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キミにコイをした。  作者: なち
笑言十題
33/52

おもむろに電子辞書を取り出して



 前日理子に叩かれた横っ面は、腫れる程ではないものの時々疼く。

 あの後理子は何も言わないままさっさと弁当を仕舞い、一人教室へ戻ってしまった。非難がましい視線をくれながらも羽田と島野、木下もそれに続いて、残った日向は「あーあ」なんて呆れながらも、雑誌に戻った。佐久間はこれ見よがしな大きなため息をついて、それっきり。高塚だけは「うわー恥ずかしい奴ー」なんて一人居心地が悪そうにしていたけれど、すぐに何時も通りに戻った。唯一その態度が理解できた相手だった。

 結局俺もその場の空気に耐え切れず、バスケを逃げ道にすぐに屋上を飛び出たのだが、頭にきたからと言って悪かったなと反省した。

 だから、殴られた事自体納得はしてるのだ。

 結果的にしつこい一年坊を退けられたんだしキス一つでそんなに怒る事ねぇだろ、と思った事は思ったけれども、だ。

 確かにあのギャラリーの中、偽彼氏の俺に友人連中も前にしてキスされた理子が怒るのも分かる。あいつの好きな奴っていうのが誰なのかは知らないし、今後告白する気があるんだか無いんだかも分からないが、それが同じ学校の奴だったとしたら、そいつの耳に入るのも気の毒だし、ただでさえ注目されている状態でしでかした事だからまたすぐに噂になって、あいつを困らせる事もあるだろう。

 その辺りは前科もある事だ。

 全面的に俺が悪いのは認めるし、すぐさま送った「悪かった」なんて簡単な謝罪メールを無視されても仕方が無い。

 ムカつくあの原島だとかという後輩を打ちのめしてやりたかっただけで、カッとなって暴挙に出たのは俺が悪い。

 分かってる。

 ――分かっているのだが。

 何でだか苛立って、自然仏頂面になってしまう。

 朝練の間も無駄に機嫌が悪い俺に、チームメイトの誰も寄り付こうとしなかったし、教室に入ってもそうだった。

 それでも時間が経てばそんな俺に慣れたのか、隣の席の友人・帰宅部が興味津々と話しかけてきた。

「お前昨日派手にやったらしいな」

 からかう思惑がありありと分かる笑顔を見た瞬間、「うるせー」と返してしまう。机に突っ伏して無視する構えを見せても、帰宅部は口を閉じない。

「俺もその場に居たかったなー」

なんて、でかい声で言うものだから、他の友人らが寄ってきてしまう。

「ああ、昨日の話?」

「いやぁ、ほんと話題に事欠かないことで」

 陸上部とサッカー部も俺の様子は無視して、3人で盛り上がりだす。

「キスでライバル黙らせて、挙句菅野さんに殴られるとか、マジうける」

「やっぱ人前でチューはなぁ……」

 うるせーし、分かってるっつーんだ、そんな事は。

「女の子としては、やっぱキスは二人きりの時にってか?」

「少なくとも菅野さんはそうだろ」

 付き合っている二人であれば、話は単純だが、俺と理子の場合はそうじゃないからな……どうせ何言っても黙らないだろう三人の話を耳に入れながら、心中で嘆息する。

 本気で憂鬱だ。

「えー、私だったら人前でもいいなぁ」

 などと思っていたら、今度は女の声が話に割って入った。

 誰だ、と思ってちらりと腕の間から視線をやれば、その女と目が合った。

「私、高橋だったら何時でも大歓迎だけど。っていうか、逆に人前の方が嬉しい」

けばいという程でもないけど、それなりに派手な外見をしていて、いかにもな女子高生だ。二年に進級してクラスの女子とも話すようになってから、率先して寄って来る女。時々ふざけて俺の腕にからみついてきたり、「付き合って」なんて軽く言ってくるような事もあった。

