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大天才キヨイと白と黒の悪魔  作者: 彩ぺん


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庶民感覚を忘れそうなお買い物1


——永らく不在だった暴露の大魔導士。キヨイ、未来のお前の通り名だ。それから、天才解呪士。キヨイの未来は誰よりも明るいぞ!


 これはこれで嬉しいけど、夢は大きくクレイヤのお嫁さん♡


 そっちの未来は明るいの?



*****



 魂魄葬送(こんぱくそうそう)の特別授業は中止。というか、グイベルという上級悪魔の出現で、リオの「ヴィアンカ・鎮魂唄(レクイエム)」の見学が出来たのでそれが特別授業になった、らしい。


 わらわらと大人の人達——リオの護衛騎士達らしい——が現れて、担任のヴァル先生も来て、クラスメートは学校に連れ戻された。火山地帯に現れるグイベルが、どうして人里に現れたのかわからないので、安全措置、らしい。


 私はというと、クレイヤ達に街へ連れていかれた。


 グイベルを見事に「暴露した」私に、皆がご褒美をくれるそう。悪魔を倒すのに必要なのは、悪魔の核の位置の把握。それから悪魔の核に効果がある属性が何か。それが解明されている悪魔は、知識や技術があれば倒せるそう。しかし、未解明の悪魔は退魔困難。「暴露」まで出来る魔術師は超貴重、らしい。つまり、私ってやっぱり天才。よく分からないけど。とりあえず、ご褒美と入学祝いが貰えるから得な能力だろう。


 レストニア国の繁華街の1つ、東大街の石畳を歩く私達。このメンツ、かなり目立つ。


「入学祝い、毎日毎日悩んでいたら、もう一月も経ってしまっていたのよ」


 目立つ筆頭は、のんびりとしたリオ。道行く人に祈られ、拝まれている。リオもニコニコしながら、優雅に手を振る。ルークに「止めろ」と言われたからか、手を振るのは時折にしているが、大注目には変わりない。現人神(あらひとがみ)だとか聖人って聞いたけど、こんなの毎日が大変そう。


「リオだけが、楽器って言い張るからだろう? 鎮魂士以外に楽器なんて必要ないのに。俺とクレイヤは意見が一致したのにさ」


「そうだリオ。反対しているのは、お前だけ。ルークの言う通り、楽器が必要なのは鎮魂士だけ」


 次に目立つのはクレイヤとルーク。どうやらこの2人、英雄らしい。ちょこちょこと若い女子の黄色い声援が飛び交い(少しイライラする)、老若男女からの謝辞や激励もある。何故なのかブレイドに聞いたら教えてくれた。ルークもクレイヤも、全員にではないがきちんと声掛けに手を振り返している。特にルーク。年配の人には返事もしていた。


 祓士(はらいし)は国内の端から端まで、あらゆる分野で活躍しているそう。中でも恐ろしい悪魔をやっつけてくれる退魔士は、当然人気者。


 圧倒的な強さを誇る白祓士——魔人ルーク


 強いだけではなく高難易度の解呪もこなす黒祓士——氷槍のクレイヤ


 若手の出世頭、期待されている新たな英雄、そして二人は仲が良い。だから、目立つそう。


 上級悪魔グイベルを即座にけちょんけちょんにしたので、納得。魔人は怪力だから、氷槍はクレイヤの得意魔法が氷なのと、槍錫杖からだという。


「キヨイなら何でもこなせるわよ。クレイヤやルークが可愛くない、暴力的な物ばかり提案するからでしょう? こんなに可愛い女の子に、おどろおどろしいデザインの物ばかり提案するなんて、酷いわ」


 私の隣でリオが頬を膨らませた。こんなに可愛い女の子と呼ばれたが、可愛いのはリオだ。私は平凡。魔法の才能は特大級らしいけど、容姿は変えられない。変身術とかあるなら覚えたい。


「おどろおどろしいデザイン? それはこいつ。俺は品があるものしか選ばない」


 私の隣でクレイヤがルークを親指で示した。


「はあ⁈ 品格なんてお前にはないだろうクレイヤ。ったく、今日はマシだが、いっつも変な格好をしてて何を言う」


「変な格好? 馬鹿ルークはセンスもないな。俺はファションリーダーだぜ? スポンサーもついてる。お前とは格が違うんだよ」


 ええー、クレイヤがファションリーダー? 私はルークに一票。緑と白のシルクハットを被って、授業をしたことがあるクレイヤの姿を思い出す。あれはナイ。しかし、スポンサーとは、クレイヤがエリート祓士なのは間違いないらしい。黒白結社の祓士って、レストニア国の魔術士の中でも格式が高く、国の守護神らしい。その中の更にエリート集団、英雄達に囲まれる私。


 英雄達の弟子の私。私って凄い! しかし、未だにピンとかない。


 それにしてもリオとクレイヤの間って、私は恋のお邪魔虫? 馬に蹴られて死ぬのは嫌だ。しかし、クレイヤはいつも私の隣にいてくれるので、つまりクレイヤからの矢印は私に向いていたりする?


