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『SWORD OR SCYTHE』  作者: 稲木グラフィアス
第一章『エンジェルズ』
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第十四話『力を欲する者』

 AEGISを出発してから数時間が経ち、夜に野宿することとなった。

 夜番を交代しながら、現在は俺の番。


「……さぶっ」


 結構、南の方に来たと思うが夜になるとやはり寒い。

 俺は毛布を羽織りながら、辺りに注意を向ける。

 聞こえるのは風で揺られる葉っぱ同士が当たり、カサカサという音だけ。


 これは……寂しい!

 なんだこれは。

 人の声が何もないというのは、こんなにも寂しい物なのか!?


「はー。……はー」


 掌に自分の息を吐きかけ、互いに擦り合わせる。

 たしか、前にもこんな風にしたことあったな。

 いつだっけ。


「…………」


 ああ、そうだ。

 研究所にいた頃にほのかちゃんと二人で一つの布団に入って空を見てたんだ。


「たしかその時、流れ星が見えて……」


 サンタクロースだ、って言ってそのまま寝ちゃったんだよな。

 あの時貰った花飾り、どこにやったっけ?


「……ふぁ」


 カサッ……


「……っ!?」


 近くの茂みに動く気配が……。

 皆を起こしておこう。


 俺は拳銃を持ったまま全員を起こす。

 全員を起こした後、左手に剣を構える。

 戦闘体型をとり、茂みの方を見る。


「……私が行く」


 エリザベスが先行し、茂みをえい、と突く。

 しかし、何も起こらない。

 全方向を警戒しながら、ジャックがアデル先輩に話しかける。


「ここは狭い。たしか、西に少し行くと森が開けて見晴らしが良くなっている所があるはずです」


「じゃあ、そこに行こう……皆?」


『……了解』


 俺達はすぐにその場所に向かった。

 移動している最中に回りに動く気配があった。


 数は……五? 六?

 くそっ、ハッキリしねぇ


「出たぞ!」


 森が開けて見晴らしが良くなる。

 それと同時に敵が四人、攻撃を仕掛けて来る。


「散開っ!」


 エリザベスの声で散開する。

 しかし、敵は四人。

 アデル先輩とジャック、ホワイト姉妹、風花先輩と俺、と三つに別れる。


 敵はアデル先輩とジャックの方に二人、他に一人ずつに散った。


「このっ!」


 白い剣で斬りかかるが、敵は盾を持っていた。


「お前、何者だ!」


「…………」


 しかし、敵は何も言わない。


「エクシア君、避けて!」


 風花先輩は白いジョウロで水を蒔いていた。

 すると、水を蒔いた所から太いツルが生え、敵に向かって伸びていく。

 これが、風花先輩の白いジョウロの能力。

 風花先輩曰く『私の(プレンデイ)園は(・ホータム)絡め取る(・メウム)』というらしい。

 白いジョウロから出る水を植物にかけると、その植物を意のままに操れるという、森などで使えばとても強力な能力だ。


「早くっ!」


 俺は慌てて避ける。

 ツルは敵に巻き付こうとする。

 だが、敵はツルを切り裂いて逃れる。


「……すげぇ」


 エンジェルズの人は必ず白い武器を持っている。

 また、白い武器には必ずなにかしらの能力が付属しているらしい。

 初めは能力が分からないらしいが、その内にだんだんと確立してくる。

 俺やエリザベス、ジャックはまだらしいが、エミリーはすでに確立している。

 俺の中から『闇』というものを感じたのがそうらしい。


「……っ!」


 敵は再び迫るツルを躱し、距離をとった。

 ツルは敵がいた場所に突き刺さるとそのまま地面に潜り、地面を通って敵の足元から飛び出す。


「……なっ!?」


 敵はツルに絡まれ、身動きがとれなくなった。


「エクシア君っ!」


 風花先輩の合図に白い剣で斬りかかる。


「うおぉぉぉぉぉ!」


 しかし、剣が敵に当たる瞬間、何かに弾かれた。

 気付くと、ツルがバラバラに切られていて、そこに敵の姿はいなかった。


「……何?」


 俺達が一ヶ所に集まると敵の方も一ヶ所に集まった。

 だが、人数は五人と増えている。


 五人目の敵、真ん中にいる人物には見覚えがある。

 その人物はゆっくりと前に出る。

 月の光がその人物を照らし、姿がハッキリする。


「リーゼ……ロッテ?」


「こんばんは、お兄ちゃん」


 前に出てきたのは、やはりリーゼロッテ・クシュヴェントナーだ。

 天然の長い白髪、黒い西洋風のドレス。

 月の光で人並外れた魅力が更に人間離れさせる。


「知り合いなのか、エクシア」


 ジャックが聞いてくる。


「ああ。この間、買い物に行った時に………ちょっとだけ」


 まさか、リーゼロッテが魔人族だったなんて。

 なんで、魔人族が人がたくさんいる所に来ていたんだ?

 なんで、俺に話しかけたんだ?


「遊びに来たよ、お兄ちゃん」


「……は?」


「えい!」


 その瞬間、俺の体は何かに投げ飛ばされた。

 すぐに立ち上がり、自分がいた所を見ると、そこにはリーゼロッテがいた。


「私はね、(ヴェントゥス)って名前もあるの。風のように速いからだって」


 気付くとリーゼロッテは俺の目の前にいた。

 エンジェルズのメンバーはあっけにとられている。


「ねぇ、遊ぼうよ。一対一で……ね?」


 リーゼロッテが視線を送ると、敵の部隊は武器を下げた。


「ほら、エンジェルズの皆さんも武器を下ろして?」


 俺は頷いて武器を下ろしてもらう。


「これで良いんだろ?」


「うん。じゃあ、お兄ちゃん、一つ賭けをしようよ」


 リーゼロッテは微笑みながら言い出した。


「賭け?」


「そう。私が勝ったらお兄ちゃんの剣と鎌をちょうだい? 私、お兄ちゃんの力が欲しいの」


 俺の剣と鎌だと?


「俺が勝ったら?」


「……そうね。何でも言うことを聞いてあげる。好きにしていいのよ?」


 リーゼロッテは頬を赤くする。

 何言ってんだよコイツ。


「ルールは一対一の殺し合い(デスマッチ)。……じゃあ、行くよ!」


 次の瞬間、俺は先程と同じように投げ飛ばされた。


「ゲホッ……ゲホッ」


 小さいのになんて力だ。

 おまけに速い!

 (ヴェントゥス)という名前は伊達じゃないな。

 本当に風みたいだ。

 なら、速さには速さで!


「シ・アクセ……」


「ほっ!」


 しかし、呪文を唱え終える前にリーゼロッテに邪魔された。


「シ・アクセラ……」


「ダメよ、お兄ちゃん」


 もう一回と唱えようとするが、その前に邪魔される。


「私って強ーい、お兄ちゃんってば弱ーい……ねっ!」


 リーゼロッテの拳は俺の頭を揺さぶる。

 すぐに立ち上がろうとするが、リーゼロッテはすでに次の攻撃に移ろうとしていた。


「私の勝ちだよね? お兄ちゃん!」


 

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