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鬼退治  作者: 黒永竜矢
一章

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10/15

五、未明の来訪者(二)

「えらいっ!」

「えらいっ!」

 成介の話の途中で佐助と桜が急に叫んだ。


「なんだ? 急に?」

 急な大声に方針状態の四人を代表して武尊が尋ねる。


「夜中に門ドンドンされて、絶対怖かったはずなのに、ちゃんと応対して小窓まで開けるなんて一朗太ちゃん、なんてあなたは偉いの!」と拳を握って深く目を閉じた桜の瞼から一筋の雫が垂れた。


「門前に居るのが、どんな奴らかも解からないのに毅然と対応出来たなんて、男になったな!一朗太」と腕を組み何度も大きく頷く佐助。


 因みに湯呑を下げに行った一朗太はこの場にはいない。


「桜が暴走してるお陰であまり目立ってないが、佐助もかなり一朗太贔屓だよな」

 武尊の言葉に瞑目し沈黙で返す佐助。


「あの話、続けても宜しいでしょうか?」

 

 五人の同意得て成介が話しを続ける。


 壁の上から門前に三人以外いない事を確認した成介が一朗太に脇門を開けさせ中へ招き入れた。

 

 三人が這うようにして中に入ると一朗太は脇門を閉めて厨屋へ向かう。


「色々、大丈夫ですか?」

 門内に背を預け合うように座り込んだ三人の顔や手足は汚れていて一見しただけでは怪我などの有無は判らない。 着物もボロボロで何が付着しているのか酷く汚れている。

 

 三人とも銃使いのようで火縄銃を背負っているが、その火縄銃も部品が幾つか欠落していて、詳しくない成介にも壊れている様に見える。


「色々、大丈夫ではないです」


「そのようですね」

 成介はヒクヒクと鼻を動かす。

「大変失礼ですが、匂いがかなりキツイようですが…… もしかして先程ので、漏らしてしまいましたか?」


「漏らしてませんっ!」

 三人が声を合わせる。

「これは…… その肥溜めの糞が跳ねたもので……」

 そのまま説明しにくいのか、言いたくないのか沈黙が訪れる。


 盆に湯呑を乗せた一朗太が厨屋より戻り「どうぞ」と言って三人の前に差しだす。

「お水ですが、今お湯も沸かしておりますので直に暖かいものもお入れいたします」

 

 三人は湯呑の水を一気に飲み干した。

「ありがとう、水で構わないから、もう一杯貰えるだろうか?」


「かしこまりました」

 そう言って湯呑と盆を、その場に置いて厨屋へと駆け出した。


 暫くして厨屋から出てきた一朗太は体の三分の一はある手桶を両手で持ってこちらへ向かって来た。

 中身は水で満ちているのだろう、重さに翻弄され千鳥のごとく左右に体を揺らしている。

 

 総事屋の一人が駆け寄って手桶の持ち手を変わる。

 

 一朗太は礼を言うと再び厨屋へと駆け戻った。

 

 手桶の中には丁寧にも柄杓(ひしゃく)が入っている。

(これで好きなだけ酌んで飲めと言う事か)

 そう思い仲間の下へ歩を進める。


 総事屋の一人が柄杓で盆の上の湯呑へ水を灌ぎ入れた。


 その横では厨屋から戻った一朗太が持ってきた湯桶に水を張り、手拭いを絞って総事屋達へ手渡している。

 

 成介は一朗太の行動をみて一瞬口角を緩める。

(こんな未明に叩き起こされて、(さか)しいまでに気が利く)


「一朗太さん、土間に代え用の浴衣を用意しておいて下さい。 それが済んだらあなたはもう良いですから。 夜が明けるまで少し時もありますからもう少し寝ておきなさい」


「はい。 ありがとうございます。 では休ませて頂きます」

 

 そう言って駆けていく一朗太の後ろ姿を見ながら成介は表情を曇らせた。

 年端もいかぬ子供のこの賢しさが、見るものよっては小賢しく映ってしまうことに。




お読みいただきありがとうございます。

未明の来訪者(三)に続きます。

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