その3
その4 午後の授業で私が眠くなった時『眠気スッキリタブレット』をくれるトコ
その5 放課後バーガーショップで一緒になった時、期間限定シェイクを奢ってくれた事
その6 こないだの夜偶然スーパーで会った時、タイムセールだからと言って30%OFFのマンゴープリンを買ってくれた事
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……俺、自分では気付いてなかったけど朝から晩まで伊瀬宮を餌付けしてたんだな。
てか、コレって俺のイイ所じゃなくね? 伊瀬宮の都合のイイ事なんじゃね?
「おい、今その9なんだけど、なんなんだこの取ってつけたかのような『足が速いトコ』は?」
「えーっ、だって去年の秋の体育祭のリレー、アンカーでぶっちぎりトップだったじゃん! ガチで速かったんですけど?」
「そしてその10は……、『鈍感なトコ』って! コレ全然褒めてないだろ? 結局食いモンあげて足が速いって俺、小学校低学年のモテ男子じゃんか?」
「アハハッ、マジ私の初恋の人なんですけどソレ! 給食のデザートくれる足の速い男子! 名前忘れちゃったけど!」
俺の肩をペシペシと叩きながら伊瀬宮は目に涙を浮かべ笑っていた。
「オイ、初恋の人の名前位覚えておけよ! ちなみに俺の初恋は幼稚園の時の千秋先生だけどな!」
「そんな個人情報いらないしー♪」
そんなやり取りをしていたら俺の背後から声がして、ソイツは俺が手に持っていたそのノートを取り上げた。
「アンタ達またイチャついてんの〜? 何コレ? 『阿久津の良いトコロ10個♪』って、イセマリ何書いてんの? ウケる♪」
「美月ぃおはよう〜♪ だって阿久津がコレ書いたらグミあげるって言うからさー、てか今来たの? この時間って事は今日も彼ピん家からでしょ?」
俺からノートを取り上げたコイツは松嶋美月、褐色の肌の本物のギャルだ。
何故本物かと言うと、伊瀬宮はギャルのメイクやファッションが好きなだけでそれ以外は至って普通の女子高生なのだが、松嶋は仲良い奴は皆んな同系列だし、連日のクラブ通いに年上の彼が居てメイクもネイルもバッチリ、はっきり言って伊瀬宮とはギャルの本気度が違う。彼氏の家から今登校ってもしや、……朝からナニかやって来たんじゃないの?
「阿久津の良いトコロって、……顔じゃね? それだけで充分っしょ?」
「松嶋っ、俺はそれ以外を知りたいから伊瀬宮に相談したんだよ!」
「だったらもう少し目立たない様にやった方がいいって!」
そう言ってノートを俺に渡すと伊瀬宮に向かって小声で、
「……もぅ周りの女子達が恨めしい顔して見てんの分かんないかな? ちょっとは気付けっつの! ちょっとメイク直してあげるから一緒にトイレ行こ」
「あ、……うん、ありがと」
そう言って伊瀬宮の手を引き教室を出て行った。
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「……てかイセマリ今日顔どしたん? 結構ヤバいし! またキャラ弁作って寝て無いんでしょ?」
トイレの鏡越しに美月は心配そうに私を見て言った。
「あはは、まぁこの後の授業中寝るから大丈夫っしょ!」
「あんま無理するとイセマリも倒れちゃうよ! そしたらお母さんに余計心配かける事になるんだかんな!」
そう言って手際よく私の顔面を修復してくれている。なんだかんだでいつも美月は私を気にかけてくれる大切な親友だ。
「でもアレはマズいって! あんな二人で楽しそうにしてたら周りの女子から反感買うよ? さっき聞いたんだけど阿久津、隣のクラスの赤星フッたんでしょ? それであんなイチャイチャしてたら誤解されちゃうよ?」
「だからー、イチャイチャなんてしてないっつの!」
心配そうに私を見る。やっぱり美月は優しいな!
「イセマリさー、いっつも否定してるけど本当は阿久津の事好きなんでしょ? もうさー、私には本当の事言ってよ、私はアンタの味方だから上手くいく様協力するからさー♪」
口調は軽いが至って私を見る目は真剣だった。
私はほんのちょっと前に気付いてしまった本当の気持ちを美月に打ち明けた。
「あのね、……さっきまではホント、席が隣ってだけのただの仲の良い友達だと思ってたんだ。ウソじゃないよ、信じて!」
「うん、信じるけど、さっきまでって……」
鏡越しで目が合う美月に向かって喋る私の顔はめっちゃ赤くなっていた。
「『阿久津の良いトコロ10個』を書いてる途中気付いちゃったんだ。
私、阿久津の好きなトコばっかり書いてた! てか気付いて無かっただけで私、阿久津の事好きだったみたい!
だから慌てて食べ物くれる事ばっかり書いて誤魔化しちゃったの!」
恥ずかしくなって下を向いていた私の顔を持ち上げた美月と目が合った。恥ずかしい〜!
美月は嬉しそうにウンウンと頷き、何も言わずに髪をとかしてくれた。
「でもさー、私、阿久津に今度告ってくる子が居たらとりあえず付き合ってみて自分の事知ってもらえる様にしたら? みたいな事言っちゃったんだよ。そん時は自分の気持ちに気付いて無かったからさ、ねぇ美月どーしよー?」
一度話し始めたら自分でも歯止めが効かなくなった。
「それに阿久津だって私の事ただの隣の席のよく喋る女友達としか思って無いよ、とても脈アリには見えないもん。この気持ちに気付いた瞬間失恋なんて……」
自然と目から涙が溢れて来た。せっかく美月が綺麗にメイク直してくれたのに……。
そしたら今まで黙って話を聞いてくれてた美月が後ろから私を抱きしめて耳元で囁いた。
「イセマリはあのノートを書いて自分の気持ちに気付いたんでしょ?」
「うん。……そうだけど?」
「大丈夫、私に任せて! こんなん余裕っしょ! そうと決まれば行くよっ、イセマリっ♪」
「ちょ、ちょっとまって美月ぃ〜っ!!」
何だか分からないけど自信満々の美月に手を引っ張られて私達は阿久津の居る教室に向かうのでした。




