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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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禁断の図書室? 私と可愛いマーメイド2

【図書室 特別閲覧室】


 図書室からマギアキー——特殊な魔法紙で出来た鍵——を使って入れる特別閲覧室は、図書室と特に変わらない部屋だった。

 違いは本棚と本が古そうなくらい。内装も変わらない。3階建ての図書室の地下1階ってだけ。


 こういう秘密や伝説には恐怖もつきもの。なので危険回避のためにリオを連れてきた。正確にはリオとブレイド。

 フィオナとクレイヤが険悪なので、ヴァル先生に声を掛けようと思ったら、リオがいたのでリオにした。

 急な仕事が終わったので、週明けの授業準備の為に学校に来たらしい。


「秘密の秘書って、バンシーのベン・ニーアさんかしら?」とリオ。

 バンシーは悪魔ではない裂魂生命体。精霊とか妖精とわざわざ名称が違うのは何かが異なるのだろう。

 リオは「バンシーはバンシーだけど、確かに精霊と何が違うのかしら?」と首を傾げた。リオやブレイド、フィオナでも分からないこの世界の常識もあるらしい。まあ常識って当たり前のことだからなぜ? と思わないのかも。


「秘書の司書さん、ベン・ニーアさん、出てきてー」


 特別閲覧室で私は何度もこのセリフを口にしている。


「ベン・ニーアさんは、あなたはつまらないって言われて、2度と会えてないのよね」

「そうなの?」

「この特別閲覧室に最初に入った日にね、このあたりの空中ですやすや寝ていたから声を掛けたの。お互い自己紹介をしたんたけど、しばらく私の周りをぐるぐる飛んで、気取った加護精霊に囲まれてつまらないって、舌を出して怒って消えてしまったわ」


 リオ曰く、小さなメリュジーナに似たバンシーだったらしい。メリュジーナは聞いた限りだとマーメイドだ。


「ああ、舌を出すからバンシーなのかしら? 精霊はそんな俗っぽいことをしないわ」

「ふーん。そうなんだ。バンシーのベン・ニーアさん! 会いたいです!」


 閲覧室を1周しても何もいない。ガッカリ。いや、2周目だ。

 それにしてもフィオナは全く喋らない。リオに完全に気後れしている。私のリオが並んで歩いて喋り、フィオナはブレイドと並んで私達の後ろ。私とリオしか話してない。


「ねえフィオナ、どう……」


 リオに新しい女友達を! と思ってフィオナを会話に入れようと振り返ったら、フィオナの頭の上に白目のない緑の目をした青白い肌の小さな小さな女の子が頬杖をついていた。下膨れでショートヘアー。真っ青な巻髪。

 フィオナの後頭部からゆらゆら、ゆらゆらと青みがかった鱗、尻尾みたいなものが揺れている。


「あら、あなた。私が見えるの? さっきからベン・ニーアを呼んでいるのに。ベン・ニーアは旅行中よ」

「いたあ! 見つけた! こんにちは。私はキヨイです。あなたのお名前は?」


 マーメイドはフィオナの頭の上から移動した。私の周りをぐるぐる回る。マーメイドの周りは水があるみたいになっていて、水の魔力が渦巻いている。


「メッソルよ。ふーん、あなた、アイザックと目の色が似てる。すごい高密度のペルヘクセライ」

「ペルヘクセライ? アイザックって、アイザック・ライプニッツ?」

「ペルもヘクセライも知らないの? あなた、アイザックと違ってバカなのね。つまんない。私はアイザックの親友。もうずっと会えてなくて、誰もこなくて退屈していたの。アンスロポスってわんさか来るのに、全然私を見つけられないのよね。隠れてないのに」

「アンスロポス?」

「あなた達よ。尾のない変な大きいメリュジーヌ。これも知らないの? 本当にバカね。私達ってアンスロポスを助ける為に生まれたのに変よ。でもやっと来た。アイザックは元気?」


 またバカって言われたけど、知らないことはバカではなくて無知だ。覚えれば良いだけ。


「私はバカじゃなくて無知なの。色々知らないことだらけで。それで秘密の司書がいるって聞いて、色々教えてくれると思って探しにきたの。アイザック・ライプニッツは200年前の人だからもういないよ」

