ニートのすゝめ
昭和後期から平成のある時期までかけて日本という国は内面的に大変重篤な病を抱えていた。
物質至上主義と言おうか金権主義の末路とも言えようか、それまで順調に成長を進めていた日本経済の停滞、バブルの崩壊を経て庶民からは希望が消えた。
努力をすれば報われるのだと言い聞かされ不相応な教育を詰め込まれ、しかし現実にそれは嘘であった。故に過去の価値観にしがみついた押し付けは各方面で軋轢を産んだ。早く気付いた者はぐれて派手な格好で刹那的な享楽に溺れ、極端な者はしばしば大きな事件を引き起こして世間を騒がせた。遅く気付き、なおかつ極端にも走らなかった多くの者は押し付けられた価値を捨てられず、そんな世間にも迎合出来ない社会不適合者となる。そう、ニートの誕生である。
文化的に言えば優れたアニメやマンガなどの娯楽作品が量産された事も彼らの隆盛を助けた。
嘘だらけの世間や傷付けられる事ばかりの社会に対峙せずに、一人でいても寂しくない。
画面の中にいつでも友達、どころか嫁と呼称出来るほどのよく出来た娘さんが、スイッチを付けるだけ思う存分にもてなしてくれるのだ。飽きたらスイッチを切ればおしまい。こんな楽な事はない。
どうして進んで辛い思いをしに外へ出ようなどと思うだろう。
しかしながら、彼らの生活基盤は主に支援者の援助があっての上に成り立っている。
家族、親兄弟、親戚。
疑問に思った事はないだろうか、どうして何も言わずに支援をしてくれるのだろう。
何故なら、支援者はその原因を作ってしまったのが教育を行った自分たちではなかろうかと、そういう類いの不安の重荷を心の奥に隠しているからだ。そしてそれは半分正しい。
半分だけ間違っているのは、社会の問題が残り半分ある事だ。ドロップアウトした不適合者がいい待遇を得られるように世の中というものは出来ていない。それは当然の事だ。
そしてまた計算がおかしい、と指摘して貰って構わないが、きっちり半分、ニート本人に責任がある。
愛する者の間で何があっても責任は均等に半分ずつある、という格言、いや真理を元に言っている。全て人のせいにして被害者になるのは簡単だが、自ら負担しなかった物に価値などはない。声高らかに相手の非を訴えて懇求する者は自身の無価値を喧伝しているのと同じで実に哀れだ。
半分が三つもあれば解決なんて出来ない。それはさすがに人の身に余る。
仮に何が起これば突破口になるか想像してみよう。
まず一つは、天地のひっくり返るような社会の変革でもあれば、状況は変わるかもしれない。人はそれを厄災と呼ぶ。そして大半のニートはむしろそれのみを希求している。あるいは無条件に自分を肯定してくれる(そんなキャラクターが一人でもいる)異世界への転移、転生か。
またはニート本人に天変地異が起こり社会性を発揮、一念発起して世間の荒波に乗り出して行くような奇跡があれば解決なんて瞬殺だ。だがおよそこの多種多様な価値観の雑多な人類の生息する世の中に生きていて、否定されないなどという事は一日たりともありえない。そして自己肯定感のないニートは否定されるとすぐに折れる。故におおかたの支援者達はただそれのみを心の拠り所にして日々を送っているというのに、そんな突拍子もない非現実的な奇跡なんてあり得なすぎて仮にも物語の中ですら滅多に書かれはしない。
平和的解決としてお勧めしたいのは、膝をついての話し合いであるが、かたや凝り固まった自己否定感とそれに起因するプライド、かたや責任を追求され誹謗を受けるのを恐怖した意地の張り合いが邪魔をして、怠惰に流された今までの年月にさえ後押しされて、決して話などまとまりはしない。
筆者はその事を些かも否定したりはしない。何故なら私こそが当時先陣を切ってニート、当時の言葉で言えば引きこもりという生き方に身を投じた、いわば先駆者の一人であるからである。
