第十三話『笑う小悪魔』
「‥‥‥ふぁ」
「おい!」
バシンッ!
欠伸をしているところを教官に叩かれる。
その拍子に目が覚める。
「はい! すみません!」
「まったく、もう一回作戦の説明をするぞ」
そうだ、今は新しい作戦の説明を聞いている所だった。
デストラクションに受けた傷から回復して一週間がたった。
「今回の作戦は大陸の南の方にいる獣人族に魔人族との戦闘に味方として介入してほしいと要請をすることだ。しかし、獣人族はあくまで獣人。我々魔法族や魔人族のように技術が発展しておらず、通信手段は手紙か直接話をしに行くしかない。どちらにしろ歩くしかない。そこでEXCALIBURの上層部はエンジェルズに獣人族の元へ行ってもらうことにしたらしい。なぜなら、獣人族の所へ行く道には魔人族が展開しているからだ。しかし、AEGISの戦力であるエンジェルズをすべて使う訳にはいかない。よって、今回の作戦はエクシア、エリザベス、アデル、風花、ジャック、エミリーの六人で行ってもらう」
「獣人?」
獣人とはあれか? 猫や犬、狐等の耳と尻尾がある奴の事だろ?
それにしても、六人だけか。
「そう、獣人だよ~?」
アデル先輩は喜んでいる様子だ。
「アデルは獣人が好きなんですか?」
するとアデル先輩は嬉しそうに話始める。
「そうだよ。特に狐耳の子がいいね。フワッフワのモッフモフの尻尾がまた‥‥‥」
「話を進めるぞ?」
「‥‥‥はい」
が、すぐに教官に制止された。
「では、誰か質問はあるか? ‥‥‥いないな?」
教官は有無を言わさず話を切り上げた。
「へぇ、獣人ね~」
作戦に必要な物を買いに武装開発部にきていた俺はモニカについていってもらい、作戦について話していた。
作戦について話すとモニカは獣人という言葉に反応した。
「モニカも獣人好きなのか?」
「ううん。でも、確かにアデル先輩の言った通り可愛いと思うわ」
俺が見に来たのは拳銃だった。
デストラクションとの戦いから、ライフルが使えなくなった時に予備の銃を持っていた方が良いと思ったからだ。
だが、開発部はたくさんの銃を開発しているため、どれがいいかよくわからない。
モニカにも手伝ってもらってみるが、さっぱりだ。
「もし、獣人に会ったらさ、耳か尻尾触らせてもらってきなよ。感想とか聞かせて?」
何だかんだ言ってもモニカも獣人が好きなようだ。
「選んだかい?」
モニカと話続けていると、開発部の人が様子を見に来た。
俺はまだです、と言うと開発部の人は一つの拳銃を持ってきた。
「これは?」
「デザートイーグル.50AEっていう拳銃です。全長269mm、全高149mm、重量2053gで、 通常の6インチモデルの他に10インチ、14インチの長銃身型もありますよ。我々のおすすめの拳銃です。ちゃんと魔装型ですよ」
デザートイーグル.50AEか。
拳銃の事は良くわからんが、おすすめなら信頼できそうだ。
「じゃあ、これにします」
「はい、ありがとうございます」
俺は準備を済ませた後、モニカと別れて作戦のメンバーと合流した。
アデル先輩はカメラや猫じゃらし、ボールなど、おおよそ作戦には関係の無い物を持っていた。
「じゃあ、行こうか!」
アデル先輩は真剣なようだが、動機が不純そうだ。
「はーやく、狐さんにあーいたーいなー♪」
アデル先輩は変な歌を歌いながら道を歩いている。
「緊張感がないですね、アデル先輩は」
「こういう人ですから」
風花先輩は何故かお弁当を持ってきている。
この人も緊張感があるとは言えないと思う。
初めて会った頃はおろおろしていたが、今では慣れたようだ。
「……っ」
「……」
それに対してエミリーの方はまだ、俺の事を怖がっているようだ。
「……なんでだ?」
「やはり、妹に何かしたんではあるまいな?」
「んな事ねぇって」
以前に聞いてみたものの、怖がって教えてくれなかった。
ただ、闇がどうとかと言うことだけがわかっている。
「ねぇ、エミリー?」
「……ひぇ!」
話しかけた瞬間、エミリーはサササッとエリザベスの後ろに隠れてしまう。
何がいけないのだろうか?
「獣人の村まで、どれくらいあるんだ?」
ジャックが面倒くさそうに問う。
俺も同じことを思っていた。
結構歩いたぞ?
「まだまだ、ありますよ。行き帰りで一回ずつは野宿することになりますから」
何と言いましたか、風花先輩!?
一回ずつの野宿……なんと!?
「なら、夜番はどうします?」
夜番、これは大切だ。
俺達が獣人族の村に行くのは、魔人族の部隊が展開している所を通るから。
もし、野宿中に発見されて奇襲なんてされたらどうしようもない。
「順番で良いと思いますよ。初めは私がやりますから……」
「なら、その次は私と妹がやりましょう」
「じゃあ、次は俺がやります」
女子ばっかにやらせるのはどうかと思うからな。
その後、全員で話し合った結果。
風花先輩、ホワイト姉妹、俺、ジャック、アデル先輩の順になった。
ホワイト姉妹は一緒にいたいようだ。
「隊長、二時の方向に敵部隊らしき影が……」
獣人族の村から少し離れた場所に魔人族の小隊が展開されていた。
隊員は五人と少ない。
「ふ~ん。この感じ、前にも感じたことあるね。向こうはこっちに気付いてるのかしら?」
「いえ、まただと思います」
隊長と呼ばれたのは小さな少女。
久也が先日会った人物、リーゼロッテ・クシュヴェントナー。
先日と同じく、黒い西洋風のドレスを着ているが、表情が別人のようだ。
ふふっ、と笑う顔は美しいものの、どこか邪悪な雰囲気を漂わせていて、まるで小悪魔のような笑いだ。
「さて、どんな再開がいいかしらね。
…………お兄ちゃん」
Gateの方で嫁神というキャラクターのイラストを書きました。
よかったら見てください。