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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第77話 洞窟掃除

宝箱を開けた後の探索は、特に言うことはない…というか、別に難しくなかった。

洞窟の最深部へ向かうのも、途中で変に強い異形が出てくる訳でもなく、何かギミックがある訳でもないので大して難しくなかった。

むしろ、問題は最深部に来てからだった。


「おぉ…いるな」

秀典がそう呟く。

最深部の空間には、これまでに見たことないレベルで異形がうじゃうじゃいたのだ。

まるで、動物の死骸にたかる蛆虫のように。


「うわっ…」

思わず声を上げてしまった。

集まっている異形が、ベトベトした謎の液体の塊や得体の知れない肉塊のような姿をしたものばかりであったために、言葉にならない嫌悪感を感じたのだ。


「何とも嫌悪感を煽る光景ですね…一気に片付けてしまいましょう」


「待って!」

杖を出し魔法を唱えようとしたキョウラを、メリムが止めた。

「…?」


「あそこ…小高くなっている所を見て下さい」

彼女の指差す方を見ると、確かに一箇所だけ小高くなっている所があり、そこに妙なものがあった。

人の顔のようなものが浮かんだ、球形に近い形の白く光る物体。

距離があるので正確な大きさはわからないが、他の異形と比べると大きめだ。

「何かあるな…あれも異形か?」


「はい、『邪白の核』と呼ばれているものです」

すると、キョウラが反応した。

「邪白の核…聞いた事があります。多少の知能を有し、他の異形を呼び寄せる性質を持つ異形…でしたね」


「ええ。恐らくいくら周りの異形達を倒しても、あの異形を倒さない限りは無限に湧いて出てくるでしょう」


「となると、あれを倒さないとないのか。でも、ここまで離れてると撃ち抜けるか不安だな」


「その必要はありません」

メリムは手を伸ばし、魔弾を放った。

それは見事球形の異形を撃ち抜き、異形は溶けるように崩れて消えた。

「すげえ…」

ここから向こうまでは30メートルほど離れている。俺だったら、この距離から魔弾で撃ち抜けるかは怪しい。

魔弾の飛距離には撃ち出した後の魔力の偏りの調節と撃ち出す速度が関係しているが、この調節が少々大変で、まっすぐ遠くまで飛ばすというのがなかなか難しいのだ。

正確に測った事はないが、たぶん俺は10メートルも飛ばせないだろう。


「お見事です。あとは、あの異形達を片付けるだけですね」

キョウラはそう言って、杖を掲げた。

「[ホワイトムーン]」

天井に柔らかい光を放つ巨大な半球が現れ、異形達を照らす。

すると、異形達の動きが目に見えて緩慢になった。

「あっ…奴らの動きが…!」


「白魔法で一時的に弱体化させました。これで簡単に倒せるはずです!」


「よっしゃ!じゃ行くぞ!」


そうして俺達は異形達の中へ突っ込み、弱化した異形相手に思いのままに術をぶっ放した。

特に秀典の竜巻を起こす術は、一度に複数の異形をまとめる事が出来る上に、俺やメリムの術を重ねれば炎の竜巻となり目に見えて威力が上がるため助かった。

もちろん、康介とキョウラもだが。

康介と術を合わせれば、燃え盛る岩石をたくさん落とす事が出来るし、キョウラと術を合わせれば、熱を帯びた光を放てる。


もちろん、メリムの術との重ねがけも健在だ。

「ソロファイア」や「フェルバイアード」はメリムも使えるようで、一緒に放つと威力もさることながら見た目の演出も派手になる。

特に、腕を肩の高さに構えてから振るうのと同時に炎を撃ち出すメリムの奥義「不死鳥暁光」に俺の奥義「フレイムポール」を組み合わせたものは、自分で言うのもなんだが本当にカッコよかった。

巨大な炎で焼き払いつつ、灼熱の斧で攻撃し火柱を噴き上げる…という演出は最高にアガる。


強力な術で大量の敵を蹴散らすのは、本当に爽快だ。

この爽快感は、ゲームで味わうのとは訳が違う。

心から、この世界に来て良かったと思った。






「ふう…」

俺はひと息をつく。

みんなで盛大に暴れたおかげで、異形は数分もせずにきれいさっぱり消滅した。

「あっさり終わったな!」

康介は忘れているかもしれないが、俺達が暴れまくれたのはキョウラのおかげだ。

彼女が異形達を弱体化させてくれたからこそ、こんな無双が出来たのである。

だが、なぜかそれを言う気にはならなかった。


「で、何か収穫はあるのか?」

俺はあたりを調べてみたが、おかしなものは何も見つからなかった。

「何もない…な。ま、宝箱の収穫はあった訳だし、異形の脅威をなくせただけでもよかったじゃんか」


「そうだな」



その後、俺達は町へ戻ったのだが…

そこで、また一騒ぎ起きる事になったのだった。






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