一人部屋で下らない小説を書き殴り、いつか誰かに認められる夢想をし続けた、成れの果てが今の現実なのだ。
無論そのような奇跡など起こるはずもなく、無駄に歳ばかりを重ねてしまったが、この経験を書き綴ることは決して後続のため無駄にならぬと心を決め、才の無いと折り捨てた筆をセロハンテープで補修して不承、原稿用紙に向かうことと相なった。
詰みの状況に必ず、一石を投じる出来事がある。
時間は不可逆なので、いずれ支援者は先にいなくなる。
人は必ず死ぬ、その事だ。
支援者がなくなれば、生活基盤は崩壊する。今まで何一つ自らの為の行動を起こしたことのない諸兄には、右も左も分からない、ただ途方に暮れて餓死を待つばかりの無惨な末路となるだろう。
だが安心して欲しい。
筆者は自らの経験を元に、サバイバルのための術を伝授したいと考えここに筆を取ったのだから。
生きる事、ただそれだけが戦いであり、勝利なのだ。あとは全て細事。
私はあまねく全てのニートに、その手段を伝えたい。
まず基本的なものは水と食塩だ。
十分な飲料水とミネラルさえ確保できれば人は最低一週間生きながらえる事ができる。
支払いがなければ、水道は止まる。実験と経験則によると、市町村とその水道局にもよるがおおむね2乃至3ヶ月ほどで供給が停止される。長ければ半年持つが、希望的観測は避けよう。
元の水栓を閉じられただけなので、集合住宅でもなければ自分で開くという力技もあるにはあるが、現代の社会情勢を顧みると煩い馬鹿が騒ぎ立てるので安穏に過ごしたいのであればお勧めしかねる。
それに耐えたとして、そのまま訴訟も何も放ったらかしにして警察沙汰になれば、税金で毎日健康的な麦ごはんを食べさせてくれる場所に連れてってもらえるというご褒美もあるにはあるが、自由を切望して人の指図を嫌う読者のような方々にはいささか窮屈に感じられる事だろうとは想像に難くないので、これもまた推奨はしない。
そもそも水だけではそれまでの期間、生活いや生命すら維持する事がまかりならないので、机上の空論として想像して頂きたい。
つまり、水に次いで食料の確保が必要となって来る。
カップ麺やコンビニ弁当、ペットボトルの飲み物しか料理した事のない御大もいらっしゃるだろう。
しかしコストパフォーマンスの面からみて、長期的にこの戦いを続けるつもりであれば、それは最上の選択とは言えない。
支援者に任せきりの諸兄はおそらく知らないかもしれないが、料理というのは思った以上に簡単に出来る、ささいな仕事なのだ。
冷蔵庫の中身が空になり、わずかに残った味噌をしゃぶるような惨めな思いをする前に、汚いジャージでも構わないので服を着て、残り少ない有り金を握りしめてスーパーマーケットという、ゾンビ映画でお馴染みのエリアに出撃してみよう。
これはプラクティス、練習モードなので失敗しても危険はない。しかも今の段階ではイージーモード。
安心して欲しい。パーカーを深く被りマスクでもしていれば、誰にも認識などされる事はない。そうやって出てみれば、むしろ隠す事こそが目立ち、不審者と思われるかも知れないという事に、ふと気付く瞬間があるかも知れない。フードを脱いで、むしろ堂々とした振りをした方が目立たないのであれば、あえてそうして見るのもいいかも知れない。
外に出れば見る人全てが敵のように感じるだろう。
しかし我が国は曲がりなりにも法治国家、治安の悪い一角に運悪く足を踏み入れたりしない限り、犯罪に巻き込まれる可能性はある程度低い。
アフリカのある都市などでは腕時計をしていただけで、手を切り落とされてそれを盗まれたりするので、そこまでではない日本はどこへ行こうが比較的安全だと言えよう。
交通事故にだけは注意をして欲しい。信号というのは赤いランプが点っている時は注意して渡るべきだ。むしろ止まってもいい。止まった方がいい。法律では止まれと規定されているが自由を標榜する方々には効かないかもしれない。
