくれ者は、その言葉を言葉通りに受け取らなかったりするわけだ。ましてや人種も言葉も違う奴が格好付けて言ってる言葉なんて、どうせ適当にその場しのぎの嘘っぱち並べてギャラ全部酒に変えてんじゃねえの?って思いながら読んでる所があって。全くの嘘だとまでは思わなくても、ふーん、っつって読み飛ばす事もざらにあるよ。何が言いてえかってーと、俺達自身がそういう強い思いみたいなのを言葉で発信する事に抵抗があるんだよ」
-- よく分かりますよ。特にあなた方のスタンスはすでに存じ上げているので、仰ることの意味は物凄くよく分かります。ただ…。
M「皆が皆、そういうわけじゃないしね」
-- そう思いたいですね。
R「うん。だからあんたらが世界中のミュージシャン掴まえて言葉を引っ張ってくる事は本来凄い事だし、面白い記事だってあるのは知ってるよ。そこをどうこう言いたいわけじゃねえよ。要はさ、そういう俺達だから、例え本当は何かしら思っていたとしても、気持ちを言葉に置き換えて見える場所に置いたりしないって事だ」
S「小難しい話をしてるようだけど意外と簡単な話なんだよ。このアルバムタイトルや曲名なんかもそうだけど、結局はそれを見た人、聞いた人がそれぞれ想像を膨らませた感想が全てだと思うし。そこでさ、いや違うんだよ、俺達が言いたいのはそういう事じゃねえよ、っていう反応を取りたくないんだよ。どうせ理解なんてされないんだから、適当でいいよと。とりあえず聞け、とりあえず見ろ。本当、ただそれだけ」
-- たとえ本当の意味での理解を得られないとしても、ご自分たちの胸の奥にある本心を突き付けたいという気持ちは、ありませんか?
R「…ない」
S「ないなぁ」
T「なきゃ駄目かい?」
-- いえいえ、そういうわけではないのですが、違和感があります。善し悪しの事ではなくて、私にはあなた方に強い思いがないとはどうしても思えません。繭子も同じ気持ち?
M「言葉で伝えたい思いがあるかないかって言うことなら、うん。ないよ」
-- だけど、アルバムタイトルを考える時に、DEAD BY DAWNっていう言葉は思い浮かぶわけでしょ?その他の言葉も色々ある中で、取捨選択する時の天秤は、じゃあどこにあるの?
M「私の場合は、格好いいかどうかだけかな」
S「俺もそうだよ」
-- なるほど(笑)。本当に徹底していますね。これまであなた方から聞いた言葉を思い出すに、これっぽっちもブレがない事に心底驚きます。
R「まだ一年経ってないってのに、そんなコロコロ気持ち変わらねえだろうよ」
-- それがそんな事ないんですよ。結構ありますよ、前言ってた事と違うな?って人。
M「そういう時どうするの?」
-- 以前はこうこう、こういうニュアンスで仰っていましたが、今回そのようなお気持ちになられた背景には、やはりニューアルバム制作に向けた思いが強く作用しているという事でしょうか?って。
M「へえーー!」
R「おおお、さすがだね。やるもんだな」
S「言ってる事違うじゃん!とは言えないわけだ」
-- 言えませんよ(笑)。それに心境の変化が必ずしも悪い事だとは思いませんし、否定的な持って行き方はしませんね。ただ、方向性の転換ぐらいなら良いんですけど、たまに事実と異なる事を言ったりする人がいて、それは正直困ります。
M「例えば?」
-- 例えば、来年3月に出される予定のニューアルバムですが、っていう話を振った時に、『は?出さないよ、そんなの』と。
M「止めちゃったってこと?」
-- いや、実際は出すんですよ。でも違う事言ったりする偏屈な人もいるって話。記事に出来ないから困るんだよね。
M「その人は何の意味があってそういう事を言ってるの?」
-- 単純に機嫌が悪いとか、やる気をなくしてるとか、うまく行ってないとか。
M「ああ、あはは。阿保な人の話ね」
-- あははは、まあまあ。人の事はこのぐらいで。これで、アルバムタイトル、曲名、曲順が決定しましたね。今回のアルバムで強いて一番の特徴を上げるとするなら、何ですか?