 どうでもいい、ともう一度顔を伏せる。

「お前と菅野さんは違うだろうよ」

「そうだけどー。でもモテる彼氏を持つ彼女としてはさ、他の子の牽制にもなるしー」

「お前にとってはキスの一つや二つ、だろうけど。菅野さんみたいな子は、」

「っていうか、あんたらどんだけ幻想持ってんの? キモいんだけど」

「キモいとか言うなや!」

「だって事実じゃん。菅野さんだってキスの一つや二つ既に経験済みなんだし。何も殴らなくってもさぁ!」

「うわ、やめろー。菅野さんは綺麗なままでいてー!」

 帰宅部の悲鳴に、笑いが起こる。

「つうか、タケの彼女だっつうの」

 その通りである。――って、何を頷いているんだか、俺は。

「でもタケ達はよくよくあれだよなぁ。放送ジャックの時から注目浴びちまってさ、マジ大変そう」

「昨日の奴も、アレだろ? 校門で菅野さんに告ったっていう……」

「原島な」

「あ、そっかサッカー部の後輩君じゃん」

「いや、でもアイツ、あれでもマジよマジ。部活中も俺に良くタケとの事聞いてきたりしてさ。言動は軽かったけど、「菅野さん今日元気なかった」とかさ、マジ良く見てんなぁって感心したもんオレ」

「いいなぁ、菅野さん。いい男周りに一杯いるのに、一年の有望株まで持ってかなくったって……」

「アレだけ綺麗だからなぁ」

「そうなんだけどー」

 不満げな声の後、肩を叩かれて再度顔を上げる。

 ものすごく近くに、陸上部のしたり顔。

「で、菅野さんと仲直りした?」

「……」

 眉間が寄った俺を見て悟ったのだろう、陸上部が声を上げて笑う。

「ざまーみろっ!」

 理子に熱を上げていた帰宅部の言動には、無言のまま蹴りを入れた。

「何で俺ばっかり!!」

って、

「お前はそういうキャラだから仕方ないだろ」

と突っ込む。

 このまま話題が転換できそうだったので、俺は帰宅部をいじる事にした。




 ――相変わらず、理子からの音沙汰は無い。

 クラスも違えば部活も違うから、昼食を一緒に取らないと関わる機会が無い事に気付く。

「菜穂達一緒に食べたくないって」

と、佐久間から直球で言われたのは、あの日の翌日。菜穂と佐久間はやっとカップルらしく二人で昼をとるようになって、日向も高塚もクラスの友人と一緒するようになった。理子達も恐らくそうなのだろうと思う。

 メールは相変わらず無視。俺も謝る以外にどうする事も出来ないから、そのまま放置の態勢が続いている。

 このまま時間が過ぎて、元に戻るのか、あるいは縁が切れるのか。後者になるような気がする。

 よくよく考えてみれば俺たちの繋がりなんて、そんな薄いものなのだ。

 非常に気まずい。

 謝って謝って、謝り倒してそれで済むなら、そうするのだが。


「そういう事じゃないでしょ」


 止むに止まれず部活中の羽田を掴まえて相談してみれば、ばっさり切られた。

「アンタの馬鹿さなんて、今更どうにもなんないし。謝ったからって済む話じゃないでしょ。無かった事にはなんないんだから」

 隠しもしない大きなため息。タオルで汗を拭いながら、舌打ちまでつけてくれる。

 俺もバスケットボールを、手持ち無沙汰に持ち替えてみる。

「……そんなこたぁ分かってるよ」

 部活中にこんな風に他の事に気を取られるなんて、かつて無い事だ。何時もボールを追っていれば、それ以外の事は考えようとしても頭から抜け落ちてしまう。何時だって身体を動かしていれば、すっきりする。

