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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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スパルタ生活へようこそ6


「ひっ!」

「叱りに来たんじゃねえよ。俺と全く同じ量の裂魂を集めたのは感心。しかし範囲や方向が違うから意味ねえ。それに俺は増幅してから放った」

「増幅まで真似出来てなかった」

「見様見真似で今のとはさすが大天才。ただお前が裂魂を集め過ぎると仲間の分が減る。増幅も得意で蝶扇(リピス)にも増幅機能があるから上手く使え」


 クレイヤは私の隣に並んだ。怒られるんじゃなくて良かった。


「犯罪者と1対1の殺し合い、味方無しで悪魔と対峙なら根こそぎ裂魂を集められる方が有利だけどな」

「そんな怖い状況嫌だよ!」

「任務にもよるが、結社では基本3人1組。互いの欠点を補い合う。キヨイ、氷柱(ヨクル)がどのくらいの火加減で溶けるか確認してみろ。その後また挑戦するんだな」


 私の頭をぐしゃぐしゃと撫でるとクレイヤは遠ざかっていった。


「なあ、キヨイ。今のってさ。2人ずつ得意同士じゃなくて、3人ずつって意味かな?」

「そうかも。あっ、集めちゃえば良いんだ。私が裂魂を集められるだけ集めて皆の近くに配置! それでバラキエルの攻撃が弱くなるのかも!」

「キヨイはますます集中ってことだ。俺だけじゃ護衛不足」

「メルルは移動が下手。でもさっきから自分だけじゃなくてビルに向かってくるセルヴァや氷柱(ヨクル)を土石で逸らしてる」

「キヨイの護衛にしよう。俺はさっきキヨイを助けたみたいにメルルの援助」


 ハリルと顔を見合わせて頷く。


「少し動けるようになったし作戦変更! メルル! 俺達を助けてくれ! ロナルド、マール、ビルはお互いの欠点を補いながら3人1組を意識してそろそろ攻撃! キヨイが3人になるだけ裂魂を集める!」


 再びハリルの音魔法。ちょうど雷がゴロゴロうるさかったけど、それでも聞こえた様子。メルルがこっちに飛んでくる。

 

 その後私達はルークにもクレイヤにもお世話にならなかった。けど私は暴露出来ず、バラキエルはもちろんオピオンもセルヴァも倒せず時間切れ。

 それなのにルークは簡単にバラキエルを捕獲檻に閉じ込めた。オピオンとセルヴァも破壊。雨が止む。

 檻の前にクレイヤ達が並び、私達はその前でゼーハーゼーハー息切れしながら何とか立っている。全員びしょ濡れ。座りたい。


「大変でしたから座りましょうね。ブレイド、お願い」

「はい」


 膝カックンみたいな感じで体をすくいあげられた。もふもふした感触の薄い魔法紙に座っている。しかも体が乾いた。ぽかぽか温かい。疲れ切っていてどういう魔法操作をしたのかサッパリ不明。


「入学早々の新入生なのに怪我人ゼロ。偉かったな! さすが未来の俺達の後輩だ!」


 ルークは全員の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。私も含めて全員笑顔。特にハリルはすごく嬉しそう。