S「長い!」
-- そうですね(笑)。
R「大成の書いた曲が多い」
T「今回翔太郎あんまし時間なかったもんね。色々その他で忙しくしてたし」
S「んー、まあ言い訳にはならないけどな。っても、半々くらいじゃない?」
-- どの曲が大成さん作曲ですか?
T「3、4、7、8、11。あともしかしたら1曲目も」
-- 現時点で5曲ですか。確かに半々ですね。ボーカルの竜二さんとしては、翔太郎さんと大成さんの曲ではアプローチの仕方は変わるものですか?
R「昔はあったかもしれねえな。でも今は全くない」
-- 全くですか。
R「うん。多分俺の想像だけど、お互いの良いトコ盗んで、だんだん似て来たんだよ、この2人」
M「あ、分かりますそれ。私もそう思います」
S「相変わらず俺サビはよく分からないんだけど、自分のギターリフだけじゃなくて、俺なりに歌メロ考えたり、サビに行くまでの部分で特徴的なメロディ想像したりするのが好きになって来たのは自分でも思う」
T「ああ、そんな気はしてた。俺が逆に翔太郎ならこうやって弾くんじゃないかって想像しながら、導入部を考えてるのと同じ思考パターンだよきっと。本来自分が得意としてきた分野以外の所にも、意識が行くようになってきた」
S「そうそう。結局俺自分で書いても大成に書いて貰っても好きなように弾いちゃうからさ。そこはなんとでもするから、もっと違うトコで遊ぶのが楽しくなってきた」
-- やはり、ドーンハンマー以外での楽曲制作やプロデュースなども、影響しているんでしょうか。
S「あるかもしれないな」
R「昔はやっぱり、大成が曲を書くと、クロウバー感を俺が勝手に思い出してたところがあって。大成はきっとあえてそうならないように気を使って曲書いてたんだろうなってのは分かってんだけど」
T「でもどっかでクセみたいなもんは出てたよね。そこはやっぱり、自分が良いと思う感性を頼りに書いてるから。今は自分だけじゃなくて、それこそ繭子や竜二の事も思い浮かべながら曲が書けるから、昔程分かりやすいクロウバー印みたいなのは消えただろうね」
S「だから今後一番いいのはさ、『REMIND ALL!』に近い事をやってけばいいんじゃないかって。この曲は俺がどうしても弾きたいギターリフと繭子のドラムとのユニゾンがあって、そこだけ渡すからあと曲付けてって大成に書いてもらったんだよ」
T「確かに、意外と作りやすかったね」
-- 面白いですね。合作じゃないですか。これも今回のアルバムの特徴と言えますね。
T「合作ともまた違うなあ。そもそも俺達の曲の作り方ってずっと変わってなくて。動物で言う所の骨を考えるのが作曲者で、そこから肉や皮を付けて動物らしく仕上げていくアレンジは全員でやるわけ。だから俺がかつてのようなメロディアスハード全開な骨を差し出しても、翔太郎と繭子がきっちりデスラッシュに仕上げてくれる。逆も同じで、3つ4つギターリフを繋げただけみたいな骨を翔太郎が差し出して、それに俺達で肉付けしていく。合作と言えばずっと合作だよね」
-- 確かにそうですね。今回の『REMAIND ALL!』はどこが違うんでしょう。
S「曲全体を作んなかったんだよ。これまでは一応リフ主体だけど、こうやって始まってこうやって終わるんだっていう骨組を作って提出してるわけ、普段は。だけどコレに関しては、こういうパートをやりたいっていうその部分だけを聞かせて、そこを上手く使った曲を書いてってお願いしたわけ」
T「合作と言えば合作なのか。なんとなく、引き継いだようなイメージだったけど」
S「そうそう、引き継ぎな。今回何が一番いいって、ギターリフだけで作る曲ってどこか単調になりがちだけど、大成らしいフックの効いたAメロがあるおかげで俺の作ったリフをより強くサビに重ねて持ってこれる印象に仕上がった」
M「私が一番好きなパターンの奴です」
-- なんだっけ?
