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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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記者会見

 月曜から土曜までスパルタ教育。本日土曜日は黒白結社地上研究室1棟で希少裂魂と触れ合い。知るだけだし、職員達にお菓子を山程もらって褒められまくってご満悦。

 付き添いのブレイドが「リオ様自慢の弟子です」と煽ったせいで祈られはじめて辟易した。


 その後はブレイドが去って代わりにクレイヤと合流。新種悪魔をひたすら曝露。

 先週と同じ。リオとルーク不在は不満だったけど、クレイヤとガーベラ、2名の上等祓士——ルーファスとトリスタンという強そうなおじさん——とアンナと解呪士2人——毎回新人で今日はココとパウエル——と共に魔術窓内で曝露を試みた。


 可哀想なことに新人祓士はルサールカの睡眠の呪いに対する生贄。避けているけど誰も助けないから片方が呪われて片方が解く練習。それで私も解呪練習。

 ルサールカの睡眠の呪いは蝶扇(リピス)でひょいひょいじゃ解呪不可能。

 現在、魔法紙なしでの解呪に挑戦中。今のところ毎回失敗して魔法紙解呪に戻って感覚特訓中。

 新種悪魔を刺激しないように全員防御中心で、私は最後列。アンナの後ろ。ほぼ怖くない。

 しかし、全然ダメだった。

 

「撃沈!」

「先週も同じポーズで同じセリフを言っていたな」


 地下研究室を出たところで私はしょぼくれた。あはは、と笑うクレイヤに頭を撫でられる。


「あの新種悪魔、またカラザの森に現れたのよ。うようよ現れたら特任案件に発展。キヨイのおかげで分析が進むから多くの祓士が助かるわ」


 アンナも私の頭を撫でてくれた。ルーファスとトリスタンがココとパウエルをガミガミ叱りながら遠ざかって行くのが見える。2人は入社2年目と3年目。それだけは聞けた。


「ねえクレイヤ、リオ様が母校で後輩を猛特訓したって聞いたけどまた開催される?」


 アンナが動くと小さいハートの魔力がふよふよ浮く。最初よりハッキリ見える。今日知った、感情系に働きかける裂魂。

 その中のうち「愛」だ。特に術には見えない。

 喜怒哀楽に愛憎の裂魂が見えるレベルまで集まるのは希少。

 リオから漏れ出る聖裂魂——虹色裂魂は聖裂魂と今日知った——と同じ感じでアンナから漏れてる?

 聖があるなら闇は? とクレイヤや研究職員に質問したら、存在未証明の悪魔化裂魂や核の大元で調査研究中と言われた。


「ルークから聞いてねえのか?」

「何で私があのバカから聞くのよ!」


 アンナは先日29歳になったクレイヤの2つ上の31歳。

 私と同じ学校に18歳で入学し3年で卒業。能力がルークの補佐に丁度良いとルークと長年同じ組。それでクレイヤやリオ、ブレイドとも接点がある。クレイヤと同じ任務に何度も参加している。


「何でってまた喧嘩別れして寄りを戻したって噂……」

「戻してないわよ! 戻すものがないのにどう戻すのよ!」

「そうなのか?」


 不思議そうなクレイヤと、めちゃくちゃ怒ってそうなアンナ。アンナの矢印は確かブレイドで……。


「あのバカがフラれるたびに私を酒に付き合わせるからそういう噂が立つの」

「へえ」

「おかげでまた私はフラれたわ。二股だったのかって……」


 アンナはほぼ白目みたいな遠い目をした。ブレイドは? ブレイドはいいの?


「ああ、まあ、気の毒なことで。ルークに言っとく」

「クレイヤがルークに付き合わないからでしょう! あの酒豪に付き合えるのが私だけというか、奢りで連日飲みたい放題の魅惑に勝て……ゴホゴホ。私って友情に厚いから」


 それ、アンナにも原因があるじゃん。


「そもそも本命はいいのか?」

「そりゃあ本命は常に狙っているけど、滅多に会えない高嶺の花。はあ、アンナはこんなに可愛いのに可哀想」


 この滅多に会えない高嶺の花がブレイドのこと?


「可愛いより美人だろ。ルークと同じでその誰でも良さそうなところがフラれる原因だろう」

「そうね。私は美人タイプよね。っていうかこういう話、一切しなかったのに心境の変化?」


 表情を一転させると、アンナは愉快そうにクレイヤの周りを飛んだ。私も真似をする。楽しそうな予感。すでに楽しい。どんどんこういう話をして欲しい。


「まあな」


 クレイヤは涼しい顔。フィオナと恋人になってから、ツンツンしたり動揺するクレイヤは消滅している。つまんない。


「隠しきっていたのも驚きだけど、いきなり公表ってどうして? やっぱり結婚? 4日前から週刊誌もニュースもあなたの特集になってるけど」

「別に公表なんてしてない」


 クレイヤの言う通り。フィオナは堂々と指輪をしている—— 物具転送術付きなので授業中業務中は外すらしい——けど、クレイヤは小屋の外ではカモフラージュして隠している。

