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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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呪いが感染するって怖くない? いいえ、私がブワッと解決! 1

【テトュス街への道中】


 魔法の国にも列車があった。真っ黒な機関車。窓の外には、なだらかな丘や森が続いている。早朝6時に出発という、超早出。朝が苦手な私は、マールに起こしてもらった。列車が動き出して約10分。もう、眠い。


 マールは通路を挟んで隣のボックス席で見知らぬ——というか私にはまだ知り合い自体少ない——大人男性2人と熱心に話しをしている。マールの隣に座るビルも同様。マールとビルと話す黒いローブを着た中年男性は、ファンタジー映画の登場人物みたい。


「皆、黒いローブを着ているね。背中の模様も一緒。黒白結社って制服制なの?」


 私は隣に座るリオに小声で問いかけた。リオはいつもと同じ格好をしている。銀の首飾りに黒いロングワンピース。そもそも、リオはいつもこの服装。本人に確認したことはないけど、おそらく家の関係なのだろう。可愛いのに、もっと明るくてふわふわした服を着せない理由って何なのか?


「キヨイ、祓士学校で学んでいて特任時の黒法衣を知らないのかよ」


 リオの向かいに座るルークが、呆れたという表情を見せた。特任時の黒法衣なんて単語、初めて耳にした。ルークが着ているものは、七分袖くらいで丈も短い。ローブというより、フード付きのジャケットに近い。一方、ルークの隣にいるクレイヤはマール達と話す中年男性と同じ長袖のもの。丈も長い。


「知らなくて当然だろう? キヨイ、特任っていうのは各国の国属祓士が参加する特別任務の事。で、レストニアの国属祓士機関は黒白(こくはく)結社。割と大変な事件があると各国の優秀な人材が呼ばれる」


 ニッと口角を上げるクレイヤ。各国の優秀な人材として選ばれたから自慢した、という意味の笑みだろう。格好良いので思わずポーッとしそうになった。しかし、クレイヤってこんな顔だったっけ? 私、爬虫類系の顔は好みじゃない。何か今日はクレイヤの印象が違う。


「当然か? 卒業後に働く組織の事だぞ? 基本から教えてやろうキヨイ。弟子だから常識くらい身に付けておかないとな。この黒法衣は協会権威を示す、この国最高峰の誉れだ」


 ルークの説明に、私は「はあ」と首を捻った。何だかよく分からない。ルークが眉間に皺を寄せる。


「キヨイ、黒が最も位が高くて神聖な色っていうのは学んでいるよな? 次は白」


 ルークの問いかけに、私は首を横に振った。留学準備期間中に聞いたような、聞いてないような、あやふや。


「そこからか」

「えっと、まあ、今覚えた」

「まあ、それでいっか。決して何にも染まらない漆黒。穢れなき純白。魔除け浄化の力があるから白の代わりに銀の時もある。黒と白だけを纏うっていうのは特別な事なんだ。で、この黒法衣は黒。背中の紋様は白」


 ほうほう。黒白(こくはく)結社の名称もそこからきているのだろう。ルークが続ける。


「背中の紋様は協会の象徴、聖円十字(サングリアルクロス)。特任は協会主導だからだ。協会は国属祓士機関の運営にも、色々関わっている。この黒法衣は、国属祓士かつ特任に招集された者しか着れない。自国を代表している。国境を越えて協力し社会貢献をすることを誓います。って意味を持つ」


 得意げなルークを無視して私はリオを見た。協会ってそんなに凄い組織なのか。その協会の総本山がリザ家で、リオは分家跡取り娘。超、とんでもなく偉い人だ。どうりでお金持ち、お嬢様風な訳だ。超絶偉い人みたいだけど、ホワワン、のほほん、ってしていて一緒にいて楽しいからピンときてない。拝まれたり、特殊能力も見たのに。


「それで可愛い服とか着れないんだ」


 オシャレ出来ない、アクセサリーもいつも同じ、カフェに入るだけで一苦労。リオって大変。リオが大きく目を見開いた。何に驚いているんだろう?


「ははっ。何だよその感想」


 ルークが苦笑を漏らす。クレイヤはリオ同様に驚いたというような顔をしている。


「憧れの服を可愛くないとは、育ちや文化が違うから面白いな。キヨイ、漆黒の花嫁装束はどう思う?」


 ルークの質問に、私は即座に首を横に振った。このヨーロッパ風な国レストニアの花嫁衣装はウェディングドレスみたいな奴だろう。黒いウエディングドレスを着るリオを想像してみる。うん、似合わない。


「リオが結婚する時って黒いドレスなの? えー、黒と白が神聖な色なら白の方が良いのに……」

「白は汚れ、染まるって意味も持つから黒より格下だ」


 そんな事言っても、清楚愛くるし系のリオには絶対に白の方が似合う。ルークは私を不可解そうに見ているけど、私は私で不思議。純白の花嫁。白無垢。それが私の常識。


「憧れの服じゃなくて、恭しいって思っているだけよルーク」


 リオが私の耳に顔を近づけた。


「正直、皆さんと同じようなワンピースとか、キヨイみたいな楽そうな服を着てみたいわ。こんな地味で真っ黒な服、率先して着たい娘は居ないわよ」


 囁くと、リオは私から離れた。横顔が寂しそう。楽そうな服とは、私がよく着ているシャツにショートパンツだろう。今も着ている。このラフな格好はリオに似合わなそう。パステルカラーとか花柄のワンピースとか着てみて欲しい。