そこで、あなたは気づく筈だ。自分もそうであるならば、きっと運転手もそうなのかも知れない。
そう、青信号を信用してはいけない。
青だろうが頭のおかしい車が特攻を掛けてくる、そんな不幸は、注意を欠かさなければある程度は防げる。
危険ばかりの世の中に一歩踏み出してみれば、意外と大丈夫なんだと油断が生まれる。
そんなに気を張り詰めて、恐れてばかりいたのは馬鹿らしい。
それこそが、世間一般に普遍している通行人のありふれた思想なのだ。
新鮮に思うかもしれないがすぐに慣れてしまう。そういうものなので、負い目に感じる事はないし逆にまた誇れる事でもない。
ではそのままスーパーへ向かい、好きなものをカゴに入れるといい。
カートという便利なものがあり、カゴを乗せて楽に運べるが、持ち帰る時に徒歩ならば買った物のその重みが全て両の手にのし掛かって来る事を忘れてはならない。
体力はない筈なので、途中で放棄する事になりかねない。
カップヌードルや弁当もいいが、お勧めはパスタだ。高価な日本製のブランド乾麺を選ばなくても、ぷりっとした食感の上質な商品が激安で販売されている事もある。それは各自で探して自分の舌に合うものを見つけ出して見てほしい。
味覚障害で味なんて分からない、お腹に溜まればそれでいいという御仁には、ホットケーキミックスと玉子を買うという選択肢もある。
賞味期限も長い上、玉子は常温保存でも一週間くらいなら腐らない為、仮に電気が停められて冷蔵庫が使えなくなっていたとしても余裕で耐えられる。
コストも低い上に、卓上ガスコンロとフライパンさえあれば作れるので簡便さはこちらの方が上だ。完全栄養食で炭水化物、タンパク質、脂質のバランスに優れている為、それだけで一年は戦える。実際にそれだけで長い年月を耐え過ごした勇士を筆者は一人知っている。
ペットボトルのお茶もいいが、持って帰るには少し重い。スーパーにはパックのお茶というものが存在している。それはお湯を注ぐだけで作れる上に、はるかに軽い。水道水もいいが、やはり生水だけでは味気なかろう。
お茶よりコーヒーが好きな筆者はあえて安上がりな豆の状態で購入してミルでがりがり削ってドリップして飲むが、上級者向けなので読者諸兄にはまだ早いだろう。
ペットボトルで水を買うのは馬鹿らしい。我が国の一部で航空機の燃料が漏れ、飲料用の水道水にPFASという汚染物質が混ざっている地域がある。そうでもなければ、安全神話を鵜呑みにしても危険性は僅かだ。悪徳訪問販売業者が水を売り付けて来る場合もあるが賢明な読者諸兄ならばドアチャイムに怯えるだけでドアを開いたりなどはしないだろうと信じている。
持ち切れる量をカゴに入れてさあレジに並ぶと、そこで会計が始まる。
昨近ではなんと、無人会計というものが存在している。お客が自分自身でバーコードを読み取り、精算するという人件費削減のためだけに作られたシステムだ。
よく飼い慣らされたものだと感心する。
そこで万引きしても警備員からの麦ご飯食べ放題コースに直結出来るが、運良く初犯を許してもらえたとしても、ほぼ確実になる出入り禁止処分にでも認定されたら補給にさらに遠いところまで足を伸ばさなければならなくなる為、不合理である。避けた方が賢明ではないだろうか。お店の人にも悪い。
長期的な戦いを目指すなら目立つ事は控えよう。むろん短期決戦を選ぶような短慮ならば、今ここでこの文章を読んでなどいないだろうが。
そして、有人無人、どちらのレジを選ぼうとも、ここで驚くべき事実に突き当たる。
ビニール袋が、貰えないのだ。
籠城戦を長く続けた諸兄はご存じないだろうが、プラスティック廃棄物を減少させる為という美辞麗句を旗頭に、全世界で一斉にゴミ袋が有料化した。生産を続けお金を取る事になっただけで、少しも減少には繋がっていないのだが、狂った事に紙袋でさえお金を取る仕組みを奴らは完成させた。憤るのは待って欲しい。それだけではないのだから。