「えええ、そうなの? そういえば最後に会った時はシワシワのヨボヨボだったわ。アンスロポスってすぐ死ぬのよね。私なんてずーっとここにいるのに。アイザック、また来れたら来るねって私が大好きな花とお菓子をくれて、次はアピの実のパイかな? って言っていたのに」


 メッソルは親友の死という事実を知ったのにあんまり悲しくなさそう。アピの実パイが食べたかった、と嘆いている。

 ふーん、学生じゃなくてもここへ来れるのか。当たり前か。暴露の大魔道士ってことは超絶有名人にして英雄だろう。


「まっ、それなら異界に行けばアイザックのカケラとお喋り出来るわね。あんまり来ないって時点でそうすれば良かった」

「会えるんだ」

「それも知らないの? 気長に探せばそのうち。カケラを集めたらそのうちお喋り出来るわ」


 異界は死者の国。カケラは裂魂? 死者と喋れるの? 凄いじゃん。めっちゃ凄い。


「それって、私がメッソルにアイザックへの質問を頼んだら何か聞けるってこと?」

「なんで私があなたのためにアイザックに質問しないといけないのよ。アイザックとお喋りしたいことが沢山あるのに」


 メッソルはべーっと舌を出した。


「ほら、私とメッソルも親友になるじゃない? 会えたら渡そうと思ってアップルパイを持ってきたけど食べる? アピの実に似てるよ」


 私は手に持っていたアップルパイの箱をメッソルの前で開いた。

 ふっふっふっ、さすが主人公的な人生。今日のアップルパイはこのためにあったということだ。


「私がバカと親友? ん? アピの実に似てる? 食べさせてくれるの?」

「好きなだけ食べて良いよ」

「そのままじゃ食べられないわよ。当たり前じゃない。バテムして。それも知らないの?」

「バテム? どうやってするの?」

「そんなの知らないわよ。私が知るわけないじゃない。アイザックと似てるのは目だけね。周りのアンスロポスに聞いてよ」


 メッソルはそっぽを向いた。つんつん、とリオが私の腕をつっついた。


「キヨイ、バテムなら私がするわ」


 耳元で囁かれる。


「ありがとうリオ」


 ニコリと微笑むと、リオは「サンテスプリヴィアンカバーテム」と口にして人差し指で宙に丸と十字を描いた。

 七色に輝く小さな円十字がリオの前に出来る。リオはそれをフウッと吹いてアップルパイに飛ばした。

 アップルパイが一切れ、ふるふる震え、弾けるように裂魂になり、円十字の中に吸い込まれていく。

 それで、小さくて半透明なアップルパイになった。キラキラ虹色に輝いている。


「うわあああ! いい匂い!」


 メッソルはバテム?したアップルパイを両手で掴んでもぐもぐ、ちまちま食べ始めた。ハムスターみたいに頬が膨らんでいく。


「んんん、美味しい。確かにアピの実。アップルパイっていうの? また食べたい。でもロモモのタルトも食べたいなあ。キヨイ、あなたバカだけどいい子ね。手土産を持ってきてくれるなんてアイザックみたい。いいわ、親友候補にしてあげる」


 メッソルはとても幸せそうな顔をしている。


「キヨイ、私達には何も見えないし聞こえないから後で教えて」


 リオはまた私に囁いた。


「そうなの?」

「ええ。私にも見えないバンシーなんているのね。すごいわ、キヨイ」


 それは衝撃的。500年来の天才よりすごいってこと?