「家に遊びに来て、こっそり着ればいいよ。偉いならちょっと私の世界に来るくらい出来るでしょう? 我慢させられてるなら、たまに我儘を言う権利があるよ」


 私はリオの耳元で、小さな声を出した。リオはビックリ顔。私は思いっきり笑ってみせた。


「ありがとうキヨイ」


 嬉しそうなリオに、私も嬉しくなる。リオの隣、通路に立つブレイドと目が合う。ブレイドは優しい微笑みを投げてくれた。イケメンスマイルは殺人的に格好良くて、うっかりときめいてしまった。私の目の前にはクレイヤがいるのに、油断大敵。


「でもさあ、フェルターエルザ呪疫ごときで退魔士まで特任って妙な話だよな」

「普通のフェルターエルザ呪疫にしてはおかしい。それと魔女を警戒しているんだろう」


 クレイヤが私をジッと見つめた。


「キヨイ。成長の大チャンスな上に、これだけ大人数の祓士が参加する特任だから安心しろ。フェルターエルザ呪疫については調べてきたか?」


 先生モードという顔になったクレイヤ。私は首を横に振った。昨夜は、ヴァルの三つ子の子ども達と遊んだのと美味しい夕食でお腹いっぱいで、ぐっすりスヤスヤ眠ってしまった。今も眠い。


「えーっと……呪疫って感染する呪いだっけ? 」


 先週、呪い学の授業で「呪いの種類」を説明された。確か、そうだ。


「正解。その感じだとフェルターエルザは調べてないようだな。まあ、むしろその方が良いか。暴露の練習になるしな。今回、ルークやリオとは別行動だから、俺から離れるなよ」


 クレイヤが歯を見せて笑う。やっぱり、今日の私は変だ。あんまりクレイヤにドキドキしない。それに、胸の奥がザワザワとして落ち着かない。私はクレイヤに買ってもらったピンキーリングを見つめる。

 

「うん。何か怖そうだし、絶対離れない。さっき言ってた、魔女って何? 人を呪う系の魔術士のこと? その人がフェルター? エルザ? の原因なの?」


 漫画とかで出てくる悪役魔法使いって「魔女」だから、そうだろう。クレイヤが目を瞑り、腕を組んだ。足も組む。


「フレイヤ・デーヴァ。俺の元母親。あちこちで人を呪う、脳みそ狂った犯罪者」


 冷ややかな声に、私の喉の奥がヒュッてなった。フレイヤ・デーヴァ。前に見た、生死問わずの指名手配犯の名前だ。クレイヤが「俺の母親」と言って気がつく。苗字が同じだ。


「おい元母親って……。あー、キヨイ。色々事情が……」

「そんなものあるかよルーク。似たような目に合っても前を向いている人は大勢いる。単独犯から組織犯罪者になった可能性があるから、黒白結社は魔女をかなり警戒している。キヨイ、魔女は絶対にお前に近寄らせない。必ず。ルークも頼むぞ」


 そう告げると、クレイヤは黙り込んでしまった。一気に空気が重い。ルークとリオは複雑そうな表情。誰も何も言わない。沈黙か続くと、眠気に勝てなくなった。コクン、コクンと船を漕ぐ。


——フレイヤよ。貴女を悪魔から助けにきたの


 真っ白い髪の儚げな美人の微笑。ハッとして私は背筋を伸ばした。全身に冷たい汗を掻いている。夢? 凄い嫌な感じ。


「テトュス街に着いたぞキヨイ。特任前なのに、涎を垂らして寝れるってお前は度胸の塊だな」


 目が合ったクレイヤが愉快そうに笑う。隣でルークもクスクスと笑っている。機関車は止まっていた。


 機関車を降りると、駅は高い位置にあって、テトュスという街がよく見えた。森に囲まれた街。白い建物が多い。大きな川が流れていて、三本の巨大な橋がある。テレビとかで見た事がある、ヨーロッパの城みたいな建物が丘の上に建つ。そろそろお昼なのか、頭上近くにまで昇った太陽の明かりで、街や川がキラキラと光って見える。


「綺麗……」


「今回、解呪士として呼ばれた俺と弟子のお前は患者救命と、退魔士が見つけた呪疫の感染源の解呪をすることが使命。パッと解決して、帰るまでのんびりしようキヨイ。特任後はチヤホヤされて、楽しいぞ」


 クレイヤが私の髪をくしゃりと撫で、背中を軽く叩く。期待しているという眼差しに、私は大きく頷いた。


 超天才な私と、天下無双のクレイヤ。


 特任って何か怖い響きだけど、名実共にパートナーになれるってことだよね?


「クレイヤとなら頑張る!」


 私はエイエイオー! っと握った拳を空に突き上げた。

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