消費税が一割に達した事も、驚愕に値する事実だ。取りはぐれのない仕組みを作る為にインボイス制度というあこぎな法律をごり押しで通過させたのも今は昔。
1000円の物を買う為に、1100円を支払って100円を我が国に納める。流通システム全てからいちいち徴収出来ると考えたらどれほどの重税なのか想像出来ると思うが、経済活動にほぼ参加していないニートであれば被害は比較的少なく出来る。
節約する。消費活動に参加しない。我が国の経済を考えればそれは多大な損失に違いない。
それでもこちらの対抗手段として出来る事はそのくらいなのだ。
生きる為の戦いを、現時点で痛切に実行している諸兄に強い敬意を表したい。
滅多に遭遇することはないかも知れないが、職務質問という厄介な公僕相手の対処法も念のために記しておこう。普通にしていれば大丈夫、と言ってもその普通が分からない読者には、とにかく恐ろしく、挙動不審になって疑われてしまうかも知れない。
身分証の提示を求められても、免許証の一つすらまともに所持していない場合、麦ご飯コース一直線だと思われる方もいるに違いない。
余談ではあるが取調室で出るカツ丼は実費もしくは警察官の財布から出ているので過度な期待は控えたい。
挙動不審でも構わない。事実、犯罪行為などしていないのだから。無実の罪で疑われるなら、それは誹謗中傷である。そんな理不尽な扱いを受けた時、あなたは本当は怒ってもいいのだ。
相手もプロなので、よほどのバカでもない限りはそれをきちんと見抜いてくれる。
バカに遭遇した時こそは悲劇だが、何とか非のないことを説明して難を逃れよう。アリバイなんて証明出来る知人は読者にはきっといないだろう。
痴漢冤罪などで顔が似ているだけの人を捕まえて成績の足しにするような悪業も話に聞く。
FBIとCIAとロス市警が森に放したウサギを捕まえる勝負をするという古いアメリカンジョークがある。
CIAはスパイ網を張り巡らせ数ヶ月にも渡る綿密な調査の結果、森にウサギはいないと結論する。
FBIはしばらく放ったらかしにした後森を焼き払って皆殺しの末、出火元はウサギと報告する。
ロス市警が落ちで、ボコボコに顔を腫らした「分かった、俺がウサギだぜ」と叫ぶ熊を連れて森から出て来る。
それがジョークではなく実際に起こりうるのがこの世の中の恐ろしいところである。
どんなに強く迫られても決して安易に流されて虚偽の自白などせず、すぐに弁護士を呼ぶのが最善の対処法だ。これだけは、決して忘れてはいけない。
そこまでいかなくても、不快な思いをする事はあるだろう。官姓名を名乗らせて、メモをして告発するという上級者向けの対処もあるが、記憶に留めるだけにしとおいた方が無難である。泣く子と権力者には昔から勝てない。泣き寝入りをして悔しさを次に活かす方が建設的だ。
注意したいのは、決して刃物どころか護身用のツールを持ち歩いてはいけない。官憲に身柄確保の口実を与えて、ポイント稼ぎに協力したいなら別だが。怖いかも知れないが、この法治国家の我が国に自衛の権利はない。襲われ怪我をしたら証拠を確保して警察を頼り、裁判で争うことが推奨されている。抵抗したら逆に暴行で訴えられるなんてふざけた事件だって起こりうる。
兎にも角にも無用なトラブルからは身を遠ざける事が求められる。
あなたが油断して一般通行人のように歩いてきたこの道は、ほんの僅かな可能性とはいえそれだけの危険を奥に孕んでいた道だったのだ。
無事家に着いたら危機を乗り越えた自分を盛大に褒め称えてあげて欲しい。
