休日活動
次の日の早朝、俺たちは生徒会室に呼び出されていた。勿論、会長にである。
「それで? 結局まだ一人も集まっていないのかい?」
「俺が集めてきた奴ら全員諸岡様が追い出したんじゃないですか!」
「あんなつまらない奴らなど知らんっ! まったく……それで君はなにか? 勧誘すらしていないのかい?」
「あー。忘れてた」
ゴスッ。会長の拳が鳩尾に直撃する。
「ぐはっ……」
「全く……」
「……単純に面白い奴っていうなら昨日四人ぐらい会ったぞ」
「なに、本当かい?」
「マジか!?」
「ああ、なかなか面白い奴らだと思うけど」
「ほう、どんな生徒だい?」
「いや、この人の査定マジで厳しいぞ!」
「ん、まず茶髪で小学生といわれてもおかしくないくらいの背丈の女子だろ」
「ふむ。まあ身体的特徴は確かに普通ではないな」
「でも、それだけだろ? 面白いのか、それ?」
「ああ、チョウチョ~とかいいながら蝶を追い回した挙句俺思いっきり頭突きかましてそのまま去っていく変な奴だ」
「「……」」
「いや、まじだぞ」
二人が変なものを見るようにこちらを見てきたので一応言っておく。
「あと、屋上に窓から勝手に立ち入って飯食ってて、本気で人を殺そうとしたり、当然のように人を脅す奴らと、漫画から出てきたようなリーゼントが一人」
「「……」」
「いやいや、ほんとだからね?」
「まあ、会ってみないとなんとも言えないな。とりあえず此処に連れてきてくれ」
「うんうん。やっぱ実際に会わないとな!」
「別にいいけど、二人しかわからないぞ、クラス。つか、残り二人に関しては名前すら知らないしな」
「君という奴は……」
「お前、もうちょっと人に興味もとうぜ」
「仕方ないだろ? 流れ的に聞きそびれたんだよ。でも良くないか? 五人集めればいいんだから二人わかっていれば」
「あのなぁ。まずその二人が部に入る保障は無いだろう? それに君たちは野球ぶと試合するつもりじゃないのかい? それにはどの道九人のメンバーが必要だろうに」
「……。あー、あったなそんなの」
完全に忘れていた。七不思議やら会長やら部活やらドジっ子やら屋上の二人組みやらリーゼントやら、インパクトが強すぎなのである。決して俺が悪いわけじゃないはずだ。
「野球部の試合は二週間後の日曜だよ? わかってるのかい?」
「……ならまだ二週間はあるんだろ? 別によくないか?」
「本当に君は……。あのなぁ、試合をするとすれば相当の時間がかかる。やるとしても休日が基本だろう?」
「まあ、そうだな。でも来週までに人を集めればそれでよくないか?」
「はぁ。公式戦の前日にわざわざそんな試合を受けるような馬鹿さすがに居ないと思うよ?」
「あ……」
まあ確かに弱小とはいえ、公式戦には全力を尽くしたいだろう。つか、だから通常の野球の試合ならしてくれることになったわけだし。確かに、その前日に全力での試合なんてしてくれないだろうな。
「ふぅ。とにかく、野球部と試合をするならチャンスは来週の土日しかないのだよ」
「ってことは、今週中にあと六人集めるってことか……」
「余裕余裕っ」
「はぁ。私は君にかなり期待してるんだよ?」
「任せてくださいっ! 惣一、いくぞ」
そう言って馬鹿がおれの腕を引く。どうでもいいけど、今会長は君等じゃなく、君って言ったよな? 俺の方見ながら。……哀れ馬鹿。
「待て待て待て待て待て。今日土曜だからな? 探しに行っても部活の奴とかしかいないぞ?」
堂々と俺達が生徒会室に居座っていられるのはそのためだった。ちなみにバイトが午後からあるので俺が活動できるのは午前だけだ。
「それなら部活やってる奴を勧誘しようっ!」
「無茶いうな馬鹿っ! ってかもともとお前素人で部活を倒すのが目的だったろーが! 部活やっているやつに頼んでどうすんだよ?」
「はっ! 確かにそうだな」
「別に野球部との勝負なんだから野球部以外ならいいんじゃないかい? それとこの学校は部活の掛け持ちは校則で許可されているから問題ないよ。実際にやっている者は見たことないけどね」
そういって高らかに会長が笑う。
「よし、じゃあ文化部からまわるぞっ!」
「あーはいはい」
「いってらっしゃい。私はここにいるから、何かあったら着てくれ」
「行ってきます、諸岡様っ!」
「じゃあ、またな」
びしっと敬礼をする馬鹿にすこし引きながら、俺たちは生徒会室をでた。