第一話『殺戮兵器』
「大丈夫、さやちゃん?」
「ひっく・・・ごめん、僕が」
孤児院でいつも一緒だったほのかちゃんはとても優しかった。
「よしよし、泣かない泣かない。大丈夫だから」
「でも」
「じゃあ、さやちゃんが大きくなったら、強くなって私を助けてね」
「うん、約束する!」
こういった具合に、ほのかちゃんは泣いている僕を慰めてくれたりした。
こんな関係がいつまでも続くと当時は思っていた。
「とくしゅのうりょくかいはつ?」
ある日、僕は友達のほのかちゃんと一緒に遊んでいた。
そこを白衣を着た男の人が近づいてきた。
「ほのかちゃん、特殊能力の研究をしたいので、ついて来てくれないか?」
「ほのかだけ?」
「そうだけど?」
その時、僕はほのかちゃんが、帰って来なくなるような気がした。だから、
「僕も行く!」
そう言ってしまった。
僕達は孤児であったため、孤児院に入っている。
すでに孤児院からほのかちゃんを引き取る事を許可されていたらしく、僕は無理矢理ほのかちゃんについて行った。
「さやちゃん見て、ほのか達と同じ位の子がいるよ」
「本当だ。後で皆で遊ぼう」
「うん!」
先生についていくと何処かの研究施設に着いた。
施設の中には僕達と同じ位の歳の子供がいる。
施設に入ってすぐに初めの能力実験に入った。
実験が一段落すると同じ実験を別の子にもする。
その間、他の子は皆で遊んでいる。
そして、全員の実験を終えると、数日休んで二番目の実験にうつる。
そんなことを繰り返していくのだった。
そして月日が経ち、俺は14歳になった。
先生の実験は日に日に被験者にかかる負荷が増していった。
そう。被験者に傷をつける程に。
「・・・・・・っ!」
「ほのか!?」
ほのかの体には、沢山の包帯が巻かれており、とても痛々しかった。
俺にも巻いてあるが、ほのか程ではない。
それどころか、ほのかの包帯はうっすらと赤色が、つまり血が滲んでいた。
「大、丈夫。傷が少し痛んだだけだから」
そう言っているほのかの顔は痛みに歪んでいる。
「だけじゃないだろ! 血が!」
「心配性だなぁ、久也は。・・・・・・小さい頃に約束したよね? 強くなるって。同じ実験をしているんだもん、久也が大丈夫なら私も大丈夫だから」
「でも!」
俺は声を張り上げた。強くなる以前にほのかにいなくなってほしくなかったから。
「先生の実験を終えて、強くなった久也の姿を見せてよ」
「・・・・・・くっ、分かった。約束する」
俺の頬を涙が伝う。
「ほら、泣かないで。泣いていたら、強そうじゃ・・・・・・ない・・・・・・」
そこまで言ってほのかは力無く倒れる。
「ほのか? 先生っ! 先生ぇっ!!」
俺が叫ぶと先生達はすぐにかけつけて、ほのかを何処かの部屋につれていった。
そして、しばらくして部屋から先生達が出てくる。俺はすぐに先生に聞いた。
「先生、ほのかは?」
「大丈夫、少し体調が悪いたけだから」
「治るんですよね?」
先生はもう一度「大丈夫」と言う。
しかし、俺の中では嫌な予感がしていた。
「じゃあ、久也君。ほのかちゃんが治ったら、強くなった君を見せてあげられるように、最後の実験、頑張ろっか」
「・・・・・・はい」
そうして、最後の実験を受ける。
最後と言うだけあって、体にかかる負荷は結構なものだった。
「・・・・・・ぅぅぅっ!!」
「辛いかい、久也君? だけど、我慢してくれ」
しかし、決して弱音は吐かなかった。
ほのかに、強くなった所を見てもらいたかったから。
結果的に言うと実験は成功したらしい。
先生達の様子を見てわかる。
それに、証拠として自分の手に剣が出てくるイメージをすると、白い剣がだせるようになった。
剣と言っても両刃ではなく片方にしか刃がなく、それでも刀に似た形状をしていた。
「強く・・・・・・なったんだよな?」
俺は「うんっ」と自問自答した。
「ほのか、見たらどをんな顔をするかな」
見回すが、周りには誰もいない。
俺は先生を探す事にした。
勿論、ほのかの様子を聞くためだ。
「先生、何処にいるのかな?」
探したが見当たらない。
歩き回っていると一つの部屋に行き着いた。
「ここは・・・・・・」
そこは先生達が、入ってはいけないと言っていた部屋だった。
残っている部屋はここだけなので、入ってみることにした。
コンコン・・・・・・。
返事がない。
俺はドアに手をかける。
ガチャッ・・・・・・。
「開いてる?」
入ってはいけないと言うわりにはなんて無用心なのだろう。
俺は部屋の中に入ったがその中にあったのは
「何だよ・・・・・・これ」
中には化け物のようなモノがいた。
「オオォォォォォォォォォ」と鳴き声のようなものを発している。
「・・・・・・うぇっ」
あまりの見た目に吐き気を催す。
人型でありながら奇形のように顔のような部分が至る所から飛び出しているのもあれば、アメーバのように形が不定形のものもある。
最初は魔物かと思ったが、人型で服を着ているものがいた。自分とおなじ格好だ。
「・・・・・・これって」
「おやおや、随分と失礼な子だね」
後ろから先生の声が聞こえたので振り替える。
先生はニヤリと笑っている。
「・・・・・・先生」
「君は一緒に遊んでいた子のことも忘れたのかい?」
「遊んでいた?」
この化け物の山が皆、人の子だというのか!?