自転車という便利な乗り物をいずれ入手したならば、相手が徒歩なら漕いで逃げる事も決して不可能ではない。日本であれば即座に射殺されるような事も稀だ。警察官は発砲すると昇進ルートから外されるという都市伝説がまことしやかに囁かれている。どうやらそれは嘘のようだが。
重い荷物を抱えて、長い道のりを進むときに、よき手助けとなってくれる自転車という乗り物。免許証が必要なく、多少の交通違反で罰金を払わされる事はない。
しかしそれもすでに過去のものとなりつつある。車載カメラが搭載され、言いがかりの取り締まりがし難くなった今日、彼らは収入を増やす為に自転車から罰金を聴取する為に暗躍している。ヘルメット義務などは定着させるべきではない。なお、被った方が安全なので筆者は着用を推奨する。交通ルールを知らない諸兄らには特にだ。
自転車が初めてなら練習は人のいない広い場所で行おう。最初はペダルを漕がずに、バランスだけに注意して進んでみると、ハンドルに無理な力さえ入れなければあまり転ばない。
幸いにして相手はいないだろうが二人乗りは発見され次第即座に追いかけて来るのでそれが面倒なら避けた方がいい。
さて無事に家に辿り着くことが出来たなら、簡単な仕事、料理という奴を始めよう。
鍋にお湯を沸かす。
塩を適度に入れる。
スパゲッティを入れて待つ。
出してなんか掛けて食べる。
それだけだ。塩の適量が分からないなら、色々試せばいい。ぷりぷりにならないだけで、塩を入れないレシピだってあるにはある。
カップと小さじを使って厳密に比率を測ると、コンスタントに同じ味のものが出来るので、慣れたらチャレンジしてみると失敗が減る。
失敗と言っても極端に塩を入れすぎない限り、食べられない事はない。
10%前後が推奨だがそこは体調や個体差によって変わるので、試してみるしかない。
かけるものは何でも構わない。茹で汁と唐辛子とオリーブオイルが安上がりだが、マヨネーズとケチャップを混ぜたものが安易で美味しい。お茶漬けの素でも出汁の素でも味噌汁でも、チャレンジして経験値を上げると大体作る前に分かるようになって来る。それは結構楽しい。
ガス代を節約する為沸騰の早い小さい鍋で作る時は、束ねたものを軽く捻って螺旋状に広げると縁で焦げ付かないし見た目も格好良いので覚えておくといざという時に役立つかも知れない。折る屑は嫌いなのでこの先はもう読まないで頂きたい。
ホットケーキミックスは袋に作り方が書いてあるので説明しない。
米を炊くのは面倒だし買い物が重くなる上に値段が高騰しているので私はしないが、好きな人は作ればいい。さっと研いで30分から1時間水を吸わせて火にかける。水気が飛んで沸騰音が変わったら火を切って蒸らす。鍋でなく電気式炊飯器ならスイッチを入れるだけだ。
水分量さえ間違えなければ大概は食べられる。
水は1.2倍程度が基準だ。よくある米計量カップが180ccで一合というが、それなら200ccの水を入れよう。面倒ならもちろんしなくてもいいが、気温と好みで増減させて自分の好きな味を見つけ出すのも一興だ。
お茶なんてお湯を入れるだけだ。
パックではなく急須でいれる場合、美味しく入れるコツがある。
高いお茶は低温で、安いやつは高温で、薬罐から湯呑みに移して温度を調整してから抽出する。移し替えるごとに10℃程温度低下があるので参考にされたし。
面倒なら直でも構わない。
喉の渇きも癒え、お腹も膨れ、やっと人心地が着いた頃だろうか。
ここから先は読者諸兄にはいささかハードルが高い内容となるやも知れない。
避けていた現実に直面させられる話となる可能性を秘めているので心して読んで欲しい。
貯金や遺産の残高を調べてみよう。
どれだけ戦えるかを試算するのだ。
向き合う事は絶望感との戦いとなるだろう。しかし勇敢な同志よあなたはすでに一つの戦いに勝利している。
ゾンビ映画さながらの危険溢れるスーパーマーケットから無事隠れ家に辿り着いて、カップ麺だって構わない。ひととき空腹を満たすミッションを見事に成し遂げたのだ。
