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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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禁断の図書室? 覗き見は悪趣味だけど……5

 よっしゃあ! 気合い十分。クレイヤの呪いをちゃちゃっと解いて私は暴露の大魔道士だ!

 ということで、今日の午前中にフィオナを含むクラスメート達の実技練習に付き合うのも、午後にマールとビルと3人で遊びに行く約束も全部破って、黒白結社の地下研究施設へ。

 クレイヤは講演会。リオに魔法紙で手紙を出したらブレイドから「週休1日は絶対。今日は休みなので遊び以外誘うな」と返事が来た。なのでルークを呼び出して、保護者として連行。

 と言ってもルークは私の送り迎えだけ。黒白結社関連施設はまず安全。そして私にはリオが配置したリザ家の聖騎士、それも転送術が使える騎士が警護についているらしい。いまさら知った。それならルークを誘う必要はなかった。

 暴露の大魔道士になるのに、探しても聖騎士の姿は見えない。


 あっという間に夕方。ゲストは地下研究施設の定時に追い出される。あまり成果はなかったけど、熱心な協力に感謝され褒め称えられた。ひゃっほい、私の名声はうなぎ登りだ!

 今夜はまた秘密の図書室へ行く。

 私は地下研究施設から出て、頭を抱えて項垂れた。名声上昇は良いけど、新種悪魔の暴露も出来ないとは、大魔道士への道は遠い。


「撃沈!」


 既に迎えに来てくれていたルークと合流する。


「撃沈って新種悪魔を、それもあのレベルを2日で暴露出来るわけないだろ。怖い怖い騒いでいたのに、急にどうしたんた?」

「まだ怖いよ。気持ち悪かった。ルーク、クレイヤとリオと予定を調整して私に付き合って! あの恐ろしい悪魔は魔術窓越しじゃ無理!」


 はああああ、とため息をつきながら飛行開始。ここから学校まで遠い。疲れる。集中しまくっていたから、目がチカチカする。


「なんか知らないけどやる気まんまんだな。アイザックとゴットフリートのハイブリッドと言われたからか?」


 へろへろ飛んでいたからか、ルークは私を抱き上げた。


「わっ!」

「頑張り屋のお姫様は休んでろ」


 パチンッとルークのウインクが飛んできた。イケメン祓士……イケメンか? イケメンだな。子犬、いや子ライオン系。

 クレイヤと同じでタイプじゃ……ない?

 なんだか少しドキドキしている。いや、私はブレイドにもときめく女。単に男性に免疫がない。だってまだ17歳だもん。彼氏いない歴=年齢だし。


「キザ〜」

「図書室に集合は19時だろう? まだ早いし腹減ったから何か食ってこうぜ」

「あっ、そうだ。花屋に行きたい。メッソルにお花。何の花が良いんだろう」

「花屋ならおすすめの店がある。俺が見繕ってやるよ。もちろん金も出す」


 こうして私達は花屋へ行き、レストランで夕食をとった。ルークおすすめの花屋は至って普通。ただ、ルークは「弟子の友人の誕生日に花束が欲しいです。ああ、それからこの花。素敵な君に」と言って、ちょっと高い魔法花を購入して若くて可愛い店員に渡した。

 おまけに「この花に込めた気持ちを受け取ってくれるなら、今度好きなものをごちそうさせてください」とにこやか笑顔。返事はOKである。

 つまり……ナンパかこの野郎!