「キヨイ、お前はたまに、ぼんやりしているっていうか、何考えているのか分からないな。能天気っていうか、面白いよな」


 ルークが後ろから私の肩を叩いた。振り返るとルークの指が頬に当たった。鋭い爪が刺さるかと思ったら、痛くなかった。猫みたいに、引っ込むの? 見てみたがよく分からなかった。


「ぷくく、あはは、その間抜け面! こんなのに引っかかるって警戒心なさすぎ。小等部のガキみたいだな!」

「こんなことをするルークの方が、しょうとう? 小学生ってこと? それだよ!」


 何故だか分からないが、リオが熱心な目つきでルークを見た。


「自分もやって欲しいって顔に描いてあるなリオ」


 リオを見て、クスクスとブレイドが笑い出した。


「べ、べ、別にそう言う訳ではないわ。小等部でそんな遊びを見たことがあったなあって思っただけよ」


 ふてくされたような、照れたようなリオに熱視線のブレイド。見てるこっちが恥ずかしい。何故、リオはこの恋の眼差しに気がつかないのか、不思議。


「ねえ、リオ」


 私はリオの肩を叩いた。さっと手を引く。振り返ったリオが、ガッカリとして萎れた。ナニコレ、可愛い、面白い! 私は膝カックンをしておいた。バランスを崩したリオがブレイドに支えられる。ブレイドに滅茶苦茶睨まれた。こ、怖い。一方のリオ、しばらく放心して、それから意気揚々とルークに膝カックンを試みている。左右で違う色の瞳が、キラキラ輝く。


 ルークに逃げられ、揶揄(からか)われるリオ。歳、いくつだっけ? 子供みたい。


「ガキみたいなことしてるな。ほら、着いたぞラビゴ」


 クレイヤが足を止めたので、私も止まる。煉瓦造りの小洒落た建造物。銀色の看板が掛かっている。


【ラビレリア・ゴルテット】


 覚えにくい。兎っぽいロゴはもう覚えた。


 予想していたよりも、重厚感のある店。ドアマンがいる。た、高そう……。


「ちょっと課題をこなしただけで、ラビゴのネックレスをせがむとは、キヨイは鬼だな。まあ、高給取りのクレイヤが払うし、俺は外で待ってる。こんなハイブランド店、湿疹出そう」


 ルークがひらひらと手を振りながら、人混みに消えていった。


「そ、そんなに高いの? それなら他のお店で……」


「別に普通。あいつ、馬鹿だから仕事のたびにあちこち壊して減給されてるんだ。だから破壊魔人なんて呼ばれてる。馬鹿につける薬はないってな」


 クレイヤはルークに対してはよく軽口を叩く。本当に仲が良いのだろう。


「そうよキヨイ。ラビゴは一般の方のお店よ。私、ずっとこのお店にも入ってみたかったの」


 一般の方のお店。シレッととんでもない発言をしたリオ。ワクワク、ウキウキという様子でリオがお店へと足を進めた。


「リ、リ、リオ様! ようこそいらっしゃいました! 店長に話をして、VIPルームをご用意致します!」


 ドアマンが、物凄く緊張しているという声を出した。ブレイドがずいっと前に出て、ドアマンを見下ろした。容姿端麗なブレイドは背も高い。ゴリラっぽいドアマン、並ぶと不憫(ふびん)


「友人の買い物の付き添いなので、そのような対応は必要ありません。仕事を続けて下さい」


「行こうぜリオ。お前の昇進祝いも何か買ってやる」


 クレイヤがリオに近寄って、更にはリオの肩を抱いた。えー……。やっぱりそういうことなの?


「リオに触れないで下さい。聖人ですよ」


 勢い良く戻ってきたブレイドが、クレイヤの正面に立って、クレイヤを睨んだ。


「なら離れるなよ護衛。先輩を脅すとはいい度胸だな。根性なしも立派になったもんだ。 お前もリザ家内で出世したんだろう? 何か買ってやる」


 クレイヤがブレイドにリオを差し出した。それから今度は私の肩を抱いた。突然の出来事に私はパニック。目が飛び出して、落下しそう。全身熱い。


「それなら、ブレイドの分は私もこっそり払うわ。あのね、キヨイ。ブレイドは三等聖騎士になったのよ」


 三等聖騎士って何?


