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断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。  作者: 甘寧


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25/37

episode.25

「どういう事!!なんでベルベッドが子供を庇うのよ!!」


 怒鳴りながら手元にあった花瓶を壁に投げつけるエリーザベト。花瓶はガシャンッ!!と大きな音を立てて割れ、その音に侍女らが集まって来たがエリーザベトの激高する姿に壁際で震えている。

 そこへジェフリーがやって来た。その顔は険しく、軽蔑するような冷たい視線をシャノンに向けている。


「いくら聖女とはいえ、今回の件は見過ごせません。早急に国へ戻る手筈を整えますので支度をお願いします」

「は!?」


 ジェフリーは淡々と伝えたが、エリーザベトが黙ってはいない。このままではロジェルートが破綻してしまうのだから。


「お待ちください!!シャノンは聖女としてこの国に参ったのですよ!!たかが一度の過ちでその役目を全うせず帰る訳には参りません!!」

「……たかが一度の過ちだと?」

「ええ、子供をぶったのはこちらに非がありますが、あの時はシャノンも気が動転していて正しい判断ができなかったのです」


 必死に言い訳を口にするが、ジェフリーの顔は酷く険しい。


「ふざけるな!!一度ならばその言い訳も通用しただろうが、二度も手を上げるのはどういう了見だ!!」

「いや、それは……」


 ジェフリーの圧に押され、エリーザベトはたじろいだ。


 元孤児のジェフリーだからこそ、あの時のシャノンの所業が尚更許す事が出来ないのだ。更にそれについて謝るでもなく”たかが一度の過ち”で片づけるエリーザベトにも腹が立っていた。孤児だからと言っても一人の人間だ。何をしても許させるという訳にはならない。


 自分らの立場を護るのに必死なのが目に見えて分かる。……こんな者が本当に聖女なのか?


 ジェフリーは呆れるように溜息を吐き、二人に突き刺さるような視線を送った。


「これは既に決定事項だ。ああ、国を出るまで部屋から出ることも許さん。これ以上の騒ぎを起こされては困るのでな」


 それだけ言うと部屋を出て行った。


 残されたエリーザベトは暫く茫然と立ち竦んでいたが、我に返るとふつふつと怒りが沸いてきた。


「なんなの!!ここはシャノンの世界なのよ!!攻略者がなんでこんなにも冷たいのよ!!おかしいでしょ!!」


 怒りをぶつける様にテーブルを殴りつける。そんな姿をシャノンは戸惑いながら見ていた。


(最初は上手くいってたのに……!!あの女が出てきたからおかしくなったのよ!!)


 ギリッと歯を食いしばりながら肩で息を吐くエリーザベトだったが、突如笑みを浮かべた。


「──そうよ。邪魔なのはあの女ね。あいつがいるからおかしくなったのよ」


 そう呟きながら不敵に微笑んだ。



 ◈◈◈




 聖女であるシャノンの振舞いはあっという間に町中に広まった。当然、善行ではなく悪行としてだ。


「残念だよなあ」

「聖女と言うから慈悲深い方だと思っていだが、あんな聖女もいるんだなあ」

「あれは聖女じゃないわよ」

「そうよ!!あの女、ロジェ様が優しいからって腕に絡みついて私達に見せつけてきたのよ!!」


 窓の外からそんな言葉が聞こえてくるが、今のベルベットはそれどこではない。


「どうしました?」

「…………………………」


 目の前には跪きこちらをジッと見つめるロジェの姿がある。


 ジェフリーが立ち去った後、ロジェは子供を部下の者に託すとベルベットを抱き上げた。腕の中で騒ぐベルベットには目もくれず敷地内にある教皇用の公邸に連れてこられた。


 壊れ物を扱うように優しくベッドの上に下ろされると、殴られた傷を見る為頬に手を添えられた。


「あ、あの、そんな大した傷でもありませんし、教皇様の手を煩わせる訳にはいかないので……」


 間近に見るロジェは心臓に悪い。ベルベットは必死に平静を装っているが直視はできないため目を逸らしながら伝えるが、ロジェが無理やり視線を合わせてくる。


「いいえ、いけません。貴女の顔に傷が残っては大変ですから」


 そう言うが、その表情には怒りの色が見える。その怒りの理由が分からずベルベットは戸惑いを隠せないでいた。


 私がイベントを邪魔したから?だけど、あの時はああするしかなかったし……まあ、こうなった以上腹を括るしかないし、断罪される覚悟はできてる。


 俯きながら黙っているベルベットにロジェは優しく声を掛けてきた。


「ああ、貴女にそんな顔をさせなんて……許せませんね。大丈夫ですよ。貴女の事は私がお守りしますから」

「え?」


 一瞬自分の耳を疑った。悪役令嬢である自分が攻略者に守られるなどありえない事だ。だが、ロジェの顔は冗談を言っているような感じはない。


(──というか、何か不穏な感じがする)


 気のせいだと言われればそれまでなのだが、何となくここからすぐ逃げた方がいいと直感が警告している。


「あの、本当に大丈夫なので!!連れも待っていますから……あ、手当てありがとうございました」


 膜立てるようにお礼を言って、足早に部屋を出ようとしたがノブに手をかけたところで、ロジェに背後から覆うようにして止められた。


「──連れとは一緒にいた子供の事でしょうか?その子なら、先ほど私の部下が家に送り届けましたのでご安心ください」


 耳元で囁くように言われ、心臓が跳ねるようにして脈打っている。これはロジェの色気に当てられた訳ではなく、完全に逃げ道を塞がれた為だ。





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