「バレたら少し面倒なことになる」と言うのにお揃いの指輪をしていたいとは可愛い性格。

 いや、正確には隠していただ。クレイヤは今朝からカモフラージュをしていない。気になっているから質問する機会をうかがっていた。

 

「クレイヤ。どこからバレたの? アンナさん、週刊誌ってなんてやつです? クレイヤ、帰りに本屋行こう」

「パパラッチだパパラッチ。あの店には2度と行かねえ」

「お店に売られたのね。頼んだのに裏切り。私もある〜」

「早く帰ろう。その前に本屋。ニュース見たい」


 ニュースを見たい。土日は特訓がない。帰ったら寮で結晶放送を見られる。


「キヨイ、ここに本人がいるのにニュースを見たいの? それに週刊誌も。これから飲みに行くに決まってるでしょ」

「だってクレイヤもフィオナも口がかた……」


 冷たい! 私の口は氷漬け。


「フィオナって言うんだ! 噂の淑やか美人! ねえねえどちらのフィオナさん?」


 冷たさが無くなった。良かった。フィオナって名前がありふれていて。


「予定があるから飲みに行かない」

「明日でも良いわよ」

「行かない」

「1回くらい付き合ってよ。1度もないじゃない」

「このあと会見だ」


 クレイヤは霧を使って逃亡。私に護衛がついているからって置いてきぼりにしないで欲しい。まあ、1人で帰れるけど。

 校外で単独行動したことがないからドキドキ、バクバクしてきた。

 聖騎士がいるのは分かっているけど、お約束的な事件、起こらないよね?

 小屋へ帰れる黒白結社はすぐそこ。街へ行って本屋はやめよう。

 主人公が単独行動で特別な事件に遭遇とかノーサンキュー!


「アンナさん、今日はありがとうございました。寮で会見を見ます」

「私と見ましょう。うちにあるから週刊誌も見せてあげる」

「家にお邪魔して良いってことですか? いいんですか?」


 1人暮らしかな? 大人の女性の1人暮らし部屋、それもお金持ちの部屋を見たい!


「代わりにお願いがあるの」


 アンナがパチンッとウインクしたので愛の裂魂の集まり、小さいハートがいくつか舞った。


 ***


 予想通りアンナは1人暮らしだった。黒白結社から近い住宅街にある、沢山並ぶ縦に細い一軒家の1つ。

 家の扉に初見、短時間じゃ暴露解析出来ない高魔力を感じた。きっと防犯関係だろう。新人と若手祓士——勤続10年未満——優先だけど希望者も使える寮だと聞いた。まさかの家賃0。

 黒白結社の土地で職員関係の寮と仮眠や待機用の宿泊施設ばかりで買い物外食は他地区へ行かないとならないからそこは不便らしい。

 1階はキッチンとリビングとお風呂にトイレ。2階は寝室ともう1部屋らしい。今私がいるのはリビング。


「この部屋はどうかと思いますよ、アンナさん」

「何が?」

「お酒に埋もれる美人の部屋って……」


 酒瓶がズラリ。それもぐちゃぐちゃに並んでいる。棚にも床にもキッチンにも酒瓶、酒瓶、酒瓶!

 ソファの上にも酒瓶。ローテーブルの上にも酒瓶。結晶放送用の映像結晶の周りにも酒瓶。

 ガラスのローテーブル、高級そうな淡いベージュのソファ、触り心地の良さそうなモフモフして見える淡いピンクの絨毯。洒落た照明。全部台無し。


「美人だなんて正直ね。やっぱり可愛いわねあなた。役には立たなかったけど」


 背中を軽く叩かれた後、耳を引っ張られた。


「ブレイドは仕事で……」

「で、休みは?」

「ブレイドに休みはないよ」

「それが聖騎士の決まり文句なのは知っているわよ! 私が探ってるって言ってないでしょうね。ルークも使えないし、ルークの弟子も使えない」


 チッと舌打ちするとアンナは私をソファに座らせた。ひょいひょいっと酒瓶を浮かせて場所を作ってくれた。


「キヨイは17歳だっけ?」

「はい。来月18歳です」

「なら一緒に酒盛りは来月以降か。シェネは好き?」


 この国では18歳から成人。選挙権とお酒解禁くらいしか関係しない区切りだとか。

 シェネはグレープフルーツみたいな味の葡萄に似た果物。皮は緑で実は淡いピンク。


「好きです」

「ならシェネジュースにするわ。割る用のが沢山あるの。炭酸は好き?」

「好きです」


 アンナは六角形のワイングラスに淡いピンク色の炭酸ジュース。細かい氷入り。グラスのふちに砂糖みたいなのがついている。

 さっとお洒落な飲み物を用意してくれるとはやはり良い人。


「会見って何時からかしら?」


 私の隣に座ったアンナはセーターを脱いだ。黒いブラジャー丸見え。そこから溢れそうな胸も。

 その状態でアンナは近くの真っ黒い酒瓶を手に取ってラッパ飲み。お酒の名前は「魔殺し」


「はああ。やっぱり仕事終わりには魔殺しね」


 酒瓶を抱きしめるとアンナは小さく震えた。可愛らしい笑顔にハートの魔力が舞い散る。美人だけど中身はおっさんだこの人。


「あの、どうしたらそんなに胸が大きくなりますか?」

「さあ? 天然か揉まれるとか? ターモ、ターモ」


 揉まれるって何言ってるの!