「そうね。入学2ヶ月でこれならとても期待出来ます。1年卒業もあるかもしれません」


 リオの褒めに私とマール以外は涙ぐんだ。ロナルドなんて祈りのポーズをして何かぶつぶつ言ってる。


「予想より良かった。キヨイ以外はバラキエルについて調べてレポートを俺に提出するように」

「はい」

「19時から似たような訓練をする。見学したければするように」


 笑顔のクレイヤと目が合って、嫌な予感がした。19時からって、クレイヤの補講時間じゃん。つまり私は強制参加。

 全員解散。私を除いた5人はブレイドの移動術で校舎の方へ運ばれていった。


「クレイヤ、今夜の補講を訓練にするの? 生徒さんの補講は?」

「両方する。こいつら見てて思いついて。リオ、お前今夜はどこからも呼び出しがないんだろう? ルークは付き合え」

「ええ」

「クレイヤの顔からして楽しそうだからいいけど、腹減った。キヨイ、何か食べたいものあるか?」

「アピの実」


 もうヘロヘロなのにここから補講。似たような訓練って暴露の練習の続きだ。目がチカチカ痛い。


「そりゃあおやつだ。夕食だ夕食」


 おやつというかドーピング。


「とりあえずアピの実。魚が良いなあ」

「1時間以内で戻ってこれる魚の美味い店。人数は……」

「俺はパス。肉の気分だから別のところか食堂に行くわ」


 クレイヤはひらひら手を振りながら飛んでいった。きっとフィオナと夕食だな。

 誕生日をどう過ごしたかも秘密だし、つまらない。まっ、またフィオナから聞こう。赤い顔でツンツンしながらほんの少しだけ教えてくれる。


「クレイヤ抜きだと4人? 熊オヤジも行きます?」

「ルーク、いつも言っているけど熊オヤジはやめて。ゴリアテ、今夜は残業出来る? 似た訓練ならあなたと勤務交代するシュナイダーでは役不足よ」

「クレイヤさんに頼まれなかったですが頼まれたかったです。聖騎士3名も参加させて下さいとクレイヤさんに頼んで下さい」


 ゴリアテはブレイドをチラリと見た。ブレイドが涼しい顔でコクリと頷く。3名中1名はブレイドってこと。


「ではゴリアテも一緒に夕食へ行きましょう」

「リオ様。それは畏れ多い行為でございます」

「あっ。5人って連絡入れちまった。飛ばしたのはブレイドだけど。熊オヤジも参加な参加。俺、尊敬してるから色々聞きたかったんだ」


 顔も体も熊やゴリラ似のゴリアテがリオの隣で縮こまって見える。

 私にはリオのこの崇拝されっぷりがサッパリ理解出来ない。


 ***


 今日はいつもと違うみたいだけど、19時からはクレイヤの補講に参加する。クレイヤのいつもの補講は、多分本人は大変。

 解呪学の実技授業の課題がクリア出来ない生徒に指導——生徒ごとに進行度が違う——に加えて、現役解呪士に本人達が持ってきた自己課題への指導。

 そこに水氷系の魔術を向上させたい現役祓士——黒白結社以外も——への指導に私への指導もする。

 定員50名の大所帯を1人でやりくり。

 現役解呪士に教えつつ生徒に指導させたり、生徒に教えながら火炎系魔術で現役祓士を攻撃して水氷系の魔術のコツや高度魔術を見せたり、とにかく凄い。


 私はまず学生が行う実技訓練を全てこなす。その次は現役解呪士の課題と言われている。

 クレイヤが指示した順に参加。といっても学生レベルで既にヘロヘロになるので現役解呪士の課題にまでいかない。

 ルサールカの睡眠の呪いの時に使った針様攻撃のように、解呪には細かい魔術操作が必要。

 私にの目標は黒白結社現役解呪士並みなので、針様攻撃1つとっても、魔法紙ありの2種類の魔力混合から10種類魔力混合、動きながら行う、反復横跳びしながら行う、魔法紙なしで以下同文とやること沢山。


「今夜の訓練って何するの?」

「説明を聞けば分かる」


 私達はまた大演習場にいる。隣のルークに耳打ちしたけど返事はそれだけ。

 大演習場の中心に捕獲檻があって、客席には昼間より大人数の観客。生徒プラスアルファっぽい。

 クレイヤの隣にはリオ、その隣にゴリアテ、それからルークが並び隣に私。

 そしてその私達の目の前に補講、訓練者がずらり。


「生徒は右側へ集合」

「はい」


 人が移動する。いつも顔ぶれは似てる。今夜は……18名。


「解呪士は中央へお願いします」

「はい」


 毎日入れ替わりでたまに見たことのある人がいる。今夜は初めましての人しかいない。今夜は11名。


「退魔士その他は左側へお願いします」

「はい」

「それから特別参加希望で聖騎士のブレイドさん、スペンサーさん、ゼンさん。リオ様を通して自分のような若輩の講習会に参加希望とは大変光栄です。よろしくお願いします」


 リオがブレイド達3人に手を振ると、3人揃って片膝ついて両手を握りしめた。ゴリアテは剣を鞘から抜いて剣先を夜空に向け、地面と垂直に構えた。それで会釈。


「皆さんは会釈や祈りなど要りません。しないで下さい」


 他の人達の崇拝行為が始まりそうなのをリオが笑顔と両手で静止した。


「今夜は現役祓士の方々に実践形式の講習会を行います。リオ様の協力があってこそです。感謝は必要ですが終了後に手短にして下さい。聖人リオ様の時間は貴重です」

「これから2重で結界をはります。外で申し訳ないてすが生徒達には通常の補講を行います。さあ皆さん、こちらへどうぞ」


 リオが生徒達に近寄った。ゴリアテはリオの近くから離れない。ブレイドがそそくさとリオの近くへ移動。ブレイドはズボンのポケットから何かを出した。瓶だ。

 リオと生徒達の周りにブレイドの瓶から出た何かでキラキラ光る円が完成。そこそこ広い。


「危険ですから皆さんはこの円から出ないように。私も見ています。今夜は基本的に私が教えます。クレイヤ先生からお名前と課題のリストを預かっています」


 あのー、私も生徒ですよー。とは言えない。

 分かってる。私は向こう側じゃなくてこっち側。

 ゴクリ、と喉が鳴った。

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