 ――のに。

「……面倒くせぇなぁ」

 ぼやけば、後頭部を力一杯叩かれた。

「いてぇよ!!」

「自業自得だよっ! っていうか、何だ今の発言」

 怒気を膨らませる羽田は、非常に恐ろしい。

「大体アンタは理子の気持ちってものをちっとも分かってない!」

 そんな事を言われても、という話である。

 不満が顔に出てしまっていたのか、羽田がもう一度舌打ちして蹴りをくれて来た。足癖の悪いこの女から、最近とみに蹴りをくらっている気がする。

「分からない事を分からないままにしてんなよ、ボケ! 少しは考えろ、バカ」

 口汚くそんな事を言って、肩を怒らせた羽田は仲間の輪へ戻っていってしまう。

 ボケだとかバカだとか、まったく散々な言い方だ。ちっとも相談に乗ってくれない女だと分かっていたのに、話しかけたのは俺の失態だろう。

 けれど既に、佐久間には笑顔で「馬鹿につける薬は無いっていうよね」と遠回しに拒否されたし、日向には「お子様には言ってもわからないかなー」と拒絶されているのだ。

 じゃあ一体俺はどうしたらいいのだ。

 大体、何を、どう、考えたらいいのか。

 理子が怒ってる理由? そんなのは分かりきっている。偽彼氏の身分で、キスしたからだろう。

 どうやって理子に許してもらうか? 謝る以外に何がある?

 謝って済む問題じゃない、と言うのなら、解決策くらい教えて欲しいものだ。

 

 結局何度考えたって、それ以上の答えには行き着かず、しばらく悶々としながら、俺は日々を過ごした。




「――で?」


 駅前のファミリーレストランは夕食時だからか、家族連れで賑わっていた。

 席につくなり次々に料理を頼み、ドリンクバーから飲み物を持って来た後、不機嫌そうに眉間に皺を刻みながら、羽田が言う。

「何の用?」

 煩わしそうに長い前髪を掻き揚げる姿が最近は馴染み深い女、羽田。以前切ってしまえばいい、と言った時には同じような不機嫌顔で舌打ちをされてしまった。

 羽田の隣では同じように頼んだコーラを啜っている男、日向と、その向かい、俺の隣には佐久間。一番奥に、島野が座っている。

 じとり、と睨まれて、視線を彷徨わせながらも話を摩り替える。

「っていうか、何でお前らまで……」

 部活帰り、お手上げ状態の俺が声を掛けたのは羽田だけだった。ちょっと話が、と言えば面倒臭いとぼやきながらも、飯に付き合えと連れて来られたのがここ。何故だか当然のような顔をしてついて来た日向と、校門前でばったり出くわした島野と佐久間を羽田が引き止めて今に至る。島野が教室で待っているから、と着替えるなり矢のように部室を出て行った佐久間と、それを待っていた筈の島野。二人はきょとんと目を瞬かせながらも、素直について来た。

 俺としては予想外。やりにくいことこの上ないのだが。

「え、だって……」

 日向が何を今更、と言いたげに俺を見つめてくる。

「羽田とタケだけじゃ、変な噂になっても困るっしょ?」

 友人思いの自分をアピールしながらも、その顔が楽しそうににやついているのだから意味が無い。俺の話なんていうのも大方予想がついているのだろう面々の中で、唯一日向だけが状況を楽しんでいる。

 ――否、羽田もか。

「それはそれで、ケツに火がついていいんじゃないの?」

「羽田、女の子がそんな汚い言い方……」

「今更じゃん」

 意味不明な事を嘲笑混じりに言う羽田と、それを諌める佐久間を得心顔で頷いて眺めている島野といい、久し振りのメンツだな……などと明後日の事を考え出す俺を、ぎろり、と再度羽田が睨んできた。

