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黒界異人伝・異世界英雄譚 -ようこそ、造られた異世界へ-  作者: 明鏡止水
3章・アルバンの血戦

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第71話 異形の鬼

まずは樹が飛びかかる。

水をまとった棍の一撃は、見事に入った。

血が飛び散り、結構いい攻撃なように思えた…のだが、異形は割と平気そうな顔をしていた。

そこで、樹は続けて乱舞攻撃を繰り出した。

ぐるぐると華麗に回転し、 5回の攻撃を見舞ったわけだが、それでも異形にはさして効いていないようだった。

「こんなものか?」

樹が攻撃を止めた途端、明司が突っかかる。

これはきっと、技だったのだろう―突っ込む速度が結構なものだった上、突き出した剣から魔力を感じられた。


そして、異形が金棒のような武器でそれを止めたところで俺が飛びかかる。

だが、異形は俺の攻撃も普通に止めてきた。

俺達と押し合っている間、異形は黙っていた。

二つの黄色い目が、無機質に俺達を見つめてくる。

だが、言い換えればこいつは今動けない。

この隙に、誰か攻撃をしてくれれば…と思ったら、背後に誰かが攻撃しようとしている気配を感じた。

よかった…と思った直後、俺達を抑える異形の力が一瞬弱まった。


かと思ったら、次の刹那俺達は派手に吹き飛ばされていた。

「…」

敵の攻撃で吹き飛ばされて木や壁に背中から激突する…というのは漫画なアニメではよく見る光景だが、実際になると普通に痛い。

「う、うう…」

何やら樹のものではないうめき声がしたので横を見てみると、亮が倒れていた。

どうやら、先ほどの気配の主は亮だったようだ。

「亮、樹…大丈夫か?」


「ああ、何とかな…」


「一体、今…何があったんだ?」


「"弾き飛ばし"か…相手の攻撃を弾いて吹き飛ばす、棍の技だ」

樹が説明している間にも未菜や紗妃が異形に飛びかかるが、異形は棍棒を振り回して普通に応戦する。

そして、彼らを乱戦の中でも一人ずつ、確実にふっ飛ばしていった。


「見かけだけじゃないらしいな」

立ち上がった樹が言った。

「悪魔系のように見えるが…なかなか頑張れるじゃんか」


「ふん…お前たちにそう言ってもらえるとは光栄だ、『チーム・ブレイヴ』の冒険者よ」

その言葉に、樹は目を見開いた。

「何で知ってる」


「言っただろう?お前たちの最近の活躍は、我らの耳にも届いている。特に、最近迎えてた新入りは頑張っているそうじゃないか?」

俺のことか…と思ったが、異形は俺の方を見たりはしなかった。

「オレは正直、お前らに興味はない。だから誰が新入りかとか、そういう事はどうでもいい。だが、最近のお前らの活躍はちょっと気に食わない」


「どういうことだ」

すると、異形はだんまりを決め込んだ。

「そうか、知りたければオレを倒せ…か」


「察しがよくて助かる。だがこれだけは教えてやろう…お前らがどんなに輝かしい活躍をしようと、お前らの旅はただの冒険ごっこに終わる」

そして、異形…ガレグ鬼は、その棍を目の前に構えた。

「大したお話をどうも。だがな、その程度じゃあオレたちにはハッタリにもならないぜ」


「そうか…。ならば、こうしよう」

奴は、勢いよくこちらへ突っ込んできた。

そして棍棒を振り回しながら俺達の中を走り回り、やたらめったらに殴りつけてきた。

「"暴れ回り"か…いかにも異形らしい技だ」

亮がそう呟いた。


「炎法 [ソロファイア]」

俺が火球を撃ち出すと、ガレグ鬼も術を使ってきた。

「[シャドーボール]」

サッカーボールほどの大きさの黒い玉を飛ばし、火球とぶつけて相殺してきた。

ならば、と別の術を放つ。

「炎法 [フェルバイアード]」

二つの火球を合体させ、大きな火球にして撃ち出す術。

これは防がれることなく、普通に届いた。


「術か…だが物理で叩きのめせば良い」

ガレグ鬼は棍棒を振り上げて走ってきた。

そして俺の頭目掛けて棍棒を振り下ろしてきた…回避したが、直撃すれば頭が砕けていたかもしれない。

続けてガレグ鬼は横殴りをしてきた。

これは普通に食らい、後ろに吹き飛ばされた。

だが、まだ行ける。


鞭技 (べんぎ)[スネークウェーブ]」

ガレグ鬼が俺に構っている間に、亮がムチを叩きつけて奴を攻撃してくれた。

奴は俺に突っかかってきたが、奴の手に炎を伝導させて振り払った。

そして、俺は技を繰り出す。

「斧技 [ブレイクムーン]」

ガレグ鬼の体を真っ二つに斬り上げ、その上で宙返りを決めて距離を取った。


「どうした?さっきまでの威勢はどこに行った?」


「そんな言葉を発する必要があるか?弱い奴ほど、一時の有利にすがってそのようなことを言いたがる」


「確かに…そうかもな。だが、オレたちには誰にも負けないものがあるんだぜ」

樹はそう言いつつ、俺に一瞬だけアイコンタクトを送ってきた。

俺はそれから樹の腹を読み、両の膝をついた。

「姜芽…!」


「平気さ…ただちょっと、さっきのダメージが来ただけだ…」

斧を支えにし、何とか立ち上がる。

そして、震えながら斧を構える。

「ふむ…」

それを見たガレグ鬼は、俺に狙いを定めたようだった。


次の瞬間、奴は俺に突っ込んできた―棍棒を思い切り振りかぶって。

立つのにさえ苦労するほどダメージを負っているなら、あとはもう倒すのにさほど手間はかからない。

そう判断してのことだったのだろうが、それは大きな誤算である。


俺は素早く棍棒を躱し、術を唱える。

「炎法 [バーニングリング]」

5つの炎のリングでガレグ鬼の体を拘束し、技を決める。

ここで、樹と亮も同時に技を繰り出す。

「[紅蓮割り]」

「[海竜衝]」

「[昇龍打ち]」

斧で叩き割り、棍で叩きつけ、鞭で下から上に打ちつける。

その三連撃を決めきった直後、リングを急速に収縮させて追撃した。


「…」

異形はにわかに血を吐き、棍棒を落とした。

「冒険家一行…恐るべし…」

そうしてガレグ鬼は倒れ、跡形もなく消滅した。

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