遭遇
よく分からん市街、珍しくカラスの鳴き声も聞こえない静かな三時快晴、2999年を生きる女の子ノナは、何かの中毒者めいて、いや、中毒者ぶって歩いていた。
軽い頭痛と、吐き気がする。キツいミントガムを噛みながら、忙しなく目を動かす。その目の下にはうっすらと隈ができている。
通路には誰もいない。誰もこの辺りに近寄ろうとはしない。何故かは忘れた。それに自分が何故こんなところでふらふら歩いてるのかも忘れた。現実逃避の類?分からない。とにかくいろいろ疲れた。いろいろ疲れて忘れた。思い出すのも面倒くさい。ぼんやりしながら、そう思った。
適当に足を進めていると、30m先で冷蔵庫が落下して、コンクリートに沈み込み消えるのが見えた。突然の出来事に、ノナは驚いて立ち止まりガムを飲み込んでしまった。
今度は猫が落ちてきて消えた。そしてギターが落ちてきて消えた。分厚い本が落ちてきて消えた。鉄パイプが落ちてきて消えた。エンジンらしき機械が落ちてきて消えた。とにかくいろんなものが落ちてきては地面に沈み消える。やがて車など大きなものまで落ちてきた。
次々と起こる怪奇現象を前に暫くノナは立ち竦んでいたが、ようやく自分の周囲も危険なことに気づき逃げようとした。だが、その直後自身の真上から戦車が落ちてきた。ノナはそのまま戦車と一緒に、地面に沈んでしまった。
(続