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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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シミュレーションって言ったのに!

【黒白結社 地下研究施設】


 学校が休みの週末。楽しみにしていたのに、リオに拐われて施設見学会だ。

 飛行訓練だと言われて、学校から黒白結社まで飛ばされて、割とヘトヘト。期待されているって辛いが、地下研究施設というのは気になる。

 リオが、怖い目に合わないで訓練する方法を探してきてくれたのかもしれない。

 地下研究施設は黒白結社の出入り口の右脇に入り口があった。

 白いジャケットを着た見張りがいて、頑丈そうな金属製の扉の向こうが出入り口の階段。

 階段を降りていくと、また見張りがいて金属製の扉があり、それを抜けて階段を下りるとまたしても金属製の壁。そこには更に鉄格子もあり、私達は鉄格子の隅にある小さな扉から中へ入った。

 丸いランプ、確か雷魔法を閉じ込められるピックとかいう電灯が白い廊下に点々と配置されていて、かなり明るい。暗かったらホラー映画に入ってしまったような雰囲気になってしまうので、ピック、ありがたや。


「それでね、雑誌に載っていたそのアップルパイのお店に行ってみたいのよ」

「アップルパイ? この後行ける?」

「ゴリアテ、ブレイド、どう?」

「本日のスケジュールは施設見学だけですから、時間があると思います」

「ゴリアテさん、俺、伝令を飛ばしておきます」


 ブレイドが上着の胸ポケットから魔法紙を出した。ブレイドの魔法紙は花びらが5つの花だった。リオとお揃いだ、と今更気がつく。


「ありがとうブレイド」


 リオが微笑むと、ブレイドは嬉しそうに笑った。超絶イケメンの破壊的な笑顔。思わずマジマジと見つめてしまった。それでふと思う。


(今更だけど、リオとブレイドの関係ってなんだろう?)


 気になるけど、おいそれと聞けない。リオは気さくで友人みたいだけど、私の師匠で、学校の先生だ。そうは見えないが、年も上。


「こちらでございます」


 出入り口のところからいた、存在感の薄い案内係が、ペコペコと頭を下げた。言われた通りに廊下を曲がり、歩き続ける。

 案内係は、ハンカチでずっと額の汗を拭いている。緊張激しいらしい。

 しばらく歩き続け、何度か廊下を曲がり、通された部屋は「解析研究室3」という場所。

 室内には何人もの職員がいて、大きなテーブルの上に紙が山積みで、部屋の3分の1のところにある窓の向こうに、見覚えのあるものが漂っていた。


「ああっ!」


 思わず大きな声が出る。窓の向こうにいるのは、カラザの森で遭遇した新種悪魔だった。相変わらず気持ちの悪い姿をしている。しかし、大人しい。ほとんど動いていない。


「捕獲したのよ」


 私の隣に立つリオが手を合わせ、ニコリと笑った。


「捕獲⁈」

「私とクレイヤとルークの3人で。クレイヤとルーク、上層部に怒られてしまって、今日は講演会を開催しているわ」


 リオはまたしてもニッコリと笑った。


「リオ様、この度は研究にご協力ありがとうございます」


 ボサボサ髪で、丸眼鏡をかけた骸骨みたいに痩せた中年男性がリオの前に立ち、深々と頭を下げた。他の職員達も集まってきて、整列し、次々と頭を下げる。


「リオ様、彼はジャックと言います。この研究室の責任者です」


 案内係が説明する。ジャックが頭を上げると、他の職員達も同じように頭を上げた。


「ジャックさん、解析の調子はどうです?」

「中々手間取っています」

「そうかと思って、素晴らしい目を持った学生と共に研究の手助けに来ました。観察しても?」

「話はユーロさんからうかがっています。是非」


 さあどうぞ、とジャックは私達を部屋の中央へ移動させた。窓の中央手前に立たされる。


「さあキヨイ。これなら怖くないでしょう? 存分に貴女の力を発揮出来るわ」


 背中を押され、頷く。ものすっごく気持ち悪いが、頑丈そうな窓に隔たれているので、新種悪魔が怖くない。

 気がするだけだった。私の足はカタカタと小さく震えた。


「窓破られたりしない?」

「特殊な魔術窓ですよね?」


 リオがジャックに問いかける。するとジャックは焦っているような表情で、ペラペラ、ペラペラと魔術窓の説明を始めた。知らない単語ばかり出てくるので、右から左へ流れていく。

 リオは熱心に聞いて、微笑みながら頷いている。


「壊れないなら……」


 私はチラリ、と新種悪魔を見た。水族館で見たことのある、深海魚のホルマリン漬けみたいな気持ちの悪い形。

 

「霧みたいな薄水色のモヤがかかってて、魔力がグチャグチャしてる……」

「幻惑の氷霧ね。それは私にも見えるわ」

「それでしたら研究員も確認済みです」


 リオとジャックが私を見据える。


「もっと暴けってことだよね……」


 暴くってことは、よく観察するってこと。涎みたいに口から流れるドロっとした液体。それがリオの言う「幻惑の氷霧」みたい。床に溢れおちたそばから霧みたいになって、全身を覆っている。

 

「あの口から出てるのが幻惑の氷霧? みたい」

「口から? 口から何か出てるのですか?」


 ジャックに研究員らしき若い男性が近づいてきて、ボードを渡した。ジャックはそのボードに乗せた紙に何かをメモしていく。私が今言ったことだろう。


「リオ、見えない?」

「ええ。不思議。キヨイの視界で世界を見てみたいわ」


 ふふっ、と笑うとリオは新種悪魔を見据えた。


「ジャックさん、彼女に椅子を。キヨイ、午前中いっぱいはこの新種悪魔の観察よ」


 リオに背中を叩かれた。えー、と文句を言いたくなるが、ブレイドとゴリアテに睨まれたので諦める。ジャックが指示を出して、私達に椅子が用意された。

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