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断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。  作者: 甘寧


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episode.32

 ベルベットは両手を握りしめながらジェフリーを見守った。

 彼が負けるとは思ってはいないが、相手も中々の遣手のようで一向に勝負がつかない。


「ベル!!!!」


 背後で名を呼ばれ振り返ると、そこには全身血にまみれたリアムがいた。更にその背後にヨルグの姿もあり、背中にはぐったりしたネリーの姿が見えた。


「ネリー!!!」


 慌てて駆け寄りネリーの怪我の具合を確かめようとしたが、ヨルグが落ち着けとばかりに尻尾で立ちはだかりながら口を開いた。


『気を失っているだけで怪我はない。安心せよ』


 ヨルグの言葉通り、ネリーは服は泥にまみれているが怪我などなく無事の様だった。それでも怖い思いをさせた事実には変わりなく、意識のないネリーに「ごめんね」と呟いた。


「積もる話は後にして……ベル、ちょっとその犬から離れないでよ。すぐ終わらせるから」

『犬と一緒にされるのは些か不服であるが……まあよい。さっさと終わらせて来い』


 リアムはヨルグに目配せすると、ジェフリーが相手している男の元へ向かった。


『大丈夫だ。あの小僧ならすぐに終わらせるだろう』


 この二人は仲は悪いが、いざと言う時はお互いを信頼して動いている。その証拠に、リアムがベルベットを預けていった。どちらも似た者同士、素直になれないだけなのだろう。


 ヨルグはベルベットを守るように大きな尻尾で包みこみながらその場に座って、リアムの帰りを待った。





「くそッ!!」


 男の方は団長であるジェフリーの相手だけで手一杯なのに、そこにリアムが混ざったことで急激に攻撃の威力が下がった。


「……助っ人など頼んでいないが?」

「は?助っ人に入ったつもりはないし。勘違いしないでくれる?こいつは元から僕の獲物なの。横取りしたのはあんたでしょ?」

「減らず口を」


 こちらはこちらでプライドのぶつかり合いをしている。


「っていうかあんた、気づかないてないの?」

「?何をだ」

「ふ~ん。やっぱり騎士団長って言ってもいざと言う時はポンコツだね」

「なに?」

「ほら、おしゃべりしてる場合じゃないでしょ」


 リアムに馬鹿にされジェフリーは眉間に皺を寄せ苛立った表情を浮かべたが、今は言い争っている場合では無いとすぐに気持ちを切り替えた。この辺りは流石と言える。


「──チッ!!」


 刺客の男は二人相手では分が悪いと察したのだろう。舌打ちをすると、逃げるようにしてその場から姿を消した。


「待て!!」


 ジェフリーが追いかけようとしたが、リアムが「やめときな」と止めた。


「何故止める!!」

「あいつの足に追いつける自信あるの?深追いしてもいい事ないし、あいつの正体は分かってるからね」

「何だと!?」

「あ、やっぱり気づいてなかったんだ」


 ケラケラと笑うリアムを睨みつけながら問い詰めるジェフリーにリアムは一層鋭い視線を送りながら口を開いた。


「あいつは教会専属の影だよ。聖女の護衛役見たことないの?」

「なッ!?それではあの者は……」

「そう。まったく、これだから脳筋って嫌になるよねぇ。力だけ翳して他の事には目もくれない。だから今回みたいなことになるんだよ」

「………………っ」


 リアムは嘲笑いながら言うが、ジェフリーは悔しそうな表情を見せるだけで言い返すことはしない。自分の未熟な部分を指摘され何も言えないと言うが本当の所なのだろう。


「……今回の件は完全に俺の監督不行きが招いたことだ。済まなかった。今一度城に戻り陛下と話をしてくる」


 深々と頭を下げるジェフリーに困惑しながら頭をあげるように伝えるが、拳を強く握りしめたまま頭をあげようとはしない。


「そういえば、教皇様の見解では聖女の母親の方が危険だって言ってたなぁ……」

「!?」

「ああ、これは僕の独り言」


 リアムの()()()を聞いたジェフリーは暫く考えた後「すまない。用事ができた」と足早にその場を立ち去って行った。


 そのうしろ姿を見送った後、リアムに問いかけた。


「母親の方が危険ってどういう事?」

「言葉の通りだけど?……ねぇ、そのゲームとやらに母親は登場してこなかったの?」


 リアムに言われ、改めてゲームの登場人物を思い浮かべたが聖女の母なんて登場してきていない。それに、ベルベット自身もおかしな点は感じていた。


 それは教会でシャノンと対立した時の事だった。


 シャノンよりも母親の方が率先して前に出てきて、ベルベットを罵ってきた。シャノンに罵られるのならば分かるが、母親とは面識がない。


(一体何が起こってるの?)


 疲れていた所に情報の多さに頭がついて行けず、ベルベットはそのまま気を失ってしまった。








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