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短編・エッセイらしきもの

天然水 

作者: 本谷文途

前の携帯に残ってたものです。

投稿してみました。


「水を……水をください……」


 学校の下駄箱の下に、力無く座り込んでいる男子が言った。鞄の中を探ると、丁度まだ開けてないペットボトルの天然水があった。


「どうぞ」


 私は、それを彼に渡した。


「あぁ、女神様……ありがたくいただきます──」


 ゴクゴクと美味しそうに飲んでいく。


「……大丈夫ですか?」

「はぁ……。大丈夫。ありがとう女神様──お礼は明日、必ず。それじゃ──」


 彼は、さっきとはまるで別人のようにスッと立ち上がると、鞄を肩に掛け直して、颯爽と去って行った──


         *


「女神様」

松原(まつはら)です」

「松原さん。昨日はありがとう。これ、お礼です──」


 彼はニコリと笑うと、私の目の前に季節限定の紅茶を置いた。


「松原さん、紅茶好きだったよね」

「ぁ! ……うん。ありがとう、嬉しい──」


 私はペットボトルの紅茶を両手で包み込んだ──


         *


 帰り。また彼が下駄箱の下に座り込んでいた。


「……水を、ください……」

「大丈夫? はい──」

「松原さん。ありがとう……」


 ゴクゴクと美味しそうに飲んでいく。

良い飲みっぷりだ。


「ふう。明日、お礼するね。じゃ、必ず──」


 彼はニコリと笑うと、立ち上がって歩いていった──


         *


「はい、お礼」


 目の前に、リンゴジュースが置かれた。


「ありがとう──」


 私は、笑顔で受け取った──


         *


 帰り。またしても彼は、下駄箱の下に座り込んでいた。


「どうぞ──」

「あぁ、ありがとう。松原さん……」


 ゴクゴクと飲んでいく。

 なぜ彼は予備を持ってないんだろう──?


「ありがとう。お礼は明日、必ず──」


 彼はまた同じ言葉を言って歩いていく。

 最近私は、天然水を買うことが習慣になっていた──


         *


 そんなことが続いていたある日、私はまた天然水を彼に渡してから聞いた。


「なんで予備を用意しておかないの?」


 彼は、飲んでから言った。


「そしたら、松原さんから貰えなくなっちゃうから」

「え?」

「予備持ってたら、松原さんに天然水貰って、お礼するっていうことができなくなっちゃうから──」


 彼はもう一度天然水を一口飲む。


「くだらないかもしれないけど、松原さんとの繋がりが欲しかった。お礼した時の笑顔とか、すごく可愛くて、もう一度だけ、もう一度だけって、そしたら長くなっちゃって……おかしいよね」


 そう言って、彼は笑う。

 私は、どうなんだろう……


「……私は、おかしいとは思わない。私も、天然水を買うことが習慣になってたから。でも、もう水は買わない」

「え……」

「だって、三島(みしま)くんのお礼代の方が高くついちゃう。それに──」


 私は微笑んでから言った。


「水にお金使うぐらいなら、紅茶に使うよ。だから、今度は紅茶をあげる。その時は、ベンチとか近くの公園とかで、紅茶飲みながら話そうよ」


 心なしか、三島くんの顔が赤くなっている気がした。

 たぶん私も……──


「いや、いい。そしたら、ちゃんと予備を持ってくるよ。それで、話そう──」


 三島くんはニコリと笑う。


「うん──」


 そして、つられて私も笑った。


 胸の中が少しだけ、シュワシュワと弾けているのは、きっとさっき炭酸を飲んだから──



女の子視点でした。

感想批判評価などなど、よろしければお願いします(_ _)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的に文章が分かりやすくて読みやすいですね。また、雰囲気もすごく良いと思いました。 [気になる点] 特にありません。 [一言]  温かな、微笑ましいエピソードですね。なんだか優しい気持ち…
[良い点] ふたりの距離感が絶妙。 [一言] 文途さんの女の子視点は新鮮でした。
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