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鬼退治  作者: 黒永竜矢
序章

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3/15

三、鬼退治(二)

 一方槍の男は鬼のやや左後方に飛ばされたが直ぐに立ち上がり槍の穂先を見た。 少し変形してはいるが攻撃に問題はない。 手に痺れはあるが力が入らない程ではない。 視線を上げれば鬼の向こう側で体勢を立て直した男が太刀を構えてこちらに視線を向けている。


 槍を構え太刀の男に視線を送り返す。 相手が頷いたのを確認すると鬼へ向かって走り出し、同時に太刀の男も鬼へ向かって走り出した。


 鬼の後方から走り寄る二人の視界からでも鬼の激しく動く眼球が確認できる。

 太刀の男が丸太の間合いと速さを警戒しながら更に近づいた次の間、鬼は手にした丸太を横薙ぎに振るった。

 

 男はそれを退いて躱す。


 丸太を振るった勢いのまま鬼の体が流れ太刀の男と正対する格好となった。

 そこへ完全に背後をとる格好となった槍の男が歩速ををあげて突撃してくる。

 鬼の腰上、正中よりやや左に槍の穂先が刺さった。 


 鬼が悲鳴とも雄叫びともつかない声を短く発したが傷は浅く槍の穂先は半分も入ってはいない。 更に突き入れようと槍を握る手に力を込めるが穂先は微動もしない。 

 穂先が変形しているためではなかった。 穂先の刺さっている周りの分厚い筋肉に押さえつけられてそれ以上進めなくなっていた。


 鬼が唸り声をあげながら丸太を後ろへと振り拭く。 男は咄嗟に槍から手を離し後ろへ飛び退いて躱した。

 鬼は腰に刺さった槍を引き抜き、放り投げながら体を回した。


 槍を手放した男は腰に差した大脇差を抜いた。

 太刀と、槍から大脇差に持ち替えた男が鬼の左右に斜に構える格好になった。


 太刀の男が鬼の左側から斬りかかる。 丸太で受け止められるが深く切り込まないうちに太刀を引く。 すかさず大脇差しを手にした男が右側から鬼へと斬りかかる。 丸太に弾かれるが振りかぶっていないためか振り抜いていないためか、槍ごと弾き飛ばされた時ほどの衝撃はなかった。


 太刀の男が再び斬撃を叩き込もうとするが、またもや丸太で受けられた。 もう一人の男が大脇差の刃を返し再び鬼へ向けるが鬼も丸太を返して大脇差に当て軌道を変える。


 右から左から、突いて、横に薙ぎ、振り下ろし、振り上げ太刀と大脇差で鬼へと斬りかかるが、その全てが素早い丸太の動きによって防がれた。


 太刀と大脇差で一方的に攻めかかってはいるが鬼の体には傷一つ付けられていない。 体力がなくなり手が止まれば丸太の強烈な打撃をうけてしまうのは確実だった。


 打開のための糸口を探しつつ二人の男が鬼へ攻めかかっている最中やや間隔をあけて二発の銃声が響いた。


 男二人の連撃の対応に追われ無防備になった鬼の右肩甲骨に鉛玉が二発命中した。


 鬼は頭を真横に向け眼球を激しく動かし自らの肩口と銃声のした方向で筒先から煙をあげる火縄銃を構えた女達とを交互に睨みつけている。


 もう一人の男も半弓を放ってはいたが威力が弱く鬼の外皮には刺さったが直ぐに抜け落ちていた。


 視線が外れた。 そう判断した太刀の男が鬼へと斬りかかったが先ほど同様丸太で受けられた。 もう一人の男も大脇差で斬りかかるが丸太でいなされる。 間髪入れず太刀の男が斬りかかるが丸太で受けられる。

 再び太刀と大脇差の乱撃が繰り出されるが鬼の眼球が激しく腕が素早く動いて、その全てを丸太で防がれた。


 鉛玉が命中した二つの傷からは黒紫色の体液が流れ出てはいるが多くはなく鬼の背中に二筋の細い線を描いている。


 先ほどまで二丁の火縄銃を持っていた女は襷がけにした革帯から「早合」を取り出し玉込めを始めている。

 もう一人の女は襷がけにした革帯を外すと手にしていた火縄銃と革帯を半弓の男の足元に放り投げた。


 男は半弓の攻撃力に見切りをつけ足元の革帯から「早合」を取り出し火縄銃への玉込めを始める。


 火縄銃と革帯を男に渡した女は後ろ腰に縄で縛り付けていた、銃口が火縄銃の倍はあり銃身を短く切った大筒をほどいて腰にぶら下げていた袋から火薬、玉を取り出し玉込めを始めた。


 二人の男達は太刀と大脇差で鬼を攻め続けている。 突いて、横に薙ぎ、振り下ろし、振り上げる。

 それらを防ぐ度び鬼の肩甲骨の傷口から黒紫色の体液が滲み出し鬼の背中を湿らせていく。

 背中の黒紫色に染まる面積に比例するように徐々に丸太を振るう腕の動きが鈍くなり始める。


 上段からの太刀の振り下ろしを防ぎ、すかさず斬りかかってくる大脇差に丸太を向けるが僅かの差で刃が鬼の腕を斬りつける。 しかし浅い。

 腕の傷を物ともせず今度は刺突してくる太刀の切っ先に丸太を突き当てようとしたが間に合わなかった。

 太刀の切っ先が僅かに鬼の腹へ刺さったところに丸太の先端が太刀に当たった。 

 衝撃で太刀は切っ先を鬼の腹の中に残して折れ、太刀に体重を乗せていた男は体勢を崩して転げそうになるのを何とか耐えたが、次の瞬間回避不可能な間で男目掛け鬼の左拳が振り下ろされようとしていた。


 その時広場全体を揺らす雷鳴のような轟音が轟いた。

 鬼の背後から女が片膝をつき両手で抱え込んだ大筒を放っていた。


 大筒の玉は鬼の左肩甲骨に当たり振り下ろそうとしていた左腕ごと体を仰け反らさせ、外皮を削り、肉を裂き、骨を粉砕し正面の肩口から飛び出した。


 飛び出した鉛玉が太刀の男の頭上を通過したと同時に射出口からは勢いよく鬼の体液が噴出し男の顔面へと降り注いだ。

 男は即座に二歩三歩と素早く飛び退いて鬼との距離を取ると「鎖帷子」の上に着込んだ羽織の袖をたくし上げ乱暴に顔を拭いてから顎を細かく動かし口腔に唾液を溜めてから掌に吐きだした。 掌に透明の唾液が広がり口の中に鬼に体液は入っていないことを確認する。  掌を羽織に擦りつけ切っ先の折れた太刀を構えた。


 鬼は上体を仰け反らせ悲鳴とも雄叫びともつかない声をあげている。


 大筒を放った女は腰を浮かせ鬼との距離を取ろうとする。

 ただでさえ命中精度の悪い大筒を、持運び易さ優先で銃身を短くした、この大筒では近距離で鬼と対峙している男二人を誤射しかねないため鬼に接近して放っていた。


 鬼が振り返り二歩、三歩と近づかれれば丸太の間合いに入ってしまう、そうなれば回避できる素早さは女にはない、当たれば女の軽装では一撃で致命傷を負ってしまう。


 女が下がろうとしたとき鬼が女の方へ振り返り眼球を小刻みに動かした。


 目が合った。

 黒目のない鬼の眼球は視線が何処にあるのかは分からない、しかし女は目があったと感じた。

 

お読み頂きありがとうございます。

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