M「いわゆる翔太郎リフって勝手に呼んでる、この人しか弾けない激ムズ馬鹿っ速の高速リフじゃなくて、ドラムとベースとシンクロしながら突撃するスタイル」
-- 馬鹿っぱや(笑)。
T「翔太郎リフ(笑)」
S「影でそんな風に呼ばれてたのか」
M「そうです。『REMIND ALL!』は私ここ数年で一番熱いかもしれない」
-- おおお、それは凄いね。
M「テクニカルっていう意味では『BATLLES』がちょっともうしばらく越えられないぐらい振り切ってるし、突進力とか速さっていう意味なら前回の『ULTRA』か『GORUZORU』、今回だと『MAD USE』だと思うんだよね。竜二さんが叫びに叫んでるシンガロングスタイルというか、曲のテンションと竜二さんのテンションが高くてアガるのは『NO OATH』と『ONE KILL BY ME ATTACK』は凄い。だけど一番胸が熱くなるのは『REMIND ALL!』。そしてそのまま流れ込むラストの『DEAD BY HIGH HOPES BELLS』のイントロの凄さね」
S「もうお前色々言いすぎて何が一番か全然分からない!」
M「あははは!」
-- (笑)、繭子が胸が熱くなるのは、どういった部分で? 興奮とは違うの?
M「興奮はいつもしてる(笑)。最後のサビの後にね、全員で同じリフを延々繰り返すの。もちろん竜二さんも。ここの持って行き方は本当に大成さんだなーって思う」
T「伝わんねえー(笑)」
-- 伝わります(笑)!
M「だよね、分かるよね。もうなんでこんなに気持ち良い流れを思いつくかな!って思う(笑)。その瞬間ていうのは歌もなくて、竜二さんが叫び終わった後、4人が一丸となって繰り出し続ける音の格好良さときたらさ、私叩きながら涙ぐみそうになるんだよ!!聞いて聞いて!今ここ超格好いいんだよ!ってなる」
-- 確かに練習中、アルバム終盤にきてあのテンションと集中力の高さは見ていて何度も鳥肌が立ちました。
R「俺でも弾けるぐらいだからそんなに速いわけでも難しいわけでもないフレーズなんだけど、ライブで客が拳上げてウオー!ってなる絵が浮かぶくらい熱い瞬間だよな、確かに」
S「竜二もほんとギターうまくなったよなあ」
T「なあ」
R「うははは!」
S「最初の頃は全然歌いながら弾けなかったもん、こいつ」
T「危うくスイッチする羽目になるとこだったもんね」
-- そうなんですか?
R「大成がギター上手いからよ。俺もベース弾けるようにはなってたし、ボーカルと兼用するならギターはやめとけって何度か言われた」
M「それだいぶ昔の話じゃないですか?」
R「そうよ。まだアキラだった頃に言われてた」
M「へー!」
S「大した男だよ」
R「うるせえよ、お前の指導がきついからだよ(笑)。出来るまで帰れねえんだからやるしかねえだろ」
S「当たり前だろ(笑)」
T「笑ってるよー、これ本当の話だからね」
-- 相変わらず仲が良いですね(笑)。今回竜二さんはボーカルで何か苦労された事とか、新しく試みた事などありませんか?
R「ボーカルでっていうよりは、歌詞かな。ちゃんと読んで物語性のあるのをいくつか書いたのと、あとコーラスを増やしてみた」
-- コーラスはずっと課題でしたものね。改善されました?
R「(伊澄の顔を覗き込みながら)まあ、頑張ったんじゃないっすか?」
S「来たぞお」
-- (笑)。
R「今回からちゃんと音源にも乗る形で繭子も入れたし、大分分厚くなってると思うよ。もともとそんなにコーラスを多用する方じゃないけどな、曲によってはサビ全部コーラスありっていう曲もあるし。熱い仕上がりになったよ」
M「そうなんですよー!今回『NO OATH』といい『REMIND ALL!』といいボーカルサビめちゃくちゃ熱いですよね。めっちゃくちゃ格好いいです。コーラス大変でしたけど」
R「何回も聞いたよもう。ありがとお!」
-- やはり歌詞や曲名に関しては、竜二さんしか書けない部分ですものね。バンドの舵取りをしているようなものだと思いますが、責任感や重みを感じる事はありませんか?