いや、待て
「ほのかは!?」
「『ほのか』?」
先生はしばらく考えて、思い出したように言う。
「あぁ、あの不良品の事か」
「・・・・・・不良品?」
俺は何が何だか分からなくなった。
ただ、ほのかに会いたかった。
そうでないとどうにかなってしまいそうで。
「何処? ほのかは何処?」
先生は相変わらずニヤニヤと笑っている。
やめろ。そんなふうに笑うな。
そう思った俺に先生は、
「ゴミはどうするか、わかっているだろう? 君以外はまったくのゴミ素材だったよ。『実験の負荷に耐えきれなくなったゴミ』や『実験で細胞が崩壊して化け物に成り果てるゴミ』とかね」
やめろ。ほのかはゴミなんかじゃない!
「ここまでの道のりは長かった。」
先生は呟く。
「期待していたサンプルも駄目になり、私達の実験は失敗に終わるのかと思ったが、ようやく完成品を手に入れることができた。」
「俺達に何をした?」
俺がそう言うと、先生は背を向ける。
「君は『九天使の加護』というものを知っているかい?」
九天使の加護。それはその名のとうり天使からの加護のことで、天使の第一位から第九位、つまり熾、智、座、主、力、能、権、大天使、天使からの九種類の加護がある。
九種類の加護にはそれぞれ違う能力があり、それぞれがとても強力な加護である。
天使の加護は15年に一度、世界中の九人の子供がそれぞれの加護を受けて生まれてくる。
「私達は九天使のなかで最も戦闘向きの加護、能天使の加護を人工的に受けさせる研究をしていたんだ」
俺は何も言えなくなっていて、ただ先生の話を聞いていた。
「そして、君は見事『能天使の加護』を受けることができた」
ただそれだけのことで沢山の子供達を犠牲にしたって言うのか?
しかも、その子達をゴミ呼ばわりする。
―――ほのかの事も
「・・・・・・おめでとう」
やめろ!
「これで君は」
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!
「『殺戮兵器』だ」
「うあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は叫んだ。
怒り、悲しみ、怨み、哀れみの負の感情が入り混じった叫びだった。
突然、俺の手の中に黒い鎖鎌が現れる。
俺はその鎌で目の前の先生の体を真っ二つに切り裂いた。
ビシャアアと周りが赤く染まる。
「うっ・・・あぁ・・・・・・」
俺の叫びに驚いて他の先生達が部屋に入ってくる。
「こ、これは!!」
「に、逃げっ!」
ドスッ!
その瞬間、一人の先生の体に俺が降り下ろした鎌が串刺しになる。
俺が思いっきり鎌を引くと、その先生の体は背中の刺さった所から二つにわかれた。
一瞬で研究施設の中が騒がしくなる。
そこからは、逃げる先生達が一人づつ真っ二つにされていくという殺戮が始まった。
「うくっ・・・・・・っ」
俺は雨が降る中、1人泣いていた。
『よしよし、泣かない泣かない。大丈夫だから』
そんな中、
ほのかの言葉が浮かんでくる。
「ごめん・・・・・・俺が助けるって約束したのに。守ってやれなくて・・・ごめん」
『じゃあ、さやちゃんが大きくなったら、強くなって私を助けてね』
「うん、強くなる。・・・誰よりも、絶対に」
だから、見ていてくれよな。
「約束・・・・・・な?」
俺の頬をつたう液体はもう、涙ではなくなっていた。
学生なので更新が遅くなりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
水面さんの感想を参考に改稿しました。
『水面さん』の感想を読まさせていただきました。参考にさせていただきました。
ありがとうございます。




