プロローグ
はじめまして! 定食です
ご覧いただきありがとうございますm(_ _"m)
本作品はちょっぴり文学寄りの,エンタメ小説となります!
全15話程度の連夜投稿(2週間程度)を予定しております
「ハッピーバースデー・トゥ・ユー」の転調パートまで歌いおわり、曲調はラップへと変化した。本来であれば存在しないこのパートは、年に一度の記念日に羽目を外した男によるものだ。本日の主役は1歳を迎える男児だが、負けじとパーティー帽子をかぶる男を見るに、主役以上に目立っているのが現実である。
調子に乗って歌唱を続ける男は、ちゃぶ台をビートに一段とギアを上げた。沈黙を続けるケーキには、火をつけるためのスティック状の物体が刺さっている。まだ火はついていないので焦ることはないが、見間違えでなければそれはロウソクではなく、1メートル級の打ち上げ花火だ。うっかり着火したら大変なことくらいは、その場の全員がわかっていた。
女性と本日の主役は、その仕掛け人でもある男に呆れていた。ラップに対して歓声を上げるわけでも、ロウソクに刺し替えるわけでもない。こうなったらもう、ヤツを止めることはできないのだ。それがこの世界の摂理である。
「ハッピーな誕生日~」
溜めの言葉で、2人は耳をふさいだ。待ち受けるであろうアンハッピーから逃れ、被害を最小限に抑えるためだ。そしてついに、男はマッチ箱を手に取った。当たり前のようにマッチ棒と箱をすり合わせ、暗闇の中に光源をつくる。この瞬間だけは何の変哲もない誕生日会の光景であるが、男の「おめでとう!」の言葉とともに、物理的にすべて散っていった。
ついに着火した打ち上げ花火は、家の屋根もろともドカーンと吹き飛ばし、空高く大輪の花を咲かせた。降りしきる屋根の残骸は近所に負傷者を出すこととなったが、男はそれほどまで、男児を祝いたかったのだろう。許してあげてほしいところに、女性は「別れましょう」の一言を告げた。
こんな日常がいたるところで見られるのだから、この街はやはりおかしい。
治安がどうという話ではなく、根本的に何かが間違っている。そしてこの街を守る警察官は去年、史上初めて2000人を突破した。人口に対する比率は5パーセントを超え、必要以上に増殖した警察官たちは、間もなく一丸となって現場に駆けつけるだろう。
そこで目にするのはきっと、木端みじんになった古民家。それから、ケーキを楽しむ男児と、男児の健やかな成長を願う女性の姿のはずだ。
それから5年後———
男児は宇宙の彼方へ飛び立った。
この物語は、余命宣告を受けた男児社長の【宇宙葬】のお話である。