恐ろしい現実と向かい合うのは辛いだろうが、注意して見ていれば、赤信号の車と同じで避けられることの方が多い。
予算配分を決める。つまり、残弾数を確認してどれだけ戦えるかを見極める。
たったそれだけの事だ。
敵は電気ガス水道、必要ならばインターネット接続料金。たかだか3つ4つだ。ライフラインは確保しておいた方が苦難が少ない。
切り捨てたっていい。不便なだけで、死に直結するのは水道、灼熱の夏なら電気もいるかも知れない。ガスは風呂を水で済ませるのであればカセットコンロさえあれば料理くらい出来る。量にもよるが契約するより安くする事だって可能だ。
基本料が月に2000円だとして、同じ金額で買える10缶もあれば一月持つ。値上がりと内容量、メーカーにだけは注意が必要だ。契約ならプロパンか都市ガスかで2倍程度変わるが、適度にシャワーを使用しても4000円くらいだろうか。
水道は毎日風呂を満水にするような贅沢な使い方をしようが一万円程度。我が国は飲用可能な綺麗な水がとても安い奇跡のような素晴らしい国だ。切り詰めれば、地域によるだろうが2000円前後で収まるだろう。タンザニアの奥地へ行った時にドラム缶で沸かした熱いお湯をペール缶バケツに移した一杯だけで、湿らせ洗って濯ぎ流すという経験をした。熱い湯を最後に盛大に被るのが爽快で、使用水量もシャワーと比べて激減するので節約にお勧めだ。
電気代は地域差、契約、使用量の差で幅がある。参考までに、20Aの一軒家で夏にエアコン一台をフル稼働させて2万円掛からなかった。気候が良ければ4000円台。その無駄な電力食いのパソコンを、コンパクトな低消費電力のノート型パソコンに変えればそのくらいにはなる。ジャンクを直せば一万円以内で入手可能だ。3Dゲームは諦めよう、今だけはもっと高解像度で正確無比な物理エンジンの非アンリアル世界で戦う時なのだから。
通信回線はポケットwifiで無制限なものが4000円代である。下りはまだましだが上りが遅い。動画をアップロードするなら光回線の方がいいかも知れない。そこは必要性と予算を考えて最適な選択をするといい。
携帯電話はSIMカードが10分無料1GBで月1500円くらいからある。
電気平均8000円
ガス4000円
水道2000円
通信費5500円
食費20000円
計、月におよそ4万円あれば最低限、生活は可能だ。家賃があればそれに追加される。持ち家なら税金のみだ。
テレビは捨てたと言えばNHK料金が返金される事もある。
有用な情報が入手出来た時代は遥か昔に過ぎ去った。時間の無駄なので廃棄を推奨する。
そして現時点での予算を配分すれば、どれだけ戦えるかが判明する。
50万円あれば1年、500万円あれば10年ギリギリの生活が出来る。さらに切り詰める事だって出来るし、遊興費を加算するのも全て自由だ。
残弾数には注意しよう。無駄弾を撃つとそれだけ耐久時間が減る。
自分への投資枠を設けて何かに挑戦するなんて意識の高い諸兄はいらっしゃらないか。
その辺は自己責任でどうぞ。
少なくともFXみたいな詐欺にだけは手を出さないように警告をしておく。あれは現在では冷酷無惨な電子頭脳、AIが秒単位で売り買いを繰り返して利益を回収している。生半可な素人が下手に手を出したところでカモか焼き鳥になるのが落ちだ。
生命を掛けてもいいレベルの親友からのここだけの話でもなければ、儲け話は全部嘘。利益が出るなら隠して自分でやる。もちろんそんな友人などいるはずもないだろうから、安心していい。検証しなくても全部嘘だ。
健康保険料はきっと親の付帯で使用し、払った事はないだろう。仕事をしていなければ、国民健康保険に切り替えられる。会社の保険を使い続けることも出来るはずだが大抵は高額なので、変なプライドがなければ国保に切り替えれば安く済ませられる。前年度に収入がなければ、微々たるものだ。我が国の健康保険制度というのは批判もあるだろうがそれだけ誇れる素晴らしいものだ。アメリカなどでは盲腸になると破産する。
