第6話
光咲は思っていた。
(一体、何時まで良男君はここにいるつもりなのだろ?)
と、かれこれ二時間はいる、良男を見て。
良男は思っていた。
………いや、妄想していた。
ハーレムを完成させてキャッキャウフフ〜♪な、人生を歩んでいる自分の姿を。
(………良男君、変な顔してる。まぁ、いつもの事だけど。)
グヘヘ。とスケベな顔をした良男を見て思った光咲は良男から視線を外し、ベッドの脇に取り付けられている窓から外の景色を覗いた。
(………名前、聞いとけば良かったな〜。)
黒色のローブを羽織った「あの人」を思い浮かべ、溜め息を吐く光咲であった。
コンコン。
と、そこに部屋の扉をノックする音が響く。
「はい。どうぞ。」
そう、光咲が応えると「失礼します。」と、声と共に扉が開き、そこから身長が145cmぐらいのメイド服を纏った、栗色の髪と瞳をした少女が一礼し、入ってきた。
彼女の名前はステラ・アクィルスカフェ。
この、アンスヴェーク王人国の中心に位置する場所にドドーンッ!と建てられた、もぅ要塞と言ってもいいじゃね?と思うぐらいの大きさを誇るお城に仕えてるメイドの一人だ。
「おはようございます。アリサ様、ヨシオ様。朝食のご用意が整っておりますが、お食事になられますか?」
そう、ステラの言葉を聞くと同時に空腹を感じた光咲。
「おはようございます、ステラさん。朝食の方、よろしくお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。」
そう、答えると、ステラは扉を全開にし、廊下に待機させておいた朝食が乗っかった台車をカラカラと、部屋の中に移動させ、部屋に備え付けられた四角形のテーブルに朝食を移していく。
「…あ、そう言えば、人王様がアリサ様と、ヨシオ様をお呼びしておりました。
朝食を食べ終わり次第、人王の間に向かって下さい。」
「わかった。わざわざすまないな。ありがとう、ステラちゃん。」
右手で前髪をさらっとかきあげ、流し目を送る良男。
「では、私はこれで失礼します。」
ぺこりと一礼すると、台車と共に部屋の扉を閉めて出て行った。
「フフフ、照れちゃってかわいいな〜、ステラちゃんは。」
スルーされたことをプラス思考で解釈する良男。幸せな奴である。
☆(*・ω・)人(≧∇≦*)★
ちょうど、日の高さからして昼頃だろう。
森の木々の間から日の光を覗かせ、点々と地面を照らすお天道様。
静かにしていれば、小鳥の囀りの、一つや二つは聞こえてきそうな森の中。
「ぷはぁっ!」と、森の中で流れている、透き通った川流の水面に顔をだし、そのまま背泳ぎをしだす、すっぽんぽんの幼女、サフィア。
そのサフィアのお腹の上には、だら〜んとうつ伏せで寝っ転がっている、半透明の蒼色の小熊、【流水蒼熊】が一匹。
その周りを小魚たちが泳ぎ回っている。
その光景を眺めているのは、木陰に腰を下ろしている、サクラだ。
昨日のローブは羽織っておらず、白色の生地に黒色のかわいらしいドクロが右胸にイラストされた長袖のポロシャツを、左肩を出して着ていた。
左肩からは黒色のタンクトップが見えている。
下はだぼっとした黒色のズボンをはいているようだ。
「サクラ〜。」
とてとてと、サフィアが川から上がってサクラのもとに小走りで向かい、目の前で足を止まり、
「おなかすいたっ!!」
と、かわいらしい笑みを向けて元気よく言った。
「んじゃ、昼飯にすっか。」
サフィアの頭の上にタオルをかぶせながら立ち上がった。
「うんっ!」
素直に返事をするサフィアに「服を着ろ」と言う意図でサフィアの衣類を渡す……が。
サフィアは両手で抱えるように自分の衣類を受け取ると、そのままスキップ気味に進み出した。
サクラは一つ、溜め息をつくと、サフィアの後に続いて歩き出した。
(*´∀`)(´▽`*)
「え?勇者が召喚された?しかも二人も?」
とある王国の中心にそびえ建つ、要塞と言った方がしっくりくる、お城に数多く備え付けられた部屋の一つ。
その部屋は他の部屋と比べると一回りも二周りも大きく設計されており、床には赤をメインに白色で複雑に模様が描かれている絨毯が敷かれており、部屋の角には甲冑が堂々と、その存在感を出しながら立っていた。
そんな部屋には、一組の男女が。
一人は炎を連想させる赤髪をはやした30前後ぐらいに見える男、ルベルス。
もう一人は癖のない、サラサラとした黒髪を背中辺りまで伸ばした20代に見える女性、ユリアンヌ。
二人はテーブルを挟んで、向かいあうようにしてソファーに腰を下ろしていた。
先程の言葉はユリアンヌが発したものだ。
ルベルスは「そうだ。」と、肯定する。
「……じゃあ、今のうちにその勇者二人を潰すとかは、どう?」
「いや、面倒だからやらねえ。てかそのうち、向こうからやってくるだろう。本当、ご苦労なこった。」
ユリアンヌの主張をテキトーに流す。
ルベルスの軽い受け答えを耳にするものの、それでもユリアンヌからは心配の色がにじみ出ていた。
「おいおい、俺を誰だと思ってんだよ。心配すんなって。そんな、勇者が一人増えただけだろ?大丈夫だよ。
お前だって知ってるだろ?俺の強さを。
たかが一ヶ月の勇者に負けるほどやぼじゃねぇよ。
……いいか?俺は遊びでやってるわけじゃねぇ。この国にいる、国民を護るために、『魔王』になったんだ。
だから、安心しろよ。俺は絶対に“負けねぇ”からよ。」
ルベルスはそう言い切ると、ユリアンヌのでこを人差し指で小突いた。
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