「ドリンク取って来る」

 と逃げるように席を立てば、何故か「へたれ」と呟かれてしまった。

 席に戻るとポテトやらサラダやらが運ばれて来ていて、甲斐甲斐しく皆にそれを仕分けている佐久間と、さっそくポテトに齧りついている羽田が居た。

 食欲が若干解消されたからか、幾分相好を緩めた羽田が、俺が席につくなり聞いてくる。

「それで、今度は何の相談?」

 いちいち嫌味ったらしい女だ。

「……前の続きだけど、」

 箸を伸ばしてポテトを皿に移したのは、放っておけば羽田が全て平らげてしまいそうだったからだ。

 それに対してなのか、会話に対してなのか、羽田は小さく唸ってからソファに凭れかかった。

「マジで分かんないわけですよ。俺、どうしたらいいわけ?」

 自然俯く顔が、隣の席の佐久間の腕時計を捉えた。時刻は21時調度。月曜9時は、昔なら姉の紀子が何時もドラマを見ていた。今は一人きり、静まり返ったマンションの部屋。自炊している家だから、当然家に帰った所で食事が用意されているわけでも無い。

「高橋はさぁ、どうなりたいわけー?」

「は?」

「だから、理子と」

 止まらずにポテトをつまみ続ける羽田。あーんと開いた大口は女らしさの欠片も無い。

「どうって……だから、前みたいに友達としてだな、」

「じゃあキスなんてすんなよ」

「っあれは!!」

 ――理子に惚れている後輩を黙らせたくて、なんて理由で、してしまったこと。たかが、キス。されど、キス。笑って許してくれ、とは勿論言えない。言えないけれど。

「……悪かったと思ってる。でもやっちまった事は無かった事に出来ねぇだろ? でも普通に謝って許してくれねぇんじゃ、何か対策考えるしか無いしよ」

「その内許してくれるんじゃない?」

 あっけらかんとした調子で口を挟む日向が、盛られたサラダに手を出す。部活帰りのこいつも、結構腹が減っていたと見える。メニューを眺めながら、うーんと唸る顔はこちらを見ない。

「許してくれなきゃそれまでで、いいじゃん」

「良くねーだろ」

「何で?」

 今度は羽田。何でもくそも無いだろうって、顔を顰めれば、続くのは島野。

「高橋君、理子ちゃんと仲直りしたいの?」

 あっちへいったりこっちへいったり、俺の視線は定まらない。

「だからそうだってっ」

「何で?」

 またもや羽田の疑問が入る。

 何でも何も。

「ダチだから」

 当然の事だ。気安い友人、話すのが楽しい奴。バスケに興味を持っているらしいから、その手の会話も出来る。しっかりしてる、と見せてうっかりな所があったり、大人で物静かな印象のわりに、ガキみたいな面も目立つ。一を言えば十にして返される事も、面倒臭い性格も、しょうがないなと苦笑できる程度。

 それに、

「一応、彼氏なわけだし」

 演技の上の話ではあるが、せっかく外野を黙らせる方法を思いついたのに、「喧嘩別れしたらしい」なんて噂されていては意味が無いのだ。

「でも、所詮フリじゃん」

 オーダーが決まったらしい日向はチャイムを押してから、俺に顔を向けて小首を傾げた。

「大体オレらって友達つってもお昼仲間なだけじゃん。 皆で遊んだのも数回あったけど、そんな程度で何時もつるんでる仲間じゃないし。電話もメールもするけど、所詮それぐらいで、生活の何パーセントかを占めてるだけだろ? サクと島野が別れたら、昼も遊びも無くなるわけだし」

「「別れません」」

 無駄に揃った佐久間と島野の主張は綺麗に流される。

「女子共は煩わしいかもしれないけど、「別れました」で済む話じゃん。そこまでして理子さんと友達で居たい理由って何?」

「……いい奴じゃん。お前らだってそうだろ?」

「そうだけど。でもオレ的には、機嫌が直るまで待つけどね。そんでも駄目なら仕方ないかな、と」

 うんうん頷いている羽田の手は止まらない。ポテトを食べ尽くして、タイミング良く運ばれて来た若鶏のから揚げへ手を伸ばす。

「クラスも別れたし。皆でお昼取るのも結構難しいしね。別に今後は今みたいに、別々で構わないんじゃない? そしたらアンタらの接点も更にないし、じゃあ、今友達関係解消されても別にねぇ……」

 現状維持で畳み掛けに入る二人が、何とも苛立たしい。

 それが嫌だから、相談してるんだつーの!!