R「だからって言うとこじ付けになるかもしれねえけど、あんまし意味のある歌を歌ってこなかったのは、そこもちょっとあるんだよ。思想とか主義なんかを感じ取ってほしくねえからさ。今回は割と日常レベルというか、普遍的な感情で歌詞を書いたつもりだからマシだけど、メッセージソングをやるつもりがないっていうのは、今後も変わらねえだろうな」
-- 日本語では恥ずかしくて言えないような本音も、母国語でなはい英語で表現する事によって、ストレートに伝えられるという面もあるように思うのですが。
R「そうなんだろな。でもそれはだから、前提として伝えたい思いがあっての話だろ。そもそもないから」
S「何度かこういう話になるな(笑)。なんだかんだ言って時枝さんはメッセンジャーが好きなんだな」
-- いえ、正直に言いますけど、本当は好きじゃないです。
M「ええー」
-- あはは。私はお話を聞く側なのであえて自分の好き嫌いの話はしないように心がけているんですけど、聞かれたので正直にお話します。信じていただけるか分かりませんが、繭子と全く同じ意見なんです。その人に興味がないと、どんなに感動的な歌詞やセリフであっても、全く響いてこないんです。なので、メッセージよりも、人間が大好きです。皆さんにとってとても分かりやすい例えになるので敢えてお名前をお出ししますが、URGAさんが理想なんですよ。
M「そうなんだ。知らなかった」
T「へー」
R「それはあれかな。俺達の言動に何かしらのメッセージや意味を求めたがる傾向にあるのは、俺達を好きでいてくれてるからっていう解釈で良いのかな?」
-- その通りです。メッセージって時には言葉ではないようにも思います。私はこの数か月皆さんと時間を共有させていただく事で、お伺いしたお話以上のメッセージを受け取ったつもりでいます。そこを踏まえて皆さんを見ていると、この人達の言葉をもっと聞きたい、もっと知りたいと思う気持ちが止まらなくなるんです。
M「ありがとう」
-- こちらこそ、ありがとうございます。
R「気持ちは本当に嬉しいんだけどなあ。言葉ではなにも言えねえよ」
S「だから、今時枝さんが言った言葉がそのまま答えだよ。俺達から何かしらのメッセージを受け取ってんだとしたら、それは言葉以外の何かなんだろ」
T「アルバムであり、ライブであり、音であり、プレイであると」
-- そうかあ。そうですよね。
R「今回のアルバムのラスト3曲で割と意味のある歌詞を書いたって言っただろ。それだってさ、万人受けするような事は何一つ言ってねえしな。URGAさん風に言うなら、誰かに寄り添えるような、そういう歌詞は、やっぱり俺には書けねえし」
-- 竜二さんがそういう歌詞を書けば、また違ったファン層を獲得できると思いますけどね。
R「っはは。寄り添ってほしいと思う事はあっても寄り添いたいとは思わねえもんなあ」
-- 思ってない事は書けませんものね。
R「そりゃそうだろ。そういう意味でもあの人(URGA)はすげえと思うよ」
M「へー。竜二さんでも寄り添ってほしいと思ったりするんですね」
R「なんだよそれ。人を神父か僧侶みてえに言うなよ」
S「よ、生臭坊主!」
R「お前が言っても全然刺さらねえよ」
T「全部自分に帰ってくるぞお前」
S「イタタタ」
M「なははは!」
-- 翔太郎さんは生臭坊主である、と。
S「そんな事メモらなくていいかから」
M「いいぞトッキー!それでこそだ!」
-- (笑)。具体的なフレーズは自分の耳で確かめたいので避けていただくとして、ラスト3曲はどういった内容の歌なんですか?
