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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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キヨイとクレイヤ 6

【黒白結社 どこかの部屋】


 リオが入った部屋は、そんなに広くない、ソファとテーブルだけがある部屋。白い壁、白い天井、窓は無い。なんか……息苦しい部屋。ゴリアテは部屋の外。室内に私とリオの二人きり。リオは暗い顔をしている。


「あの、リオ……あの後……何があったの?」


「ルークを含め、祓士と聖騎士は今も悪魔と交戦中。まあ、特務部隊に私の護衛クラスの聖騎士達だから問題無いと思う。魔女は目的を失ったから、逃げたわ……」


 私をソファへ促すと、リオは反対側に腰掛けた。品のある動きだけど、かなり脱力気味に見える。両手で顔を覆ってしまっている。


「リオ? 大丈夫?」


「多分、近いうちにクレイヤやキヨイを囮に使った作戦が行われると思う」


 そろそろと、リオが手をどかして、顔を上げた。憔悴という様子。


「お、囮⁈ わ、私⁈」


 リオは首を横に振り、それから小さく頷いた。


「私が止めるわ」


 決意に満ちた強い眼差しに、私は背中を背もたれにくっつけた。


「そもそも……魔女って何者? クレイヤのお母さん何でしょう? クレイヤを悪魔にしてどうするつもりなの?」


 意を決して、質問してみる。リオは迷っているように、異色の瞳を揺らした。


「その話をしようと思ったのよ。クレイヤはエルヴィー様と話すって言っていたけど……」


 リオが背筋を伸ばした。私をジッと見据える。


「フレイヤ・デーヴァ。一八年前まで、彼女はこの国の名高い英雄だった。聖炎のフレイヤ。火の魔術を使わせたら、右に出る者はいない特等祓士」


 リオの悲しそうな目に、私はゴクリと唾を飲んだ。特等って凄そうな響き。そんな人が、魔女と呼ばれているって、大体予想がつく。あれだ、何か悲劇があって闇堕ちしたんだ。


——フレイヤ・デーヴァ。俺の元母親。あちこちで人を呪う、脳みそ狂った犯罪者


 クレイヤの冷めた声が蘇る。


「ある日、デーヴァ邸が大量の悪魔に襲われたの。この日はフレイヤさんの誕生日で家族が集まっていた。デーヴァ一家は、フレイヤさんだけでなく、祖父母に夫、子供も優秀な魔術師だったのに生き残ったのはフレイヤさんと、偶然出掛けていたクレイヤだけ」


 ひえっ。やっぱり、こういう悲劇物。予想通りだけど、私は言葉を失った。


「悪魔は基本的に集団では動かないし、真昼にも活動をしない事が殆ど。とても不可解な事件よ。現在も調査中」


 空気が重い。ただ、この悲劇がどうして、闇堕ちの原因になるのだろう? 普通、この世の悪魔なんて全て滅ぼす! とかにならない?


「フレイヤさんは精神的に病んでしまって、心を閉ざしてしまった。それから半年、彼女はクレイヤを呪って消えたの」


「え……っと……何で? こう、唯一生き残った息子と頑張って生きて行こうって……なり……らなかった……」


 ならなかった。リオの表情がそう物語っている。リオはとても辛そう。


「死者蘇生……」


「へっ?」


「大切な人を失った者なら、誰もが夢を見る。フレイヤさんも……」


 ほろり、と涙を流すと、リオは私に悲しげな微笑みを投げた。


「えーっと……クレイヤが悪魔? 覇魔だっけ? になると死んだ人も蘇らせられる ってこと?」


「言い伝えでは。覇魔の生みの親は、あらゆる物を手に入れられるそうよ。フレイヤ・デーヴァは、古い時代の禁呪を発見して実行したの。それだけの才能を有していた」


 しかし、腑に落ちない。唯一生き残った、大切な息子を呪わなくても……。そこら辺の人を呪えば良い話だ。


「何で……せっかく生き残った息子を……。もしかして、血縁者でないといけない?」


「多分……。でも、分からないわ。謎だらけの呪いなの。貴方の代わりはまた産むから……。クレイヤは母親にそう言われたそうよ……」


 ヒュッと喉の奥でいやな音が鳴った。全身がわなわなと震え始める。


 ()()()()()()


「クレイヤの呪いは、嘆きの心臓を食べさせられる程、覇魔に近づく。嘆きの心臓は、呪われ、悲劇のうちに殺された心臓。彼女が狙う相手から推測するに、高度な魔術師の心臓が良いみたい」


 リオが私を掌で示し、その後自分の胸をトントンと軽く叩いた。高度な魔術師……私やリオ?


