かゆい。秘密。ごはん。
「はぁ、家に帰るのがこんなに大変だったなんて
思ってもみなかったな…。」
僕はベットに横になり、改めて思い返す。
……………。
「そこお方、名を名乗ってもらえますか?」
「リューベンス騎士団所属、レヴィです。」
レヴィが証書を見せる。予定では、ルルがレヴィの
遠い友人という内容で門番に話をする予定だ。
「…カイ…。」
下を向いてもじもじしてるルル。少し顔も赤い。
「どうしたの?具合でも悪い?」
熱を確かめる為、おでこに手を当てながら
ルルに尋ねる。
「尻尾、かっ、かゆい…」
「えっ!?」
よく見るとスカートも膨らんでいる。
「ちょっ、我慢して!ここまできてバレたら…」
「どうしたの?」
門番が目を離した隙にレヴィが聞いてきた。
「ルルが尻尾が痒いらしくて、どうしよう。」
「えぇ!?」
二人が慌てていると、門番が近づいてきた。
「そちらは何か証明できるものはありますか?」
なんとかしないといけないけどルルはびくとも
しない。もうダメだと思った矢先、レヴィが
前に出た。
「この子はカイくんの恋人のルルちゃんです!」
僕は凍りつき、ルルは悶え、レヴィは続けた。
「この子、遠い村の出身で、はるばるカイくんに
会いに来たんですが、親の反対を押し切って
来たから、証明するもの持ってなくて~。」
僕とルルの腕を組ませ、小声でレヴィが言った。
「あたしがなんとかするから。抱き合うふりして
尻尾押さえて、このまま家に行って。」
「腰に手を当て、尻尾を押さえながら
レヴィに言われるがまま門をくぐる。
尻尾を掴んだ時のルルの反応で、それ以降は
あまり覚えていない。
そして現在。なんとか家に帰ってこれた。
「レヴィ、大丈夫かな…?」
僕一人では絶対に通じない芸当だった。レヴィの
人から好かれる性格あってこその。後でなにか
お礼をしなきゃ。
「かゆい~~!!」
ルルが入ってきた。って…また裸!?
「かゆいのとれないよーカイー。」
「うわわわ!服を着て!ふくぅ!」
ひとまず服を着せて落ち着かせる。
林に入った際にノミでも入ったのかな?
「これは一度お風呂入んないとダメかな?」
「おふろ?」
「水浴びみたいなものって言ったらわかる?」
「じゃあ、一緒に入る!」
「だっ、だめだめ!一人でいくの!」
ルル風呂場まで連れて行き、替えの服を置いて
後にする。男物だけど我慢してね。
晩御飯の準備中に、ルルが上がってきた。
「おふろって…あったかい…」
のぼせちゃってない?君?
「もうすぐごはんできるよ?尻尾大丈夫?」
「大丈夫。ごはん~!」
尻尾のせいで服がずりあがってしまっているが、
着てもらえてるだけ、良しとしましょう。
「あっ、ちょっと…」
椅子に座るルルだけど一つ気になることがあった。
「ねぇ、ルル。その手のやつ、はずさない?」
「ルルが固まった。よっぽど嫌なのか。
「ごはんを食べるとき位は外したほうが
食べやすいし…」
「うん…カイ…こわがらないでね…」
そう言うとルルは草を解いた。草を巻いた奥から
現れたのは、獣の形をした手と脚だった。
「こ、こわくない?これ見せると…動物や人は
いなくなって、悪い人がくるっ…から…。」
涙を滲ませるルルの手をとる。
ルルの方が怖がっているようだった。
「怖くないよ、あったかくて、優しくて。
それにルルの手だもん。怖くない。」
毛色が良く、爪や肉球も付いていたが、
ルルの手はどこか懐かしい感じがした。
「さ、ごはん冷めちゃうから
一緒に食べようか。」
「…うん!」
無邪気の笑顔は更に磨きがかかり、僕達は
夕食にありついた。不安を取り除いたルルは
とても美味しそうに僕の夕食を食べると
「これすごくおいしい!」
最初会った時より幼く見えるのは…僕とルルの
距離が縮まった証かもしれない。
食器の使い方は後で教えて上げよう。