R「難しい注文だな。あー、『GONE BY』は俺の側から去っていったものについての歌だな。『REMIND ALL!』はそのままだよな。忘れていた思いを全部思い出させてやるっていう歌。これだって不特定多数の誰かじゃなくて自分に言ってるんだけどな。最後の『DEAD BY HIGH HOPES BELLS』は、人は予想もしないような理由で心臓ぶちぬかれたりするよね、っていう皮肉った内容の歌。そんな感じかな」
-- ありがとうございます。ますます興味が湧いてきました。早く音源として徹夜で聞き込みたいです。
R「まあ、まだまだやり込むよ。時間と、その他の仕事とのバランスが難しいけど」
-- お忙しいですものね。今回のアルバムでは、前回の『P.O.N.R』で言う所のゲストミュージシャンのような、楽曲内容とはまた違った方向性の遊び心などは考えていらっしゃいますか?
R「それが多分日本版のマユーズだったり、向こうでのボーナストラックに当たるんじゃねえかな。作品内容的には、割と初期の頃のような、4人でがっつり手を組んで、4人だけの剛腕ぶりを聴かせてやろうじゃねえかって言うのは思ってるけどな」
-- なるほど。私言葉としては原点回帰ってあんまり好きではないんですけど、竜二さんが言うと却ってゾクゾクします。
M「分かるなあ。同じ事を言ってても聞くに堪えない人と、何言ってもうんうん頷いちゃう人っているよね」
-- それってつまる所は自分の仕事に対して誠実かどうかだと思う。そういう点でドーンハンマーは間違いのないバンドだと思います。
M「仕事人間と言えば仕事人間だもんね。さっきも休憩中にベスト盤に入れる曲何にしようかなー?なんて話して」
-- 休憩になっていないと(笑)。
M「それが楽しいんだけどね」
-- よく分かります。
M「トッキーも仕事で遊べる人間だもんね」
-- 遊んでるだけと言われないように頑張ります。先程竜二さんが仰った4人だけの剛腕ぶりという話ですが、これはアメリカ進出一発目に対するバンドの解答と受け取ってよろしいのでしょうか。
R「まあそうだな。どう受け取ったか分からねえけど、初心に帰るって意味じゃねえよ?」
S「俺らそういうのほんと嫌いだし」
R「余計な事はせずに、『お前らが好きなもんはこれだろ。これを期待して俺達を呼んだんだろ?』ってのを言葉で言う代わりに音源で示そうかって話」
T「円熟って言う程じじいじゃないけどね。それでも若い時からずーっとぶん殴るような音を鳴らしてきたわけだよ。だから敢えて新しい事にチャレンジする事よりも、現在進行形の俺達を見においでっていうアルバムだね」
-- 実にクールですね。とても嬉しいです。今回音源でじっくり聞く前なのではっきりこうですよね、というお話はまだできませんが、練習を拝見する限り、竜二さんの歌メロが割と聞きやすいと感じました。デスメタルバンドに言って良い言葉か分かりませんが。
R「まだまだ変えていく部分はたくさんあるから、完成品を相手にして話すような事は何もないけど、一つ言えるのはやっぱ俺は歌いたいんだよ。叫ぶのも好きだし吠えるのもシャウトもスクリームも全部好きだけど、一番好きなのは全力で歌う事だって思うよ」
-- カッ、ケええ…。
M「素が出てる素が出てる」
-- は!失礼しました!
R「びっくりした」
-- すみません、自分でも驚くぐらい言葉が飛び出ました。あと私事で恐縮ですが、今回アメリカ版につけるライナーノーツを私が担当させていただく事になりました。織江さんから頂いた話なのですが、ご存じですか?
R「もちろん!」
T「間違いないよ。時枝さんならね」
M「アメリカデビューだねえ」
-- あ!本当だ!うわ、すげえ!
S「なんだよそれ。考えてなかったのか?」
-- 全然そんな事考えてなかったです。皆さんの事を言葉でバックアップする大役を任された喜びだけで、胸がはちきれそうなんですから。
T「殊勝な子(笑)」
-- とんでもないですよ。それではまた作品が完成に近づきしだい、お話を聞かせて下さい。お疲れの所貴重なお時間ありがとうございました。
R「したー」
S「あいー」
T「お疲れ」
M「あーい」