 ソロソロとリオの肩を抱こうとしたブレイドが、気がついていないリオに避けられた。リオが私の手を引いて、嬉しそうに笑う。クレイヤが私の肩から手を離した。リオに邪魔された⁈ しかし、リオ。私に懐く犬のようにニッコニコ。これは悪意のあの字もない。


「あのね、キヨイ、ブレイドは指輪が好きなのよ。この間時計が壊れたから、時計でも良いかもしれない。ブレイドに似合うものを選んでくれる? ここなら高価過ぎるって言われなくて済むわ」


 花が咲いたように笑うリオ。これはやはり悪意なんてゼロ。リオからの恋の矢印はどこにも向かっていないのかもしれない。


 ブレイドは指輪が好き? 今まで気にしていなかったが、ブレイドは右手の中指と左手の人差し指と薬指に指輪を身につけている。銀色で飾りっ気のない少し太めの指輪。


 あれ、左手薬指に指輪?


「えー、リオが選んだ方が喜ぶんじゃない?」


「私、個人的な贈与を禁止されているの。飴とか、お菓子とか、そういう些細なものなら大丈夫だけど」


 寂しそうに呟いたリオは、散歩に行けない犬みたい。


 店内に入ると、店員が他の客をやんわりと追い出した。ブレイドは出入り口に立ち仁王立ちして、まるで店内ドアマンのように私達に背を向けた。

 私とリオは並んでショーウインドウに並ぶアクセサリーを眺めた。店員は話しかけてこない。クレイヤが何やら話しかけているから、そのお陰だろう。


 リオが「こういうお買い物は初めて」と嬉しそうに呟く。箱入り娘のレベルを超えている気がする。


 それにしても、どの商品も予想より高い。


 リオがジッとネックレスを見つめている。花があしらわれた店のロゴマークに似たデザイン。これは可愛い。しかし、宝石が沢山。ダイヤモンドみたいなキラキラした透明の宝石と青と緑の宝石。リオの瞳と同じ色。だから余計に気になっているのだろう。


 1、10、100、1000……っ高い! 高過ぎる!


「ふーん。キヨイ、これは?」


 クレイヤが私の隣に並んで、問いかけてきた。


「か、可愛いけど……」


「すみません。これ、二つ。あと、試着した時計を四つに、先程の指輪を一つ。それから前に特注した耳栓をまた一セットお願いします」


 私はクレイヤの発言に度肝を抜かれた。


「指輪はこの子の左手小指に合うサイズで。それから魔道具店に魔細工を依頼するんで裏側に、魔法石の加工をして下さい」


 私の小指に合うサイズ。何だって? 魔道具店で魔細工とは何? クレイヤが店員にカタログを見せて指示している。読もうと思ったら、リオに引っ張られた。


「この時計、ブレイドに似合うわね。ねえ、キヨイ」


 ブレイドが時計を試着していた。申し訳なさそうな顔なので、クレイヤかリオに試着させられたのだろう。ブレイドの隣でリオが私に同意を求めた。似合うも何も、多分この超絶イケメンは何を身に付けても様になる。例え百円で買えるシャツでも高級品に見えるだろう。今身に付けている時計も、よく似合っている。


「リオ、クレイヤさんに言ってくれ。こんな高……」


「安いお店で良かったわ。クレイヤ、だから予備も買うのね。可愛いネックレスがあって良かったわねキヨイ。もし失くしても二つ目があるしね」


 安いお店……⁈ お嬢様は感覚が違う。おまねに予備? お金持ちは予備なんて買うの? ブレイドは、どうやら庶民っぽい。私と感覚が似た人がこの場にいるのは安心する。


「予備? 一つはお前にだリオ。昇進祝い。時計はブレイドと揃いだとあちこちから煩いだろうから、キヨイとルークにも。あいつの昇進祝い無視してたからついでだ。よし、次の店行くぞ。俺の杖と似たようなのを買って、さっきの指輪と連携させる。まずは下見に行くぞ」


 支払いは、映画で見たことがある小切手のような紙。リオがブレイドの分の時計代を出す、出さないでクレイヤと揉めていた。会計が面倒だからとクレイヤに突っぱねられ、私の魔道具とやらをリオが購入することで落ち着いたようだ。その後、杖ではなく楽器を買うとリオがクレイヤに詰め寄った。


 合計金額に、私は愕然として立ち尽くす。こんな買い物、テレビの向こうの出来事だ。


「国の英雄が安月給だと誰も目指さないだろ。まあ、ラビゴは新興ブランドだし値段も手頃。このくらいならキヨイに似合うだろう。期待してるからな」


 クレイヤが私に囁いて、体を離すとウインクした。それから購入したネックレスと時計と指輪が入った袋を私に手渡す。残りの袋三つは全部ブレイドに渡された。


 祓士は儲かる。危険だけど、名声と財産が手に入る職業。


 その中でもエリート達に期待される私って、とんでもない?


 店員全員に礼をされ、ドアマンに扉を開けてもらって店を後にした。私、どうやらシンデレラストーリーを歩んでいるかもしれない。次の買い物に、胸が踊る一方で、今までの自分を失いそうな怖さも感じた。

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