市役所に行って、係の人に聞くだけで全部親切丁寧に教えてくれる。どんな格好で行っても大丈夫だ。下手に上等な服など着て行ったら、逆にお金を持っているのではと勘繰られるかも知れないと、いいように考えよう。
お金が本当に無いときは謝って待ってもらうことも出来る。本当に優しい。いい制度なので崩壊させないようにきちんと支払う事が結局は、自分の助けになるだろう。
マイナンバー関連は、使ったことがないので知らない。
市民税、県民税についても市役所で教えてくれる。前年度の収入によるので、無謀な金額ではないだろう。
社会保障は当てにできない。
あなたが我が国の出身者であるのならば、社会保障を受ける為の窓口にも顔を出してみるといい。必ず支援は降りない。色々な理由をつけて却下されるのは確実だ。能力があるのに働こうとしない悪人として扱われ嫌な思いをする事になるだろう。
外国人に対してはすぐ生活保護が降りるという話は、今回ニートのすすめという議題とは離れるため言及しない。気概があるのならば社会参加して是非現状を変えて欲しいと思うばかりである。
ハローワークという冒険者ギルドのような場所に翌日から誰にでも出来て日払いで3000円くらい貰えるミッションがあり、とうとう残弾が尽きた時に飛び込んだ私の悔しい経験も、ニートを推奨している今は言及を控える。
自己肯定感の低さが根底にあるのならば、少しずつそれを高めるための作業をしてゆく事が、遠回りかも知れないが結局はこの戦いの勝利を目指す為に有効かも知れない。
これは筆者の全くの独り言であるが、親兄弟親戚支援者全て含めた世界中に否定され貶されバカにされようと、あなた自身にはあなたを肯定してあげる権利がある。
その窮地から救い出してあげられるのは、誰でもないあなた自身なのだ。
目を背けたくなるような、薄汚れて傷ついた自分自身を、いまもずっと見捨て続けているのかも知れない。
そのあなたを、いつも見守ってあげられるのは。今まで避けてきたかも知れないが気付いて欲しい。全世界全宇宙くまなく探しても異世界の隅にだっていはしない、誰にも。それはたった一人、あなた自身にしか出来ない事だ。あなただけが味方でいる事ができる。本当に最後のときまで一緒に側に付いていられる。それは夢物語ではなく真実だ。
見捨て続けるのも、またそれはあなたの選択なので、どうするのかは本当に自由だ。
筆者は賢い読者諸兄にその気付きを強く期待する。
最後に一つ付け加えるのであれば、政治には関わるな、どう転んでも騙される。
それははるかに上級者向けの案件だ。
ある地盤の政治家が自分の利益に直結していない限り、投票行為は無意味どころか有害ですらある。
世の中は綺麗事で回っていない。綺麗事を言う奴は全部嘘つきだ。政治家は綺麗事を言うのが商売だ。あえて自ら騙されに行く愚を諸兄が選ぶ事はない。政治活動に参加して貴重な一票をゴミクズのような候補に投票して、それを汚職や裏金問題のエクスキューズ、言い訳に使われるのが落ちなのだ。それでも票は獲得した、と。
愚民化政策や偏向報道、工作活動を全て見抜いて正確な判断を出来るようになるのは、もう少し先の話。世間一般の人々だって出来てなどいないので気にすることはない。
抗議の為に意思表示として白紙票を入れてたところで、それはただの無効票としてカウントすらされない。我々にとって無意味でしかない。
ニートを守る党を作り権利を主張することが戦いではない。
我々の戦いはただ耐え忍んでいつかこの狂った世の中が正常に立ち返る日を黙って待ち続ける一人一人の心のゲリラ戦なのだから。
まずは生き延びよう。