サイドストーリー『記憶に残る思い』
2011年、クリスマスイブということで投稿しました。
クリスマス企画です。
AEGISに所属し、初日からエンジェルズ寮に入ることになった俺は、部屋で荷ほどきをしていた。
すると、荷物の中に研究所で着ていた服を見つける。
「なんで、持ってきたんだろう」
確か、研究所を破壊した後、グレイス夫妻に服を貸してもらった後、捨ててしまおうと思った。
でも、捨てられなかった。
研究所の物とはいえ、これを見るとほのかちゃんを思い出せたからだ。
「‥‥‥」
すると、服のポケットに入っている物があった。
「‥‥‥花飾り?」
最初、ミサンガかと思ったが、それは花の茎でできているそれは花飾りだ。
「これ、ほのかちゃんが作ってくれたんだよな」
その日はクリスマスイブで、研究所なのに内装はクリスマス使用になっていた。
外は雪が積もっていて、ホワイトクリスマスになっていた。
「ふぅー、寒っ」
研究所のみんなで外に出て遊んでいた。
雪合戦をやる子もいれば、雪だるまを作る子もいた。
「さやちゃん? 何してるの?」
「ほのかちゃん。‥‥‥ちょっと寒くて」
俺は雪がかからないように研究所の入り口の所にいた。
「せっかく雪が降ってるんだから、楽しまないと。ほら」
そう言って俺の手を引いて、外に引きずり出すほのかちゃん。
俺は自棄になって遊びまくった。
そして、夜になると皆は疲れて寝てしまった。
だが、俺はサンタクロースが来ると聞いて寝れなく、一人窓から月を見ていた。
「サンタクロース‥‥‥か」
「さやちゃん?」
ほのかちゃんが起きてきてしまった。
「ごめん起こしちゃった?」
「ううん、サンタさんが来るって聞いて眠れなかったの」
「うん、俺も」
ほのかちゃんは俺の隣に座る。
息を吐くと白くなった。
「‥‥‥へっくち」
「‥‥‥ん?」
ほのかちゃんがくしゃみをする。
ほのかちゃんは上着を着ているが、毛布を持ってきていなかった。
俺はほのかちゃんに近づき、毛布を被せてやる。
「さやちゃん?」
毛布をかけられてほのかちゃんが驚く。
「寒くないの?」
「さ、寒い‥‥‥くないぞ」
「めちゃめちゃ寒そうだよ」
すると、ほのかちゃんは毛布の半分をかけてくれて、一つの毛布の中に二人入っていると言う構造になっている。
体が密着しているので、ほのかちゃんの体温が直に感じられる。
「暖かいね」
「う、うん」
雰囲気のせいだろうか、何故か緊張する。
寒いのに顔が熱くなり、ほのかちゃんが笑うのを見ると更に熱くなった。
「サンタさんって、どんな人かな」
「さ、さあ」
「先生は赤い服を着て、空飛ぶソリに乗ってるって言ってたけど」
「う、うん」
すると、ほのかちゃんが唐突に「そうだ」と言う。
はい、と渡して来るそれは花飾りだった。
ハボタンの花がしっかりと結んである。
「作ってみたの」
「ありがとう‥‥‥」
それにしても寒い。
「あっ!」
ほのかちゃんが声を出し、ビックリした。
空を見ているので俺も見てみると、流れ星が見えた。
「ねぇ、あれってサンタさんかな?」
「いや、あれは流れ‥‥‥」
「だとしたら、早く寝ないと。夜更かししてたら良い子じゃないよね? おやすみ、さやちゃん」
ほのかちゃんはそのまま寝てしまう。
「ちょっ、ここで寝るの?」
ほのかちゃんはすでに寝息をたてていて、起こすのは悪いと思い、動けなかった。
「‥‥‥おやすみ、ほのかちゃん」
布団は二人の体温で暖かくなっていて、目を瞑るとすぐに眠ってしまった。
「‥‥‥ほのかちゃん」
いまでは、彼女の名前を口にすると強くなるという約束が浮かび上がる。
ほのかちゃんは優しくて、俺よりも強くて‥‥‥笑うと可愛い。
花飾りの花はもう枯れてしまって残っていないが、思い出は記憶に残っている。
ほのかちゃんがくれたハボタンの花。
ハボタンの花言葉『記憶に残る思い』。
その思いを確かめるように花飾りと服をしっかりと握りしめた。