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鬼退治  作者: 黒永竜矢
一章

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7/15

二、引取処にて(一)

登場人物※新規

一朗太(男)特徴:坊主頭 口入屋で働く丁稚

手代達(男)特徴:その他大勢 口入屋で働く手代

 竹藪に挟まれた幹道を進んで行くと一本脇に逸れる道がある。 

 左へ緩やかに折れた脇道を暫く進み背中の幹道が見えなくなる辺りに白漆喰の高い壁が現れる。

 昼間でも門は閉じられていて中の様子を伺う事は出来ず、敷地内にある焼却炉から伸びる煙突が外から見える唯一の建物だった。

 門の軒先からは一本の紐が垂れ下がっており、この紐を引くと敷地内に伸びた紐先に繋がった鈴が鳴る仕掛けになっていた。



 ガランガラン


「ただいま参ります」

 丁稚の一朗太(いちろうた)が小走りで門へ向かう。

 脇戸の前に木箱を置きその上に立って覗窓を開けて外を確認する。


「引取と回収を頼みたい」

 窓の外に居る男はそう言うと覗窓から見える位置に「総事(そうじ)」と浮彫された木札を掲げた。


 「あっ佐助さん、お疲れ様です。 今開けますので少々お待ち下さい」

 そう言って一朗太は覗窓を閉め、木箱を移動させ脇戸を開ける。


「お待たせいたしました。 少々立て込んでおりますがどうぞ」

 一朗太が門の外にいた五人を中へまねき入れる。


 壁の内側は一朗太の言う通り慌ただしく人が動いていた。


 門を潜った左側の土蔵の前では大八車が二台並べられていた。  

一台には「油、火気厳禁」と書かれた札が張られている樽が二つ積まれていて、もう一台には「塩」と書かれた樽が積まれていた。

 更に大八車の樽を置いた隙間に手代達が斧、鋸と共に様々な刃物を積み込んでいる最中だったが手代達が積み込んでいる刃物は一見包丁のようだが通常のものより二倍長いものや、三倍は長いものもあり、そのどれもが肉厚だった。



 

 「一朗太ちゃん、見つけた!」


 佐助、楓に続いて脇戸を潜った桜が一党を向かい入れている一朗太を視界に捉えると胸元に引き寄せ、その坊主頭を乱暴に撫でまわした。


「相変わらずジョリジョリだねぇ」

「人前ではしたないぞ桜!」

 呟くように諫める楓の言葉は桜の耳には届かない。


「吠えて撃退しろっ一朗太! 吠えるんだ!」

 助言する佐助の言葉は、恥ずかしさと、照れ臭さと、絞めつけられた頭とで一朗太の耳には届かない。


「やめてやれ!」

 低い声と共に伸びてきた武尊の腕が一朗太の襟首を掴み桜から引き剥がした。


「ちょっとぉ、私のジョリジョリ返してよっ!」

「お前のではないし、あのままだと一朗太の身が危険だ」

 そう言って武尊は土蔵の方を顎で指した。

 土蔵の前では若い手代達が積み込んでいた刃物を強く握り、怨色を浮かべ一朗太を睨みつけていた。


「僕、お茶入れ来ます」

 一朗太は最後に金治が潜った脇戸を閉めて、手代達の視線から逃げる様に厨屋(くりや)(炊事小屋)へと駆けて行った。


「何? あれ、嫉妬? みっともない」

 桜は手代達に聴こえる様に態と大きな声を出した。

 手代達は声が届いていないかのように桜とは視線を合わさず作業に戻る。

「ちょっとー、聴こえてるでしょ? 一朗太ちゃんに変な事したら許さないからねー!」

「やめておけ! お前が庇えば庇う程一朗太の立場が悪くなる」 

 武尊の忠告に桜は「ふん」と鼻を鳴らし土蔵に背を向けた。


「嫉妬かねぇ?」 佐助が独り言ちる。

「どう言う意味よ?」 と桜が尋ねる。


「いや桜に抱き着かれるのが羨ましいと思う男なんて居るのかと思ってよ」

 佐助がそう言って桜の体を繁々と見てニタリと笑った次の瞬間。

「どこ見てんのよ? この助平!」

 鈍い音と共に佐助の顔面に桜の拳が減り込んだ。


 鼻から鮮血を流し仰臥(ぎょうが)した佐助の顔の横に楓が座り込んで尋ねる。

「殿方は桜の体型では物足りないのだろうか? 決して豊満ではないが女らしい体系だと思うのだが」

 白目を剝いた佐助からの返事はない。


「『豊満ではないが』って何よ? 楓だって全く同じ体系じゃない!」

 

 武尊は視線を逸らし沈黙を守った。


「体系は好みが分れるところでしょうが、桜さん楓さんは絶世と言っても良い美人ですから、誰かと親しくしていたら羨む男性は多いと思いますよ」

 そう言いながら金治が佐助を抱え起こした。


「流石! 金ちゃん! いい事言うわぁ」

 桜が金治が被っている陣笠をバンバンと叩く。


「佐助、武尊、あんた達も気を付けなさい! こんな絶景な美人双子姉妹を連れて歩いているんだから、きっと知らないところで羨まままれてるわよっ! 嫉妬されてるわよ!」


「ま、が多いですし、絶世ですよ。 観光地ですか?」


 金治が陣笠の位置を直しながら呟いた。



読んでいただきありがとうございます!

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