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断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。  作者: 甘寧


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episode.13

 ネリーの声に驚いたリアムとヨルグはピタッと動きを止め、睨みつけているネリーに視線をやった。ネリーは黙って二人の傍まで行くと、力強く地面を踏みつけた。


「……てめぇら、いい加減にしろよ。何も喧嘩するなとは言わねぇよ。時と場所を選べっつってんだよ!!見ろよ!!てめぇらに荒らされた庭!!どう落とし前つけてくれんだ!?あ゛あ゛!?」


 滅多に怒らないネリーが怒りを顕にした事にも驚いたが、ここまで口汚く罵るとは流石のベルベットも驚きを隠せない。


「ご、ごめんよネリー……けどさ、元はと言えばコイツが……」


 リアムも流石にまずいと思ったのか慌てて言い訳混じりに謝罪するが「言い訳は見苦しい!!」と一喝されてしまった。ヨルグもヨルグで自分の足跡が残る庭を見てバツが悪そうに頭を項垂れている。その姿はまるで叱られてしょんぼりしている仔犬の様で可愛らしかった。


 神格を怒鳴りつける侍女と言うのも珍しいが、ただ黙って叱られている神格も珍しい。


 とはいえ、勝負は突如乱入のネリーが圧勝。


 二人はネリーに睨みつけられながら大人しく庭を復元させていた。まあ、黙って黙々作業できるような者達ではないので、どちらとでもなくちょっかいを掛けて相手の邪魔をしていたが、その都度ネリーの目が光り、二人を黙らせた。


 そんな様子をベルベットは呆れつ見守っていた。




 ◈◈◈




「ジェフリー団長」


 甘ったるい声でジェフリーの名を呼んだのはヒロインである聖女のシャノン。


 ジェフリーはその声に溜息を一つ吐いてから振り返った。


「何か御用でしょうか?」

「ええ、少しお時間宜しいでしょうか?」


 申し訳なさそうに訊ねてくるシャノンはまさに聖女らしい振る舞いだ。だが、ジェフリーの眉間には皺が寄っている。


(またか……)


 どう言うわけだかここ最近シャノンに付き纏われている。まだ正式に公表されていないにしろ、王子の婚約者であるシャノンが他の男と二人きりの場を作るのは良くないと、何度も進言してきた。それでも、しつこく言い寄ってくるシャノンに嫌気が差していた。


「……申し訳ありません。これから隊団会議に出る所ですので」

「あら、そんなもの私が一言言えばどうにでもなりますでしょ?」


 その一言にジェフリーの表情が強ばった。


 いくら聖女と言えど自分が誇りにしている仕事を『そんなもの』呼ばわりにも腹が立つが、聖女である自分の発言がどれほど影響力があるのか分かった上で言っている事に腹が立った。今回の会議は定期会議なのでさほど重要ではないにしろ、国を脅かす重大な会議だったらどうしていたのだ?明らかに自身の事しか考えていないシャノンに苛立ちが募る。


「美味しいお茶が手に入りましたの。是非ご一緒していただけませんか?」


 スルッと手を腕に絡ませ上目遣いでお願いしてくるシャノンにジェフリーは冷ややかな目を向けながら絡みついてる手をほどいた。


「聖女様。この際はっきり申し上げますが、貴女の振る舞いは少々目に余るところがあります。貴女は殿下のお相手なのですよ?そのような方が他の男に腕を絡めるとは言語道断。このことは殿下にも報告させていただきます」


 終始凍てつくような鋭い視線と言葉にシャノンが茫然としているが、ジェフリーは心配するでもなく頭を軽く下げてからシャノンの横をすり抜けて行った。


 しばらく動けなかったシャノンだったが、頭ががはっきりしてくると拳を握りしめワナワナと震え始めた。

 そして、聖女らしからぬ足音を立てながら自室へと向かった。


 バンッ!!!!!


 大きな音を立てドアを閉めドカッと長椅子に座ると、自身の影である男を呼び出した。


「お呼びで?」

「…………お母様からの手紙は?」

「本日はまだ届いていないようで──」


 男の返事を全て聞き終える前にシャノンは男をティーポットで殴りつけた。

 男は頭を切ったらしく、真っ赤な血が額を伝っている。そんな男をシャノンは手当するでもなく、たださめざめと見下ろすだけだった。


「なんで貴方はそんなに約立たずで能無しなの?こんなのが私の影なんてね。ねぇ、貴方、この程度で影の護衛なんて恥ずかしくないのかしら?」


 丁寧な口調に聞こえるが、放っているのは罵る言葉。そんな言葉と共に膝をついている男を蹴り上げる。

 男は抵抗することなく黙って受け入れているが、影としてのプライドはある。無意識に鋭いまなざしで睨みつけると、一瞬シャノンが怯んだ。

 だがすぐにテーブルにあったフルーツナイフを手にし男を切りつけ、ナイフは男の右頬から右目にかけて一筋の傷を作った。


「主人を睨みつけるような駄犬だったとはね」

「…………申し訳ありません」

「ああ、もう。絨毯にシミがつくでしょ。早く退いてくれる?」

「…………」


 男は切りつけられた頬を押さえながら、黙ってその場から姿を消した。

 残されたシャノンは、ナイフを再び手にすると苛立ちをぶつけるかのように壁に突き刺した。

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