「クレイヤが覇魔になるまでの心臓は七つ。そう発言している。私が曝露した限りでも同じ。現在、クレイヤが食べさせられた心臓は三つ」


 つまり、残り四つ……。


「後、一つか二つの心臓を食べさせられたらクレイヤは処刑になる。能力的に……処刑の中心になるのは私かルークよ……」


 唇をキツく結んだ後に、リオは大きな溜息を吐いた。これか、ルークが「俺とリオで殺すしかない状況」という話。


「クレイヤの呪いを解ける人物は今のところ居ない。呪術者を捕縛すれば、開ける道もあるかもしれないけれど……」


 リオが言葉を切った。続きは、今夜も逃げられた、だろう。


「魔女もクレイヤも処刑。それが上層部の大半の者の意見。クレイヤの擁護者は少ないわ。クレイヤは実験台として結社に協力したり、祓士として活躍する事で、自力で生きる道を切り開いてきた」


 なんか……クレイヤの人生って悲惨……。


「あの、私も……頑張る。クレイヤは命の恩人だし……。痛い、怖い、前線は禁止だからね!」


「残念だけど、魔術、特に祓術や解呪の上達には経験が必要よ」


 ごめんね、とリオが苦笑いした。私の頬が引きつる。


「い、嫌だ。こう、なんか無いの? シミュレーターとか、そういうの」


「シミュレーター?」


「模擬悪魔とか……模擬呪いとか……」


「模擬? ああ、シミュレーターってそういう意味なのね。学生の範囲だとキヨイには役に立たないけど……。高難易度の演習研究について、聞いたことがあるから、調べておくわね」


 おお! 聞いてみて得した! リオはうーん、と唸っている。心当たりがそんなになさそう。しかし、リオは超偉いらしいから、探してきてくれそうな気がする。


「キヨイ、左手を出して」


 何で? と聞く前に私の腕は動いていた。まるで、自分の意思じゃないみたい。リオが私の左手薬指に、自分の左手薬指を絡めた。


「汝、沈黙を貫け」


「痛っ!」


 いきなり、私の左手薬指にトケが刺さった。手を引っ込めようとしたのに、動かない。まるで、金縛り。トゲが伸びて私の指に絡まり、そこに白い花が咲いた。


「な、な、何したの⁈ 痛かった! このトゲや花は何⁈」


 瞬きをしたら、薬指のトゲや花は消えていた。


「貴方、本当に強い曝露の目を持っているのね。ヴィアンカ十字の誓いっていうのだけど、トゲや花に見えるのね。私でさえ、知らなかったわ」


 感心、という眼差しがこそばゆい。褒められて悪い気はしない。


「ヴィアンカ? 十字の誓い?」


「クレイヤの呪いの話を他人に話せない。何があってもね。私とキヨイの間の強力な約束みたいなものよ。ルークには効かないの。口が軽いのに、困ったものね」


 リオがすまなそうに笑う。なんか、背筋がゾゾゾってした。


「何、勝手に怖い事してるの⁈ 私に選択権は⁈ リオって結構強引だよね⁈」


「ルークが結社上層部の中でも、一部の者しか知らない秘密を話すから仕方無くよ。キヨイ、今夜見た通り、私には個人的な力と巨大権力がある。私は必ず貴女やクレイヤ、それにルークを守るわ。絶対に」


 立ち上がったリオの背後に、炎が見えるような錯覚。炎の形が、リオの姿のようになる。炎に目はないのに、私をジッと見つめてくる。


「リオ、秘密を守れなら、テトュス街で、もうこの誓いってやつをした筈だよね?」


「ヴィアンカ十字の誓い、総本山から遠いと上手く出来ないの。キヨイは結社の秘匿契約書にサインしてると思う。私との誓いの方が安全よ。これで、上書きされたわ」


 確かに、何かの書類にサインしたという薄ぼんやりした記憶がある。


「その辺り、詳しく説明してくれる?」


「怖い事、聞きたい? 聞きたくないと思って説明していないのだけど 」


 リオは私の返事を待つように、黙っている。私は少し考えて、首を縦に振った。


「どうしても知りたくなったら聞く」


「そうすると良いわ。色々な話を聞いて、混乱しているでしょうし」


 リオは優しく微笑むと、部屋の扉を開けた。


「キヨイ、今夜は結社の宿泊所でゆっくり休んで。これ、特別室の使用許可証よ。明日の朝、迎えに来るわ」


 リオは指で空中に文字を書いた。半透明の薄桃色の四角い紙みたいなものが出来上がる。リオはそれを私に渡した。ぷよぷよしたな変な感触。リオが歩き出したので、私は隣に並んで足を動かした。


 足が重い。


「特別室? リオは?」


「ええ。とても良い部屋よ。私はこれからあちこちに報告へ行くわ。関係各所に説教されてくる。大目玉よ」


「リオ様。自業自得です。まあ、それでも貴女は決して反省しないのでしょうけどね」


 ゴリアテの苦言に対し、リオは澄まし顔で「ええ。私は間違っていないわ。反省したフリくらいするけどね」と返事をした。リオって……勝気。おっとりしたお嬢様だと思っていたけど、超勝気!


 リオは肩を竦めて、苦笑い。宿泊所までの間、私はリオとクレイヤ、ルークの関係を聞いてみた。三人は歳はバラバラだけど、同級生。幼馴染らしい。


 ブレイドは? と聞こうとした時に、特別室に到着。私はリオとゴリアテに置いてかれた。部屋の鍵はリオが銀色のドアノブを引っ張って作り出した。これも魔法なのだろう。


 特別室内はとても広い。テレビで見た事がある、ホテルのスイートルームみたいに豪華。ただ、床や調度品、壁紙は白と黒ばっかり。あと銀色や灰色。黒白結社って、なんでこういう内装なのだろう?


——決して何にも染まらない漆黒。穢れなき純白。


 ルークがそんな事を言っていたな……。可愛くない……。


 私は疲労が強くて天蓋付きのベッドに倒れるように横になった。そのまま、お風呂にも入らずに爆睡。気がついたら、朝だった。

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