表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『SWORD OR SCYTHE』  作者: 稲木グラフィアス
第一章『エンジェルズ』
17/67

第十二話『白髪ドレスの少女』


「‥‥‥ん」


 ぼやけた意識が段々、ハッキリとしてくる。

 病室のベッドの上のようだ。


 そうだ、確かデストラクションと戦って‥‥‥えっと?


 そんなことを考えていると、体の腹部が妙に暖かい事に気付く。

 まだうまく動かない体で、首を傾ける。

 すると、モニカが座ってため息を付いていた。


「‥‥‥はぁ」


 モニカの表情は暗い。


「‥‥‥モニカ?」


「あ、久也。起きたんだ」


 俺が話し掛けると、モニカの顔が少し晴れたような気がした。


「何してんだ、お前」


「久也が怪我したって聞いたから‥‥‥」


 心配してくれていたのだろうか。


「‥‥‥ありがとう」


 俺が礼を言うと、モニカは「えっ?」と驚いた表情をする。

 少しして、モニカは慌てて立ち上がる。


「じゃ、私次の授業行くから」


 そう言ってモニカは足早に病室から出ていってしまった。


「‥‥‥ふぅ」


 まだ疲れが取れていないのか、眠くなってくる。

 もう少し寝てても大丈夫だろう。






 青い青い空を見上げ、俺は‥‥‥


「復活ー!!」


 と叫んだ。


「ちょっと、静かにしてよ!」


 町の商店街の道のど真ん中、俺は元気いっぱいに歩いていた。

 怪我から回復した後、モニカに休日にショッピングに行こう、と誘われて外に出ていた。


「ほら、行くわよ?」


「おう!」


 元気よく返事をして二人で歩いていった。


「‥‥‥ふう、疲れた」


「だいたい、そろったわね。荷物持ちありがとう、久也」


 午後、買い物の荷物持ちとして、モニカの買い物に付き合わされた俺は、ようやくベンチに座ることができた。

 復活の勢いで元気100倍が一気に0.5倍になった。


「なんか、飲み物買ってこようか?」


「え? ああ、ありがとう」


 そう言ってモニカは走っていった。

 すぐに戻ってくるだろう。


 だが、数分後。


「‥‥‥遅いな」


 飲み物を買ってくるだけで何をしているのだろうか。

 ちょっと行った所に自販機とかがあるだろうに。


「探しに行くか?」


 立ち上がろうとすると、右肩に重みを感じた。

 見るとそこには女の子が眠っていた。

 老いてなった白髪ではなく、天然のきれいな白髪。

 風で靡く髪からは仄かに良い香りがし、人並み外れた魅力がある美少女。

 外見から推定される年齢は俺やモニカより、一つ二つ位程下だろう。

 場違いな黒い西洋風のドレスを着ている。


「‥‥‥ん‥‥‥すぅ」


 気持ち良さそうに寝ている様は、最高級に可愛い。だが、


 ‥‥‥誰だ?


 とびっきりの美少女を前に‥‥‥いや、横にして思ったことはそれだった。


「‥‥‥すぅ‥‥‥ふふふ」


 どんな夢を見ているのか、嬉しそうに笑う。

 ずっと、見ていたいと思うがそうはいかない。


「‥‥‥おい」


 少女の肩を揺らす。


「‥‥‥ん? ‥‥‥すぅ」


 一度目を薄く開けるが、すぐに目を閉じる。

 二度寝かよ。


「‥‥‥おい、起きろ」


「‥‥‥ん? ‥‥‥すぅ」


 先程と同じ事を繰り返す。

 これでは、起きそうにもない。

 この子には悪いが一回どけて‥‥‥


「久也ー!」


 タイミングが悪い事に、モニカが戻ってきた。

 モニカは走ってきて少女を見ると、


「‥‥‥ねぇ。誰、その子?」


 怖い!

 教官が本気でキレた時よりも怖い!


「ねぇ、久也?」


 モニカの目は『誰、その子?』というメッセージを訴えてきている。


「いや、この子は‥‥‥さっき」


「‥‥‥ん。あ、起きたのね。お兄ちゃん」


「「‥‥‥は?」」


 少女はいきなり起きたかと思うと『お兄ちゃん』と言った。

 しかも、その可愛い笑顔を俺に向けて。

 誰だか本当に知らないけど、その笑顔は今じゃまずいって!


「ひーさーやー?」


 目の前には鬼、いや堕天使、それより悪魔か?

 物凄い血相のモニカが俺を睨んでいる。


「どういうことかしら?」


 モニカの目はすでに無の視線と化していた。


「どうしたの、お兄ちゃん。その人誰?」


「いや、それは君に聴きたい」


 少女はキョトンとしたかと思うと、納得したような顔をする。

 すると、少女はベンチから立ち上がると、俺たちの前に来て、ドレスのスカートを少し持ち上げ、礼儀良く頭を下げる。


「はじめまして、お兄ちゃん。私はリーゼロッテ・クシュヴェントナー。以後、お見知り置きを」


「へー、リーゼロッテちゃんかー。で、久也。どういう事?」


「俺も知らないって。お前が飲み物買いに行った後、いつの間にかいたんだよ」


 モニカはふーんと考えるとリーゼロッテに歩み寄る。

 すると、モニカはリーゼロッテに耳打ちをする。


「いいえ、ただ二人で寄り添って眠っていただけですよ?」


「おい、モニカ! 何を聞いたんだ!?」


「久也は黙ってて!」


 俺とモニカの声がしばらくその場に響いていた。


「ねぇ、お兄ちゃん」


「ん?」


 しばらくになってモニカと騒いでいた俺は、リーゼロッテに話しかけられる。


「ここで、騒いでると他の人に迷惑だと思うんだけど」


「「‥‥‥あ」」


 俺達は公園で騒いでいた事に気付いた。

 通行人が俺達の事をじろじろと見ている。


「あ、お迎えが来たから私帰るね。また今度遊ぼうね、お兄ちゃん」


「えっ?」


 リーゼロッテは言い終えるとそこから立ち去った。


「何だったの、あの子?」


「さあ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