表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/917

第73話 首都へ

それからの旅は、まあ順調だった。

基本的には馬車をステルス状態にして走り、時折野盗や異形に襲われている人を見かけたら馬車を止め、出撃して助ける。そんな感じだった。

それでわかったのだが、野盗も襲われる人もかなり痩せていた。

メリムも言ってたし、助けた人たちからも聞いたが、食べ物がない状況は深刻なようだ。


「私が言えた義理じゃないけどさ、あの野盗達の全てを否定するのは野暮だと思う。どうしたって食べ物にありつけないなら、奪うしかないもの」

町を出てから3回目、森の中で遭遇した野盗達を全滅させた直後に紗妃が放った言葉である。

出撃していた他のメンバー…柳助とメリムは彼女の意見を否定も肯定もしなかったが、俺が野盗達の墓を作ろうと提案するとすんなり納得した。



ところでメリムの実力だが、はっきり言って想像以上だった。

最初は大剣とムチ、という組み合わせはなんか変だな、なんて思っていたが、そんな俺の雑念は彼女の立ち振る舞いを見てきれいに消し飛んだ。

魔法で大剣を宙に浮かべてガードしつつムチで攻めたり、ムチを手に華麗に舞って薙ぎ払ったり、大剣を手にしたまま横に縦に回転したりと派手にやってくれた。

ラギルや亮が舌を巻くほどであったので、彼らから見ても圧倒的な戦闘センスだったらしい。

本人は大したことはないと謙遜していたが、柳助や吏廻流も感心していたのでやはり褒められるレベルのものであるようだ。


ちなみに、俺はこの移動の最中に仲間と模擬戦をするようになった。

何もしないのもつまらないというのと、自身の戦闘力を上げたいという気持ちからであった。

技もそうだが、斧自体の扱いも上達したいし、魔法…すなわち術だってまだまだ扱えていない。


というわけで、俺は暇な時は相手としてナイアや迅なんかを呼んで模擬戦を行い、技と術と振る舞いの訓練に励む。

それはただ一人で1から考えるのではなく、相手の振る舞いを見て学ぶ事も沢山あった。

人の振り見て…なんてことわざがあるが、あれはまさにその通りである。

斧を使わない相手でも、動きを模倣できそうだったり、新たな動きにつなげるためのヒントになりそうな振る舞いを見せてくれる者がゴロゴロいた。


彼らの動きをよく観察し、考え、自身の振る舞いとして仮の形を作り上げ、実践する。

そして失敗したら形を直し、また失敗したら形を直す。これを、何度となく繰り返す。

さらに訓練を終えた後は部屋に戻り、机に向かって今回の動きを見直し、さらによい形を考える。

こうして時間と手間をたっぷりかけ、味方の動きを自身の(わざ)としていく。

学校の勉強はあまり好きではなかったが、この勉強には時間を忘れて打ち込む事ができた。




数日後、木々と城壁に囲まれた立派な城が見えてきた。

外見は白い石の建材に、幾多のきらびやかな宝石で装飾された、いかにもな感じの雰囲気の城であった。

「見えた…あれがアルバン城。そして、あの城壁に囲まれた町が首都メゾーヌだ」

ベランダから城を眺める俺に、柳助が説明してくれた。

「アルバン城…ってことは、あそこに王様がいるのか」


「ああ。以前俺が行った時には、ベルアという男が戦士王だったが…今はどうなんだろうな」


「今の戦士王は、ベルア王のご子息。名前をエウル王と言います。とてもお優しい方で、国民のためなら如何なる事でもして下さる方なのですが…何やらご病気になってしまったそうで、一ヶ月ほど前からはデモリア王妃という方が国を統治しているんです。…」

そこまで言って、メリムは顔を曇らせた。

「どうした?」


「こんな事を言っては何ですが、デモリア様が国の統治を行うようになってから、急速に国が変わってしまったような気がします…」

すると、紗妃が疑問を浮かべた。

「そう?私は、もっと前からこんな感じだった気がするけど」


「…」

メリムは何も言わなかった。


気の所為かもしれないが、メリムはどこか悲しげというか…切なげな雰囲気をまとっている気がする。

心を開いていないのか、あるいは…。





町の入口の兵士に旅人であると伝えると、あっさり通してくれた。

町に入ってすぐの所に3人の男がおり、そいつらは俺達の姿を見るなり近づいてきた。

「あんたら、外国からの旅人さんだろ?おれたち3人を雇ってくれないか?おれたちは傭兵だ、戦いはできる」

との事で、最初は傭兵、ねえ…という感じだったが、その顔をよく見て気がガラッと変わった。


というのも、この3人のうち2人の顔には見覚えがあったのだ。

宮地秀典(みやじひでのり)、それに望月康介(もちづきこうすけ)

秀典は樹達と同じく俺の昔の同級生だ。

康介は確か龍神の弟で、遊んだことはないが何度か顔を見たことがある。

秀典も俺の顔を見てはっとしたようで、残りの2人を呼んで軽く騒いだ。


「和人!久しぶりだな!」なんて言われたので、もはや条件反射的なまでの勢いで中へ招いた。


詳しく聞いてみた所、2人は数十年前に「戦士」としてこの世界に転移してきて、今はそれぞれ吟地(ぎんじ)秀典、利賀(りが)康介と名乗っているらしい。

そして、唯一俺が知らない顔の男は渕部(ふちべ)というらしく、秀典とは人間界にいた時からの知り合いだったそうだ。

そしてこの3人は傭兵団を作り、生活しているとのこと。

彼らも食事に困っており、メゾーヌの外には異形や野盗がうようよしているのをいい事に、町に出入りする外部の者に雇って貰おうとしていたらしい。

寄生虫みたいだなと思ったが、咎める訳にもいくまい。


何か言われる前に、こちらからいった。

「一緒に行こう。食料もしばらくは持つくらいあるし」

彼らを見捨てるつもりはないし、無駄なおしゃべりも避けたかった。

康介は大食らいだと聞いた事があるが…まあ大丈夫だろう。


馬車は城壁の外に停めた。

最初は町の中に停めようと思ったのだが、なぜか嫌な予感がしたので、念の為…だ。




ちなみに、八勇者像への参拝は一応しておいた。

町のど真ん中に置かれた、立派な斧を持った男の像。それこそが、この国を作った人物にして八勇者の1人、魔戦士バレス・ダーウェンを象った像。

いかつい兜と鎧を身につけ、立派な髭を生やしており、いかにも戦士といった感じの姿である。


お参りは柳助と、さっき仲間になったばかりの秀典達にさせた。

この像の恩恵を受けられるのは、戦士である彼らだけだ。

ちなみにバレスの像の加護は『豪胆』、何があっても怯えず怖がらず、逃げない勇気と度胸を身につけられるらしい。

こちらもまた、いかにも戦士といった感じだ。


秀典は、康介は戦士とは思えぬほどの怖がりなので、それを克服できるかもな、と言って笑っていた。

本人は怒っていたが、怖がりなのは本当なようで、かつてはそれを兄にバカにされたりもしたそうだ。

今は遠く離れているが、代わりに秀典達にからかわれることもあるとかないとか。


しかし…康介の兄か。

なんか、知ってるような気がする。

一体、誰だったか…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