第四十四話『対面』
『久也さん?』
「…………?」
俺はドアの向こうから聞こえたノックと声に目を覚ます。
そう言えば、獣人族の国の町長の家で泊まらさせてもらったんだっけ。
『久也さん?』
「あ、ああ。今起きるよ」
俺はベッドから立ち上がり、ドアを開けた。
すると、そこにはニーナが立っていた。
「ふふ、久也さん。寝癖がついてますよ?」
「え、マジ?」
俺は恥ずかしくなって、頭を掻く。
すると、固いものに当たった。
何だろう。寝癖にしては固くないか?
鏡を見てみる。
俺は鏡に写った自分を見て、愕然とした。
「猫耳セット……まだ着けてたんだな」
頭の上に三角形が二つ、腰の下辺りから伸びた尻尾。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だと思う」
俺は寝癖を直すと、一階に降りる。
すると、テーブルの上に朝食が並んでいた。
「…………これは」
「朝食です。さあ久也さん。食べましょう」
ニーナは俺の手を引いて椅子に座らせる。
しばらくして、町長も起きてきた。
亀である上に朝は弱いらしく、獣人族では最も朝、起きるのが遅いらしい。
「おはようございます、久也さん」
「すいません。朝食まで」
「いやぁ、いいんですよ。昨日、ニーナから会うまでの経緯を聞きましてな。ニーナを助けてくださったとの事で……」
俺はぎょっとしてニーナを見る。
もしかして、魔人族から隠れるときのアレも言ったのではないだろうか。
俺の視線に気付いたニーナは、俺の考えを察したのか首を横に振った。
恥ずかしくて言えなかったのだろう。
「さあ、頂きましょう」
「「いただきまーす」」
「久也さん!」
朝食後、獣人族の服に着替えた俺は、ニーナと共に狩りに出掛けていた。
技術が発展しても、未だ狩りで食料を調達している獣人族の生活は、やはりワイルドだった。
「……そこだっ!」
俺は動き回るウサギに向けてナイフを投げる。
ニーナは弓を持っている。
ナイフを持っているのは俺だけ。
初めは弓を貸してもらったが、上手く扱えずにナイフを貸してもらった。
しかし、ナイフというリーチの短い武器でウサギを捕らえるのは不可能に近く、今思い付きで投げてみた所、ナイフはウサギの腹に直撃した。
「凄いです! 久也さん!」
「ああ、俺もビックリした」
ニーナは感激の声をあげている。なんだかくすぐったい。
「でも、やっぱり狩りなんだな」
「そうですよ? しかも、この狩りにもちゃんと意味があるんですよ?」
ニーナは得意気に話し始める。
「そもそも、獣人族は狩りして生きてきた為、反射能力や基本的な身体能力は魔人族や魔法族を遥かに上回ります。獣人族の強みは主に『野性の勘』ですから、それを失わないためにも狩りだけは続けているんです……と言っても私はあまり勘がいい訳ではないんですけど」
そうは言っているニーナだが、一緒に狩りをしていても、ちゃんと獲物に向かって矢を放っている。
「久也さん。結構狩りましたし、そろそろ戻りましょう」
ニーナがそう言うと、俺達は家路についた。
だが、その瞬間。
「おい、そこの獣人族」
「「えっ?」」
後ろからかけられた声に俺達ははっとする。
振り向くと、いたのは魔法族。
「ここら辺で魔法族を見かけなかったか?」
やはり俺の捜索か。
だが、相手は俺が魔法族だということを知らないようだ。
なら、適当にあしらっておこう。
「いや、見かけませんでしたが? 何です、行方不明者ですか? でしたら、こちらでも捜索に加わりますが……」
「いや、いいんだ。重要人物でもないらしいからな」
「そうですか。じゃあ」と踵を返すと同時に、もう一人魔法族がやって来た。
しかも、その人物は俺のよく知っている人物だった。
「え、エクシア!?」
「リリー先輩!?」
リリー先輩が俺の事を「エクシア」と呼んで魔法族ははっと俺をみると、みるみる内に怖い顔になる。
「久也だー! 楠木久也がいたぞ!」
その声に辺りにいた仲間が近づいてくる。
「投降しろ、エクシア。私はお前を斬りたくない」
「投降はできませんし、斬りたくないなら見逃してくれませんかね?」
「何を馬鹿な事を!」
そう言って魔法族が俺に向かって斬りかかってきた。
大袈裟にしたいだけに、銃などの大きな音の出る物は使わないのだろう。
「久也さん!」
俺は魔法族の足に向かってナイフを投げる。
ナイフが魔法族の脛に刺さると同時に叫び声が上がる。
魔法族は「誰かぁ!」と叫びながら足を引きずって逃げていく。
「…………エクシア」
リリー先輩は信じられないという顔で俺を見る。
「いたぞ、楠木久也だ!」
「かかれぇ!」
複数の魔法族が俺に斬りかかってくる。