 不満がどうしても顔に出てしまう。

 二人の言う通り、友達関係解消すればいいなんて思えないから、こうやって呼び出してまで羽田に相談に乗ってもらおうと考えているのに。

「嫌なんだ?」

 と佐久間が真面目な口調で聞いてくるから、俺は即座に頷いた。

「……高橋君、理子ちゃんの好きな人って誰だか知ってる?」

「……いや、知らねぇけど」

「じゃあ、誰だか考えた事ある?」

「……いや……。ウチのガッコの奴なん?」

 唐突な島野の質問に項を掻きながら答えると、島野は困ったように笑う。いきなりそんな話を振られた俺のほうが困ると思ったが、どうやら他の三人は別段様子を変えない。それを見ると、この話も今までの話に繋がっているという事なのだろうか。

「というか、何。お前ら理子の好きな奴知ってんの?」

 聞けば、大きなため息をつかれた。一体どういう意味だ。

「こういう事、あたしの口から言ったら絶対理子ちゃん怒るだろうけど、」

「菜穂!」

 躊躇いがちながら淀みのない島野の言葉を羽田が遮ろうとして、大きな目を向けられる事で黙った。

「理子ちゃんは、好きでもない人と付き合ったりしないよ」

「……」

 沈黙。

 明後日の方向を見つめる羽田を見てから、島野に視線を向ける。気まずそうにしながら、真っ直ぐに俺を見ている小動物のようなくりくりとした目が、まるで子供みたいだ。

 しかし、その告白のどこが理子に悪い事なのかは分からない。

「そら、そうだろ……」

 呆気にとられた空気から抜け出して俺が言えば、皆がぎょっと目を剥いた。

 何をそう驚いているのかと不思議になって、補完する様に言葉を繋ぐ。

「だから今まで誰とも付き合って無かったわけだろ? 告白だって断り続けてたんだし、あの原島も振ってるじゃん」

 何を今更、という意味で視線を巡らせても、皆表情を強張らせたままだ。

 そんな空気の中、「お待たせしました」とウェイトレスが料理を運んで来て皿に並べた。

 羽田が頼んだハンバーグセットと佐久間のパスタ、島野のリゾット。俺の前にはステーキセットとカキフライ。遅れて頼んだ日向の前だけ何も無い。

 相当腹を空かせて居た筈の羽田は料理に手を出さず、継ぎ足された水を手に取って一気に飲み干した。

 目の前で湯気の立った肉厚のステーキが、いい匂いを薫らせて、腹がぐーっと鳴る。

「とりあえず、食おうぜ」

 話は後だ、と、フォークとナイフを握った。

 そんな俺を無視して四人が目配せしあった後、何故だかそれぞれがおもむろに携帯を出した。

 意味の分からないその行動を見ながらも、一人飯を食い出す。

 カチカチ、と携帯のボタンを押す音がする。

 いきなり全員で誰かにメールか? と、思った所で、全員がそのディスプレイを俺に向けてきた。

「……なんだよ?」

 その顔の無表情の事。

 若干身を引けば、更にずいっと携帯が目の前に差し出され。

 戸惑いながらも画面を注視する。

「…………」

【鈍感は死ね】【ゲキ鈍】【理子ちゃんが可愛そう!!】【バカにつける薬は無い】

「……はぁ?」

 まさに意味不明。

 フォークに刺したステーキの一片を口に運びながら、目一杯顔をしかめた俺。

 羽田が引っ込めた携帯をまた操作して、しばらくの後同じように俺の眼前に寄せてきた。

 開いているのは、どうやら電子辞書のようだ。

【鈍感――物事に対する感じ方が鈍い様子】

「いや、だから何だよ」

「………もう、アンタには何も言う事は無い!!」


 結局その後、黙り込んでしまった島野を佐久間が、キレ出した羽田を日向が送るという事で解散したが、当然のように支払いは全部俺に押し付けられた。

 

 ――全く、わりに合わない。




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