 ルーク曰く「ファンレターの内容がいつも優しくて」である。そして「忙しくて寂しいってまたフラれるのは避けてえな」と言った。

 一途なクレイヤと正反対の人種だこいつは。


 ***


 19時に学校の図書室に集合。今夜のメンバーは私、クレイヤ、ルーク、リオ、ブレイド、そして私が呼び出したフィオナ。

 クレイヤに「フィオナのリボンを見ること」と「ツンツンしないで普通にすること」と「さもないと手伝わない」と告げてある。

 なのにクレイヤは私の真横から離れない。リオがフィオナに昨日の話や研究について質問をしたせいもある。まあ、いっか。


 特別閲覧室内でメッソルの名前を呼ぶ。それから探す。そして水の魔力探し。

 すぐ見つかった。というかメッソルが私達に向かって泳いできた。


「こんばんはメッソル。昨日はとっても親切にありがとう。昨日言ったようにまた来た」

「キヨイ、ロモモのタルトは?」


 メッソルの緑のおめめはキラキラ。顔も満面の笑顔。私は手土産の箱を持ち上げた。


「あるよ。マコロもある。あと可愛いらしいメッソルに似合うお花も買ってきた」

「そんなに沢山? うわあああ! キヨイは太っ腹ね」


 全部師匠持ちだけどね。とは言えず。


「練習したけどバテムはまだ出来なかったから、リオがまたするね」

「ああ、リ……きゃあああああ! 何でベルヴェルクが……。ガウト? 何このアンスロポス。ノノンヘクセライとフラマヘクセライの中間? ヒュドール! ヒュドール!」


 メッソルはクレイヤを見た後に私達から離れて本棚の上に隠れた。こちらをコソコソ覗いている。


「ベルヴェルク? ガウト? フラマヘクセライ?」


 ぽちゃん、という音がしてメッソルの隣が揺れた。でも何もいない。その後、クレイヤの周りに水の魔力がぽちゃぽちゃ揺れた。クレイヤの視線はそれとは無関係に宙を彷徨う。


「ふーん。ヒュドールが見えないの。やっぱりヘクセライではないのね」

「キヨイ、ベルヴェルクとガウトは分からない。フラマは火だ。なあ? リオ」

「ええクレイヤ。キヨイ、クレイヤはフラマヘクセライなの?」

「違うって。ヒュドール? が見えないから違うみたい。ヒュドールは私にも見えない。フラマヘクセライなら見えるみたいだよ」


 フラマ、火か。変なの。クレイヤは氷や水系が大得意なのに。


「その通りよキヨイ。少しは賢くなったのね」

「褒めてくれてありがとうメッソル。今、バテムして……」


 そろそろと戻ってきたメッソルは、クレイヤの後ろにいるルークを見て固まった。頬がひきつっている。


「フェング……」

「フェング?」

「キヨイ、狂気だ。どうした?」

「うーん。フェングじゃない? ちっとも怖くないもの。ノノンヘクセライでフェングの臭いがする、こっちもガウト? いや、ガウトっぽくもないし……」


 メッソルがルークの周りをくるくる泳ぐ。


「メッソル、ガウトって何? ベルヴェルクも」

「何ってガウトはガウトよ。ベルヴェルクはベルヴェルク。アンスロポス語だと何なのか分かる本を探してみたら? 見つかるか読めるかは貴方達次第だけど」

「そうする。ありがとうメッソル。バテムしてもらうね」

「キヨイの知り合いって変なのばっか。アイザックもゴットフリートもいつもヘクセライを連れてきてたわ。だってノノンヘクセライだと読める本が少ないもの」

「そうなんだ。リオ、バテムをお願い」

「ええ」


 バテム終了後、メッソルは花を特別閲覧室中に飾り、ロモモのタルトとマコロ——どう見てもマカロン——をとっても美味しそうに食べ、私達を秘密の地下図書室へ連れて行ってくれた。メッソルは5人以上は嫌だと愚痴った。

 話してあるからか、クレイヤとルークは特にはしゃがない。リオはフィオナにずっと話しかけている。しかし、フィオナの態度は相変わらず。


「今日の私は具体的に念じるよ!」


 最短最速でクレイヤの呪いを解ける本! 呪いの内容を頭に浮かべてクウァエレに触れる。


「キヨイってバカなの? 昨日とほぼ一緒よ。むしろ増えたわ」

「何でーーー⁈」


 球から顔を出したメッソルは呆れ顔。死角もあるけど図書室中光っている。


「結社に協力している件。新種悪魔の呪いを解くために必要な本だっけか? 才能はあるけど実力不足。解呪に至るまでに必要な知識や能力その他がそれだけあるってことじゃないか?」


 私の隣でクレイヤは微笑んでいる。これ、ガッカリしたよね? するよね? 

