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鬼退治  作者: 黒永竜矢
一章

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9/15

四、未明の来訪者(一)

登場人物※新規

総事屋達(男)武器:火縄銃

       特徴:3人組 名前はまだない


「皆さん、お疲れ様です」

 佐助達に成介が声をかける。


「おっ、成介さん、こんちは」と金治に支えられ鼻血を垂れ流したままの佐助の挨拶を筆頭に一党が成介に挨拶をする。


 成介はその挨拶一つ一つに相手の名前を付けて挨拶を返す。

「佐助さん、鼻血出ていますよ」と言って成介は懐の手ぬぐいを差しだした。


「大丈夫、これくらい」と言って手鼻で鼻血をとばした。


 そこへお茶を乗せた盆を両手で持った一朗太がやってきた。


「皆さんお茶をどうぞ」

 佐助達が感謝を伝えながら湯呑を取っていくと盆の上に湯呑が一つ余っている。


 その一つ余った湯呑を「どうぞ」と言って成介に差す出す。


 一朗太が茶を入れに行ったとき成介は、まだ居なかった。 佐助達と挨拶を交わす声が聴こえたのか、厨屋から出たときに成介の姿を見て急いで、もう一杯入れたのかは定かではないが、成介はこの丁稚の目ざとさと、気遣いの細かさに一目置いていた。


 ただその気遣いの細やかさは成介や他の番頭に一目置かれる一方で、年若い一部の手代達からは「ごますり野郎」と呼ばれ酷く嫌われていた。


「はあぁ、美味い」

 武尊が茶を飲み干し恍惚の表情を浮かべる。


「あんた爺くさいわよ」と言って茶を飲み干した桜が「はあぁ、美味しい」と恍惚の表情を浮かべた。


 五人が礼を言って飲み干した湯呑を盆に戻す。

 最後に桜が「ごちそうさま」と言って湯呑を盆の上に置くと一朗太の頭を優しく撫でる。


「一朗太ちゃんの、お茶は入れる度に美味しくなっていくね。 えらい、えらい」

 そう言われながら頭を優しく撫でられた一朗太の顔は真っ赤になりながらも喜色を浮かべていた。


「ところで、かなり立て込んでるみたいだね。 何件だい?」

 佐助が土蔵の前の大八車を見ながら成介に問う。


「あれで、一件分ですよ。 因みにあの二台とは別にもう一台、空の車も出します」

「車三台? 相手は何だい?」

「猪です」

「猪?」


「穢れか?」

 佐助と成介との会話に武尊が割ってはいる。


「はい。 依頼書は『害獣、猪退治』なのですが、今朝駆け込んで来た総事屋さんの話を伺う限り大型の猪の穢れだと思います」

 

 成介は今朝からの経緯を話し始めた。


 未明に駆け込んで来た三人は引取処を利用するのも初めてであったのだろう表門をドンドンと叩いて「お願いします! お願いします!」と声を張り上げていた。


 その音に目を覚ました一朗太が門へ近づき

「何方様でしょうか? ここは許可のない方はお入りになれませんよ」と言うと


「ここは引取処でしょうか? 総事屋です! 回収を…… 回収をお願いしたいのですが」


 そういうので恐る恐る覗窓を開けると、「総事」と浮彫された木札を提示されたので慌てて番頭の成介を起こしに行った。


 蝋燭を持った一朗太に先導された成介は、途中土間で常備されている弓張提灯を手にとり、門内(もんうち)でそれに灯りを灯した。


 パアッと明るくなった門内で成介が一朗太に囁きかける。

「一朗太さん、もう一度あの人達の木札を確認して下さい。 ただし今度は全員分ですよ」


 コクリと頷いて一朗太が脇門の前に置いた木箱に乗り覗窓を開ける。 

 開かれた覗窓から外に灯りが漏れ、文字通り光明に縋り付くように総事屋達が脇門に迫る。


「回収を…… 回収をお願いします」


「――も、申し訳ありません今一度、皆さんの木札を確認させて下さい」

「全員ですか?」

 窓の前の男が訝しむ。

「全員分です」

 一朗太の返答に渋々と言ったようすで覗窓から三枚の木札が差し込まれた。


「三人ですね?」

 一朗太が少し大きめの声をだす。


「そうだよっ! 早く中に入れてくれよ!」

 苛立った総事屋の一人が声を荒らげる。


 次の瞬間、門前の総事屋達の頭上から「ひと~り、ふた~り、さんに~ん」と声が振ってきた。

 

恐る恐る上を向いた三人の頭上に火の玉が揺らめいている。


「キャーーー」と叫んで門前の三人はその場で腰を抜かした。

      

「もしも―し、大丈夫ですかー?」

 白漆喰の壁の上から提灯をぶら下げた成介が声をかけた。


お読みいただきありがとうございます。

未明の来訪者(二)に続きます。

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