Let's 仲間探し!(2)
案の定遅刻した俺たちは、副担任である不良教師の説教を受けていた。
「おまえらぁ、俺のこと舐めてるだろ?」
「滅相もありませんよ」
「男なんて舐めてくもありませんっ!」
「ざけんな馬鹿どもがっ!」
馬鹿が余計なことを言ったおかげで、不良教師が怒鳴る。ども、というのは納得いかない。
「まあ、遅刻ぐらいならまだいい。他に何かしてねぇだろうな?」
「他って?」
「窓割ったり、備品壊したり、学校中の黒板に落書きしたりだよ」
「そんなことする奴いるわけないないってー」
「全部てめえの行動だ!」
「えっ?嘘!?」
「いや、本当だろ」
思わず口を出す。こいつは自分のやらかしたことも覚えていないのか……。
「は?いつ?」
「昨日と一昨日」
「昨日と一昨日?野球と、そのメンバー募集ぐらいしかやってないじゃん」
「だからそのことだって」
「そなの? そうならそうとちゃんと、そう言ってくれないとわからないっすよ、先生」
不良教師の方に向きなおして馬鹿が笑いながら言う。……馬鹿ってすげえ。
「人舐めるのも大概にしやがれえええええええええええっ!」
絶叫が校内に響き渡る。ああ、ほんと、頭痛くて気持ち悪い。どうでもいいけどこの人声枯れないのだろうか?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昼休みになると、馬鹿は早々に教室から去って言った。
「勧誘だ! 俺は俺でやるから、惣一も頼んだぞ!」
「はいはい。とっとと逝ってこい」
「なんかおかしいぞ!?」
「気のせい気のせい」
「そうか? まあいいいや。じゃあな!」
馬鹿が居なくなり、ため息をついた。
「はぁ……」
とりあえず、鞄から弁当を取り出した。
俺は、昼はいつも弁当である。その方が安く済むからだ。
当然自分で作っている。
弁当を袋から取り出し、机の上に広げている途中、突如声がかけられた。
「ねえねえ、綾野君」
「ん? なにか用か?」
前を見てみると、クラスメイトと思われる女子が立っていた。
誰かに話しかけられるなど、馬鹿を除いて二週間以上無かったことなのですこし驚く。
「最近変わったよね?」
「そうか?」
「うん。なんか楽しそうだよ」
「……そうだな」
「ねえ、今日の放課後暇?」
「いや、バイトがある」
「えー。それじゃあ、いつなら暇かな?」
「悪いけど、放課後は基本的にバイトなんだ」
「そうなの? でも、あの、アレと一緒に何かしたりしてるんじゃないの?」
馬鹿の席の方を見ながら女子生徒が言う。
あれ、扱いとは。名前を出すと馬鹿が移るとでも思われているのだろうかアイツは。
……実際ありえそうで怖い。
「朝はね。放課後は俺は何も」
「そうなんだ。でも、確かに見てて楽しいけどあんまりあれに付き合わないほうがいいよ? 評判も悪くなるし」
女子生徒の言葉に、何故か俺は苛立ちを覚えた。
確かに、あんな馬鹿な行動に付き合っていれば、周りからは浮くだろうし、教員からの評価も悪いだろう。
悪気など一切無く、そのことを純粋に心配して言ってくれているのだと、頭では理解できたのだが、しかし、何故か納得がいかない。
意識せず、口調がすこし強くなってしまう。
「俺が楽しんでやってるだけだから。別に関係ないだろ?」
「いや、うん。そうなんだけどさ……」
俺の変化を感じ取ってか、女子生徒が口ごもる。
「あー、悪い。俺今日は外で食うつもりなんだ。それじゃあな」
どうにも居心地が悪くなった俺は、そう言って弁当を持つと、逃げるように教室から出て行った。
今までの俺だったら、居心地が悪いなんて感じることも無かっただろう。そもそも最初から適当に女子生徒を追い払って終わっていたはずだ。
俺は変わっていっているのだろう。いい方向か、悪い方向かはわからないが。