 フィオナがいるからクレイヤはしれっと嘘をついたけど、私が今日何の本を探すのかクレイヤはちゃんと知っている。


「明日はこの中でも最初に読む本って念じる」

「キヨイ。それは良い案ね。バカだけどバカじゃないわね。次は新しいアンスロポス?」

「クレイヤが先でルークは次ね。クレイヤ、メッソルがここにいるからお礼を言ってね」


 私は空いている手でクレイヤを手招きしてから、球から顔を出すメッソルを掌で示した。


「お招き、ご案内ありがとうございます。可愛らしい姿を見られなくて非常に残念です」


 クレイヤは柔らかな微笑みを浮かべた。教えたから視線は合ってる。


「怖いし気持ち悪いと思って避けてたけど、ちゃんと見たら格好良いわね。この可愛いメッソルの恋人になれないなんて残念で運のない、才能のないアンスロポス」


 酷い言われよう。それで、メッソルから見てもクレイヤは格好良いのか。まあ、格好良いのか。私のタイプじゃないだけ。


「あー、クレイヤ。メッソルが格好良いって。可愛いメッソルの恋人になれなくて残念だね」

「それは残念です」

「メッソル、可愛いメッソルの恋人になれなくて非常に残念でならないって」


 クレイヤは悲しげな表情を浮かべている。演技力あるのね。メッソルは嬉しそうに、照れ照れしながら球の中に沈んだ。

 深呼吸をしたクレイヤが私の手の上に手を重ねる。その手は小さく震えている。

 ランダムで変な過去を見せたら悪いと言っていたが、私は覚悟して来た。これから私が見るクレイヤの過去は……眠い。


 ◆◆◆


 ここはどこ? 私はぐるぐる回っている。白しか見えない。

 と思ったら炎の中。熱いっ! と叫んだけど私の声は聞こえないし熱くも無かった。

 血塗れで肉片のついた骸骨を持つ美女——魔女だ。フレイヤ・デーヴァがいる。ただ髪は赤い。彼女を取り囲む炎に溶け込みそうな赤色。

 血だらけの顔は強張っていて、血走った目から涙がポロポロ溢れている。

 そして、それを手を繋ぐ子どものクレイヤとフィオナが見つめていた。


 ぐわんと回転して……今度は白くない。部屋だ。病室。白黒結社の医務室に似ているけど個室だ。ベッドは1つ。そこに、無表情で顔を少し傾けた女性——魔女だ。フレイヤ・デーヴァが座っている。髪は赤くなくて真っ白。


「母さん。今日は母さんの好きな白詰草を沢山摘んできたんだ」


 黒髪の子どもクレイヤがフレイヤへ白詰草の冠を差し出す。クレイヤの髪には1つだけ深紅の髪玉飾りがついている。

 フレイヤは動かない。視線も定まっていない。クレイヤを見ていない。

 クレイヤはベッド脇の椅子に登り、フレイヤの頭の上に白詰草の冠を乗せた。それから椅子に座り、布団の上に投げ出された手を、左手を握った。


「ご飯は食べられた?」


 クレイヤの問いかけに返事はない。


「良い匂いがするからお風呂は入れたんだね」


 やはり返事はない。


「僕、また満点取ったんだ。母さんみたいな英雄になるから、楽しみにしてて」


 これにも返事はない。クレイヤはニコニコしながら、まるで人形のように動かない無表情のフレイヤに話しかけ続ける。

 クルクルと体——体は見えないけど——が回転して真っ白な世界。


「クレイヤ、食べられる?」

「ありがとう。でも今日も食欲ない」

「大丈夫。クレイヤの大好きなタルタルソースを使ったから。一口食べてみて」

「うん……」


 真っ白な世界に浮かぶ、クレイヤとフィオナ。子どもだ。やはりお揃いの色の髪玉飾りとリボンをしている。2人の姿が消えて、また白だけになる。


「ほら、食べられた。フィオナね、沢山美味しい料理を覚えるからクレイヤが食欲なくても大丈夫」

「うん……。変だよな。何でこんなに食べられないんだろう。毎日皆に迷惑かけてる」

「変じゃないし迷惑じゃないよ。ずっと一緒にいようね。おじいちゃん達も、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんもお姉ちゃんもずっていて良いって言ってるよ」

「そうかな?」

「そうだよ。一緒に薬草園で働くのも良いし……」

「俺は英雄になって母さんを守らないと。父さん達の代わりに国中を守るんだ。俺さ、今の代わりにフィオナも守るよ。おじさん達もみんな。全員」

「そう? じゃあ約束ね。また寝る時に魔法を教えてくれる?」

「うん」


 ずっと白い世界で声しか聞こえない。胸がとても温かい。優しい世界でずっとここにいたい。

 なのに次の瞬間、凄まじい黒い炎の渦に取り囲まれた。


「何で……母さ……」

「大丈夫よ。貴方の代わりはまた産むから……。1番要らない子だったもの……」


 クレイヤとフレイヤの声。

 自分の体は見えないけど、私は確かにここにいる。熱くはない。しかし割れるように頭が痛くて吐きそう。でもその体がない。存在しない体が千切れそう。痛い。痛過ぎる。

 眼下に現れたのは黒い炎で燃えて絶叫している小さな人影。

 誰かに首を絞められている。私の視界では肘より下しか見えない。

 燃えて泣き叫んでいるのはクレイヤだ。悲鳴と苦悶の表情から目を背けようとしたのに私の体は存在しないからか動かない。瞬きすら——……また場面が変わった。

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