 ターモは映像結晶用のリモコンで細くて丸い棒。結晶が光って宙に映像が浮かぶ。テレビよりも精度は悪くてターモはチャンネルを——放送局は3局——進めるしか出来ない。

 この国では映像結晶より生で見られる劇、オペラ、音楽会、ライブ、遊園地、街中の大道芸などなどの方が人気。聖騎士の野外訓練鑑賞や祓士が行う家庭講習会も人気らしい。

 そういう文化だからテレビのように発展しないのだろう。歌番組は人気。結晶放送ドラマはそこそこ人気で、人気芸能人は個人契約結晶放送をしたり娯楽は様々。


「もう始まって……リオ様」


 映像にはリオとクレイヤの姿。リオは普段着で黒い椅子に座っている。木彫りで厳かな雰囲気の椅子。

 クレイヤはリオの左側に直立。襟なしのうっすら青い白いシャツ——この国では純白は基本的に使わない——ネクタイは深い青。

 マールム・ピュミラのネクタイピン。マールム・ピュミラの柄がうっすら浮かぶ銀色のベルト。ズボンは黒。靴も黒の革靴。

 右手の手袋はいつもと違じだけど、ぐるぐる巻きの細いベルトはなし。

 片耳ピアスはよく付けているラビゴ。髪型は初めて見るオールバック。でも玉髪飾りはいつも通り。ただカモフラージュはない。


 クレイヤの反対側にはゴリアテ。ガーベラ、シュナイダー、ブレイドに他のお世話になっている聖騎士も左右に分かれて並んでいる。

 アンナは慌てて魔殺しの酒瓶をテーブルに置き、セーターを着た。それから正円十字(サングリアルクロス)を指で宙に描いて両手を握りしめ、目を閉じた。さらに軽く会釈。


「会見ってリオ様とだったのね」

「そうみたいだね」

「いやああああ。ブレイドやっぱり格好良い! 抱かれてみたーい! きゃあ!」


 本命の好きっていうよりミーハー気分?

 アンナは再びセーターを脱いで酒瓶を抱えた。またハートの魔力が舞い散る。

 着たのに脱ぐんだ。今度この国の宗教観も調べてみよう。


《……(わたくし)と同じ組の同僚、本日のように時には護衛を勤めてくれています。その彼の休息を不当に侵害されるのは心が痛みます》


「ひえええええ。パパラッチがリオ様を怒らせた。確かにそうだ。その通り! そこらの祓士ならともかくリオ様と組んだクレイヤを売った店は潰れろ!」


 リオの権力怖っ!

 効果絶大そう。クレイヤはリオの護衛扱いになったのか。そうしたってこと?

 アンナに聞いたらリザ一族はパパラッチ禁止——終身投獄罪——で聖騎士も階級が上の人は結構規制がキツい。

 そんなの当たり前、とはアンナ談。当たり前なのか。この国の常識はやはり私はまだまだ分からない。


《話が逸れましたが、公表されているように私の部下のクレイヤ祓士は平日毎日講習会を行っています。ご説明した通り、私も時折参加しますので是非新人祓士の皆様はご参加下さい》


「その時折が知りたいのに。不定期って運よね。しかも連日参加は不可能。あっ……」


 アンナが私を見る。


「リオに頼んでみる」

「いやん。あなた最高!」


 酒瓶と一緒に抱きしめられた。胸の圧が凄い。呪疫(じゅえき)みたいにこの胸の大きさうつらないかな。酒臭っ!


 それからリオは眠くなるような黒白結社からのお知らせや自身が関与する協会行事をつらつら並べた。眠くなるようなというか寝そう。

 クレイヤの熱愛発覚記者会見だと思ったのに残念。


《本日の会見は以上です。クレイヤ祓士がこの場を借りて世間を騒がせたことをお詫びするそうです。私は仕事が立て込んでおりますので失礼致します》

 

 リオは椅子ごと聖騎士と共に姿を消した。誰かの転送術だろう。


《ここのところ母がご迷惑をおかけしています。大変申し訳ございません》


 そっち⁈

 週刊誌ってそっちなの⁈

 クレイヤは神妙な面持ちで頭を下げた。

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