「聞こえてるわよ。バンシーと一緒にしないで。メリュジーヌよ。ああ、今気がついたけどリザヘクセライのアンスロポスと知り合いだからベン・ニーアを呼んで……うええ加護精霊だらけ。もしかしてヴィアンカの娘? こんな凄いのいつ以来? やだやだ、キヨイ、そのアンスロポスを追い出して」

「えっ? リオが嫌なの?」


 リオを見ても、加護精霊なんて見えない。メッソルの視界と私の視界は違うっぽい。私にしかメッソルが見えなくて彼女の声が聞こえないように。


「ヴィアンカもヴィアンカの娘も好きだけど、加護精霊の目が嫌い。喋れたら絶対お説教とか嫌味を言われてる。そういう冷ややかな上から目線が嫌。加護精霊を追い出してくれたらいいけど……異界じゃないし、そんなの無理でしょう?」

「リオ、加護精霊って追い出せるの? なんか怖いって」

「加護精霊? 何かしら? うーん……」


 リオは目を閉じて、ぶつぶつ何かを言い始めた。レスノニアもしくはリザ家流のお経? ちんぷんかんぷん。リオはしばらくして目を開いた。


「どう?」

「メッソル、どう?」

「ちっとも。じゃあね、キヨイ。アイザックを見つけられたら質問して良いか聞いてあげる。たまに遊びにきて。バテム出来ないならそのアンスロポスにバテムしてもらってくるのよ」


 それって、またお菓子を持ってこいってこと。さっきロモモのタルトと言っていたから、次はロモモのタルトか。一気に安上がり。

 アイザックが持ってきていたなら、花も必要?


「待って。メッソルって秘密の司書なんでしょう? 私、本を探してるの。新種の怖い悪魔を暴露するのに役立つ本。どこかにある? 教えてくれる? アイザックに質問はまだ考えてなくて。あと次はロモモのタルトにする」

「そう? そういえばさっきもそんな事を言っていたわね。そんな本は知らないけど、図鑑ならあるわ。アイザックと同じで勉強家なのね。バカなのに」


 バカバカうるさいなと思ったけど黙っておく。メッソルは気分屋そう。そうだ、と思い出す。


「あと、あく……むむむ」


 悪魔の呪いと口に出来ないみたい。唇がくっついている。絶対、リオとの誓いのせいだ。


「あくむむむ?」

「悪魔になる呪いについての本も探してる」


 これは言えた。不思議。


「悪魔になる呪いに関する本なんてそこらへんに転がってるじゃない。ああ、難しいやつってこと? バカなのに? 私でも読めない本とかあるのよ。バカには読めないわよ」


 悪魔になる呪いに関する本ってそこらへんにあるんだ。クレイヤの呪いは? 

 リオが「メッソルの言う通り。あの呪いは特殊なの」と耳打ちしてくれた。


「バカだから本が必要なの。読んで覚えたらバカじゃなくなるでしょう?」

「そう? アイザックは違ったわ。いつも私が読めない本を読んでた。まあ連れいくくらい良いわよ。読める読めないは本人の問題だし。リザヘクセライを持つヴィアンカの娘は嫌だけど我慢するわ。アイザック以来に親友になれそうだもの」


 おおお、メッソルの心を掴んだっぽい。すごいぞアップルパイ。すごいぞ私の運。


「ありがとうメッソル。あなたって親切で優しいよね。可愛いし」


 おだてには弱い? 効果ない?


「そうよ。私はうんと良い子なの。可愛いのもその通り。大量にいて嫌だけど、親友候補のためなら加護精霊くらい我慢してあげる。キヨイ、おいで」


 そう言うとメッソルは泳ぎ出した。空中がプールだというように飛び跳ねる。水の魔力が強くて寒く感じる。


「メッソル、加護精霊を我慢するってことは全員行っても良いの?」

「大人数は嫌いだけど4体ならいいわよ。アイザックもよく誰かを連れてきてた」

「ありがとう」

「キヨイ、あなたが通訳するのよ。私、無視されるの嫌いだからね。特にノノンヘクセライの声は聞こえないからコソコソヒソヒソしたら追い出すから。あとノノンヘクセライは何にも分からないから勝手に何かに触らない方が良いわ。リザヘクセライは……まあ、ヴィアンカの娘なら平気ね」

「本当に親切だね。ありがとうメッソル」

「行きましょう。掃除しても掃除しても誰もこないならつまらないって思っていたの」


 そうして、私達はメッソルについていった。特別閲覧室の出入り口と対角線上にある床の上で、メッソルはぐるぐる回った。水魔力が凄まじい渦を作り、そこに階段が発生。

 

 秘密の地下室ってやつじゃん! ひゃっほい! 楽しそう!

 リオがいるから鬼に金棒だ!

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